変態の双子の兄弟として   作:篠白 春夏秋冬

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Life.13 参戦への道

 グレモリー眷属がライザー・フェニックスとその眷属とのレーティングゲームに参加することになり、それが元々描いていた筋書きの一つでもあったのか、満足そうにしていたライザーはグレモリー眷属を一通り眺めると天魔に目を止め、嘲笑を浮かべる。

 

「しかし、リアス。君も趣味が悪いな。眷属は、まぁ、放っておくが、君が人間を飼うようになるとは思わなかった」

 

「ライザー!」

 

 ライザーの言いざまにリアスが激昂する。

 

 天魔は眷属ではないとはいえ、リアスからすれば身内も同然である。情愛の深い彼女からすれば、ライザーの発言は侮辱としか取れず、許すことはできなかった。それは眷属も同様であり、雰囲気が悪くなっていく。

 

 対して、天魔はやや呆れていた。普段からオーラを押さえているのは相手に侮らせるためにやっているという部分もあり、こういった嘲笑ぐらいなら、柳に風とスルー出来る。

 

 が、天魔のことを人間扱いしたのは予想外だった。天魔がこの学校で接触した上級悪魔はこの日を除けば二人。その両方ともが初見で天魔が悪魔であることを看破することはできなかった。とはいえ、まだ成熟もしていない悪魔であり、感知能力がさほど高くなくてもしょうがないだろうと考え、また、当時は悪魔であることを全力で隠していたこともあり、何も言わなかった。

 

 しかし、ライザーが全く感知していないとは思わなかった。現在は状況が落ち着いているため、然程力を入れた隠蔽は施していない。にも拘らず、成熟した上級悪魔であり、レーティングゲームの戦績をひけらかすような男が、隠蔽を見抜けないとはいかがなものかと考えていた。

 

 すぐに天魔に興味をなくし、リアスの反応を楽しむように、視線を外したライザーの視界に入らないようにリアスへと手を振り、気を静めるように伝える。侮辱された本人からのサインに歯噛みしながらもリアスは怒気を弱めた。だが、それは内に抑えただけであり、怒りの総量が変わったわけではなかった。

 

「まぁ、これ以上、君のペットに関してどうこう言うつもりはないさ。空調程度には使えるみたいだしな」

 

 リアスが怒気を弱めたのを、趣味が悪いとバカにされた気持ちが落ち着いてきたのだと解釈したライザーが得意げにしつつ、先ほど熱気を弱めた魔法を取り上げてリアスの機嫌を取ろうとする。

 

 それが、リアスたちからより怒りを買うことは理解していないようだった。

 

「しかし、リアス。まさか、ここにいる面子が君の下僕なのか?」

 

「だとしたらどうなの?」

 

「これじゃあ話にならないじゃないか? キミの「女王」である「雷の巫女」ぐらいしか俺のかわいい部下に対抗できそうにないな」

 

 笑みを浮かべたライザーの言葉にリアスが眦を釣り上げつつ返すと、ライザーが笑いながら指を鳴らす。

 

「こっちは駒がフルに揃ってるんだぜ?」

 

 部屋の魔方陣が輝きだし、十五人の女性が姿を現した。ライザーが自身の眷属を誇示するなか、しゃくりあげるような音が響く。

 

「お、おい、リアス……この下僕君、俺を見て大号泣しているんだが……」

 

 一誠が大号泣していたのだ。先ほどまでの剣呑な空気が霧散し、ライザーも完全にドン引きしていた。一誠の夢であるハーレムを達成したライザーに対する嫉妬と、目の前の光景に対する感動が彼に涙を溢れさせる原因となった。

 

「その子の夢がハーレムなの。きっと、ライザーの下僕を見て感動したんだと思うわ」

 

「きもーい」

 

「ライザーさまー、このヒト、気持ち悪ーい」

 

 リアスが理由を察し、嘆息しそうになりながら話すのを聞き、ライザーの眷属達は一誠を心底気持ち悪がっていた。呆れによるものか、彼女たちの気持ちがわかるためか、先ほどの天魔の件とは違い、誰一人怒気を発さなかった。

 

「そう言うな、俺のかわいいお前たち。上流階級の者を羨望の眼差しで見てくるのは下賤な輩の常さ。あいつらに俺とお前たちが熱々な所を見せつけてやろう」

 

 一誠を気持ち悪がり身を寄せる眷属の体をなでながら慰めると、その唇にキスを落とす。舌を絡め、水音を響かせるのを、一誠が悔しそうにしながら眺め、アーシアが目の隙間から見て顔を赤くしていた。

 

 他のオカルト研究部の面々が呆れる中、ライザーは銀の橋を作りながら唇を離すと、別の眷属ともキスを始める。しばらくして見せつけることに満足したのか口を離すと一誠を見やり、ライザーが告げる。

 

「お前じゃ、こんなこと一生できまい。下級悪魔くん」

 

「俺が思っていたこと、そのまま言うな! ちくしょう! ブーステッド・ギア! お前みたいな女ったらしと部長は不釣り合いだ!」

 

「は? お前はその女ったらしにあこがれてるんだろう?」

 

 嫉妬心に駆られた一誠がその身に宿る力を顕現させ、籠手に覆われた人差し指を突き付けて叫ぶも、ライザーに冷静に返され、ぐうの音も出なくなる。

 

「うっ、うるせぇ! それと部長のことは別だ! そんな調子じゃ、部長と結婚した後も他の女の子とイチャイチャしまくるんだろう!」

 

「英雄色を好む。確か、人間界のことわざだよな? いい言葉だ。まあ、これは俺と下僕たちとのスキンシップ。お前だって、リアスに可愛がってもらっているだろう?」

 

「何が英雄だ! お前なんか、唯の種まき鳥野郎じゃねえか! 火の鳥フェニックス? ハハハ! まさに焼き鳥だぜ!」

 

「ッフフハハハ! なるほど、確かに燃えてる鳥だもんな! なかなかいいセンスしてるじゃぁねぇの、イッセー!」

 

 一誠とライザーが言い合う中で飛び出した一誠の罵倒に天魔が噴き出し、それを見たライザーの表情が一変する。

 

「焼き鳥⁉ こ、この下僕悪魔ぁぁぁぁぁ! 調子こきやがって! 上級悪魔に対して態度がなってねぇぜ! リアス! 下僕の教育はどうなってんだ⁉」

 

 激昂して叫ぶライザーだったが、リアスはどこ吹く風でそっぽを向く。天魔はこの後の展開を予測して笑いを鎮めようとするが、ツボに入ったのかなかなか止まらなかった。

 

「焼き鳥野郎! てめぇなんざ、俺のブーステッド・ギアでぶっ倒してやる! ゲームなんざ必要ねぇ! 俺がこの場で全員倒してやらぁ!」

 

『Boost!!』

 

 一誠の声に応じ、籠手の宝玉が輝くと、音声とともに一誠の力が増す。そのまま勢いに乗って走り出した。

 

 「赤龍帝の籠手」を取り出した瞬間こそ驚いた様子だったが、ライザーは冷静にため息をつきつつ下僕に命じる。

 

「ミラ。やれ」

 

「はい、ライザー様」

 

 ライザーの命により小猫とそう変わらない体躯の少女が進み出て、棍を構える。

 

 一誠はミラの体格をみて油断したのか動きが鈍り、鋭く突き出された棍にあたるかと思われたが、その前に後方へ投げ飛ばされた。

 

 攻撃が当たらなかったミラが驚きの目を見開かせる暇もなくその視界が逆転する。いつの間にやら天魔が棍をつかんでおり、足を払いながらその手を体に引き付けるように回し、ミラを逆さに浮かせていた。

 

 急な動きにミラが棍から手を離してしまい、その体が宙を泳ぐ。ミラは背中から落ち始め、受け身を取り切れないと判断して、衝撃に対する覚悟を決めていたが、その体は天魔によって受け止められる。

 

 天魔は横抱きにしていたミラをゆっくりと下ろし、背を向けると、一誠のもとに戻り、右手で手刀を落とす。

 

「バカ野郎、見た目が小さいからって油断すんな。搭城さんのこと見えてねぇのか」

 

「わ、悪い」

 

 一誠に相対したミラが天魔にあしらわれたことに機嫌を悪くしながらも、ライザーが一誠に話しかける。

 

「リアスのペットは少しばかりできるようだが、弱いな、お前。今お前が戦ったのは俺の『兵士』ミラだ。俺の下僕では一番弱いが、少なくともお前よりも実戦経験も悪魔としての質も上だ。お前、最初の一撃見えてなかったろ。ブーステッド・ギア? はっ」

 

 一誠を煽るうちに機嫌を戻したのかライザーは嘲笑気味に言葉を続ける。

 

「確かにそいつは凶悪で最強無敵の神器の一つだ。やり方次第じゃ、俺どころか、魔王も神も倒せる。お前の他にも過去に使い手は数えるぐらいだが、存在した。だが、未だに魔王退治も神の消滅も成された事はない。この意味がわかるか? その神器が不完全であり、使い手も使いこなせない弱者ばっかりだったってことだ! お前も例外じゃない! こういうとき、人間の言葉でなんて言ったっけかな。……そうだ、『宝の持ち腐れ』、『豚に真珠』だ! フハハハ! そう、『豚に真珠』だ! お前のことだよ! リアスの『兵士』くん!」

 

 愉快そうに笑うライザーは逆鱗に触れたことに気づかない。

 

 が、しかし、すぐには動くことはない。そんなことはつゆ知らず、ライザーは笑いを鎮めると、顎に手を当てて考え始めた。

 

「だが、少しでも使いこなせるようになれば、楽しくなるかもしれないな……十日だ。リアス、ゲームは十日後にしよう。それだけあれば、君ならどうにかできるだろう」

 

「……私にハンデをくれるっていうの?」

 

「嫌か? 屈辱か? 自分の感情だけで勝てるほど『レーティングゲーム』は甘くないぞ。下僕の力を引き出してやらないと即敗北だ。初めてゲームに臨む君が下僕達との修行を行なっても何らおかしくない。いくら才能があろうと、いくら強かろうと、初戦で力を思う存分に出せず負けた奴らを俺は何度も見たぞ」

 

 リアスはライザーの言うことにも一理あると理解しているのかそれ以上の反論はしなかった。と、ここにきて天魔がグレイフィアに話しかけ始めた。

 

「えっと、グレイフィアさんでしたっけ? 部長のもう一人の「僧侶」が今ここにいないってことは、そいつは今回の非公式のレーティングゲームに参加できないって考えていいですかね?」

 

「はい、今回のゲームには不参加です」

 

 グレイフィアの回答を聞き、天魔が僅かに口角をあげる。そのことに皆が訝しむなか、天魔が実に堂々と提案する。

 

「だとすると、グレモリー眷属側は、本来より少ない人数で挑むわけです。そこで提案なのですが、その「僧侶」の枠で俺を参加させてもらえませんか?」

 

 その場にいる全員が目を見開く。そのことに最初に声をあげたのはライザーだった。

 

「人間が悪魔のゲームに参加する? はっ、下等な人間が、ゲームをなめてるみたいだな」

 

「一応言っておくが、俺は悪魔に属しているわけではないが、悪魔だぞ」

 

 天魔は未だ自身を人間と考えているライザーに対し、オーラを漏らして自分が悪魔であることを伝えると、ライザーの顔色がわずかに変わる。しかし、見抜けなかったのは悪魔としての力が小さすぎるからだと考えたのか嘲笑するような顔に戻る。が、その顔色はすぐに変わることになる。

 

「ああ! これは気づきませんで申し訳ございませんでした! よもやよもや! 不死の力を持つフェニックス家の嫡男様ともあろう御方が! 相手方に素性の知れない悪魔が一人増えることに対してこうも臆病になられるとは思い至りませんでしたので! まぁ、そうですよねぇ! 未経験の! 半人前の! 人数不足で力不足な婚約者とその眷属を相手に、婚家と本家の前で出来レースを演じるだけで美人の妻を娶り、貴族の当主に近しい地位につけるというのに! 不確定要素を持ち込まれるなんて怖くて仕方ないですよねぇ! えぇ、失礼いたしました。忘れてください。貴方様が不様にも不確定要素に()()()()しまったことについては私の心のうちに止めておきますので」

 

 天魔の口から出てきたのは、声を大きく、明瞭に、特に「おびえて」の部分など殊更に力を入れ、終始おかしそうに口をゆがめての、慇懃無礼にもほどがある、あからさまな挑発だった。

 

「貴っ様ぁぁぁぁぁ!! いいだろう! 貴様の参加も認めてやる!! だが、覚えておけ!! 貴様は必ず、この俺が燃やし尽くしてやる!」

 

 ライザーは乗った。それはそれはすがすがしいくらい綺麗に、天魔のたらした釣り針(挑発)に食らいついた。

 

「では、彼も参加ということでよろしいですね? ライザー様」

 

「ああ! 無論だ! もし上が認めないというなら、俺自身が出向いて説得してやる!」

 

「承知いたしました。では、魔王様にも確認をとり、追って連絡いたします」

 

 グレイフィアが確認をとるとライザーは鼻息荒く即答する。それを受けてグレイフィアが御辞儀をすると、ライザーたちは魔方陣を広げ、帰り支度を始めた。

 

「いいか! 貴様が尻尾を巻いて逃げるようなことがあれば、この町は火の海になると思え! ……リアス、次はゲームで会おう」

 

 そう言い残し、ライザーが転移しようとしたとき、ふと思い出したように天魔は左手の中にしまっていたものを放り投げる。イラついた様子のライザーがそれをつかみ、確認すると丸められた布だった。不可思議に思いつつ、それを開くと、布の正体はふんどしだった。その場の全員が困惑する中、ミラが服のすそを押さえ、座りこむ。

 

「挑発に使えるかもと思って抜いてたんだった。返しとくよ、悪いな」

 

 天魔がふんどしをひん剥いたのは棍をねじり、ミラの体が逆さになった瞬間である。引き抜いた際に体勢を崩してしまったので、あの時は受け止めたのだった。

 

「貴さ―」

 

 ライザーが何か叫ぼうとしたがちょうど転移が発動し、ほとんど何も伝えることなくその場から消えていく。あとには何となく気まずい沈黙が残された。

 

「兵藤天魔様」

 

「ああ、天魔でいいっすよ」

 

「では、天魔様。あのような行動はお控えください。周囲に影響を及ぼすことはないよう取り計らっていることはわかりますが、あれでは余計なものまで壊しかねませんよ」

 

「まぁ、気を付けます」

 

「私からはそれだけです。では、私は報告に参りますので失礼いたします」

 

 グレイフィアが沈黙を破り、天魔に忠告する。しかし、あまり反省のない天魔にほんの少し不服そうな顔をすると転移で帰っていった。

 

「天魔、貴方まで戦う必要はなかったのに、なんで……」

 

「部長、俺は二回も家族の危機を救ってもらいました。アーシアの件も本来首を突っ込むべきじゃないのに許可してもらいましたし、家の件もそうです。こういう時くらい何か返させてくださいよ」

 

「……わかったわ、頼らせてもらうわね」

 

 笑いながら告げる天魔に、リアスはため息をつくと微笑んで頼ることを告げる。

 

 二人の間に流れる空気にやきもきするものもいるのだった。

 

 

 

 

 




感想・お気に入りありがとうございます。

挑発についてはちょっとやり過ぎたような気もしましたが、上手く参加させる流れが作れなかったので、そのままにしました。御不快に思われた方には謹んでお詫び申し上げます。
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