セリフ少ないです
私の名前は竜胆碧。中学2年生の13歳で、この男女比1:49という世の中で幸運にも兄がいる。
男性が家族にいるということは周囲に自慢できるような環境であり、ほとんどの人から羨望の眼差しを向けられるのだ。
しかし男性は基本的に暴言や暴力は当たり前で、家族としては辛い思いをすることもある。だがそれを周囲に言ったところで、男性が家族にいるのだから幸運税みたいなものだろう、もしくはそれを受け止めてこそ女らしいという返事がおおよそ返ってくる。
私の兄、竜胆黎夏も一般的な男性の例に漏れず、家族に暴言を投げかけてくるのは当たり前で、名前すらまともに呼んでくれた記憶はなかった。
ある日、兄が強漢未遂に遭い、頭を強く打って救急搬送されたという知らせが母親からもたらされた。
兄は暴言を吐いてくる人物であり、苦手意識はあったがそれでも大切な家族である。心配しないわけがない。家族で急いで病院に駆け込んだが、そこにいたのは意識不明となってベッドで眠り続ける兄の姿だった。先生曰く、もう目を覚さない可能性すらあるらしい。
その話を聞いたとき、私の胸に飛来したのは悲しみでも怒りでも絶望でもなく……「安堵」だった。
ほんの一瞬。しかし確かに私はホッとしてしまったのだ。
これで家で気を張らず済む、暴言を吐かれずに済む、そう考えてしまったのだ。
それを自覚したとき、私は自分を嫌悪した。家族がもう目を覚さないかもしれないのに、母親が泣いているのにそれを慰めもせず己のことしか考えていない自分を。
数日後、母親から兄が目を覚ましたという連絡が入った。ただ、頭を強く打った影響で記憶を失ってしまったのだそうだ。
意外にも早く目を覚ましたことに家族として喜びつつも、あの時安堵した自分を思い出し、胸がチクリと痛む。別に誰かに話したわけではないし、本人に知られているわけでもないが、それでも罪悪感がしこりのように残っているのだ。
夕方、兄は自宅に帰ってきた。しかしそこにいたのは、以前の兄とはまるで違っていたのだ。
私たちが自己紹介をすると兄は微笑みながら、私たちの目をしっかり見ながら挨拶を交わしてくれたのだ。
しかもお母様のことを名前で呼んでいる…記憶喪失とはここまで人を変えるのかと驚いたものだ。
不謹慎かもしれないが、兄が記憶喪失になってから我が家は非常に明るくなった。そして同時に常識も忘れ去ってしまったのか、ハプニングも起きるようになった。
あの兄が上半身裸で私たちの目の前に現れたのだ。思春期真っ盛りの私の目には毒でしかなく、興奮のあまり気を失ってしまった。ちょっと勿体無いと思ってしまったのは内緒だ。
以前の兄は、いやお兄様は苦手だったが、今のお兄様ははっきり言って大好きだ。まだたった1日しか経っていないが、私の中でお兄様の存在がどんどん大きくなっていっていることを自覚するほど。そのせいか、お兄様と同じ学校に通えないという理由で拗ねてしまった。
翌日、いつもより早く目が覚めてリビングに向かうと、なんとお兄様が朝食を作っていたのだ。
「おはよう碧。今朝ごはん作ったんだけど碧も食べる?簡単なものだけどね」
「お兄様の朝ごはん⁉︎食べたい!」
柄にもなく大声を出してがっついてしまい、引かれないか内心ビクビクしていた。もちろん引かれることはなかったが、言い訳をさせてほしい。大好きな人から「おはよう」と声をかけられ、さらには朝食まで作ってくれているのだ。これで舞い上がらない女は女を捨てているとしか思えない。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
夕食を食べた後、お兄様はソファでくつろぎながらテレビを見ていたので、私は隣に座りに行った。すると、何を思ったのかお兄様は自分の膝に私を座らそうとしてきたのだ。こんなことをしてくれる男性の家族なんておそらくどこを探してもいないだろう。こんな千載一遇の機会を逃すわけにはいかない、急いで返事を!
「す、座る…!」
すこし吃ってしまったが、結果として膝に座れたのだから問題はない。なんか食卓の方からお姉様とお母様の鋭い視線を感じるが気のせいだろう。きっとそうだ。
正直ここは天国だった。ただ膝に座るだけではなく、後ろからなんとハグまでしてくれたのだ。おそらくこのことを後日友人に伝えても冗談だと笑って流されるだろう、それほど現実味がないことを私は享受しているのだ。
ただ、しばらく座っているとどうしても疲れてきたので、少し体勢を変えようと下半身を動かすと、お尻に違和感を感じた。
(…?…これは…もしかして)
固いとまではいかないが、さっきまではなかったはずのよくわからない物体がそこにあるのだ。一瞬何かはわからなかったが、すぐに思い当たるものがあった。男性は性的興奮を感じると、大きくなるという話を授業で聞いたことがある。
確信はないが、もしかしたら今のお兄様ならば…という予感があった。
その後、お兄様は逃げるようにお風呂に向かい、お姉様やお母様からのお願いも断っていた。
(確かめたい…!あの時私のお尻に当たっていたものが本当にそうなのか…!)
中学生特有の性に対する興味を私は抑えることができなかった。
気がつけば私は夜中に兄の部屋に入り、スヤスヤと寝息を立て、綺麗な寝顔を見せる兄を見下ろしていた。
やべーよ…やべーよ…このままだとR18に突入してしまう…!
どうにかフワッと回避しなければ…!