変態の双子の兄弟として   作:篠白 春夏秋冬

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はじめましての方は「はじめまして」。そうでない方には「またお会いしましたね」そして、「申し訳ございません」。
篠白(ささじろ)春夏秋冬(しき)と申します。

本作は結構な話数見つかっているので、ある程度定期的に投稿できると思います。

お楽しみいただければ幸いです。


第一章 旧校舎のディアボロス
Life.1 家族が死んだ日


 雨の中、何人もの足音が響いている。

 

 足音の主は一人の小さな人影と数人の大きめの人影だった。

 

 それらは小さな一つの人影を大きな人影が追跡しているように見えた。

 

 逃げている小さな人影に大きな人影たちが追い付かないのは追跡者たちの追跡がためらいながらのものであることが原因であろう。

 

 また、追跡者の一人が他の追跡者に対し何かを叫んでおり、それは説得しているように聞こえた。

 

 しかし、彼等のためらいもその説得も意味をなさず、じりじりと距離が詰まっていく。

 

 ついに距離が詰まりきり、少年に対して輝く剣が振りかざされると、その光で世界が白く染まり──

 

 少年は伏せていた机から顔を上げた。

 

(久しぶりにこの夢見たな)

 

「あんたが居眠りなんて珍しいわね。もうあいつらは出て行っちゃったわよ」

 

「そうか。起こしてくれてもよかったんだが」

 

「いやぁ~、本当に珍しい光景だったもん、声をかけそこねたのよねぇ」

 

 目を覚ました少年にメガネをかけた三つ編みの少女が話しかけると少年は席を立ち、出入口へ向かう。

 

「場所、わかるの?」

 

 少女が声をかけると少年は自信ありげに答える。

 

「ああ、場所は分かってる」

 

 

 

 

 

「おい、本当にここであってるんだろうな」

 

「ああ、間違いない。俺も見つけたときには驚いたもんだぜ。まぁ、当日は休みだったみたいで意味なかったんだけどな」

 

「それでもすごい収穫だぞ。そう簡単には拝めないものだからな」

 

 体育館の裏手の壁に三人の男子生徒がうずくまっている。何者かに呼び出され殴り倒されたわけではなく、本人たちがある目的のもと集まったのだった。彼らのうち一人が壁を観察し、何かを探している。

 

「この辺か?」

 

「いや、違う。もう少し右だな」

 

「ああ、あったあった」

 

 この場に集まった三人は有名人である。ただし、有名になった理由は輝かしい功績を残したという理由ではなく、汚名によるものである。

 

 人呼んで「駒王学園の変体三人組」。壁を観察していたのが「兵藤一誠」。親しいものからはイッセーと呼ばれている。探し物の位置を教えたのは「エロメガネ」または「スリーサイズスカウター」こと「元浜」。最後の一人が「松田」。「エロボウズ」や「セクハラパパラッチ」と呼ばれている。

 

 彼ら三人は壁にある穴を見つけていた。そして、彼らの立つ壁の内側は女子バレー部が更衣室として使用している。

 

 そう、彼らは覗きをしようとしていたのだった。

 

「まさかこんなところに覗きに最適な穴があるとは思わなかったぜ」カチャリ

 

「全くだ。これもエロ本を教室に忘れてしまった元浜のおかげだな」カチャリ

 

「もっと褒めるがいい。して、順番はさっき決めた通りでいいな?」カチャリ

 

 イッセーと松田が元浜をほめ、元浜はメガネの持ち上げながら確認をとる。穴は小さく一人ずつが精一杯だったため、発見者の元浜が最初に覗き、イッセー、松田と交代していくことにしていた。

 

 体育館内が騒がしくなり始め、そろそろかと期待に胸を膨らませていた彼らの背後から声がかかった。

 

「全く、HRが終わるなりこそこそと出ていったと思ったら性懲りもなくこんなことをしようとしていたとはな」

 

 その声に体をこわばらせ、ギギギと油の切れた機械のようにぎこちなく振り向く三人を一人の男子生徒が見下ろしていた。

 

 彼の名は「兵藤天魔」。やや暗めの銀髪に金の双眸。容姿は文句なしのイケメンであり、同じく二年に在籍するもう一人とともに「二大王子様」として有名人である。彼は一誠達の行動を未然に止めるため日々奔走している。そのためイッセーに「こぶ」や「汚点」といった異名がついていたりする。

 

「ハァ、いつも言っているだろう。こういった人を傷つける行為はやめておけと。これさえなければ女子生徒から遠巻きにされるようなこともなく、恋人を作れる可能性も出てくるかもしれないというのに」

 

「うるせぇ。女子にもてるお前に言われたくないんだよ」じりっ

 

「そうだぞ。お前も兵藤なら俺らに協力しろってもんだ」じりっ

 

「お前が協力すれば成功率は格段に上がるだろうからな」じりっ

 

 ため息をつきながら再三の注意を行う天魔から、反論しながら三人がゆっくりと距離をとる。そしてある程度離れた段階で一斉に逃亡を始めた。

 

「「「散開!!」」」

 

「なるほど。人海戦術か。同時に逃げればだれかを追う以上逃げ切れる人数は多くなるという判断なわけだ。いい策だ。俺が相手でなければな!」

 

「「「うぐぁ!!??」」」

 

 天魔が言葉を切ると同時に三人組の腹に衝撃が走り、尻餅をつく。何が起きたのかと確認するとベルトループに金具が取り付けられており、それに結ばれたロープが天魔によって握られていた。

 

「い、いつの間にこんなものを付けた」

 

「それよりもどうやって引いてるんだ」

 

「そもそも、なんで覗きがばれたんだ」

 

「これはお前らが話している間に取り付けた。引いているのは単純に力の差だ。気づいたのはお前らが昼休みにこそこそと話しているのを聞いていたからだな。さて、このあとは制裁の時間だ」

 

 それぞれの疑問に答えつつ、ゆっくりと縄を引いていく。天魔の言葉に三人はぎょっとする。

 

「ま、待て! 未遂なんだから情状酌量の余地はあるだろう!」

 

「そうだぞ! だいたい発案者は元浜だ! こいつだけにしろ!」

 

「おいふざけんな! こうなれば、お前ら二人とも道連れだ!」

 

「はぁ、まあいい。よっと「お、おい」せい!」

 

 仲間割れを始める三人にため息をつきながら、一誠を抱えそのまま体を逸らす。

 

 繰り出されたのはノーザンライトスープレックスと呼ばれるプロレス技である。

 

 いつの間にかひかれていたマットの上にたたきつけられた一誠はそのままぐったりと体を横たえる。腕をきめていたわけではなかったためギリギリで受け身をとれたようだが、それでも衝撃はすさまじかったらしい。

 

「さて、つぎはどっちだ?」

 

 

 

 全く起き上がらない一誠を脇にどけ、震える二人を同様にマットにたたきつけた後、天魔は穴をふさぐよう、バレー部に話をするために去っていった。

 

 

 

 しばらくして一誠たちは復帰し、旧校舎のほうへと移動していた。

 

「ったく、あの野郎。遠慮なくやりやがって。せっかくの覗きのチャンスが台無しだぜ」

 

「あいつはほんとに人間性ってもんがないな」

 

「全くだ。全国模試では上位をキープ。様々な部活に助っ人参加して大活躍。全長5.24メートル、高度3万フィートをマッハ2で飛行。インテルまで入ってるからって調子に乗りおって」

 

「インテルなんて入ってねぇよ」

 

 一誠が天魔を非難し、松田が同調する。さらに元浜が悪態をついていると天魔が現れた。

 

「いや、インテル以外も否定しろよ」

 

「む、遅かったな。裏切者」

 

「そういえば、あんなものどこから用意したんだ?」

 

「縄のほうは自作だが、マットは生徒指導の先生にお前らへの仕置きに使うといえば、快く体育倉庫のカギを貸してくれたぞ」

 

 天魔は否定の仕方への一誠の突っ込みと松田の非難をスルーして元浜の疑問に答える。

 

 教師からの信頼度の違いに三人が文句を言い始め、天魔はそれを受け流す。仕置きの際にこそ遠慮はないが、普段は仲がいいため、和気藹々とした空気で話していると、不意に一誠が顔を上げた。その視線の先には紅髪の少女が窓辺に立っている姿があった。

 

「リアス・グレモリーか。あれは厳しいぞ。障害が多すぎる」

 

「全くだ。もしイッセーがグレモリー先輩と付き合うようなことができるならよっぽどの弱みを握るしかないな」

 

「見た目という点では天魔ならいけるかもしれんがな」

 

 ぼうっとした様子でリアスを見上げる一誠に天魔が話しかけると松田と元浜がやっかみをかける。周囲の声を一誠が「うっせ」と一蹴し、その後は解散した。

 

 

 

 夕暮れ時。

 

 天魔は知り合いに呼び出されたと先に帰り、一誠は一人で歩いていた。

 

「やっぱり、ああやって鍛えているほうがもてるのかね? いや、しかし、俺の女体を求める心をおざなりにするわけには……」

 

「すみません。少しいいですか?」

 

「はい? (おお、美少女だ。しかも、おっぱいも大きいぞ⁉)」

 

 不意にかけられた声に一誠が振り向くと、声の主は一人の少女だった。

 

「ええっと、なんか用? (俺が美人と会話していたなんて知ったら松田と元浜が殴り掛かってくるだろうな)」

 

「この場所に行きたいんですけど、道に迷ってしまったみたいで。案内してくれると嬉しいんですけど」

 

 恐縮した様子の少女が広げた地図を一誠がのぞき込むと、知っている場所ではあるものの、現在地からはやや離れている場所に目印がつけてあった。

 

「ここならわかるよ。案内するからついてきて(まさか、こんな美少女とお近づきになれるチャンスが来るとは、もしかしたら案内のお礼に……なんてな)」

 

 邪な想像をしながらも、一誠は少女を案内することにした。

 

 

 

 もうじき日が落ちようかという頃に目的地付近の公園へと到着した。

 

「ここからすぐだよ。ちょっと時間遅くなっちゃったけど」

 

 一誠が振り返ると少女は少し離れて立っていた。

 

「ふぅん。反応が小さすぎてなかなか時間がかかったけど、確かに神器(セイクリッド・ギア)の反応があるわね。まぁ、これなら対処は必要ないかな。うん、ありがとうございました」

 

「(神器? まぁ、いいや)助けになったならよかったよ。じゃ、俺はこれで」

 

「はい。本当にありがとうございました」

 

 少女のセリフに疑問を感じたものの、特に反応を返すことはなくその場を去った。

 

 否、去ろうとした。

 

「あ、あれ?」

 

 気付けば一誠は地に伏していた。

 

(なんだ? 紅い……血、なのか? なにがおきてるんだ?)

 

 一誠が呆然としながら現状の把握をしようとしていると、聞き覚えのない声が聞こえてきた。

 

「困るわね。レイナーレ。こんなことをされちゃ」

 

「反応は小さなものだったし、対処の必要はないと思うけど?」

 

「いいえ、必要よ。どんなに反応が小さくとも神器は神器。上からの注意の目がないにこしたことはないでしょう。それとも、何か意見でもしたいのかしら?」

 

「……」

 

「それでいいのよ。こんな場所にもう用はないわ。戻るわよ」

 

 その言葉を最後に気配が消える。公園には血を流す一誠だけが残された。

 

(紅……あの人の髪と一緒だ。ストロベリーブロンドよりもさらに紅の髪。この手を染めているのとおなじだ。こんな時に何を考えてんだ。クソ、体が全然うごかない。リアス先輩か……どうせ死ぬなら、美少女のおっぱいの上でしにたかった)

 

 独白しながらも薄れていく意識の中、最後に目に映る色から連想した紅髪の少女を想う。

 

 そうして最後を迎える間際。

 

「私のために生きなさい」

 

 そんな声が聞こえた気がした。

 

 

 

 

 

 日もすっかり暮れたころ。天魔は家路を急いでいた。

 

「ったく、あの野郎。急に仕事押し付けやがって、これでなんかあったらどうすんだ」

 

 松田・元浜両名と別れてすぐ、急な呼び出しがかかり、その対処を終える頃には、帰宅時間は予定以上に遅くなってしまっていた。

 

「ハァ、あんまり遅くなるのは嫌だったんだけどな。ただいまー⁉」

 

 天魔が家に入ると目の前には見知らぬ女性が立っていた。天魔が驚愕を隠しつつ応対しようとしたが、とある気配を感じ硬直する。

 

(悪魔の気配だと⁉一誠たちは無事なのか⁉)

 

 頭部に手をかざそうとしていた目の前の女性を魔法によって即座に制圧し、家の中へと入っていく。悪魔の気配のもとにたどり着くと、その場には一誠が呆然とした様子で食事をとっていた。同じテーブルでは両親が同じように食事をとっており、先ほど天魔が制圧した女性を気にした様子も天魔の様子を気にしたそぶりもなかった。

 

(一誠が悪魔になっている……ってことは、こいつは一誠の主になった悪魔の使い魔か。しかし、一誠に暗示をかける必要ってあるのか? まぁ、いい。一応話を合わせてやるとするか)

 

 現状に対する仮説を立て、それに沿った行動をとることにした。ひとまず制圧した使い魔に治療を行い暗示をかけ、自身にも暗示をかけたと錯覚させ、制圧されたことの忘却を行った。

 

 そのまま使い魔を帰し、家族の行動に合わせて行動していく。

 

(さて、主はどっちだ?)

 

 

 

 そうして数日後の夜。

 

 朝には体調が悪くなり、夜には力が有り余って仕方がない一誠は天魔がトレーニングをしていたことに思い至り、せっかくだからとロードワークに繰り出していた。

 

(やっぱり前と比べて体力がついてる気がする。暗いのに視界も良好だし、どうなってんだ?)

 

 一誠が自身の変化に驚きつつも走り続けていると上の方から声がかけられた。

 

「こんなところに悪魔がいるとはな。主はどうした?」

 

 声の聞こえた方向を向くと、鴉のような黒い羽根をはやした男性が浮かんでいた。

 

「主もなく一人で行動しているということは、はぐれというわけだな。さすれば狩ってしまっても問題あるまい」

 

(主? はぐれ? なにをいってるんだ?)

 

 いうが早いか、男性の言葉に混乱する一誠に光る槍が突き刺さる。一誠はその場に倒れると、血を吐き出した。

 

「あ? がはっ! (い、いてぇ⁉なんなんだ⁉急に)」

 

「ふむ。思ったよりも頑丈だな。では、もう一発……⁉」

 

 一撃では仕留め切れなかったことに驚きつつも男が放った二発目は飛び込んできた人影の構築した魔法陣によって防がれた。

 

「貴様、なにものだ?」

 

「こいつの家族だよ。てめぇ、人の家族になにしてくれてんだ?」

 

「家族……ねぇ。騙されているにも関わらず家族とは……泣かせてくれるものだ」

 

「ンなもんはどうでもいいんだよ。お互いさまってもんだ」

 

「まぁいい。興が冷めた。面倒なものも来ているようだしな。わが名はドーナシーク。精々覚えておくといい。仇としてな」

 

 ドーナシークが飛び去ると同時に一誠に突き刺さっていた光の槍が消失し、血が噴き出す。天魔は傷口を抑えて少しでも出血を抑えようとするが、当然そのようなもので抑えられるはずもなく地面に紅色に染まっていく。

 

(クソ! 血が止まらない! 運ぶか? だが、今の一誠をあそこに運ぶのは……いや、そんなことを迷っている場合じゃない!)

 

 天魔がわずかな迷いを断ち切り一誠の手当てができる場所に運ぼうとしたとき、魔方陣が出来上がると、そこから紅髪の少女が現れる。

 

「あんたは、リアス・グレモリーだな?」

 

「そういうあなたは兵藤天魔ね?」

 

「そうか、あんたが主か」

 

「ええ、そうよ。それよりも、その子の方よ。その子は私が引き取るわ」

 

「治せる見込みがあるのか?」

 

「ええ、その子が私の眷属だから、私から直接魔力を供給してあげれば、その子を助けることができるわ」

 

「……わかった。こいつの命は預ける」

 

 魔力の波動から二人の関係を看破したことに加え、リアスが断言したことを受け、天魔は信用することにした。しかし、念のため釘をさす。

 

「だが、もしこいつが命を落とすようなことがあれば、俺がその首も落とすと思え」

 

「ええ、理解しているわ。だからこそ、早く移動しましょう。あまり時間をかけると手遅れになってしまうわ」

 

 いうが早いかリアスは魔方陣を展開し、転移の準備を始める。

 

「このままあなた達の家に移動するわ。その方があなたも安心でしょう。だけど、眷属でないあなたを転移させることはできないわ」

 

「わかっている。このまま走って帰るから心配いらない」

 

 天魔の言葉にうなずくとリアスは一誠を抱えたままその場から消える。天魔はそれを確認すると踵を返して走り始めた。一誠が無事に回復することを願いながら。

 

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