「あ…あのあのあの!検査のお手伝いなんてそんなの前代未聞で…!いえ、もちろんパートナーによるお手伝いはありえますけど!でも私たち今日話したばかりですよ!」
「いやいや、確かに今日出会ったばかりですけど綺麗な人だなーって気になってましてね。記憶喪失でやり方もわからないので是非手伝って貰えればなーと」
やり方がわからないなんてもちろん嘘である。健全な男なら誰だって己の愚息を臨戦体制から発射まで持っていったことがあるだろう。
「で、でもでしたらお母様にお願いされては…?ほら、そういうのは家族のほうが…!」
困惑して遠慮しているが、さっきから高梨さんは俺の愚息付近をチラチラ見ている。そもそも女性の性欲が高いのは先生からの説明でわかっている。ならば高梨さんも例外ではないはずだ。
あとはもうひと押し…!
「俺は高梨さんがいいんです」
そう言ってジッと目を見ると、高梨さんは顔を真っ赤にしながら「わ、わかりました!」と了承してくれた。
同意を得てしまえばこっちのものよ(ゲス顔)
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「いやー、ありがとう!初めての経験だったけど案外大したことないね!」
そう言って俺は部屋から出てきた。
え?中で何してたかって?やだなー、そんなの言えるわけないじゃないですかー
「ま、まさかあんなに大きいなんて…教科書で見たのと全然違う…それに量も…」
「まあ普通と違うかもだけど、量が多いならそれに越したことないし、質が良ければさらにいいじゃん?また後で検査の結果教えてね」
「も、もちろん義務だから教えるけど…なんか…黎夏くんってすごく変わってるよね?いや、別に私はいいんだよ⁉︎役得というか…男性とゴニョゴニョ…するなんて一生に一度あるかないかだし!」
「役得ならそれでいいじゃん?じゃあ俺は病室に戻るから検査よろしくね?またあとでねー!」
そう言って俺は病室に戻る。
この会話でわかると思うが、俺と高梨さんは親密になり、お互い敬語を使うこともなくなった。まあ俺から敬語はやめてくれって言ったんだけどね。
高梨さんの下の名前は凛子さんというらしく、お互い黎夏くん、凛子さんと呼ぶ間柄になった。
「あ、そういえば俺ってスマホ持ってるのかな?持ってるなら凛子さんと連絡先交換したいなー」
そんなことを呟きながら俺は病室に戻り検査結果を待つことにした。
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「黎ちゃん大丈夫⁉︎疲れてない?どこか体調が悪くなったりしてない?」
病室に戻ると母さんがすごく心配しながら駆け寄ってきた。
「ん、疲れはあるけど全然大丈夫だよ。むしろスッキリしたかな?」
「す、スッキリ?珍しいね、普通男性って出したら疲労感がすごいらしいんだけど…」
(たった1回で疲労する?世の男性諸君貧弱すぎやしませんかねぇ…)
俺が母さんの話を聞いて呆れていると、先生が勢いよく扉を開けた。
「れ、黎夏様!それにお母様も!大事な話があります!」
「先生、落ち着いてください!気持ちはわかりますけども!」
どうやらただ事ではない様子で、後から来た凛子さんが先生を宥めている。ちょっと手を振るとそれに気づいた凛子さんは顔を赤らめた。かわいい。
「とりあえず落ち着いてください、検査結果はもう出たんですか?」
「は、はい、検査結果はもう出ておりまして、それをお伝えしに参ったのですが…その前に黎夏様にお聞きしたいことが…」
「もう検査結果が出たんですか?速いですね…何が聞きたいんです?」
そう返すと先生は深呼吸して言った。
「黎夏様、こちらの高梨から黎夏様の検査をお手伝いした…ということを耳にしたのですが…事実なのでしょうか?もし強要されたというのなら遠慮なく仰ってください、私たちは貴方の味方ですので」
どうやら凛子さんから検査の手伝いの話を聞かされて、凛子さんが強要したんじゃないかと疑ってるようだ。まあそりゃそうか、この世界の男性は絶食系だからお手伝いなんて普通頼まないわな。
「強要なんてされてませんよ。むしろこちらからお願いしたくらいです」
そう言うと先生と母さんは心底驚いていた。
「なるほど…薄々わかっておりましたが、黎夏様は女性に忌避感があまりないのですね。責めているわけではないのです、むしろ逆…素晴らしいことだと私は考えております。黎夏様のように女性に忌避感なく接していただけるなら、幸福に感じる女性も多数いるでしょうし、私もその1人です。ですが気をつけて下さい。世の中には犯罪を犯す人もいます、どうかご自愛ください。お母様、良い息子さんをお持ちになられましたね」
そう言って俺と母さんに微笑みかけてくれた。
母さんはそれを聞いてニコニコしている。危機感が無いと怒られると思ってたけど…大丈夫なのかな?
「さて、それでは検査結果の話をしたいと思います。と言ってもこちらとしても予想外のことが起きておりまして…こちらをご覧ください」
そう言って先生は検査結果の書類を俺と母さんに見せた。そこには精子の量や運動量、濃度等が数値化されて並んでいた。そして平均値と俺の数値を比べてみると、全ての項目で俺が圧倒的に凌駕していた。
「正直これほどまでに高い数値を見たことがありません。シミュレーションでの着床率もかなり高いですし、もはや最高位の男性と呼んでも過言でないほどです。ここに来る前に男性省にも結果を伝えるようスタッフに言いつけておいたのですが、おそらくランクが新設されると思います」
「ら、ランクの新設⁉︎そこまでするんですか⁉︎黎ちゃんがどこかに連れて行かれたりはしませんよね⁉︎」
まさかランクが新設されるとは思わなかったが…母さんの疑問は最もだ。俺だってよくわからない場所に連れて行かれたくないし、変な義務を課されたくないから気になる。
「お母様、ご安心ください。男性のストレスになるようなことを政府は推奨していないのです。であるならば無理矢理どこかに連れて行く…などという多大なストレスのかかるようなことをするはずありません」
そう言って先生母さんを落ち着かせようとする。正直俺はこの言い分は疑問に思う。俺はこの世界に来てまだ1日目だからよく知らないが、政府がそんなに律儀に約束を守るイメージがない。必要とあれば例外を作ってきそうな予感がする。
そう思ってると、看護師さんが先生を呼びに病室へ来た。どうやら先生宛てに電話がかかってきたらしい。その看護師さんももれなく美人だった。
先生は「少々お待ちください」と言うと、病室から出て行き、凛子さんもそれについて行った。
「なんだか大変なことになっちゃったわね…ところで高梨さんに検査をお手伝いしてもらったってどういうこと?黎ちゃん?」
先生たちが出ていくと母さんは急にお手伝いについて突っ込んで来た。全然大丈夫じゃなかった!
「いや、えっと…ほら、やっぱり初めてのことで不安だからさ…凛子さんは看護師で医療関係者だから…専門知識があって頼りになるかなーって」
「ふーーん、凛子さん…ねぇ?」
言い訳としては弱かったか⁉︎それに名前呼びしてることも不味かったか⁉︎
戦々恐々としていると、母さんは言った。
「ずるい!なんで看護師さんだけ名前呼びなの⁉︎お母さんも名前呼びされたいー!それにお手伝いならお母さんがやりたかったー!」
うちの母親かわいいかよ。名前呼びしてることと手伝えなかったことに拗ねてるだけだった。
「あはは…別に名前呼びならいつでもするよ?それに母親にお手伝いしてもらうのは気まずいというか…恥ずかしいというかね?」
ほんとは是非ともお手伝いしてもらいたいところではあるが、親子でそんなことやったら倫理観が終わるので流石にやめておいたのだ。
「むぅ、黎ちゃんがそう言うなら仕方ないけど…でも名前呼びはいいんだよね?お母さんの名前は綾音って言うから、これからは母さんじゃなくて名前で呼んで欲しいなー」
うちの母親かわいいかよ(2回目)
母親を呼び捨てすることは違和感があるが、そもそも俺にはこの人が母親という実感がほとんどないため呼び捨てすること自体には問題はない。
「綾音」
「はわ、息子に呼び捨てにされるってなんだか不思議な気分ねぇ、なんだか若返った気分になるわぁ」
(十分見た目は若いんですけどねぇ…)
そんなやりとりをしていると、先生が戻ってきて開口一番こう言った。
「新ランク、Sランクに黎夏様が認定されましたよ!」