変態の双子の兄弟として   作:篠白 春夏秋冬

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Life.17 覚悟と代償

 一誠が校舎へと駆け込むのを見送り、ライザーの眷属を見回して天魔が告げる。

 

「一応、忠告しておく。搭城さんに、けがして動けないうちの「戦車」に手を出そうとするなら容赦はしない。全力で、それこそリタイヤする前に死ぬ勢いで攻撃する」

 

「あらあら、面白いことを言いますのね。それでけん制しているつもりなのかしら」

 

「俺はまだ一度もリタイヤさせたことがないからな。万が一があるかもしれん。ってか、妹さんはそっち行っといてくれよ? 俺は戦う気のないやつを戦いに巻き込むつもりはないし」

 

 ライザーの眷属が天魔を再び包囲する中、天魔はレイヴェルと軽口をたたきあう。レイヴェルが肩をすくめながら小猫の近くへと移動したのを見て、天魔も構えをとると、祐斗に向かって声を張り上げた。

 

「木場ぁ! さっきはお前に合わせて、隠れるのをやめて出て行ってやったが、別に俺は騎士道云々は気にしないからな! 我を通したけりゃ、こっちが終わる前に決着つけろよ!」

 

「了解。急がせてもらうよ」

 

 天魔の言葉に祐斗の剣筋が鋭くなる。先ほどまでと異なり、近くに助けが必要となりそうな味方がいないことが集中力を高めたようだった。

 

 そして、天魔側も戦闘が始まる。

 

 左右から仕掛けてきた「兵士」の二人の攻撃をさばいて反撃で弾き飛ばし、飛び込んできた「騎士」の唐竹割りの一撃を右脚を軸にその場で反時計回りに回るようにかわす。かわした勢いのまま蹴りを叩き込むと、剣の腹で防御されたのを見て、追撃に出る。それを「僧侶」の魔法で足止めされ、そのコンビネーションに舌を巻いた。

 

「やっぱゲームの経験があるってのはちげぇな。多対一での戦い方がよく錬られてる」

 

「当然ですわ。不死身の能力によるところが大きいといっても、ゲーム戦績は実質無敗ですもの。初めて参加するあなた方と差が出ない方がおかしいのです」

 

「なるほどなぁ。しかし、きっちり受けられるとなると、弾くだけじゃなくてしっかり当てなきゃダメか」

 

 天魔は今の攻防でリタイヤにならなかったことから、先程の攻撃では足りないことを理解し、行動を始める。呪文を詠唱し、魔法陣が組みあがり始めると、それを警戒した「兵士」と「騎士」が攻撃するが、それをするりと避け、魔法を発動する。雷鳴がとどろき、「僧侶」へと向かった。狙われた「僧侶」は慌てて防御するが、その防御を貫通して感電し、意識を失って光に包まれ消えていった。

 

『ライザー・フェニックス様の「僧侶」一名、リタイヤ!』

 

「やっぱ雷は使い勝手がいいな」

 

「ニィ、リィ、シーリス! 距離を詰めなさい! 至近距離なら強力な魔法は使えませんわ! それと、なるべく右から仕掛けなさい! どうやら負傷しているようですわ!」

 

「よく見てんなぁ」

 

「僧侶」のリタイヤにより、天魔の魔法への警戒を強め、レイヴェルが近距離戦に注力するように指示を出し、次いで攻め方を変えさせる。

 

 天魔の負傷は事実だった。小猫を爆破から守ろうとした際に、押すために使った左腕が爆発に巻き込まれていたのだ。周囲に気付かれないよう治すための仙術の出力を抑えつつ治療を進めていたが、僅かに漏れた光をレイヴェルは見逃さなかった。

 

 天魔は攻め方の変わった三人の攻撃をさばきつつ反撃を入れていく。消耗していくライザーの眷属に対し、攻撃を受けない天魔だったが、焦っていくのは天魔だった。

 

 一誠を不利な戦闘に投じているため、ある程度の攻防を続けてゲームとしての体裁を整えた以上、急いで彼女たちを倒したいところだったが、反撃の際にフォローが入るため、クリーンヒットとはいかず、消耗戦のようになっていた。

 

 その焦りから一つ舌打ちをすると、「騎士」の剣をかわした直後の「兵士」の一人の攻撃を天魔が左腕を差し込み防御し、戦闘開始から初めて天魔に攻撃が当たる。天魔が足を止めたことで、畳みかけるために、もう一人の「兵士」が攻撃を仕掛けようとしたが、下から風の魔法によって顎を撃ち抜かれ、脳を揺らされて意識を奪われる。そのことに驚愕し、一瞬動きの止まった「騎士」の胴に拳を叩き込むと、肺の中の空気が一気に絞り出され、「騎士」の体から力が抜けた。最後に残された「兵士」は味方をあっという間に減らされたことで警戒したのか後ろに下がってしまい、放たれた雷の魔法によって撃ち抜かれた。

 

『ライザー・フェニックス様の「騎士」一名、「兵士」二名、リタイヤ!』

 

「いっつつ……囮作戦は成功だったが、頭に響くな。さて、木場は……」

 

 天魔が祐斗の方を見ると、優勢ではあるものの、未だに剣を交えていた。先ほどの宣言通りに介入して終わらせようとしたが、響いたアナウンスに硬直する。

 

『リアス・グレモリー様の「女王」一名、リタイヤ!』

 

 グレモリー側の悪魔たちが目を見開き、体をこわばらせた。その瞬間、つばぜり合いを演じていた祐斗とカーラマインが立っていた場所が爆発する。

 

「木場! カーラマイン!」

 

『ライザー・フェニックス様の「騎士」一名、リアス・グレモリー様の「騎士」一名、リタイヤ!』

 

「「騎士」、撃破」

 

「味方ごととか、やってくれんじゃぁねぇか」

 

 アナウンスに続いて声が聞こえたほうに目を向けると、ライザーの「女王」が浮いていた。

 

 身にまとう服はボロボロであったが、そこから見える肌は綺麗なものであり、違和感の強いものであった。

 

「回復……「涙」を使ったか……」

 

「あら? 知っていたのね? でも、悠長に話していていいのかしら?」

 

「女王」が手を伸ばすと、天魔の背後で爆発が起きる。その場所はちょうど小猫とレイヴェルがいた場所であり、天魔の動揺を誘うための手であった。

 

「確かに長話している暇はねぇな。とっとと決めて屋上に行かなきゃならん」

 

 しかし、天魔に今の爆発による動揺は浮かばない。煙が晴れると結界はいまだに健在であり、いつの間にか囲われていたレイヴェルの服にさえダメージはなかった。

 

「私も不死身ですし、別に守っていただかなくてもよかったのですけど」

 

「さっきも言ったが、戦う意志のない奴を巻き込むつもりはないんだよ。しかし、この程度の防御で防げるなら、あの時は突き飛ばさなくてもよかったな。ごめんね、塔城さん」

 

 レイヴェルの言葉に天魔は鼻を鳴らしていなす。「女王」に対する挑発も兼ねたセリフは少しは効果があったのか、ややイラついた表情に変わる。

 

「これ以上時間をかけるわけにはいかないからな。一気に決めさせてもらう」

 

 そう言って籠手を現出させると爪を伸ばす。明らかに近接戦闘の構えをとる天魔の姿に小猫は疑問を抱いた。

 

「先輩、羽がないんじゃありますんでしたっけ?」

 

「ああ、俺は悪魔の翼では飛べない。なら、跳べばいいんだ」

 

 小猫のつぶやきに驚くレイヴェルをよそに、天魔はグッと身をかがめると、「女王」に向かって跳び上がった。あまりに直線的な動きを「女王」はあっさりとかわすと、嘲るような顔をするも、その表情は驚愕に染まる。

 

「な、何が……⁉」

 

 天魔が空中で向きを変え、とびかかってきたのだ。慌ててかわした「女王」だったが、その腕には切り傷ができていた。

 

 その事実に半ば呆然とした「女王」の前で、天魔は空中に降り立った。

 

「今言ったじゃないか、跳べばいいって」

 

 空中に立つ天魔の足元には結界が張られていた。天魔が空中で体の向きを変えた地点にも小規模の結界が張られており、これを使って「女王」に襲い掛かったのだった。

 

「種明かしはここまで。とっとと墜ちろ」

 

 次の瞬間には「女王」を中心に球形に結界が張られ、それを蹴って天魔が跳びまわる。閉じ込められ、衝撃による自爆を恐れて得意の爆破を使えない「女王」は必死にかわそうとするが、全身を切り刻まれ、転送されるまでそう時間はかからなかった。

 

『ライザー・フェニックス様の「女王」一名、リタイヤ!』

 

「こんな……ことが……」

 

 天魔は出血多量により転送されていく「女王」を見送り、屋上を気にしつつ小猫の近くに降り立つ。

 

「搭城さん、悪いけどここに置いていく。残りはこの妹さんとライザーだけだから、多分大丈夫だと思う。終わったらすぐにアーシアを連れてくるから」

 

「分かりました……気を付けてください」

 

 天魔と小猫の会話を聞き、勝つ前提で話しているのを理解し、レイヴェルが口を挟んだ。

 

「本当に行くつもりですの? フェニックスは不死身ですのよ? 無駄なことはせず、ここで震えている方が利口ではなくて?」

 

「震える理由はないな。さっきも言ったが、勝つつもりで挑まない訳がない」

 

「どうやって勝つつもりですの?」

 

「精神擦り切れるまでボコり続ける。俺ができる手はそれだけだ」

 

「……ハァ、多少はいいかと思いましたけど、頭の中まで筋肉が詰まった解決法とは思いませんでした……差し上げますわ。使い方は、わかりますわね?」

 

 レイヴェルはため息をつくと懐から液体の入った小瓶を取り出すと天魔に差し出す。天魔は受け取った小瓶を眺めると表情を驚愕に染める。

 

「「フェニックスの涙」……こんなの渡していいのかよ? これがあったから、そっちの「女王」はうちの「女王」と戦った傷がなかったんだろうし」

 

 小瓶の中身はフェニックスの涙だった。かけるだけでも傷を癒す回復薬だ。天魔はライザーの「女王」の状態から、朱乃がライザーの「女王」に敗北した原因だろうと考えついた。

 

「別にかまいませんわ。借りがあるのは癪ですし、どうせ勝てませんもの。精々あがいて、無様なさまを晒してくださいまし」

 

「……ありがとな。これでこっちが勝っても恨むなよ」

 

「自分でしたことです。そんなこといたしませんわ。それよりも、淑女の髪に気安く触るなど礼儀が成っていませんわよ」

 

「これは失礼いたしました、お嬢様。じゃ、ありがとな」

 

 天魔が憎まれ口をたたくレイヴェルの頭をなでると、彼女は手をはたいて落とす。つんけんした態度に苦笑いすると、小瓶の中身を左腕にかけて瓶をしまって踵を返し、校舎ヘ向かう。玄関ではなく外壁ヘ進むと、跳び上がり、オーラと炎がまき散らされる屋上を目指し、壁と結界を蹴って登っていく。

 

「変わった方ですわね。敵である私さえ守り、あまつさえ礼を言うとは」

 

「敵のあなたが先輩を語らないで」

 

「けがをして動けないのに何を言うのかしら。燃やしますわよ」

 

 残された小猫とレイヴェルは言い争っていた。

 

 

 

 時は少しさかのぼり、一誠の新校舎突入時。

 

 天魔の開けた道を通り、新校舎に踏み込んだ一誠は自身の中の駒の特性が反応したのを感じ、力を込めて言葉を紡ぐ。

 

「プロモーション! 「女王」!」

 

 一誠の中の駒が変わり、力が増幅する。駒の変化を実感し、拳を握ると改めて駆け出す。

 

「行ける! 部長を守るんだ!」

 

 一誠は階段を駆け上がり、屋上を目指す。その最中、一誠は自身の中にいる存在に向かって話しかける。

 

「おい、赤龍帝! 話がある! 出てこい!」

 

『なんだ? どうした、小僧?』

 

「天魔に話を聞いた、本当にあんなことできるのか?」

 

 一誠は赤龍帝に対して天魔から聞いた話を聞かせると、赤龍帝が面白そうに返した。

 

『ああ、できる。しかしいいのか? こんなことをすれば、後戻りはできんぞ』

 

「やるのはさすがに最終手段だ。悔しいけど、俺がやるべきは時間稼ぎだからな」

 

『っくく、そうか。なら、準備だけはしておいてやる。精々後悔しないようにな』

 

「頼んだ!」

 

『そうだ、最後に一つ。この前の邂逅では名乗らなかったからな。俺は赤い龍の帝王(ウェルシュ・ドラゴン)・ドライグ。よろしくな、相棒』

 

「おう! よろしく!」

 

 赤龍帝との話を終え、屋上へと急ぐ。上る最中に敵のリタイヤのアナウンスを聞き、頼もしさを感じながら走る。たどり着いたドアを開け放ち、声をあげた。

 

「部長ォォォ! 兵藤一誠、ただいま参上しましたァァァ!」

 

「イッセー!」

 

「イッセーさん!」

 

 リアスとアーシアが一誠の方を向き、嬉しそうに声をあげる。

 

「ドラゴンの小僧か……うまく抜けてきたようだな」

 

「へっ、俺だけじゃないぜ、すぐに天魔が上ってくる。戦力差は広がるぜ」

 

「ハッ、まさか、俺よりもおまえたちのほうが戦力が上だとでも思っているのか? リアス、降参(リザイン)するんだ。もうお前たちとの力の差は分かっただろう。これ以上は何をしても無駄だよ」

 

「ふざけないで!」

 

 リアスが激高し、滅びの魔力を放つ。ライザーはそれをかわすことなく正面から受け、上半身が吹き飛んだ。一誠が喜ぶのもつかの間、炎が沸き上がり、ライザーは元通りの姿を形成すると、何もなかったかのような顔をする。

 

「アーシア、俺の治療が終わったら下がってくれ。アーシアの力が俺たちの生命線だ」

 

 一誠はその間にアーシアの治療を受けると、アーシアを下がらせリアスに並ぶ。

 

「部長。勝負は続行で構いませんね?」

 

「ええ、まだまだこれからよ」

 

「行くぜ! ブーステッド・ギア!」

 

『Explosion!!』

 

「赤龍帝の籠手」が起動し、移動中に高めた一誠の力が安定する。炎の舞う中の戦闘が始まった。

 

 一誠の殴打がライザーの体を削り取るが、それに構わず繰り出されたライザーの拳で逆に吹き飛ばされる。アーシアの回復を受ける間、リアスが盤面を支え、回復するなり動き出す。

 

『リアス・グレモリー様の「女王」一名、リタイヤ!』

 

 朱乃のリタイヤのアナウンスに歯噛みしながら魔力を打ち出すと、ライザーはその大きさに警戒したのか回避する。その先にリアスの魔力が放たれており、再びライザーの体が削られる。

 

『ライザー・フェニックス様の「騎士」一名、リアス・グレモリー様の「騎士」一名、リタイヤ!』

 

 再生していくライザーはその体から炎を放ち、追撃を防ぎつつ、元通りになった頭で話し出す。

 

「なるほどな。向かってくるだけのことはあるらしい。だがな、それでも俺の勝ちは揺るがない。それが不死身ということだ」

 

「やってみなきゃわかんねぇだろ!」

 

「確かに「聖母の微笑」による回復で何度も向かってくるお前の根性は認めてやる。だがな、ユーベルーナが来れば、その時点でそのサイクルも」

 

『ライザー・フェニックス様の「女王」一名、リタイヤ!』

 

「何⁉」

 

 ライザーの言葉を遮って流れてきたアナウンスにライザーは言葉を失う。想像もしていなかった自身の「女王」の敗北に目を見開き、目つきを変える。

 

「ユーベルーナがやられるのは予想外だ……これ以上遊んでいると足元をすくわれかねんな……あの小僧を焼き尽くせないのは業腹だが、不測の事態が起きるよりはましだろう!」

 

 ライザーが戦意を漲らせ、炎をまき散らすのを見て、一誠も覚悟を決める。

 

「部長。アーシアのとこまで下がって防御していてください。申し訳ないですけど、部長のことを考えながら戦えません」

 

「イッセー、何か考えがあるのね?」

 

「ええ、部長。俺には木場みたいな剣の才能は有りません。朱乃さんみたいな魔力の天才でもないし、小猫ちゃんみたいなバカ力もない。アーシアみたいな治癒能力もなければ、天魔みたいな魔法や格闘戦のセンスもないです。それでも、最強の「兵士」になります! 貴方のためなら、俺は神様だって倒してみせます! この「赤龍帝の籠手」で! 俺の唯一の武器で! 俺はあなたを守って見せます!」

 

 一誠の声に気持ちがこもるのにつれて、左手の宝玉の輝きが増し、籠手が覆う部分が増えていく。左腕が完全に覆われるのを一誠が確認して、叫ぶ。

 

「輝きやがれ! オーバー・ブーストォォォ!」

 

『Welsh Dragon over booster!!!!』

 

 一誠の叫びに応じ、籠手から放たれた赤い閃光が一誠の体を包み、鎧が形成されていく。

 

 そんな中、一誠は合宿の夜に話したことを思い出していた。

 

 

 

『すぐにでも強くなりたいって……積み重ねもない力を得ても、それは脆いもんだ。すぐにぼろが出る。ってもまぁ、今そんなこと言ってもしょうがねぇか……一つ、裏技がある。「赤龍帝の籠手」みたいな、力ある存在が意思を持ったまま封じられている神器でしかできない裏技が。取り返しのつかない代償とともに力を得ることができる。代償以外にもリスクがあるから、使わないに越したことはないがな』

 

 

 

『お前の兄弟という小僧が、なぜその発想に至ったのかはわからんが、契約は果たされた。十秒だ。今のお前ではそれが限界値。だが、十秒もあれば十分だろう』

 

「ああ、そんだけあれば十分だ!」

 

「鎧⁉ 赤龍帝の力を鎧として具現化したのか⁉」

 

 ライザーも含め、その場にいた全員が驚愕する。ライザーの考察は概ね正しいものだった。

 

「これが龍帝の力、「赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)」! 俺を止めたけりゃ、魔王様にでも頼み込むんだな! なんせ、禁じられし忌々しい外法らしいからなぁ!」

 

(テン)

 

 鎧をまとい終えるとカウントダウンが始まる。一誠が魔力を撃ち放つと、先ほどライザーが受けたリアス以上の大きさの魔力の塊となり迫る。

 

「今だ!」

 

(ナイン)

 

 一誠が泡を喰ってかわすライザーに突撃すると、体勢が崩れてかわし切れなかったライザーに直撃し、身体をくの字に押し曲げた。

 

(エイト)

 

「クソがァァァ! 頭に乗るなよクソガキが! 主の前で死ね! 火の鳥と鳳凰! フェニックスと称えられし我が一族の業火! その身に受けて燃え尽きろ!」

 

 炎を纏い、ライザーが一誠に突っ込んでいく。まさに火の鳥といった様相で激突する。

 

「そんなちんけな炎で俺が消えるわけねぇだろぉぉぉ!」

 

 一誠は吠える。炎に対する恐怖をはねのけ、鎧越しに感じる熱気に屈さぬために、声をあげて突っ込んだ。

 

 一誠とライザーはクロスカウンターのように互いの頬を殴り飛ばし、床へと転がった。

 

(セブン)

 

「怖いか? 俺が怖いか⁉ 当たり前だ! お前は「赤龍帝の籠手」がなければただのクズだ! その鎧がなければ、お前は俺を殴るどころか炎に触れた時点で消失している! お前からその籠手をとったら、何の価値も残らない!」

 

 ライザーを殴る一誠の拳から怯えを感じ取ったのか、得意顔で話し出す。一誠は何も反論することなく拳を構え、至近距離で殴り合うが、ライザーは再生していくだけだった。

 

(シックス)

 

「鎧のおかげとはいえ、俺を相手に張り合うことができる度胸は認めてやる! だがな! お前の攻撃など無駄だ! お前に俺は倒せん!」

 

「ああ、そうだな! 今の俺じゃお前は倒せない! でもな! 俺にも譲れないもんがあるんだよ!」

 

 その場にとどまりインファイトを続けつつ、互いに声をあげる。その時、ライザーが何かに気付いたのか、飛び退る。その表情は驚愕に満ちていた。

 

(ファイブ)

 

「お前……左腕を……籠手に宿る龍に、左腕を支払ったのか⁉ たった十秒のために! 自分の腕を犠牲にしやがったのか⁉」

 

「そうさ! この十秒の鎧の形成のために、くれてやった!」

 

「そんなことをすれば、二度ともとには戻らない! それがわかっているのか⁉」

 

「当たり前だろ」

 

 ライザーは一誠が防御の際に使った左腕の感触から事実に気付き、それに対する指摘をノータイムで肯定されたことで愕然とする。

 

(フォー)

 

「俺の腕一本で部長が助かるんだぜ? こんないい取引もないだろ?」

 

「いかれてるな……だからこそ、迷いのない一撃を放てるのか……怖いな、初めてお前に心底畏怖した。だから! 全力でお前を倒す!」

 

 一誠の迷いない言葉にライザーが全力で炎の翼を広げ、周囲を火の海にしながら激突する。

 

 一誠も迎え撃ち、拳をぶつけて互いに後ずさる。一誠が気付くと鎧が解除されていた。

 

「なんでだ⁉ まだ持つはずじゃぁ!」

 

『ダメージを受けすぎたな。ドラゴンの鱗にも傷を残すフェニックスの炎を浴び続けたことが原因かもしれん。もう一度鎧をまとうことはできんが、力をある程度は宝玉に移せた。だがそれだけだ。今のお前ではライザー・フェニックスは倒せない』

 

「それは分かってたよ! クソっ! あとちょっとのはずなのに!」

 

 一誠が焦り、赤龍帝に問いかけるが、僅かな力が残っているという報告だけだった。悔しがる一誠に対し、状況を理解したライザーがゆっくりと上昇し、炎を纏い始めた。

 

「「兵士」の力で、よくやったと誉めてやろう。本当に、よくやったよ。正直、ここまでやれるとは思わなかった。ドラゴン使いの力、この身で十分に実感できた。お前があと一年、この力を使いこなすために修練していれば、俺を倒すこともできたかもしれん。まぁ、たらればの話はいい……そろそろ眠ってもらおう。何、しばらく起きてこれないだけだ。起きれるようになるころには、すべて終わってる」

 

 息を荒げたライザーが巨大な火の鳥を形作り、一誠をまっすぐ放つ。自分の通ってきた扉の方向から何の気配も感じないことに焦り、一か八か残った力を使うかと考えたとき、目の前に影が割り込み、結界によって火の鳥が弾かれた。

 

「悪いな、イッセー。遅くなった」

 

「おせぇよ。ダメかと思ったじゃねぇか」

 

 火の鳥を防いだのは天魔。

 

 レーティングゲームは佳境に差し掛かっていく。

 

 

 

 




 感想・お気に入りありがとうございます。

 オーバーブーストを前倒しに、次回で決着予定です。
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