〜ひろプリ×勇者であるシリーズ〜世界の壁を超えた出会い 作:やままん
トーヤに自分の決意を伝えたましろ。
世界に対しての贖罪…それを受け入れたトーヤは彼女の行く末を見守ることにした。
それから数日後…特に目立った様子のないソラシド市には人が戻って来ていた。
そんな中、樹の暴走を止められなかった風は悩み続けていた…。
……止められなかった。
きっと、悩みに悩んだ結果だったのだろう…妹はどんな手を使ってでも大切な人を取り戻す答えを出してしまった。
その結果がこれだ。
姉として、間違った力に手を染めてしまった妹を止める事ができなかった。
それどころか、その悩みにすら気付いてあげられなかった。
……なんとも、情けないんだろう。
私は、そう思う。
…………………………。
〜鷹夜の家〜
園子「フーミン先輩、今夜はましろんのお家でご飯…あれ…?。」
ソファーにいるはずの風が居ないことに、園子は小首をかしげる。
部屋は真っ暗で、冬場特有の陽が落ちる速さからまだ夕刻なのにとても静かだった。
…息抜きで外に出たのかな?…そう思った園子は電気を点けた。
鷹夜「なんだ、手紙?。」
机の上には一通の置き手紙が置かれていた。
洸は徐ろに、それを手に取る。
洸「…行き先でも書いてんのか?。」
ゆっくりと手紙を開く洸。
3人はその内容を見る。
―――――――――――
みんなへ。
突然の手紙で驚いたわよね、ごめん。
ましろが戻って来た話は聞いたよ、ここまで頑張って来たんだもの。お疲れ様、ソラ達。
気持ちに整理が付けば、ましろと会いたかったけどごめん…やっぱりまだ、無理だ。
樹の事を考えると、どうしても一緒に喜べなかった…たった1人の家族なんだもの、私の目の前で心の闇に手を出して消えてしまった。
ましろの時とは違って、自分の意思でそれを選択したんだ…当然、姉である私が止めなければいけなかった。
でも、止められなかった。樹の抱えていた苦しみを理解出来なかった…あの笑顔の奥にあった思いを汲み取れなかった。
私は…姉として失格だ。
……私はみんなの元から去ろうと思う。
ましろを取り戻した今、これからの戦いは厳しくなる…こんな状態の私が居たままじゃ、きっと迷惑を掛けてしまう。
だから、ここに宣言する。
ー讃州中学勇者部は本日を持って、「廃部」とするー。
ソラ、ましろ、ツバサ、あげはさん、エルちゃん…そして、鷹夜。
……烈火と友奈、夏凛と乃木を頼んだわよ?。
犬吠埼 風。
―――――――――――
…その手紙を読み切った瞬間、園子は歯を食い縛る。
納得がいかない様子の洸は勢い良く部屋を飛び出した…恐らく、風を探しに出たんだろう。
鷹夜は落ちた手紙を見る。
…所々に、乾いた水気があった…多分、泣きながら書いていたんだろう。
風が取った判断は、これからの戦いの事を考えていたのかもしれない。
それでも、鷹夜は少し怒りすら覚えた。
…そんなの、勝手じゃねェか。樹の問題を全部、背負い込みやがって。
そう、頭の中で叫び続ける。
園子「…廃部だなんて…なんで、そんな重要な事を…!。」
鷹夜「園子…。」
園子「フーミン先輩、まだソラシド市にいるよねッ!?。」
鷹夜「土地勘が無ェなら、まだどっかにいるはずだ!。洸の奴が先に飛び出していった、俺達も探すぞッ!!。」
鷹夜と園子も飛び出し、風の捜索に向かう。
道中、他のメンバーにも風の失踪を伝えた。
当然、困惑と共に怒りの声が聞こえる。夏凛だ。
夕暮れもあり、視界が悪くなる。
ライフラインはまだ完全に復旧はしていない、街灯も所々しか機能していなかった。
商店街…駅…空港…。
思い当たる場所は全て捜索した、だがそれでも見つからない。
集合場所に指定していた、「ソラシドモール」の前に集まる一同。
友奈「風先輩、どこに行ったのかな!?。」
今にも泣き出しそうな声で友奈は言う。
声が震えている…焦りが平静を取り乱す。
夏凛「あの馬鹿は何を考えてんのよッ!。廃部だなんてそんなの、私が許さないわよッ!!。」
園子「にぼっしー…。」
千景「きっと、後悔していたのでしょう。」
烈火「姉ちゃん…。」
千景「家族の声に耳を傾けられなかったどころか、手を出してはいけないものに手を染めてしまった…一番、寄り添わなければいけなかった自分が何も出来なかった事を後悔しているのでしょう。こうなれば、危険よ。彼女は、自分1人で樹さんを探す気だわ。」
ソラ「だとしたら、何処に!?。」
ましろ「…わからない。これだけ、探しても見つからないならもうソラシド市には居ないかも…。」
芽吹「そんなの、八方塞がりじゃないッ!。」
どうしたら良いのかが全く見当もつかない…一同はとうとう、黙り込んでしまった。
鷹夜「…東郷と蒼葉の失踪から様子がおかしくなった樹…だとしたら、樹が向かった先は何処になる…?。」
ツバサ「え…それは……。」
鷹夜「別の世界に行った可能性が高い。それに、風先輩は次元転移出来る術が無い…だとすれば、それが可能となる奴の元に向かったのかもしれねェ。」
そう考えると、可能性は一つしかない…それは…。
あげは「…リオンさんとトーヤの元…?。」
夏凛「だったら、そこに行くわよ!。あの2人はスカイランド人なのよね!?。」
ソラ「………まさか風さん…スカイランドに向かうつもりですかッ!?。」
………………………。
リオン「本気か?。」
リオンとトーヤの拠点にやって来た風。
やつれたその表情で風は、2人のあるお願いをした。
風「…ええ、本気よ。それに…樹がスカイランドに向かっという情報は本当なのよね?。」
トーヤ「ああ、本当だ。青の護衛隊のメンバーが勇者の少女を見たと言っていた。お前が懸念していた他人への危害は加えていない。ただ…闇の力に手を染めているんだ。周辺の環境はお構いなしといった所だ。」
風「…良かった。だったら…私をスカイランドに連れて行って。」
リオン「…お前の意見は尊重するが…いいのか、仲間たちの事は。」
リオンのその申し出に、風は目を伏せる。
思う所があるのだろう、その目は未練があるようにも思える。
それでも、風の答えは決まっていた。
風「…いいの。勇者部は解散…樹はみんなに迷惑を掛けたし私は家族すら救えないどうしようもない人間よ。そんな私がこれから先のあの子らを引っ張っていける自信なんて…ないわ。」
トーヤ「…逃げるのか?。」
リオン「トーヤ。」
トーヤ「言わせてください、師匠。犬吠埼風、お前は…戦士としての責務から逃げるのか?。」
風「戦士って何?。私たちは戦士である前に一人の人間なのよ、世界を守るなんてそんなの…私たちが背負う事なの?。」
トーヤ「………。」
風「たった一人の家族すら守れないのに何が責務よ!。押し付けないでよ…私はただ、みんなと一緒に平和な世界で暮らしたいだけ!。家族と…樹と一緒に過ごしたいだけなの!!。そんなのは、責任を感じる人間がやればいい!!。」
声を絞り出して、今にも泣きそうな声で叫ぶ。
樹を止められなかったこと…姉としての責務を果たせなかったことが彼女を追い詰めていたのだ。
勇者である前に、一人の人間…そう主張する風の言葉をトーヤは受け止めていた。
そして、考える。
追い詰められた戦士が抱く、その強い思いを聞いて「戦士とは何たるか」を考え込む。
ましろの一件から、風のその言葉…トーヤは自分の本懐について疑問を抱いていた。
トーヤ「…なら、お前の進む道を見させてくれ。戦士としてではなく、一人の人間として戦おうとするお前のその意志…仲間を切り捨ててまで成し遂げたい本懐を俺に見せてくれ。師匠。」
リオン「…やむを得ないか…わかった。」
リオンは「ミラーパッド」にも似た手鏡を取り出す。
それは、簡易的だがスカイランドへの渡航手段でもある「ゲート生成機」。
何もないその場にかざすと、ゲートが現れる。
その時、友奈達がそこにやってきた。
友奈「どこに行くんですか、風先輩ッ!!。」
風「…みんな。」
夏凛「あんたね、勝手なことをしてんじゃないわよッ!。」
風「夏凛…。」
夏凛「「悩んだら相談」はどこに行ったのよ!。あんたが友奈に言ったこと、まんま返してやるわッ!。」
風「…もう、廃部したのよ。六箇条なんて何の意味もないわ。」
友奈「…どうして…そんなことを言うんですか…!。」
握り拳を作り、目尻に涙を溜めて身体を震わせる友奈。
そんな友奈を、風は見ようとしない。
見ればきっと…気持ちが揺らいでしまうから…。
風「東郷と蒼葉は私が必ず見つけて見せる。だから、あんた達は世界の為に戦いなさい。」
踵を返して、ゲートへと向かう風。
その時、一発の斬撃が風の脇を通っていく。
足を止める風は、振り返らない。なぜなら、その攻撃の正体を把握しているからだ。
夏凛「…待ちなさいよ、話はまだ終わってないわ…!。」
変身した夏凛は、剣をの切っ先を向ける。
その様子を見て、止めに入ろうとする園子。
園子「やめてよこんな事!!。せっかく…せっかくましろんが帰ってきたのにッ!!。」
ましろ「…園子ちゃん…。」
風「…じゃあ、去った樹はどうするのよ…?。」
あげは「それは…みんなで迎えに行けばいいじゃない!!。あたし達もスカイランドへ…!。」
風「来ないでッ!!。」
ツバサ「何故、僕たちから距離を取ろうとするんですか風さん!!。僕たちは仲間じゃないですか!!。」
風「その仲間に迷惑を掛けて、頼れって言うの!?。私は…たった一人の妹ですら救えないバカな姉なのよッ!!。」
千景「…犬吠埼さん。私は、貴女からいろいろと教わったわ。バカな姉という点では同じ…私も、自分の独りよがりでたくさんの迷惑を掛けてしまったから…。」
風「…千景…あんた…。」
千景「…それでも、行くというのなら私は止めないわ。ただ…勇者部の廃部というのは早計じゃないかしら?。」
風「…樹のことが一番だけど…私は、東郷と蒼葉の事も心配なのよ…どこに消えたかも分からない…もしかしたら、生きていないかもしれない…私は…部員ですら守れていない…ましろが帰ってきて、ようやく前に進みだせるはずだったのに…私は、勇者部の部長として何も出来ていない!!。だから、この廃部という判断は正しいのよッ!。私がいなくなればきっと…友奈達は世界の為に戦えるッ!!。」
夏凛「だから…勝手に決めるなって言ってんのよッ!!。」
怒りで飛び出した夏凛。
それを止めたのは…変身したスラッシュだった。
互いの剣がぶつかり合って火花を散らす中、2人は睨み合う。
夏凛「…邪魔するな・・!!。」
スラッシュ「こいつの覚悟を見届ける…お前たちこそ、こいつの邪魔をするな。」
夏凛「…ッ…うああああああッ!!。」
叫びながら、剣を振り向く夏凛。
その剣圧は凄まじく、スラッシュを吹き飛ばす。
スラッシュ「ッ…!!。」
夏凛「…なんで…勝手に決めるのよ…相談も無しに…バカ…。」
その場に崩れ落ち、人目をはばからずに泣き出す夏凛。
そんな一同を見た風は、視線を向けずにゲートに向かって歩いていく。
ソラ「風さんッ!!。」
風「…さようなら、みんな。私は、樹を探しに行く…行きましょう。」
スラッシュと共に、ゲートの中に消えていく風。
ソラは追いかけようと、ミラーパッドを取り出すも反応を示さない。
リオン「…次元が歪んでいる影響でその手段は使えない。私たちの持つこの手鏡なら可能だが…力を使い果たした今、しばらくはかかるだろう。」
ソラ「…何故、止めてくれなかったんですか…!。」
リオン「…止めて何になる?。私は彼女の意志を尊重したまで…それは、君たちの役目だろう。」
リオンの言葉に、一同は何も答えられない。
今日、この日…勇者部は…。
「崩壊」した。
…………………end。
廃部宣言と共に、スカイランドへと旅立った風。
次元の歪みが強く、座標の地点が定まらないことから一同はスカイランドへと向かうことが出来ない。
離れ離れとなってしまった勇者部…司令塔が居ない今、彼女達の動きはバラバラとなってしまう。
廃部を認められない3人…その時、園子が決意する。
「今はバラバラだけど、帰ってくる場所はいつだって「勇者部」だ。だから、私が臨時の部長となる。」
散った花はまた咲き誇る…そう信じて、勇者部はプリキュアと共に突き進む。
そんな中、勇者部の瓦解を知った「劇団」の蓮が現れて、「狩り」と称して襲い掛かる…。
次回
第95話 絆を信じて、咲き誇る園子。