変態の双子の兄弟として   作:篠白 春夏秋冬

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 前回の内容から察している方ばかりだとは思いますが、タグに「原作死亡キャラ生存」を追加しました。


Life.10 事後処理

「アーシア⁉ なんでここに⁉」

 

「えっと、そのぅ……クロさんが抜け出してしまったので追いかけたんですが、気づいたらここに……」

 

 一誠が驚愕のあまり絶叫すると、おずおずとここに来た理由を話し出した。それを聞いた天魔が頭を押さえ始めるのを見て、アーシアが慌て始める。それを見て一つため息をつくと顔をあげた。

 

「まぁ、ちょうどいいといえば、ちょうどいいんだけど……あいつは後で折檻だな」

 

 天魔のつぶやきに草間が揺れたが、天魔以外は気にすることはなく、話を進め始める。

 

「それで、話っていうのは何なのかしら? まさか、見逃せなんて言うんじゃないでしょうね?」

 

「さすがに加害者を見逃せなんて言いませんよ。ですが、被害者と加害者ははっきりしとかないといけません。今回の件でいう被害者はイッセーにアーシア、あとはレイナーレですかね」

 

 一誠とアーシアまでは予測していてもレイナーレまで被害者側とは思わなかったのか皆の目がレイナーレへと集中した。

 

「レイナーレも被害者側ですよ。まぁ、被害を被ったのは彼女自身ではなく彼女の周囲の人間ですが」

 

 そういうと天魔はドーナシークの持っていた球を拾い上げ、人形代とともに掲げる。

 

「さっきイッセーには聞こえたと思うが、この人形代が今は呪いを引き受けてる。そして、呪いの核がこの球だ。レイナーレが堕天使の組織からの指示でこの地域の神器所有者について調べている間、「天野夕麻」という偽名で人間の中に紛れて生活していた。使用した戸籍の関係で学校に通ううちにできた友人が呪いを受けていたということだ」

 

「なっ⁉」

 

 天魔の言葉を聞き、ドーナシークに視線が集まる。グレモリー眷属から発される殺気に押されてはいるが、それでもドーナシークは睨み返した。そんな中、アーシアが疑問をこぼす。

 

「なんで、そんなことを……」

 

「端的にいえば、責任を押し付けるためだな。堕天使の位階は羽の数でわかる。レイナーレが二対四翼。ドーナシークは一対二翼。本来ならドーナシークが指示を出すことはあり得ない。だが、人質が有力となった。上層部に極秘で立てた計画の筆頭としてレイナーレを据えることで、失敗しても彼女に責任を押し付けることができるようになった。友人に呪いをかけ、発動されたくなければ、解呪してほしくば服従しろと言い聞かせて。だが、解呪なんて約束を守る気などなかった。呪いは徐々にレイナーレの友人の体を蝕み、今夜には死ぬところだった。その事実を伝え、愕然ないし、激昂して動きの精細さを欠いたレイナーレを殺し、上層部を謀った裏切者を粛正したという名誉と「聖母の微笑」を使って成り上がろうとしたわけだ」

 

「……そんな」

 

 皆が絶句し天魔を見る。呪いがどういう状態なのかを知りたそうな様子に、苦虫をかみつぶしたような顔で吐き捨てるように話し出す。

 

「「祓いの人形代」は呪いの対象を移し替えることはできても、その身に染みた呪いの影響を消すことはできない。そして、この人形代を使ったのは今日ここに来る前だ。その子は現在昏睡状態で病院に入院している」

 

 天魔が話を終えるとともに呪いの球が光を失い、人形代の光が強まる。球を落とし、踏み割る音に全員がハッと顔を上げ、痛ましそうな顔を見合わせる。

 

「さて、堕天使諸君の処遇を決めようか。まずはレイナーレ。個人的には特に追及する必要はないと思ってる。一誠のことは見逃そうとしてたようだし、脅されていたみたいだからな」

 

 天魔の言葉に誰も反対することはない。むしろ同情的な視線が多かった。

 

「次にミッテルト。こいつは……レイナーレの妹分なんだっけ? 何かしたって話は確認できてないから別に何も言うことなさそうだが……」

 

 やはり反対意見はなく、というよりも悪魔側は全員知らない相手だったので言うことはなかった。

 

「問題はここからだな。カラワーナ。こいつが人間のころのイッセーを殺した堕天使だ。今はミッテルトが監視しているはずだ。こいつは許すことはできない。私怨の類であることは認めるがな」

 

 カラワーナについては関りのあるのが一誠が主なので誰も何も言わなかった。アーシアは何か言いかけたが、一誠が一度殺されていることもあり、口をつぐんだ。

 

「で、最後はてめぇだな、ドーナシーク」

 

 天魔が視線を向けると他の面々もドーナシークへと視線を向ける。

 

「面白半分で襲って一誠を殺しかけた。私欲のためにアーシアの命をないがしろにした。我利に飲まれて無関係の人間の命を脅かした」

 

「ひっ!」

 

 殺気をたぎらせ天魔がドーナシークに向き直る。ドーナシークが小さく悲鳴を上げるが、誰も動くことはできない。まき散らされる殺気に体が硬直してしまっていた。

 

 天魔が手を前に掲げ、呪文を唱え始める。ドーナシークの四肢が魔法陣によって拘束され、空中に浮かび上がった。十字架に張り付けとなった聖人のような姿勢をとらせると、その周囲に結界とともに膨大な数の魔方陣が展開され、それらすべてが攻撃用であることが察せられた。

 

「何か言い残すことはあるか?」

 

「ま、待て! やめろ! 私は、こんなところで死ぬような存在では……」

 

「命乞いか……殺そうとするのなら、殺される覚悟をしておくべきだったな」

 

 天魔はちらりと横目でアーシアを見るとアーシアは祈っていた。顔は臥せられその表情をうかがい知ることはできなかったが、天魔を止める事はなかった。

 

「じゃぁな、ドーナシーク。自分を愛しすぎたお前の負けだ」

 

「や、やめー」

 

 魔法陣が輝き魔法が斉射される。結界に包まれ、わずかな衝撃波すら漏らさずドーナシークは消滅した。天魔は息を吐くと瞑目する。

 

 僅かに間を置くと、天魔は顔を上げて明るい調子で話し始めた。

 

「うし、俺はミッテルトを回収してくるんで、ひとまずアーシアのこと頼みます。ないとは思うけどフリードのやつがお礼参りに来ないとも限りませんし。行くぞ、レイナーレ」

 

 天魔がレイナーレを伴い壁の穴から出ていくとその場にはグレモリー眷属とアーシアが残された。天魔はリアスの目が一瞬光ったのを見逃した。天魔はそれを後悔することになるのだった。

 

 

 

 カラワーナの処理は恙なく終了した。その後、呼び出した使い魔をいじめ倒し、転移で再び教会へと戻る。出た時と同じ穴から戻ると、それに気づいた面々が振り向く。

 

「あら、天魔。終わったのね」

 

「ええ、まぁ。ん? おい、なんでアーシアが悪魔になってんだ?」

 

「そういえば、天魔は分かるんだったわね。そうよ、アーシアを保護するのなら、この町を管理する私の庇護下に入るのが一番でしょう? だから、私の新しい「僧侶」として迎え入れることにしたの」

 

 リアスが笑顔で天魔を迎えた。天魔はアーシアを目に入れるとその気配が悪魔のものへと変わっていることを感じ、感じたままに口に出す。それを聞き、リアスがその理由を話し出した。天魔は理由には納得したものの、本人の意思を念のため確認する。

 

「アーシアはそれでよかったのか? 本当に」

 

「は、はい。その……この方が、その、私も嬉しいといいますか……」

 

「? まぁ、アーシアがいいっていうならそれでいいんだが。ああ、そうだ。こっちの金髪の子がミッテルト。堕天使な」

 

「よ、よろしくお願いするっす」

 

 しどろもどろになりつつも肯定するアーシアに、天魔は不思議そうにしながらも暗示の類がないことを確認し、ミッテルトを紹介する。周囲のほとんどが本来なら敵である悪魔であることに緊張しながら挨拶するとレイナーレの後ろに隠れた。

 

 その姿にリアスたちも警戒を緩めると空気が弛緩する。

 

「よし、帰るか」

 

 そんな天魔の一言に皆が返事をし、その夜の戦いは事後処理も含めて終結した。

 

 

 

 翌朝。

 

 呼び出された天魔と一誠はオカルト研究部の部室を訪れていた。

 

「あら、ちゃんと来たわね」

 

 部室にはリアスしかおらず、優雅に紅茶を飲んでいた。

 

「イッセーも朝は大丈夫になったようね」

 

「はい、おかげさまで」

 

「それにしても、あの子の治癒能力は無視できないもののようね。一堕天使が上に黙ってまで欲するのもうなずけるわ」

 

「そういえば、レイナーレとミッテルトはどうしたんだ?」

 

「あの二人なら堕天使の組織のほうに返したよ。何かあった時に堕天使側の情報もえられるかもしれないだろ」

 

 雑談をしつつ、リアスに対面する席に座ると一誠がリアスに質問する。

 

「あの、部長。チェスの駒の数だけ悪魔の駒があるんだったら、俺のほかにも「兵士」があと七人存在できるんですよね? いつか俺と同じ「兵士」が増えるんですか?」

 

「いえ、私の「兵士」はイッセーだけよ。眷属を作るときに悪魔の駒を用いるのだけど、その時に相手の能力次第では駒を多く消費しなければいけない場合があるの。チェスにはこんな格言があってね。女王の価値は兵士九つ分。戦車の価値は兵士五個分。騎士と僧侶の価値は兵士三つ分。そんな風に価値基準があるのだけど、悪魔の駒の価値基準もそれに準じたものになっているの。眷属にする相手によっては騎士の駒二つを使用する必要があったり、戦車の駒を二つ使用する必要があったりするの。駒との相性もあるし、二つ以上の種類の駒を同時に使うことはできないから駒の使い方は慎重になるのよ。一度使うと補充なんてできないから」

 

「えっと、それと俺に何の関係が?」

 

 疑問に対する説明に一誠が困惑するのを見て、天魔がため息を吐く。不思議そうにしながら天魔のほうを向く一誠に天魔が説明する。

 

「要するに、部長は与えられていた「兵士」の駒八つ全部使ってお前を悪魔に転生させたんだよ。お前が「赤龍帝の籠手」を持っていたからそれだけ必要になったんだろうな」

 

「イッセーを転生させようとしたとき、私の残りの駒は戦車、騎士、僧侶が一つずつに兵士が八つだったの。その駒で条件を満たせるのは兵士八つを使うことだけだったの。兵士との相性もよさそうだったし、他の駒では転生できなかった。兵士の価値はプロモーションも含めて未知数。私はその可能性に賭けた。結果、貴方は最高だったわ」

 

 天魔とリアスの話を聞き、自身の左手を見つめる一誠の顔をリアスは引っ張って目線を合わせると話し出す。

 

「私は「紅髪の滅殺姫(ルイン・プリンセス)」という二つ名があるのよ。私の二つ名とあなたの「赤龍帝の籠手」、紅と赤で相性はばっちりね。イッセー、貴方はとりあえず、最強の「兵士」を目指しなさい。貴方ならそれができるはず。だって私のかわいい下僕なんだから」

 

 リアスの言葉をもとにした新たな目標に気持ちを引き締める一誠の額にリアスがキスを落とす。

 

「これはお呪い。強くおなりなさい」

 

 顔を真っ赤にして慌てる一誠の顔を離すと、天魔のほうを向いて提案する。

 

「そういえば、前は袖にされたけど、もう一度勧誘しておくわ。天魔も私の眷属にならないかしら? アーシアもいるし、不足はないと思うけど?」

 

「事情の整理も出来てきましたし、提案も悪くはないんですけどね……ちょっと、駒を出してもらっていいですか?」

 

 リアスの提案に言いよどむと天魔はリアスに駒を出すように頼む。リアスが戦車と騎士の駒を取り出し机に置いたのを見ると、「戦車」の駒を手に取った。

 

「多分、俺を眷属にはできないと思うんですが」

 

 しかし、駒は何の反応を示さなかった。

 

「本当ね……残念だけど、今は諦めるしかないみたいね。でもいつか貴方も眷属に加えられるようになってみせるわ」

 

「ええ、再挑戦をお待ちしましょう」

 

 天魔が元の位置に戻した駒を再び摘み上げ、残念そうにリアスがつぶやく。しかし、すぐに気を取り直すと微笑みながら宣言する。それを受けて天魔も微笑み、二人の容姿と雰囲気が相まってとても絵になる光景だった。

 

「て、天魔さん……?」

 

 お互いに笑顔で顔を合わせている天魔とリアスに声がかかる。天魔が声の方向を向くとアーシアが顔を引きつらせていた。

 

「そ、そうですよね。……。リアス部長はお奇麗ですから、そ、それは天魔さんも好きになってしまいますよね……。いえ、ダメダメ。こんなことを想ってはいけません! ああ、主よ。私の罪深い心をお許しください……。あうっ! ……頭痛がします」

 

「当たり前よ。悪魔が神に祈ればダメージくらい受けるわ」

 

「うぅ、そうでした。私、悪魔になっちゃったんでした。神様に顔向けできません」

 

「後悔してる?」

 

 あわあわしつつ手を合わせて祈るアーシアだったが、頭を押さえてうずくまる。複雑そうにするアーシアにリアスが問いかけるが、アーシアは首を横に振る。

 

「いいえ。ありがとうございます。確かにほかの道もあったのかもしれませんが、こうして天魔さんたちと一緒にいられるのは幸せです」

 

 アーシアのセリフに一誠は顔を紅潮させ、天魔とリアスは微笑んだ。

 

「そう、ならいいわ。今日からあなたも私の下僕悪魔としてイッセーと同じように走り回ってもらうから」

 

「はい、頑張ります!」

 

「そういえば、アーシア。その恰好」

 

 元気よく返事をするアーシアは駒王学園の女子制服を着ていた。天魔がそのことを指摘すると恥ずかしそうにしながらアーシアが尋ねる。

 

「に、似合いますか?」

 

「あぁ、よく似合ってるよ」

 

 天魔は自身の回答に顔を赤くしてうつむくアーシアに庇護欲をそそられつつも、今はそういうタイミングではないと思わず出そうになった右手を左手で抑えていた。

 

「ふふっ、アーシアにもこの学園へ通ってもらうことになったのよ。貴方たちと同い年みたいだから、二年生ね。クラスも貴方たちと同じクラスにしたわ。今日が転校初日ということになるから、二人とも彼女のフォローはよろしくね」

 

「えぇ、もちろんですよ」

 

 天魔の様子にリアスは小さく笑うと、学園におけるアーシアの設定について話す。天魔が即座に応えるのにアーシアの頬の紅潮が深まった。

 

「後で俺の悪友二人も紹介するからな」

 

「いや、あいつらは……まぁ、避けては通れないから仕方ないのか……」

 

 一誠が松田と元浜を紹介するというのを天魔は止めようとするが、同じクラスである以上、止める意味はないのかと考えを改める。そうこうしているうちに部室のドアが開き、他の部員たちが入ってきた。

 

「おはようございます。部長、天魔君、イッセー君、アーシアさん」

 

「……おはようございます。部長、天魔先輩、イッセー先輩、アーシア先輩」

 

「ごきげんよう。部長、天魔君、イッセー君、アーシアちゃん」

 

 それぞれがあいさつし、その中にしっかりとアーシアが含まれていることに天魔が感慨に浸っていると、リアスが立ち上がる。

 

「さて、全員がそろったことだし、ささやかなパーティーを始めましょうか」

 

 リアスが指を鳴らすとテーブルの上にケーキが出現すると、驚いた皆の視線が集まり、リアスは照れ臭そうにする。

 

「た、たまには皆で集まって朝からこういうのもいいでしょう? 新しい部員もできたことだし、ケーキも作ってみたから、みんなで食べましょう」

 

「部長の手作り! ありがたいっす!」

 

「事前に言っておいてくれれば俺も用意したのに……」

 

 リアスの用意したケーキに一誠が喜び、天魔が自分も何か用意したかったとぼやく。

 

「ほら、行くぞ。アーシア」

 

「はい、天魔さん」

 

 皆がテーブルへと近づいていく中、立ったままだったアーシアの方へ天魔が少し戻り、手を差し伸べる。アーシアが笑顔で駆け寄ると、手をとり仲間の待つテーブルへと向かっていった。

 




 感想・お気に入り、ありがとうございます。

 誤字確認中にドーナシークはとんでもなくゲスになってしまっていたような気がするのでタグに「アンチ・ヘイト」及び、「アンチ・ヘイトは念のため」を追加しました。
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