変態の双子の兄弟として   作:篠白 春夏秋冬

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Life15 試合開始(ゲーム・スタート)

 決戦当日。

 

 オカルト研究部の面々は旧校舎に集合し、静かにその時を待っていた。各々装備の確認やリラックスできる体勢をとっている。

 

 開始十分前になったタイミングで魔方陣が輝き、グレイフィアが現れた。

 

「皆さん、準備は御済になられましたか? 開始十分前です」

 

 グレイフィアの言葉に全員が立ち上がり集合する。

 

「開始時間になりましたら、こちらの魔方陣からゲーム用に作られた異空間に転送されます。使い捨てのものですからいくら破壊していただいてもかまいません。また、今回のレーティングゲームは両家の皆様に加え、魔王ルシファー様も拝見されておられます。それをお忘れなきように」

 

「そう……お兄様が直接見られるのね」

 

 グレイフィアの注意事項にリアスが反応し、一誠が隣にいた天魔に話しかける。

 

「なぁ、いま部長、魔王ルシファー様のことをお兄様って言わなかったか? 気のせいだよな?」

 

「いや…聞き違いじゃねぇな」

 

「部長のお兄様は魔王ルシファー様だよ」

 

「魔王⁉ え、部長のお兄さんって魔王なんすか⁉」

 

「ええ」

 

 一誠の疑問を解決したのは祐斗だった。思わず叫び声をあげる一誠にリアスが肯定し、グレモリーと魔王ルシファーが結びつかない一誠の中に混乱が広がる。

 

「先の大戦で魔王様は致命傷を負い、亡くなられたんだ。しかし、魔王なくして悪魔は成り立たない。そこで、現存する悪魔の中から部長のお兄様が魔王として選出されたんだよ」

 

「なるほど、じゃ、いまの「ルシファー」とか「レヴィアタン」ってのは役職名みたいなもんなのか」

 

「そういうこと」

 

 木場の解説に一誠が理解を示し、肯定される。

 

「サーゼクス・ルシファ──「紅髪の魔王(クリムゾン・サタン)」それが部長のお兄様であり、最強の魔王様だよ」

 

「それで、部長が家を継がなきゃならないってことか」

 

 一誠がグレモリーの御家事情に詳しくなっていると時間が近づいていた。

 

「皆様、もうじき時間です。なお、転送後は魔方陣での転移は不可能となりますので、ご注意ください」

 

 時間になり、転送が始まる。光が天魔たちを包み、それが収まると、グレイフィアが消えていた。

 

「あれ? なんも変わってなくないか?」

 

「いや、こいつは」

 

 転送前と景色がほとんど変わらないことに一誠が疑問を浮かべると、周囲の差異に気付いた天魔が答えようとする。しかし、それは放送によって遮られた。

 

『皆様、グレモリー家とフェニックス家のレーティングゲームの審判役(アービター)を務める事となりました。グレモリー家使用人のグレイフィアでございます。我が主サーゼクス・ルシファー様の名のもとに、ご両家の戦いを見守らせていただきます。早速ですが今回のバトルフィールドはリアス様とライザー様のご意見を参考にし、リアス様の通う人間界の学び舎「駒王学園」のレプリカを再現したものをご用意しました。両陣営転移された場所が本陣です。リアス・グレモリー様が旧校舎・オカルト研究部部室。ライザー・フェニックス様が新校舎・生徒会室。各陣営の「兵士」はプロモーションの際には相手方の本陣付近まで赴いてください』

 

 天魔たちがグレイフィアの説明を聞きながら外の観察をすると、空は白く、敷地外は存在しないのか、大地が途切れていた。

 

『開始の時間になりました。なお、今回のゲームの制限時間は人間界での夜明けまでとなります。それでは、ゲームスタートです』

 

 グレイフィアの言葉とともに聞きなれたチャイムが鳴り、グレモリー眷属初のレーティングゲームが始まった。

 

 

 

「さて、まずはライザーの「兵士」八人を撃破するところから始めなければならないわ」

 

「あの部長。いいんですか? そんなゆっくりしていて、ゲームは始まってるんじゃ」

 

「イッセー。制限時間は夜明けまでだ。時間にして四時間半以上ある。全部使うんじゃないにしろ、最初から飛ばす必要はないだろ」

 

「そうよ。ゲームはフィールドを活用してこそ意味がある。短期決戦が定められている場合を除き、基本的に長時間行うことになるの」

 

 落ち着いているリアスの一誠が疑問を抱き、天魔とリアスがそれをほぐす。戦闘経験の浅い一誠は理解しきれていないようだったが、時間を無駄にできるわけではないのでゲームの話に入る。

 

 今回のゲームにおける戦力分析が始まり、レーティングゲームや駒の特性に関して理解の薄い天魔と一誠、アーシアが蚊帳の外となり、話が詰められていく。序盤の動きが決まり、祐斗と小猫が敵の進行を阻むための罠を設置に、朱乃が幻術を掛けに向かったところで一誠がリアスに呼びかけた。

 

「あの、部長。俺は一体何をすれば」

 

「そうね、一誠はプロモーションをしないといけないわね。こっちにいらっしゃい」

 

 一誠がリアスに呼ばれ隣に座る。最終的に膝枕の体制となり、感動で涙を流す一誠だったが、リアスが魔方陣をいじると目を見開いて自分の手をまじまじと見た。

 

「わかるかしら? 今あなたにかけていた枷を解放したの」

 

「枷、ですか」

 

「そう、貴方を転生させる際に「兵士」の駒を八個使ったけれど、転生したばかりのあなたの体ではその力を受け止められなかった。だから、駒の力に制限をかけることで、あなたを守ることにしたの。それを今、少しだけ解放したわ。いい? イッセー。相手が女の子でも倒すのよ。手加減しちゃダメ。相手は手加減などしてくれないのだから」

 

「はい! 部長。俺、絶対に部長を勝たせてみせます!」

 

「ええ、期待しているわ。私のかわいいイッセー」

 

 膝枕の体勢のまま決意を新たにする一誠に天魔は何とも言えない気持ちになるのだった。

 

 

 

 外に出ていた祐斗、小猫、朱乃が戻り、戦闘準備が整うと改めて話をすり合わせ、天魔、一誠、小猫でチームとなっていた。

 

「イッセー、小猫、天魔。体育館に入ったらバトルは避けられないわ。指示通りに頼むわね。あそこは重要な場所になるわ」

 

「……はい」

 

「了解です」

 

「俺も問題ありません」

 

 小猫、天魔、一誠が肯定を返し、リアスは祐斗たちにも指示を出す。

 

 全員の肯定を受け取るとリアスが声をあげる。

 

「さて、みんな、準備はいいかしら。相手は不死身のフェニックス家の中でも有望視されている才児、ライザー・フェニックス。さぁ、消し飛ばしてあげましょう!」

 

『はい!』

 

 全員で返事をし、駆けだす。途中までは祐斗も行動していたが、目的地が違うため別れることとなった。

 

「じゃ、先に行って待ってるよ」

 

「おう、先に行って待ってろ」

 

 祐斗と一誠が言葉を交わし、天魔たちは体育館へと向かう。体育館へと入ると小猫が止まり警告を口にする。

 

「敵です」

 

「グレモリー眷属の悪魔さんたち、出てきなさい! 隠れても無駄よ。ここに入ってくるのは監視してたんだから」

 

 ライザーの眷属の言葉を受け、隠れても無駄かと堂々と出ていく。

 

 体育館のコートにはチャイナドレスの少女と双子らしい体操着の少女が二人にミラがいた。

 

「さて、確かチャイナドレスの子が「戦車」、あとの三人が「兵士」だったか。搭城さんは「戦車」をお願いできるかな? ミラは俺のこと睨んでるし、俺がやろう。イッセー、二人になるが、いけるか?」

 

「任せろ! ブーステッド・ギア!」

 

『Boost!!』

 

 それぞれの相手を決めると飛び出す。相手が決めた組み合わせも同じようで、きれいに分かれることとなった。

 

「よう、確か、ミラだったか」

 

 ミラに相対して軽口をたたく天魔だったが、返事は棍だった。

 

「へぇ、前回より突きが鋭いね。特訓した?」

 

「煩い!」

 

 天魔の軽口をミラは切って捨て、次々に棍を繰り出すが天魔は全てかわしていく。

 

 天魔がほかの戦いをうかがうと、小猫は優勢に戦っており、一誠はチェーンソーを持った双子に追い掛け回されていた。

 

「武器のチョイスえっぐいなぁ。あれもライザーの趣味なんか?」

 

 よそ見しながらも完ぺきにかわしていく天魔に苛立ちを大きくしながらも、ミラは鋭く突きを繰り出していく。

 

「よし、行くぜ! 俺の神器!」

 

『Explosion!!』

 

「まずは君達!」

 

 一誠が「赤龍帝の籠手」の倍化を止め、攻勢に出る。双子の攻撃をかわすと打撃を当てて吹き飛ばす。そして、天魔の方を向いて叫んだ。

 

「天魔!」

 

「何すんのかわかんねぇけど……そらよ! 受け取れ!」

 

「きゃぁ!」

 

 天魔がミラの攻撃をかわして一誠の方に投げ飛ばすと、一誠は空中ですれ違いざまにミラに軽く触れ、天魔の近くに着地した。

 

「絶対無力化できるって自信満々だったから付き合ったが、マジで何企んでんだ? お前」

 

「すぐにわかるって」

 

「こんな男に2度も負けたらライザー様に怒られちゃうわ!」

 

「「絶対バラバラにする!」」

 

 双子が再びチェーンソーに火を入れ駆けだす。ミラも棍を構え直して突撃してきた。

 

「フフフ、刮目せよ! これが俺の新必殺技! 「洋服崩壊(ドレス・ブレイク)」!」

 

 一誠が指を鳴らすと同時に一誠が触れた三人の服がはじけ飛ぶ。下着さえもバラバラになり、全裸になった。

 

「「「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」

 

 三人が大事なことを隠しながらうずくまる。一誠は垣間見えた三人の裸体に鼻血を噴き出し、天魔も突然の事態に驚愕しながらも目に焼き付けてしまった。

 

「フハハハハ! どうだ、見たか! これが俺の技だ! その名も「洋服崩壊」! 俺は脳内で女の子の服を消し飛ばすイメージだけを、延々と、延々と繰り返し妄想し続けたんだ! 魔力の才能を、全て女の子を裸にするためだけに使い切った!」

 

「なるほどなるほど、これは余程のことがない限りは確実に行動不能にできるな。ふざけんな!」

 

「ごふっ」

 

 天魔が怒りのままに拳を振るい、一誠の右頬を殴る。明らかな同士討ちだが、味方である小猫からは非難の目は感じなかった。

 

「ったく、ほら、これ使いな……ん、あぁ? そういえば、この技が完成してるってことは、合宿中に練習してたってことだよな? イッセー、正直に話せよ? 一体誰を相手に練習してたんだ?」

 

「……アーシア」

 

「オラァ!」

 

「ぐはぁ!」

 

 天魔が大きなタオルを取り出し、ライザーの眷属に投げ渡すと、ふと気づいたように一誠に詰め寄る。一誠が目をそらしながら真実を告げると、もう一発拳を入れる。

 

「……見損ないました」

 

 絶対零度の視線の小猫と軽蔑するような目のライザーの眷属によって空気が冷え込んでいくなか、リアスから通信が入る。

 

『イッセー、小猫、天魔。聞こえる? どうなってるかしら?』

 

「一誠はいいのをもらっちまいましたが、とりあえず大丈夫です。搭城さんも無事です」

 

『一誠が? まぁいいわ。朱乃の準備が整ったの。作戦通りにお願いね』

 

「了解! 撤収します!」

 

 通信を終えるとともに天魔が一誠を背負って体育館の外へと走り出す。小猫もそのあとに続き体育館を後にする。ライザーの眷属が困惑するが、かまわず外に出ると一拍置いて体育館が吹き飛んだ。

 

撃破(テイク)

 

『ライザー・フェニックス様の「兵士」三名、「戦車」一名、リタイヤ!』

 

 朱乃の声が上空から聞こえるとともにグレイフィアの宣言が聞こえる。

 

「うまくいったみたいだな」

 

「はい、先輩、それは……」

 

 天魔がほっとしたような声をあげると、小猫も同意して天魔を見る。天魔の手は淡く輝いており、アーシアの「聖母の微笑」のように一誠の体を癒していた。

 

 その光景に、小猫は目を見開くと驚愕から声をこぼす。天魔はわずかに間を開けると口を開いた。

 

「……「仙術」、って言ってな。生命力をあつめて自己治癒力を高めることができる。アーシアほどの力は出せないが、これぐらいの打撲ぐらいなら治療できる」

 

「……そう、ですか……」

 

「おお、痛みが引いていく……便利なもんだな」

 

「……あんまり怪我がひどいとすぐには治んないぞ。今回は内蔵が無事なうえ、治りやすいように加減してダメージ入れただけだ。…あとでもっかい〆る

 

「……はい」

 

 天魔が怒りをにじませながら口にすると、一誠が震えながら答える。一誠はゲームの後の人生が続くことを祈った。

 

『皆、聞こえる? 朱乃が最高の一撃をうまく決めたわ。最初の作戦は上手くいったわね』

 

「ええ、次は…!」

 

 リアスの通信を受け、空気が弛緩した瞬間、小猫の立っていた場所が爆発した。

 

「小猫ちゃん!」

 

「……っぐぅ」

 

 一誠が声をあげると天魔が魔法で風を起こし、土煙を吹き飛ばす。煙が晴れた先には小猫が横たわっていた。

 

「あら? 思っていたよりいい反応ね。あのタイミングから外させるとは思わなかったわ。まぁ、撃破には至らなかったけど十分ね。なにせあなたたちは人数が少ないもの、一人行動不能になるだけでも大打撃でしょう?」

 

「…くっ、悪い、搭城さん。ちょっと遅れちまった」

 

 小猫は足を負傷していた。爆発の直前に天魔が小猫を突き飛ばしたが、爆発の範囲に押し出すまでは至らなかったのだ。

 

「部長、アーシアをこっちに送れませんか? 小猫ちゃんが!」

 

『難しいわね。あちらの「女王」の射程圏内にアーシアを送るわけにはいかないわ』

 

「くそっ! ライザーの「女王」! 俺が相手だ! 降りてきやがれ!」

 

 痛みの引いた一誠が立ちあがり、ライザーの「女王」に向かって吠える。そんな一誠に天魔は左手で手刀を突き入れ落ち着かせた。

 

「あほか。降りてくるわけねぇだろ。あいつの相手は姫島先輩に任せるしかねぇ」

 

「天魔君の言う通りですわ。ここは私の仕事です」

 

 天魔と朱乃の言葉に一誠は歯噛みするが、朱乃は笑顔を浮かべて続ける。

 

「大丈夫。この「女王」は私が全身全霊をかけて消し飛ばしますわ」

 

「朱乃さん! 頼みます!」

 

 その言葉を受けて一誠は腹を決め、動き出す。天魔も小猫を背負い、一誠に続いた。

 

 彼らは背後には雷鳴と爆発音が響く中、運動場へと走っていく。

 

 

 




 感想・お気に入りありがとうございます。

 ゲームの時間は四巻の時期をプール掃除をしている描写から遅くとも6月下旬と仮定。三巻の内容から、四巻と時間が然程開かないだろうと仮定。また、「地方都市」というセリフがあったため、二巻の時期を5月後半のどこかとして静岡の日の出の時間から設定しました。
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