〜ひろプリ×勇者であるシリーズ〜世界の壁を超えた出会い 作:やままん
自責の念から、一同の元を去った風。
勇者部の廃部…そう、決断した風の思いが覆ることは無かった。
哀しみよりも、動揺する勇者部…それでも、彼女たちは強かった。
「また、みんなで過ごせるように…。」
各々はそう思うのであった…。
…風がスカイランドへと向かってから数時間後。
虹ヶ丘邸にて、一同は集まっていた。
もちろん、哀しみもある…だが、それ以上に不安が広がっていた。
勇者部の部長である風は、いつも部員を取りまとめていた。
各々の力は強い、しかし物量戦となるバーテックス相手では個々の戦闘能力の高さよりも連携が重要視となる。
ましろが欠けていたプリキュア達のように、烈火と蒼葉を除いた自分たちも6人というメンバーが居てからこそその真価を発揮できるチームだ。
それが、3つも欠けてしまった…今は、3人しかいない。
チームの切り込み隊長である友奈はもちろん、最強戦力の一角を担う存在だ。
しかし、統率力で言えば彼女は無いに等しい…その行動力故に全員が最後に託すタイプの人間だ。
夏凛についてもそうだ、圧倒的な殲滅力で場を収束させる戦力。
ただ、それでもやはり物量戦においてはサポート無しでは生き残れない。
生存するための戦い…勇者部の戦い方はまさにそれだった。
それを担っていた風の存在がやはり大きい…後方支援を担当する東郷、窮地において敵を拘束させる力を持つ樹…その3人が不在の中、戦闘における不安はとても大きいだろう。
それに加え、ずっと一緒にやってきた仲間たちの不在…それは、日常にもおける彼女たちのメンタルにも左右する。
勇者達の今後はどうなるのか…。
ずっと、その事が気になってくる。
長らくの沈黙の間、先に口を開いたのは…園子だった。
園子「…悲しんだり、泣いたりしてる場合じゃないよね…ましろんが帰って来たんだ…嬉しいこともある。だから…笑ってなきゃね…。」
無理に笑う園子。
洸は園子を気遣うも、彼女はそれでも笑おうとする。
友奈「そのちゃん…。」
園子「みんな、聞いて?。フーミン先輩は行っちゃったけど…本当に諦めきれる?。」
夏凛「…そんなの…決まってるわよ…誰が諦められるものですか…。」
園子「だよね?。わっしーも、アオもいっつんも…帰ってくる場所は決まってる。「勇者部」がなかったらきっと帰って来れないと思う。廃部といっても、正式に決まったことじゃないからそれほど重くはないけど…私たちからしたらそれは絶交と同じこと。そんなの、嫌だよね?。」
友奈「嫌だよッ!。私…またみんなと一緒に居たいよッ!!。」
園子「うん、そうだね〜?。気持ちは一緒、だから…勇者部は存続させないといけない。」
夏凛「理屈は分かるけど…風が居ないんじゃ、私達だけでまとまるの?。正直、自信がないわ。癪に触るけど、あいつが居ないと心はバラバラになると思う。今だってそうじゃない、目的を見失ってる。友奈も私も…そして、あんたも。」
園子「…間違いないよ。私達の心はバラバラになってる…でもここで、気持ちに左右されて勝手な行動を取っちゃったらそれこそバラバラになると思う。にぼっしー、隙あらば追いかけるつもりだったでしょ?。」
夏凛「うっ…まぁ…少しは考えてたけど……。」
園子「だからね?勇者部は必要なんだ。みんなの帰る場所があるってことが重要なんよ。私、決めた。フーミン先輩が作った勇者部を存続させるために…臨時部長として就任しますッ!。」
その場の空気に似合わないテンションで挙手する園子。
彼女の考えはいつも飛んでいる…しかし、それが核心を突いている事は多々ある事だ。
本当は、泣きたいほど悲しいはずなのに…そんな園子を見て友奈と夏凛も気持ちを一つにした。
友奈「…わかった!。そのちゃんにお任せするよ。守ろう、みんなの帰るこの「勇者部」を。」
夏凛「あんたが臨時部長なんて頼りなさそうだけど…ま、いいわ。しっかりとサポートするから安心しなさい!。」
園子「アハハ、ちょっと酷い言い草が聞こえて来たような気がするけど〜?。」
円陣を組む3人。
友奈は烈火を手招きする。
友奈「烈火君も早くッ!!。」
烈火「ん?ああ…おう。」
改めて、円陣を組んだ4人。
千景はその様子を見届けた。
ソラ「……強いですね、勇者の人たちは。」
ましろ「うん、どんな状況に置かれても頑張っていける力がある。友奈ちゃん達の強みは…そこにあるよ。」
………………………。
蓮「ハハ、勇者部が瓦解したようだなぁ?。」
「劇場」内にあるモニターには、ソラシド市を去る風の様子が映し出されていた。
蓮はその様子を見て高らかに笑い、刀に手を伸ばす。
蓮「…狩るなら今のうちかなぁ…アデルの旦那も疎ましく思ってる事だしここは一つ、点数でも稼ぎますかな。」
ナイアル「油断は禁物だぞ、勇者は追い詰められれば追い詰められるほど強くなる。」
蓮「ご忠告どうも。まぁ…首の一つでも持って帰れたら持って帰るよ。さて…久々の戦闘だ、楽しみだなぁ?。」
狂気に満ちた笑みを浮かべ、蓮は去る。
その様子を、ナイアルは静かに見る。
ナイアル(…戦闘狂が長く生きれた事例がない。奴は…早死にするかもな。)
………………………。
園子「…ふぅ。」
夜風に当たりながら、園子は見え隠れする月を見る。
時間を取り戻した世界にその光景はとても神秘的に思えて。
当たり前の事がこんなにもありがたいとは誰も思わなかっただろう…だが、ごく自然な事ですら無くしていた世界にとってはそれが何よりも安心感を与えていた。
そんな月を見ながら、自分が決意した事を胸に秘める園子。
その傍には洸が居て。
洸「ったく…勢いで言いやがって。無理すんなよお前。」
園子「ん〜?。割と本気なんだけどな…まぁでも、洸の目の前ならいいかな?。」
そう言って、洸に体を預ける園子。
突然のことに、洸は顔が赤くなる。
洸「おまっ!?いきなりなんだッ!?。」
園子「んふ〜♪そんなに照れなくてもいいのに〜?。そういう関係じゃない、私達?。」
からかうように言う園子。
その後、少しだけ儚い顔をする。
園子「…誰かが笑ってなきゃ、みんなが沈んじゃう。こういう時こそ、私の出番かなって。」
洸「お前…。」
園子「私、変な子だからさ〜?そういう雰囲気をぶち壊すのが適任なんよ?。結果オーライ、ゆーゆとにぼっしー…それにれっかんだって気持ちに整理をつけてくれたし、あとは私が有言実行するだけ。フーミン先輩が帰ってくるまでの間でいいんだ、それほど辛くはないかな?。」
「だったら、すぐに退任させてやるさ。そうすりゃ、勇者部は空中分解するだろう?。」
男の声が響いたと同時に、周辺の「色」が無くなる。
隣にいた洸も、動きを止めていた。
園子「え…これって何…?。」
蓮「簡易的な時間の停止さ。安心しろよ、あんたらが取り戻した時間には影響しないよ。」
刀を抜き、擬似勇者外装を身に纏う蓮。
その刀身はどれほどの者を血に沈めてきたのだろう…拭いきれない鮮血が染み付いていた。
園子「…せっかく、愛しの人と楽しい時間を過ごしてたんだけどなぁ…台無しだよ、全く。」
蓮「そりゃ、すまない事をしたな。まぁ、安心しなよ。その時は永遠に訪れない…さて、この刀の色を変えるのはお前の血だな、乃木園子。」
園子「させると思う?。」
声色が変わった園子は勇者装束を身に纏って槍を突きつける。
蓮はその速い軌道を読みきれなかったのか、脇腹を少し削られた。
蓮「へぇ、やるじゃん。さすが、現代勇者の中では最強と言われた勇者だ。」
園子「そんなことは全然ないよ?他のみんなに比べれば、大したことは出来ないしね!。」
地面を蹴って、舞うように槍を振るう園子。
対する蓮もまた、その攻撃を刀身で受け止めていく。
蓮「勇者部は廃部になったんだろ?。何をそんなに固執するのかね?。」
園子「そりゃするよ、だって…勇者部は私達の帰る場所だから!。」
槍のリーチを利用した攻撃。
指を鳴らし、浮遊する矛先が一斉に襲い掛かる。
蓮は傷を受けながらも、まるで楽しむかのようにいなしていく。
その様子に、不気味さすら覚えるも園子はその攻撃の手を緩めない。
蓮「戦場を途中放棄するなんて、雑魚のやることだ。部長も大したことないな、物事の本質ってものを履き違えている!。わかってるならなんで拘る?。さっさと捨てちまえよ、仲良しごっこの部活動なんてさッ!。」
剣戟の中で、隙が生まれた園子を蹴り飛ばす蓮。
仰け反った園子は次に放たれた斬撃に身体を切り裂かれた。
園子「うぅ……ッ!?。」
蓮「自分の身勝手で廃部にしたんだろ?。なら、帰る気なんてサラサラ無い…いつまでも固執してないで見捨てればいい。そういう関係だったと諦めればいい話だ、くだらない。」
園子「…それ以上言えば、流石の私でも怒っちゃうかな…。」
身震いするほどの気迫。
蓮は無意識に震える身体に思わずニヤける。
園子「身勝手なんかじゃない、世界よりも家族を優先するのは当たり前の事だよ!フーミン先輩がいっつんを想う気持ちは本物…取り戻す為に旅に出たんなら、それはいいと思う…だけど、2人がちゃんと帰って来れるようにこの場を守るのが私達の役目なんよねッ!。」
勢い良く飛び出し、浮遊する矛先と共に連撃を入れる園子の瞳は静かに怒りを秘めていた。
園子「私は勇者部に入部して間もないけど…その絆の深さは本物だと思うッ!だから私は守りたいんだ、その大きな絆を築いて来たこの勇者部を…みんなが帰ってくるこの勇者部を…ッ!。」
凄まじい連撃の嵐に、蓮は思わず後退する。
しかし、そこは戦闘狂と言ったところか…その合間を縫うようにカウンターを放つ。
右肩に刃が食い込む園子はその痛みに思わず動きを止めてしまう。
そして……。
蓮「言っている事は偉大だけどな、力が無ければ同じことさ。守りたい気持ちがあったところで無力なら何の意味もない…逆に、守りたいものが無い方が自由な力を発揮できる。このように…!。」
逆袈裟で園子を切り裂く蓮。
精霊バリアありきでもその傷は深かった。
鮮血が舞う中、園子はそのまま後ろに倒れ込んでしまう。
灼熱の痛みが走り、溢れ出す血に身体が徐々に動かなくなる。
刃に付いた血を見て、笑みを浮かべる蓮はゆっくりと園子に歩み寄る。
刻一刻と迫る命の危機…身体に力が入らない。
そしてとうとう、蓮が見下ろすように自分の近くにやって来て。
蓮「乃木園子、最強の名に恥じぬ強さだったよ。一歩間違えれば俺が死んでいたな…だが、これが現実だ。俺が立ち、お前が寝ている。命を奪う権限は俺にある…さて、そろそろ死のうか?。そうすりゃ、勇者部は自然消滅する…お前達の大事な部長が望んだ結果だ。」
喉元に突き付けられた刃が園子に迫る。
だがその時、蓮の刀が「何か」に弾かれた。
園子はその場に倒れている…洸は止まっていてその正体が何か掴めない。困惑が生じる…何が起きたのだと蓮は焦りを覚えた。
だが、園子にはそれが何なのかすぐにわかった。
園子「…ご先祖…様…?。」
一瞬。ほんの一瞬だけだが殆ど見えないに等しいくらいの彼女…乃木若葉がそこにいて何も言わずに笑みを浮かべては消えていった。
その時、園子の「心」に華が咲いた…。
園子「…ありがとう。私の意思に反応して助けてくれたんだね…そしてこの「意思の種」を届けてくれた…ちゃんと咲いたよ?私の…「意思の華」…ッ!!。」
端末に表示された「満開システム」を起動。
園子は「満開状態」となり、受けた傷は全て治っていた。
蓮「なっ…まさか…おいおい、おかしいだろうがッ!。」
園子(満開)「みんなの帰る場所を…勇者部を私は守り切るッ!もう、何も失わない為にッ!!。」
過去を思い返す園子。
粉骨砕身の思いで1人で戦い、死んだ銀の事…散華により、大切な記憶を失った須美の事。
そして…風の事。
その思いを全て乗せた一撃が、蓮に襲い掛かる。
四方八方に広がる巨大な槍が、オールレンジ攻撃のように展開。
蓮はその何本かは捌いていくがその物量に押され、直撃はしなかったものの地面に突き刺さった衝撃で吹き飛ばされる。
地面を激しく転がり、蓮はそのダメージで吐血した。
立ち込める砂煙…先ほどまでの状況は逆転していた。
蓮「クソ…なぜだ…こんな甘ちゃん達に何故…!。」
園子(満開)「貴方は…自分の独りよがりでいるに過ぎないの。そこが違い…私たちは思いを背負って戦ってる。そして、生き残るために…でも、貴方はただ自分の快楽を満たす為だけに戦ってるんだよね。そんな相手に私達は負けないよ?。貴方がいくら強くても…それを上回って見せる。」
蓮「…説教はごめんだね、勝者の余裕かい…?。まぁいいさ…俺は戦って成長する…今度は必ず殺してみせるさ…この世界にいる限り、俺達(「劇団」)との戦いは避けられない。せいぜい、足掻くといいさ…!。」
蓮はそのまま撤退、止まった時間が動き出す。
洸「園子ッ!その姿は…!?。」
園子(満開)「えへへ〜、目覚めちゃった♪。」
自分の手のひらを見る園子。
園子(満開)(必ず、またみんなで勇者部になれるよ。だからそれまでは必ず守ってみせるから…わっしー、アオ、フーミン先輩、いっつん…待ってるからね…?。)
……………………end。
「意思の華」を咲かせ、「満開」を発動させた園子。
蓮を退き、そして勇者部の存続の為にその力を使った。
彼女の意思は残されたメンバーにも影響し、勇者達は再び立ち上がる。
そんな中、烈火は失った片方の視力と聴力をカバーする為に特訓を繰り広げる。
勇者部の為と、これから迫り来る強者との戦いに備えて…。
次回
第96話 閃光の烈火。