〜ひろプリ×勇者であるシリーズ〜世界の壁を超えた出会い 作:やままん
闇の意志との対話の末、互いに存在し続けるために「無」との戦いを決意したましろ。
光と闇の重要性を理解したましろならではの答えだった。
真の敵を見据えた一同の戦いは新たなステージへと上がっていく。
だが、ましろの罪を断罪しに来たトーヤは煮え切らない様子で剣を振るっていた。
「犯した罪の精算。」
無慈悲に奪われていった者たちの思いを背負っている彼は、ましろの元に向かうのであった。
~「劇場」~
ましろがかつて、座っていた椅子から炎が上がる。
ソラシド市で起きていたことは当然、理解している。
その影響は勇者世界にまで及び、仕込んだ「闇の大樹」が消えた影響で停止した星が再び自転をし始めた。
ただ、公転はしていたので時間の進みが影響している懸念はある。
だがそれでも、「劇団」の思い描いた「演目」には多大な影響を及ぼしていた。
ましろの奪還と共に、計画の根っこである闇の大樹の消滅。
今までにない大打撃。「主役」が消えたことと「演目」の要である闇の大樹の喪失…。
ここに来て、初めて計画に支障が出た。
アデルはいつものような薄ら笑いすら浮かべない。
アデル「……してやられましたねェ…。」
低い声で一言、そう発する。
だがそれと同時に、とてつもない殺気も同時に。
ナイアル「…さて、どうするアデル。虹ヶ丘ましろを失うだけじゃなく、闇の大樹も消えた…二つの世界は再び時間が戻って動き出した。このままでは、「台本」の見直しに入らねばならんぞ?。」
アデル「…「演目」の路線は変えませんよ。こうなれば、利用するものを変えるのみ。」
アリス「…心の闇を解放した犬吠埼樹はこちらに同調しなかったわ。あれはあれの意思があるように思えるけど…何かあるの?。」
アデル「簡単ですよ。勇者とプリキュアを皆殺しにすればいい。」
それを聞いて、狂気的な笑みを浮かべたのは…蓮だった。
蓮「そりゃあいいな旦那ッ!。まどろっこしいやり方じゃなくてシンプルに事を運べばいいッ!。世界が希望を抱いてるなら、その希望を断てばいいッ!。最初からそうすりゃ良かったんだ!。」
ナイアル「…新参者が調子に乗るなよ?。僕の「演出」に首を突っ込むつもりかい…?。」
蓮「その「演出」が失敗したなら、シナリオを考え直せばいいだろ?。それがあんたの仕事だ…違うかい?。」
ナイアル「……わからせる必要があるか…。」
刀に手を添えるナイアル。
それに反応した蓮も、ニヤけながら得物に手を伸ばす。
だが…アデルが並ならぬ気迫を放って。
アデル「やめなさい、無様ですよ?。この場で争うと言うのなら…「処分」も検討します。」
2人は自身に刻まれた刻印を見て矛を収める。
アデル「蓮さんの言う通り、ここからはシンプルに進めます。ナイアル、申し訳ございませんがシナリオを組み直してください。」
ナイアル「……了解した。」
アデル(…プリキュア…勇者…どこまでも抵抗を。小賢しいですね…いい加減、その存在に嫌気が差してきましたよ…!。)
……………………。
〜虹ヶ丘邸〜
闇から解放されたましろは、久方ぶりに実家に戻っていた。
当然、そこには勇者達も含む全員がそこに居て。
再会を喜び合う一同を見守るヨヨとシャララ。
念の為、ましろはスカイランドの医療機関で自身の身体を診てもらっていた。
ずっと、闇に閉じ込められたままだったのだ…その影響が無いかどうか、調べる必要があった。
結果は問題無し…アデルに刺された傷も全て消えていたのだ。
何故消えたのかは分からなかったが…無事に帰ってきたのだ。細かいことは気にせずにいようと、そう思うことにした。
当然、ましろは自身が闇に堕ちていた時の記憶はしっかりと残っている。
自分が手掛けたものや、破壊したもの。
そして…大切な仲間であるソラ達と敵対したこと。
その全てが鮮明に覚えている。
だからなのか、やはり少しだけまだ陰りがあった。
ましろが検査を受けている最中、シャララはこう言った。
「これから、ましろには困難が降り注ぐことになる。それは、罪の意識による罪悪感だ。しかし…それは彼女自身の問題だ。だから、我々は見守る事しかできない。彼女が出す答えを…しっかりと見守ろう。」
…と。
そんな空気の中、ましろは1人でベランダで風に当たっていた。
そこにやってくる影が一つ…鷹夜だった。
ましろが戻ってからはまともに会話を交わしていない。
それは、ソラ達の事を思って鷹夜が一歩、身を引いていたからだ。
後はましろの心身の問題もある…検査が終わる時までは…っと、鷹夜はそう思っていた。
そして久しぶりに、声を掛ける。
鷹夜「…やっと、解放されたな。ましろ?。」
飲み物を持って隣に立つ鷹夜。
そっと、ましろの分も何も言わずに置く。
ましろ「ありがとう?。そうだね…ずっと、お話できなかったから…ソラちゃん達や友奈ちゃん達とたくさんお話ができて良かったなって思ってる。鷹夜君、全然話してくれないから嫌われちゃったのかなって思っちゃった。なんてね、冗談だよ?。気を遣ってくれたんでしょ?。」
少し、からかうように言うましろ。
その発言に少し困った様子を見せる鷹夜を見て、微笑みを向ける。
ましろ「……私ね、覚えてるよ。あの時、鷹夜君が私に攻撃出来なくて…拳を下げた事。それで私…鷹夜君に酷い事を…。」
鷹夜「ああ、あれか…いいよ、気にすんな。あん時は俺が未熟だった。拳一つでなんでも出来るって思い込んでたツケさ。」
ましろ「…それでも、私がやってきたことは許されることじゃない。」
自分の掌を見るましろ。
それは決して、綺麗な手じゃない…薄汚れた手。誰かの涙と血がついた手…そして、大切な仲間達の苦悩を刻んだ手。
鷹夜はシャララが言ったことを思い出す。
後は、ましろがどう向き合うか…。
懸念していた事が現実になった。罪の意識に押し潰されてしまうのか、それとも背負いながら生きていくのか…当然、ましろの覚悟は後者にあるだろう。だが、それでも優しい彼女はどうしても、その罪の意識に飲まれそうになってしまう。
鷹夜はあえて…皮肉を言おうと思った。
今の彼女に慰めは逆効果だ…そう思って。
鷹夜「そうだな。お前は取り返しのつかねェ事をしてしまった。その手はきっと、簡単に綺麗にはならねェだろう。俺達の事は問題じゃねェ、けど…世界は違う。」
鷹夜はトーヤの言った事を思い出した。
「世界が彼女を許さないだろう。」
それは紛れもなく、事実になる。そして、その現実がましろに突き付けられている。
鷹夜「だからましろ、お前の背中には罪という面倒な荷物がついて回ってきやがるだろう。だけど、それを途中で下ろす事はダメだ。お前は…その荷物を持ったまま、世界に対して頭を下げていく必要がある。」
飲み物を飲み干し、鷹夜は空を見上げる。
鷹夜「…けど、少しは俺達にも回せよ。その手伝いくらいは出来るからさ。俺たちは…仲間だろ?。」
その一言に、ましろは瞳を潤ませては一筋の涙を落とす。
ましろ「…ぐす…そう…だね…私たちは…仲間。だから…お願い…私の罪滅ぼしに…付き合ってくれる…?。」
それを聞いた鷹夜の答えは既に決まっていた。
鷹夜「ったりめェだろ?。」
たったそれだけ、それ以上の言葉は余計だろう。
鷹夜はましろの思いを受け取った。
その時、風が吹き荒れる。
その視線の先には…トーヤが居た。
トーヤ「罪滅ぼしだと?。それで許されると思うなよ、虹ヶ丘ましろ…!。」
やはり、来たか…。
鷹夜はそう思う。
並ならぬ怒りを露わにするトーヤ。ましろは少し、困惑した表情を見せる。
ましろ「貴方は…私を殺しにきた…。」
トーヤ「そうだ、よく分かっているな?。さぁ、覚悟しろ。お前はその命を以て、奪っていった者たちの思いを晴らさねばならん!!。」
鷹夜「待てよ、トーヤ。」
トーヤ「邪魔をするな、俺は俺の本懐を成し遂げる!。抵抗してもいいぞ、俺は確実にお前の命を…断つ…!。」
その場で、キュアスラッシュに変身するトーヤ。
静かに剣を抜いて臨戦体勢に入るが、鷹夜が声を上げる。
鷹夜「俺は言ったはずだぜッ!?。ましろを殺させはしねェってなッ!!。俺が相手になる、ましろを殺したいならまずは俺を殺せッ!。出来なけりゃ、諦めやがれッ!!。」
変身アイテムを取り出した鷹夜。だが、ましろがそれを制した。
ましろ「ううん、大丈夫だよ鷹夜君。これは私の問題…トーヤ君だよね?分かった。私は貴方に向き合う…場所を移そう。ここじゃ、他のみんなが来てしまう…そうなれば、貴方の本懐は遂げられないよ。」
いつにもなく、真剣なましろに鷹夜は何も言えなかった。
スラッシュもその提案を飲み、闇の大樹があった場所を指差す。
スラッシュ「では、あの場所に来い。その潔さに免じて、その要求は飲む。すぐに来い、待っている。」
風に乗って、指定の場所へと先に向かったスラッシュ。
ましろもまた、ミラージュペンを取り出した。
鷹夜「…ましろ、お前…。」
ましろ「ごめん、鷹夜君。けど、ちゃんと向き合わないといけないの。彼は私の罪を咎めに来た…それは当然の事。伝わるか分からないけど…私の覚悟を彼に聞いてもらいたいんだ。もしダメだったらその時は…断罪を受けるべきだと思う。見届けて欲しいな、鷹夜君。わがまま、聞いてくれるかな…?。」
鷹夜「…わかった。もしその時は…俺が骨を拾ってやる。」
鷹夜の答えに、笑みを向けたましろ。
そして、2人は指定の場所へと向かった。
〜闇の大樹・跡地〜
スラッシュ「…藍葉鷹夜…何故、彼を連れてきた?。」
ましろ「見届け人だよ、安心して。彼は手を出さない…私と貴方、対話はそれで十分…だよね?。」
スラッシュ「…対話だと?。最早、話すことなんてありはしない…生きたければ俺の屍を踏んでいけ!。虹ヶ丘ましろぉおおおッ!。」
飛び出したスラッシュ。ましろもキュアプリズムに変身してその刃を受け止めた。
プリズム「お話、聞いて欲しいなッ!?。」
スラッシュ「お前と話す舌など持たんッ!。さぁ、死んでくれッ!奪われた者たちの無念を感じてッ!。」
縦横無尽に振るう刃。プリズムは紙一重で避けていくが少しずつ、体が削られていく。
純白の衣装の所々が赤く染まる。
避けるばかりで、反撃してこないプリズムにスラッシュは苛立ちを覚える。
スラッシュ「何故抵抗しないッ!?。無慈悲に奪っていったその汚れた手は俺の攻撃なんてものともしないだろうッ!?。ふざけているのかッ!?。」
プリズム「私は戦わない。私は…貴方と対話がしたいの。」
スラッシュ「だから…ッ…!!。」
振り下ろされた白刃。プリズムはそれを片手で受け止める。
しかし、素手で刃を握り締めているのだ…当然、ボトボトと血が滴り落ちる。
引き抜こうと、スラッシュは剣を引っ張るが全く動かない。
プリズム「私がやってきた事は決して許されない。だから、貴方が言う通り、私は死んで詫びるべきだと思う。」
鷹夜「ましろ…お前…ッ!。」
プリズム「でも…それだけじゃ、きっと足りないよね。だって、私が死んだところでその人たちの無念は決して晴れはしないはずだから。」
スラッシュ「…命乞いのつもりか?。正当な発言を催しているが最早…!。」
プリズム「ううん、そうじゃない。だから私は…この罪を背負いながら生きていくしかないの。そしてそれは行動で示さないといけない…その人たちだけじゃなくて、私は…世界にも謝らないといけないから。」
スラッシュ「世界にも…謝るだと…?。綺麗事をぬかすなッ!!。お前は笑って焼いたんだぞッ!?。その者達の明日を嘲り笑いながら、焼き払ったんだぞッ!。そんな無情が許されていいはずがないッ!。お前に生きる資格なんてないんだッ!。俺は…あの無念を引き受けたッ!だから殺すッ!それしかないからッ!!。」
その時、プリズムは自分の喉元に切先を突きつける。
少し刃が入ったのか、喉元から血が流れ落ちる。
プリズム「…なら、そのまま私の首を串刺しにすればいい。それで、貴方の本懐が遂げられるなら私は喜んでこの命を差し出すよ。貴方とお話がしたかったの…貴方のその思いをちゃんと聞きたかった。だけど、よく分かったよ。そのためだけに貴方は生きてきたんだよね?。なら…ここで私を殺せば貴方は本懐を遂げられる。引き受けた無念もきっと、晴れると思う。後は地獄で罪を償うよ、それで…いいかな…?。」
刃から手を離し、両腕を広げたプリズム。
後は、スラッシュが一歩踏み出せばその首を貫ける。
だが、何故か…踏み出せなかった。
その時、スラッシュの中で迷いが生じる。
殺す事で…本当に無念を晴らせるのだろうか?。
世界に対して謝ると言ったプリズム…自分は、無念を引き受けたに過ぎない。
背負うその荷物はとても大きすぎる…きっと、生きている間では下ろせない程だろう。
でもそれを、プリズムは簡単に言った。
言葉だけなら誰でも言える…だが、その瞳には…嘘は感じ取れなかった。
本気だ…本気で、彼女は世界に対して罪を償うつもりだ。
それはきっと、自分が引き受けた無念も入っているのだろう。
そんな思いが交差し、スラッシュは踏み出せなかった。
プリズム「……私に、チャンスをください。もし…ダメだったらその時は…貴方自身の手で私を殺して。私の罪滅ぼしを見極めて欲しいの。」
…本来なら、冗談じゃないと言いたいところだ。
しかし、何故かスラッシュはその発言に納得の意を示してしまう。
きっと、これが…断罪の意味なのかもしれない。
そう思って。
そしてスラッシュは、静かに刃を収める。
スラッシュ「……分かった。お前の罪滅ぼしを見届けよう、その上で判断する。断罪はそれからでも遅くはないだろう。」
プリズム「…ありがとう、お話を聞いてくれて。」
スラッシュ「…忘れるな、お前の背負うその業は決して軽いものじゃない。生きる方が辛いほどにまで、大きいものだ。それに潰されたその時は…俺がこの手で断罪する。それまでは、預けておこう。キュアプリズム…。」
踵を返し、歩いていくスラッシュ。
それを見届けて、プリズムは変身を解いた。
ましろ「……約束は必ず守るよ…。」
鷹夜「…ましろ、お前の覚悟は伝わった。なら…後は一緒に進むだけだな。」
ましろ「うん…ごめんね、わがままばっかりで。私、罪に押しつぶされたりはしないから…ちゃんと向き合って、一つずつ精算していく。例え、世界がずっと許さないとしても。」
夕陽に照らされたましろの横顔は今まで以上に頼り甲斐があった。
この事件を経て、彼女もまた変わったのだ。
…こうして、少年少女達は少しずつ大人になっていく。
世界という、誰にも背負えないような大きなものを背負う事で…強くなっていくのだ。
………………end。
ましろの覚悟を汲んだトーヤは、自分の本懐についても少し考えることにした。
背負うものはとても大きい…しかし、それは仲間達で分担すればいい話だ。
ましろを思う仲間達は、彼女の罪を一緒に背負っていこうと、そう思っていた。
時は数日後…樹を失い、精神的にも追い詰められた風は一通の手紙を置いてその場から去ってしまっていた。
その手紙の内容とは…「勇者部の廃部」を示すものだった…。
次回
第94話 消えた風、勇者部の崩壊。