変態の双子の兄弟として   作:篠白 春夏秋冬

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Life.14 特訓開始

「やっほー」

 

『やっほー』

 

 どこからかやまびこが聞こえる。おそらく一般の登山客か何かだろうが、一誠からすると恨めしいものだった。一誠の背と肩にはたくさんの荷物がかけられており、汗を流しながら息を切らしている。

 

「イッセーさん、大丈夫でしょうか?」

 

「あんぐらいできないと強くならんよ」

 

 不安そうにするアーシアに天魔はあっさりと返す。天魔の背にも一誠と同様に荷物が乗せられており、その上手足には重りがつけられていた。

 

 ちなみに今回は魔法による負荷の調整はしていない。一誠がつぶれて荷物が地面に落ちるのを防ぐためである。

 

 自分よりも荷物が多い祐斗と小猫に立て続けに追い抜かれ、奮起した一誠は必死で斜面を登っていった。

 

 目的地に着くころには一誠は体力を使い切って完全にダウンしていた。グレモリー家所有の別荘はテレビこそないものの、生活基盤は整っていた。

 

 しばらく休んである程度体力を回復し、別荘からある程度離れた場所でグレモリー眷属を目の前にして天魔が話し出す。

 

「さて、模擬戦でもしましょうか」

 

「いや、模擬戦ってどういうことだよ」

 

「これから鍛えるにあたって現在の状態を知っておくべきだと思ってな」

 

 天魔の突然の提案に一誠が思わず突っ込むが、天魔はあっさりと返した。

 

「じゃあ、イッセーと祐斗、天魔と小猫の組み合わせで──」

 

「いえ、六人がかりでいいですよ。俺が勝つんで」

 

「六対一? 驕りは身を亡ぼすわよ」

 

 天魔の提案に組み合わせを考え始めるリアスを遮り、挑発交じりに六対一を提案する。

 

 その言葉にリアスの表情がわずかに鋭くなるが、飄々としたまま天魔は続ける。

 

「驕り? 俺がミラの攻撃からイッセーを守った時の動きを追えなかった程度の実力の相手に手傷を追うほど、俺は弱くないですよ」

 

「そう、なら遠慮なくやらせてもらうわ」

 

 天魔の言葉に機嫌を悪くするリアスだったが、問答は無意味として戦意をたぎらせる。

 

「ああ、そうだ。知らない人もいるので、一つだけ言っておきます。俺の能力について、俺は指先から爪を出して攻撃します。強度は剣ぐらい普通に防げますし切れ味は、この通り」

 

 天魔は前置きをして両手に白い籠手を出し、指先から爪を出すと近くの木を切りつける。その動きを目で追えなかったこと、ごっそりと木を削り取った切れ味にリアスは少し頭が冷えた。

 

「爪は使いませんが、俺の指先が首とかに触れたらその人はリタイアという扱いにしてもらいます。いいですね?」

 

 天魔の確認に全員がうなずいた後、祐斗が疑問を投げかける。

 

「それはいいけど、僕の剣を受け止めるとするときに困ると思うけどどうするんだい?」

 

「爪で受け止めなきゃいいだけだろ? 大丈夫だ、こっちからは受け止められないタイミングで当てるだけだから。じゃぁ、このコインが地面に着いたら開始だ」

 

 その返答にわずかに祐斗の表情が引きつるが、それを無視して合図に決めたコインをはじく。高い音とともにコインがあがり、地面に落ちる音とともに祐斗と小猫が飛び出した。

 

「はぁ!」

 

「……しっ」

 

「よっと」

 

 祐斗と小猫がコンビネーションで仕掛けていくのをほとんど移動しないままに全てかわしながら、反撃に拳を打ち出す。二人は籠手に包まれた拳を防御できたものの大きく吹き飛ばされ、木にたたきつけられた。

 

「おら、イッセー。仲間が前線はってる間に倍化始めとけよ。強くなるのに時間かかるんだから」

 

「そ、そうか。ブーステッド・ギア!」

 

『Boost!!』

 

 天魔に促され、慌てて神器を起動する一誠をよそに赤黒い魔力と雷が天魔を襲う。しかし、その攻撃が当たるころはなく、天魔はすでにその場から飛びのいていた。着地と同時に再び祐斗と小猫が肉薄し、天魔をその場から動かさないことを目的として手数重視で攻撃を繰り出す。

 

 二人がタイミングを見て飛びのくと、その瞬間に魔力が命中する。リアスと朱乃は通ったと考えて僅かに表情を緩めたが、その場には天魔の姿がなかったことで逆に僅かに歪む。

 

「よし、俺も行くぜ!」

 

『Explosion!!』

 

 強化を止めて出力を安定させた一誠も攻撃に加わった三人での攻撃に天魔に防御の比重が上がり始める。しかし、それも長くは続かなかった。

 

『Reset』

 

「うわ⁉」

 

 一誠の倍化が解かれ、体勢を崩すのを皮切りに、天魔が攻撃を開始する。

 

 一誠の腹を手刀でついて吹き飛ばし、その隙を狙った祐斗の剣をかわす。そのまま回転を止めずに振った裏拳で祐斗の顎を打ち抜き、脳を揺らされて力の抜けた祐斗を蹴り飛ばして木にたたきつけた。

 

 祐斗への攻撃で死角となった方向から小猫が木を蹴って勢いをつけた拳を頭に向かって繰り出すが、天魔は身をかがめつつ腕をとり、一本背負いの要領で地面にたたきつけた。

 

 衝撃で肺の空気を吐きだした小猫の首に指を突き付ける天魔をリアスの魔力が襲い、天魔は飛び上がってそれをよける。そこに朱乃の雷が直撃し、模擬戦始まって初のクリーンヒットとなった。

 

 天魔の体が硬直し地面に落下するも、左右に揺れ動き、リアスたちの魔力による攻撃の狙いを絞らせないままに詰め寄り、首をなぞって通り過ぎる。アーシアは無傷だが、彼女に戦闘能力はないので決着となった。

 

 打撃を受けた前衛組の回復が終わると、天魔が話し出す。

 

「さて、いまので分かったと思いますけど、俺は強いです。やろうと思えばおそらくライザー・フェニックスを含め、眷属全員完封できます。全員で部長を守る盾になってれば終わりです。が、俺はその方法をとりません。あくまでリアス・グレモリー指揮下の一戦力として動きます」

 

「なんでだよ、部長の一生がかかってるんだぞ? 一番勝つ可能性が高いほうがいいだろ?」

 

 天魔の宣言に一誠が突っかかる。リアスの勝率の低い作戦をとることに不満そうだったが、天魔は話を続ける。

 

「最後まで聞け。無論、敗色濃厚な状況でまでそんなことはしない。基本的な動きとして駒の一つになるってだけだ」

 

「どういうことだよ」

 

「じゃあ聞くが。仮に俺一人の力で勝ったとして、それはリアス・グレモリーの勝利といえるか? 試合の結果だけ見れば間違いなくそうだろう。だが、眷属でない俺だけが戦闘し残りは防衛に徹するだけなどという内容の試合を、果たしてリアス・グレモリーとライザー・フェニックスの試合と呼べるだろうか」

 

「なるほど、確かにその状態だと、兵藤天魔対ライザー・フェニックス眷属だ。部長の婚約解消に納得する人も少なくなるかもしれない」

 

 天魔の話から何を言わんとしているかを察し、祐斗が引き継ぐ。天魔がそれにうなずくと全員が納得といった雰囲気を出した。

 

「とはいえだ、今のままではさっき言った状況になりかねない。まだまだ地力が足りないからな。基本的には事前に見せてもらった部長のメニューでいく。空いた時間で模擬戦だ」

 

「ええ、それでいきましょう。ライザーに目にもの見せてやるためにも、頑張りましょう」

 

 リアスの激に眷属が答え、訓練が始まった。

 

 日が出ている間に一誠は祐斗による剣術修行、朱乃との魔力修行、小猫との組手を行った。

 

 そして夜。

 

「うおおお! うめぇぇぇ! マジで美味い!」

 

「あんま急いで掻き込むと詰まるぞ」

 

 テーブルの上には大量に料理が並んでおり、それらがかなりのペースで消費されている。

 

 祐斗が移動中に摘んでいた山菜はおひたしにされ、メインの肉料理のそばに添えられている。肉は猪のものであり、天魔が捕ってきて来て調理したものだった。リアスの捕ってきた魚も塩焼きにされており、これも調理は天魔である。

 

「それにしても、天魔が料理をできるなんて、こういってはなんだけど意外だわ」

 

「できることが多くて困ることはありませんから」

 

「私もスープを作りましたけど……お役に立てている気がしません」

 

 天魔が調理を担当したことにより、訓練の時間が増え、リアスは喜んでいたが、共に調理を担当したアーシアは複雑そうな顔をしていた。

 

「手伝ってもらえてありがたかったし、とてもおいしいよ。アーシア、もう一杯スープをもらえないか?」

 

「は、はい。すぐによそってきますね」

 

 天魔の言葉にアーシアは嬉しそうによそいに行き、和やかに食事は進んでいった。

 

「さて、イッセー。今日一日修行してみてどうだったかしら」

 

 リアスがお茶を飲み、一誠に声をかけると、一誠は箸をおき悔しそうに話し出した。

 

「俺が一番弱かったです」

 

「そうね。それは確実ね。朱乃、祐斗、小猫はゲームの経験がなくても実戦経験があるから感じをつかめば戦えるでしょう。天魔は言わずもがなね。でも、イッセーとアーシアは実戦経験すらないに等しいわ。それでも、あなたのブーステッド・ギアとアーシアの回復は無視できない。相手もそれは理解しているはず、最低でも相手から逃げられるだけの力はほしいわ」

 

「逃げるってそんなに難しいんですか?」

 

 一誠の質問に天魔が答え始める。

 

「逃げるというのも戦い方の一つだ。仕掛けた罠に誘い込む。体勢を立て直して再び挑む。理由はなんにせよそれ相応の技術がいる。思い出したいものでもないかもしれんが、フリードに遭遇した時を思い出せ。あんな感じに実力差の開いた敵を相手に撤退するのは相当苦労する。あの時何も考えず背を向けて逃げていればそのまま死んでただろう。その辺はこれから学ぶしかないけどな」

 

「そういうこと、もちろん逃げることだけではなく、面と向かって戦う術も教えるから覚悟なさい」

 

「了解っす」

 

 天魔の言葉を引き継ぎリアスが放った言葉に一誠は即答する。それに満足そうに頷くと笑顔を浮かべ、面白そうに告げる。

 

「食事が終わったらお風呂にしましょうか。ここは温泉だから素敵なのよ」

 

 温泉という言葉を聞き、一誠の目の色が変わる。一誠の性格から何をしようとしているのか察した祐斗が釘を刺した。

 

「僕は覗かないよ。イッセー君」

 

「バッカ! お、お前な!」

 

「でもお前、隙あらば覗こうとするだろ」

 

「うぐっ!」

 

「あら、イッセー。私たちの入浴を除きたいの?」

 

 あまり聞かせるような話ではないため声量を押さえて話していたが、聞きつけたリアスが声をかけたことで一誠に視線が集まった。

 

「なら、一緒に入る? 私は構わないわ」

 

「ちょっと⁉」

 

 リアスの言葉に天魔が慌てるが、無視された。

 

「朱乃はどう?」

 

「イッセー君と天魔君なら、別にかまいませんわ。うふふ、殿方の背中を流してみたいかもしれません」

 

「え⁉」

 

「そんな⁉」

 

 リアスの問いに満面の笑みで朱乃が答え、一誠とアーシアが慌て始める。

 

「アーシアは? 天魔が一緒なら大丈夫よね?」

 

 話を振られたアーシアは顔を赤くしてうつむくと、少し時間をおいてうなずいた。

 

「最後に小猫。どう?」

 

「いやです」

 

 最後に振られた小猫は即答で拒否する。それが普通の反応だろうとほっとする天魔だったが、小猫の続けられた言葉に何とも言えない顔になった。

 

「……天魔先輩だけならいいかもしれません」

 

「へぁ⁉」

 

「……やっぱり駄目です」

 

「じゃ、なしね。残念、イッセー、天魔」

 

 一瞬希望を持たされ渋い顔をする天魔にがっくりしつつも後ろからつつきまわす一誠に振り向かずに肘を入れ、悶絶させるとため息を吐く。

 

「覗いたら恨みます」

 

「しないし、させないよ。安心して入っておいで」

 

「イッセー君。僕と裸の付き合いをしよう。背中、流すよ」

 

「う、るせ、え」

 

 天魔は先ほどの一撃によって声の出ない一誠を引きずり、祐斗とともに風呂に向かうのだった。

 

 

 そして風呂にて、性懲りもなく覗こうと穴を探す一誠を拳で鎮め、温泉を満喫する天魔に祐斗が話しかける。

 

「そういえば、天魔君も女子との混浴に興味あったんだね。普段からイッセー君を止める側だから、そういうことには興味ないのかと思ってた」

 

「お前は俺をなんだと思ってんだ。俺は別に聖人君子じゃぁねぇのよ。普段イッセーを咎めてんのは、相手が傷つくってわかってるからだ。本人が受け入れてんなら俺だって覗くわ」

 

 祐斗の言葉にため息をつきながら天魔が返すと祐斗は苦笑し、しっかり座れず沈みゆく一誠を引き上げた。

 

 修行二日目。

 

 一誠は筋肉痛に悶えていた。

 

 昨夜は風呂の後、悪魔は夜のほうが力の出るものであるため昼間以上のトレーニングを課されたのだ。

 

 それを考慮してか、リアスはこの日の午前中を勉強に当てることにしており、悪魔や堕天使、天使などの勉強とアーシアによるエクソシストについての講義に使うのだった。

 

 そして三日目。

 

 天魔は別荘の前に皆をあつめていた。

 

「なんでこんな時間にあつめるんだ?」

 

「ん~、そろそろ来るはずなんだがな。いや、走るときに緊張感があるほうがいいと思ってな。ほしいものもあったし、届け物ついでに援軍頼んどいたんだよ」

 

「届け物に援軍って、そんなつてあったのか?」

 

 一誠の疑問にふもとの方を見ながら天魔が答える。返答の要領を得ない一誠が質問を重ねると援軍がやってきた。

 

「いや、つてっていうか、皆知ってるやつなんだけど。お、来た来た」

 

「申し訳ありません。遅くなりました」

 

「いや、一応、時間前だ。助かるぜ、レイナーレ、ミッテルト」

 

 やってきたのはレイナーレとミッテルトだった。意外そうな顔をする一行をよそに二人をねぎらい、呼んだ理由を説明する。

 

「今日から走るときに不定期に光で攻撃してもらう。可能な限り威力は弱めてもらうが、悪魔である以上弱点であることには変わらない。当たればそれなりにきついと思うから注意して走ってくれ」

 

 にっこりと笑いメニューを過酷にする天魔にグレモリー眷属が冷や汗を浮かべるなか、この日の修行が開始された。

 

 

 そうして数日後の夜。

 

 疲労はあるものの、寝付けない一誠は水を飲もうとキッチンへと移動する折、天魔と遭遇した。

 

「天魔、こんな時間に何してたんだ?」

 

「朝食の仕込みと個人的なトレーニングだ。精神が昂っているから寝付けないんだろうが、あまり夜ふかしするなよ。明日に響くぞ」

 

 そう言い残し、そのまま天魔は部屋へと戻っていく。

 

 一誠は天魔を見送り一つため息をつくと、キッチンへ入る。水を飲んで一息つき、忠告に従い部屋に戻ろうとしたとき、リビングの灯りに気がついた。気になって覗くとリアスが本を読んでいた。

 

「部長、まだ起きてたんですね」

 

「あら、イッセー。あなたも起きていたのね」

 

「戦術の本ですか」

 

「ええ、こんなものを読んでも焼け石に水なのだけど」

 

「どういうことですか」

 

 表情を曇らせたリアスに一誠が問うと僅かに目を伏せると話し始める。

 

「相手がライザーだからよ。彼らはフェニックス。不死身と呼ばれる聖獣と同じ名前なのは伊達ではないわ。受けた傷はたちどころに治り、放つ業火は骨も残さない。ライザーの戦績は八勝二敗。この二敗は懇意にしている家系への配慮によるもの、早い話が八百長ね。実質的には全勝ということよ」

 

「そんな……」

 

 絶句する一誠をよそにリアスは表情を忌々しげにする。

 

「婚約の話が出た時点で嫌な予感がしたの。今に思えば、最初からこういう結果を想定していたのでしょうね。レーティングゲームの流行で最も台頭したのがフェニックス家なの。ルール上、王を倒すことが必要な場合が多いこともあって、フェニックスは最強クラス筆頭と呼ばれているわ」

 

 リアスが完全に嵌められた形になっていることを理解した一誠が何も言えないでいると、リアスは雰囲気を明るくして話し出す。

 

「でも、ライザーを倒せないという訳ではないのよ」

 

「マジですか⁉」

 

「ええ、方法としては二つ。圧倒的な力で押し潰すか、再生の都度倒すか。前者は神クラスの力が必要。後者はあちらが再生できなくなるまでこちらのスタミナを保つことが必要。精神を潰せば身体の再生もできなくなるの。天魔は後者の方法を取ろうとしているとのでしょうね。与える一撃が大きければ、それだけ倒す回数も少なく済むのよ」

 

「なるほど……」

 

 リアスの言葉に思考に沈む一誠はふと疑問に思っていたことを聞くことにした。

 

「そういえば、部長はなんで今回の縁談を拒否しているんですか?」

 

「……私は「グレモリー」なのよ」

 

「それは、まぁ、確かに」

 

 一誠がリアスの回答で彼女が言わんとしていることを察せていないことを理解し、少し表情を緩めて補足する。

 

「改めて名乗った訳ではないの。私はあくまでもグレモリー家の人間で、どこまでいってもその名が付き纏うってこと」

 

「嫌なんですか?」

 

「いいえ、誇りに感じているわ。けれど、私個人を殺しているものでもある。誰しも私のことを「グレモリーのリアス」として見るわ。リアス個人として認識してはもらえない。だから、人間界での生活は充実していたの。誰も爵位持ちの悪魔であるグレモリーなんて知らないのだから。皆、私を私として見てくれるもの。悪魔社会ではそんなことはなかったし、これからもない。私が充実していられるのは人間界でだけ。私は私個人を見てくれるヒトと一緒になりたいの。それが、私の小さな夢。……ライザーは私をグレモリーのリアスとして見ているわ。グレモリーとしての誇りは大切なものよ。矛盾した思いであることは理解しているけども、私はこの小さな夢を持っていたいの」

 

 リアスの話を聞き、少し考えていた一誠だったが、意識せぬままに言葉を紡ぐ。

 

「俺は部長のこと、部長として好きですよ。グレモリー家とか悪魔の社会のことはよくわかんないですし、俺にとって、部長は部長っていうか……何いいたいのか分かんなくなってきたけど、俺はいつもの部長が一番です」

 

 リアスは一誠の言葉に顔を赤くしていた。一誠が声をかけると慌てて誤魔化したが、顔の熱は引いていかなかった。

 

「それにしても、天才の部長の初陣の相手がそんな奴なんて、前途多難ですね」

 

「天才って言葉はあまり好きではないわね」

 

「どうしてですか」

 

「天から授けられた才能……宿敵である神から与えられたようで嫌な気分になるわ。私の才能は悪魔が、グレモリーが培ってきたものの結晶を受け継いだもの。神からもらったものだなんて思ったことは一度もないし、そんなことはありえない。私の力は我がグレモリー家と私のものよ。だから、私は負けない。戦う以上は勝つわ。勝つしかないの」

 

 自分に言い聞かせるように、それであっても堂々と言い切るリアスを見て、一誠は顔をうつむかせる。

 

「部長、俺、ダメです。山に来てから……てんでダメっス」

 

「イッセー?」

 

 一誠が弱々しく呟くのを聞き、リアスが怪訝そうな顔をする。

 

「皆と修行してて、強くなっているような気がするんですけど、それ以上に……差を感じてしまいました。剣の修行をすれば、木場の凄さがわかって『ああ、俺は木場みたいな剣士にはなれない』とわかっちゃって……。小猫ちゃんとの修行をすれば、小猫ちゃんの力を思い知って、魔力の修行をすれば、朱乃さんの偉大さを痛感して、横でアーシアはぐんぐん成長しちゃって……天魔なんて、今でも敵わないのに、皆が眠った後にもトレーニングして……俺にできないことをたくさん出来て……俺は何も出来なくて……。ブーステッド・ギアがあるから、大丈夫だ! って強がってみたりして……」

 

 気づけば、一誠は涙を溢していた。自分自身の才能のなさを、口に出したことでより忸怩たる思いとして染み入っていた。

 

「自分が一番弱いって、わかりました……。俺が一番役立たずだって……十分にわかっちゃったんです……。たとえ凄い神器を持っていても俺が持ち主じゃ、意味がないんだって。だから、あのときライザー・フェニックスは俺を笑ったんですよね。『宝の持ち腐れ』、『豚に真珠』、まさに俺の事じゃないですか」

 

 ボロボロと涙を流す一誠にリアスが近づくと、抱き寄せて頭を撫でる。

 

「自信が欲しいのね。いいわ、貴方に自信をあげるわ。ただ、今は少しでも体と心を休ませなさい。眠れるようになるまで私が傍にいるから」

 

 リアスの真意は掴めずとも、慈愛に満ちたリアスの行動に、一誠の表情が和らいでいく。

 

 一誠が眠るまで、そう時間を要すことはなかった。

 

 

 そして、翌朝。

 

 一誠はこの日、初日以来の「赤龍帝の籠手」を使用しての模擬戦を行うことになった。

 

 祐斗を相手とし、一誠が「赤龍帝の籠手」を起動して二分後に模擬戦が開始される。

 

 木刀を使う祐斗を相手に素手で立ち向かう一誠は祐斗の攻撃を防いでいく。反撃こそ当たらないものの、しっかりと防御をしている一誠にリアスから魔力を放つように指示が出た。

 

 一誠が集中させられた魔力は米粒程度のものだったが、それが放たれると「赤龍帝の籠手」によって強化され、大きさが岩のようになり飛んでいく。

 

 そして飛んだ先で山にあたり、山肌をごっそりと削り取った。

 

「……凄まじいっすね」

 

「お前らあとちょっとであんな感じのパワーアップした一誠にぶん殴られるところだったんだぞ」

 

「ドーナシークはよく死なずにすんだわね……」

 

 一誠の魔力の一撃にミッテルトが震え上がり、レイナーレは実際に攻撃を受けたドーナシークの丈夫さに感心していた。

 

「さて、感想を聞こうかしら。祐斗、どうだった?」

 

「はい、正直、驚きました。実は最初の一撃で決めるつもりだったんです。ですが、イッセー君のガードを崩せませんでした。打ち破る気満々だったんですがね。二撃目以降もしっかり防御されていまいました。木刀も魔力で覆っていたんですが、この通りです。あのまま続けていれば僕は得物を失って逃げ回ることしかできなかったでしょうね」

 

 祐斗が木刀を見せると木刀はひびが入っており、折れかけていた。

 

「イッセー、貴方は昨夜、「自分は一番弱く、才能がない」といっていたわね。確かに貴方は弱いわ。けれど、ブーステッド・ギアの力を使うあなたはレベルが違う。あの一撃は上級悪魔相当の一撃、当たれば大抵のものは消し飛ぶわ。基礎を鍛えた貴方は増大する力の器としては現時点でも相当なものよ。言ったでしょうあなたは鍛えるほど強くなっていくの。最初の数字が「一」から「二」になるだけでもあなたにとっては大きな成長なのよ。貴方はゲームの要。一人で戦うのなら倍化中は隙だらけで危険でしょうね。でも、今回私たちが挑むのはチーム戦。貴方をフォローする味方がいる。私たちを信じなさい。そうすれば、私たちもイッセーも強くなれる。勝てるわ!」

 

 模擬戦の結果をもとにリアスが自信をみなぎらせて話し、一誠のことを肯定する。

 

「貴方をバカにしたものに見せつけてやりましょう。相手がフェニックスだろうと関係ないわ。リアス・グレモリーとその眷属悪魔がどれほど強いのか、彼らに思い知らせてやりましょう!」

 

 リアスの言葉に眷属全員で返し、士気が上がる。

 

 天魔は疎外感を感じて、ちょっとだけ、首を突っ込んだことを後悔した。

 

 

 

 




 感想・お気に入りありがとうございます。

 UAも10,000を突破しました。

 本当にありがたい限りです。
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