変態の双子の兄弟として   作:篠白 春夏秋冬

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Life.2 秘密の共有

 天魔は兵藤家に戻ると、衣服についた一誠の血液が両親に見つからないように部屋に戻り、着替える。

 

 一誠とリアスの気配を追い、一誠の部屋に入ると、目に入ったのは全裸の一誠とリアスだった。

 

「何やってんだ⁉ あんたは⁉」

 

 夜であるためにとっさに大声を出すことを控え、勢いのある小声で済んだのはファインプレーだったといえるだろう。

 

「魔力を供給しているのよ。この子を治すにはこれしかないし、素肌を合わせるのが最も効率がいいの。服も汚れないしね」

 

 何を言うのかという風に返すリアスに対して天魔は背を向けて部屋を出ていく。

 

「ああ、そうですか。じゃぁ、あとは頼みます」

 

「あら? ちゃんと治るか確認しなくていいの?」

 

「そんな状態のあんたを一晩中眺めるとか何の拷問ですか。血は止まってるみたいだし、部屋の前にはいるんで、なんかあったら呼んでください」

 

 リアスはきょとんとした顔で天魔を見送ると治療に集中し始めた。天魔はドアを閉めると赤くなった顔を抑えながらへたり込む。

 

「貴族のご令嬢ってのは、みんなああもずれてるもんなんかね」

 

 一誠の気配が少しづつ強くなっていくのを感じながら安堵とともに思考にふける。これから先どうしていくかを考えながら夜は更けていった。

 

 

 

 

 

 翌朝。

 

 一誠の治療が完了し、気配が安定したことを確認した後、経過を見ても急変するようなことがないことを確信した天魔は立ち上がりシャワーを浴びに行く。

 

 一晩中起きっぱなしの上、その前に一誠のもとと家の往復を走っていたため眠気は強かったが、それを吹き飛ばすほどの絶叫が響き渡る。

 

「一誠が⁉ 一誠がぁ⁉」

 

「ど、どうしたんだ! 母さん⁉」

 

「一誠がぁ⁉ 国際的ぃ⁉」

 

 慌てる母と対応しきれない父の声で目を覚ました天魔はシャワーを手早く済ませ、リビングに出ると、母が詰め寄ってきた。

 

「て、天魔⁉ 一誠が⁉ 国際的な、国際的なぁ⁉」

 

「母さん、ひとまず落ち着いて。絶対に事が起きたってわけじゃないんだから」

 

「そ、そうかしら」

 

 軽い暗示をかけながら語り掛け、母を落ち着かせていると、一誠の部屋から制服を身に着けた一誠とリアスが現れた。

 

 リアスは天魔よりも強く暗示をかけ、騒ぎにならないように両親を納得させると、一誠と天魔を伴って登校する。全校に広まる悪名を持つ一誠を伴うリアスを見て悲鳴を上げる生徒を無視し、放課後に迎えをよこす旨を言い残してリアスは自身の教室へ去っていった。

 

 リアスとともに登校したことに嫉妬した松田と元浜にリアスの胸を見たといい放ち二人を絶望に叩き落す一誠を尻目に、天魔は登校中に戻ってきた眠気に任せて居眠りを開始した。

 

「兵藤、そろそろ起きなさい。もう放課後よ」

 

「んん?…桐生。俺と一誠は呼び分けろといって、放課後だと⁉」

 

「よく眠ってたわよ。授業中は半分眠って半分起きてる感じになってたけど。今日は体育がなくてよかったわね」

 

「誰も起こさなかったのか?」

 

「声をかけたら半分ぐらい起きてる感じにはなったけど、みんな「疲れが出たんだな」って感じで暖かく見つめてたわよ。代わりにあっちの兵藤は針の筵みたいになってたけど」

 

 桐生が一誠に目を向けながら告げると一誠は松田と元浜に誘われていたがリアスの迎えを待つために断っていた。

 

 すると、教室のドアの方から黄色い声が響き有名人の来訪を告げる。

 

 その人物は金髪に碧眼、目元に黒子がある好青年であり、天魔に並んで王子と称される、木場祐斗であった。天魔と祐斗は以前から知り合いであり、バレンタインに苦労したことをきっかけに時折話すことがあった。

 

「お~い! 天魔、行こうぜ」

 

「ああ、すぐに行く。じゃぁな。桐生」

 

 一誠に呼ばれ、そちらの方に歩いていく。その途中「天×祐の間に野獣が」だとか「NTRってこと⁉でも、それもそれであり⁉」などという声が聞こえたが、極力それらを無視して合流する。

 

「待たせた。行こうか」

 

「君は驚かないんだね」

 

「まぁ、わかってたからな」

 

 祐斗は自身の登場に驚いた一誠に対して、驚く様子のない天魔に声をかけるが、その返答で悪魔であることが知られていたと気付き、逆に驚く羽目になった。

 

 男三人で連れ立って歩いているのを見て、ひそひそと話す生徒たちを鬱陶しく思いつつ進んでいくと、次第に人が減っていき、旧校舎へとたどり着いた。

 

 旧校舎にたどり着くと祐斗はまっすぐ進んでいく。一つの部屋にノックをして入室すると、そこにはソファと机が設置されていた。ソファには白髪の小柄な少女が座っており、和菓子を頬張っていた。

 

「おお、そこに座っているのは学園のマスコット「搭城小猫」ちゃんじゃないか⁉」

 

「どうも……あげませんよ」

 

「取りゃぁしないって……ところで、なんか水音しないか?」

 

 小猫が食べている菓子を隠すようにするのを見ながら聞こえてくる水気に周囲を見渡すとカーテンで区切られた空間とその前に黒髪の少女が立っているのが目に入った。カーテンの向こうではシャワーの音が響き、湯気が端から漏れていた。

 

「何で部室にシャワーあんだよ……」

 

「シャワーですと⁉」

 

「あら? 二人とも来ていたのね。ごめんなさい。昨日は泊まり込みだったからシャワーを浴びれなくて」

 

天魔の驚愕の呟きに一誠が食いつき、その声で彼等の到着に気づいたリアスが詫びる。

 

「家に帰ったりしないのかよ」

 

「いえ! むしろご褒美です!」

 

「いやらしい顔……」

 

 天魔のぼやきに対し、相好を崩す一誠に小猫の冷ややかな言葉が刺さるが、本人は気にしていなかった。

 

 リアスのシャワーと着替えが終わり、彼女がこちらに入ってくる。髪がやや湿り気が残っているのを見て、一誠が再び鼻息を荒くするのにため息をつきつつ、天魔はリアスに話しかけた。

 

「とりあえず、今回話があるのは一誠の方でいいんですよね?」

 

「ええ、まずはそっちの方がいいわね。兵藤一誠君。フルネームだと長いし、兵藤だと紛らわしいからイッセーでいいかしら」

 

「は、はい!」

 

「なら、イッセー。あなたをオカルト研究部に歓迎するわ。悪魔としてね」

 

 言葉を切ると同時に天魔と一誠以外の全員が背中から蝙蝠のような羽をはやす。オカルト研究部の面々が羽を広げるのに反応して一誠の背にも羽が飛び出る。

 

 あっけにとられる一誠の前で改めて自己紹介を始めた。

 

「オカルト研究部で副部長をしています。姫島朱乃ですわ。悪魔です」

 

「搭城小猫です。悪魔です」

 

「木場祐斗です。僕も悪魔だよ」

 

「そして、私が部長のリアス・グレモリー。悪魔よ」

 

 彼らが異形であることはすぐに見て取れるが、すぐに受け入れることができなかった一誠はかろうじて声を絞り出した。

 

「いや、悪魔って……ファンタジーじゃないんですか」

 

「いいえ、悪魔はこうして実在するわ。そして、天使や堕天使と敵対しているの」

 

「堕天使……なんで俺って狙われたんでしょう……?」

 

 昨夜襲われたときに貫かれた腹を押さえ自身が狙われた理由に心当たりがなかったためリアスに尋ねる。

 

「単純にいえば、運が悪かったのでしょうね」

 

「そんな⁉ 運が悪かったって!」

 

 あんまりな理由に思わずいきり立つ一誠だったがそれを制してリアスは話を続ける。

 

「落ち着いて、イッセー。堕天使があなたを狙った理由はあなたに神器が宿っているからなの」

 

「神器?」

 

 リアスは一誠に神器について説明を始める。

 

 神器とは特定の人物に宿る力のこと。歴史上に活躍した偉人も神器を持っていたとされており、その大半は人間社会でのみ機能するものであるが、一部は悪魔や堕天使といった異形の存在にも脅威となりえるものも存在する。

 

 そして、一誠にも神器が宿っているというのだ。

 

「俺に神器が……」

 

 自分に力が宿っていることを知らされ、手を見つめてつぶやく一誠にリアスは神器を発動させるために指示を出す。リアスに促され恥ずかしながらもドラグ・ソボールの空孫悟が使うドラゴン波のポーズをとり、叫ぶと、左手が発光し、手の甲の部分に宝玉が嵌った赤色の籠手が装着されていた。

 

「これが俺の神器」

 

「その神器は「龍の手(トゥワイス・クリティカル)」ね。持ち主の力を倍にする力があるわ。そして、それが原因となってあなたは狙われた」

 

 自身に宿る神器に嬉しそうにしたり、効果に不満そうにしたりする一誠にリアスは説明を重ねていく。

 

 堕天使はまず、一誠が神器所有者であることを確かめるために人気のないところまでの案内をさせ、神器所有者であることを確信。始末するために光の槍で一誠を貫き去っていった。その際に一誠の持っていたリアス・グレモリー眷属の悪魔を召喚するためのチラシが反応しリアスが呼ばれ、死にゆく一誠を眷属悪魔として転生させることで生き永らえさせたのだという。

 

 この転生というシステムは天使、堕天使、悪魔の三つ巴の戦争で減った戦力補充のためのもので、これにより素質のあるものを悪魔にすることで出生率が低いことによる戦力増強の速度の緩やかさをカバーするのだ。

 

 様々な物的証拠をもとにしても超常の存在をいぶかしむ一誠だったが、リアスの言葉に一瞬で従順になった。彼の夢、女の子を囲ってハーレムを作れるかもしれないということだ。

 

 転生した悪魔でも、実績を積み、上級悪魔となることでリアスのように眷属を持つことができるようになる。上級悪魔ともなれば複数人囲っても十分な基盤を得ることがでることに加え、自身の眷属であれば自身に服従する存在であるため、ことに及ぶこともできるとのことだった。

 

「さて、イッセー。あなたのことについては納得できたかしら」

 

「はい! 俺、頑張って上級悪魔になって見せます!」

 

「よろしい。私のことは「部長」と呼びなさい。基本的にはオカルト研究部として通しているから」

 

「はい! 部長」

 

「これでイッセーについての話は終わりね。次は君の番かしら、兵藤天魔君」

 

 希望に胸を膨らませ一誠が悪魔として生きることを決めたことで一誠への話は終わり、リアスの視線は天魔へと向く。それにつられて皆の視線が集中したことで、天魔も話を始めることにした。

 

「……まずは自己紹介といきましょうか。初めまして、駒王学園二年生の兵藤天魔と申します。悪魔です」

 

「そっか、天魔も悪魔だったのか。ってことは天魔も部長の眷属なのか」

 

「いや、さっきも言ったが、初めましてだ」

 

「? じゃぁ、他の人の眷属なのか?」

 

「俺は生まれつき悪魔だよ。正確には悪魔と人間の混血だがな」

 

「はああああああああ⁉ ってことはあれか⁉ 父さんと母さんのどっちかは悪魔ってことか⁉」

 

「……はぁ、俺は養子だよ。イッセーが生まれるころに拾われたんだ」

 

 天魔の告白にその場の全員が驚いていたが、その中でも一誠の驚きはひとしおだった。

 

 なにせ、今まで血のつながっている兄弟であると思っていた相手が実は養子どころか他種族であるというのはかなりの衝撃だった。

 

「血液型全然違うし、誕生日も違和感あるはずだから気づくチャンスはあったはずなんだけどな……二人とも聞かれれば養子のことについて話すつもりだったらしい。無論、俺が悪魔であることは知らないが」

 

「その、ごめんなさい。暴き立てるつもりではなかったのだけど」

 

「別にかまいませんよ。イッセーがこちら側に踏み込んだ以上、いつかは話さなければならないことです。ちょっと時期が早まっただけです」

 

「……そういうことなら今は置いておくわね」

 

 てっきり他の悪魔の眷属と思っていたが、家族の問題に踏み込んでしまった気まずそうにするリアスに天魔はあっさりとした感じで答える。ひとまず話を打ち切ろうとするのを感じ、話を変えることにした。

 

「それで、一つ提案があるのだけど」

 

「何を言いたいのかはなんとなくわかりますが、聞くだけ聞いておきます」

 

「あなたも私の眷属にならないかしら?」

 

「すでに悪魔なのに眷属にすることってできるんですか?」

 

 リアスの話の転換先は勧誘だった。リアスの説明から他種族でなければ眷属にできないと考えた一誠が驚くが、眷属にするのに種族は問わないとのことで純粋な悪魔を眷属にしている者もいるらしい。この勧誘に天魔の回答はきっぱりとしたものだった。

 

「お断りします」

 

「理由を聞いてもいいかしら?」

 

「俺は悪魔ではありますが、悪魔に属しているわけではありません。立場を変えるのは問題がある。それに何より―」

 

「天魔⁉」

 

 提案を断る理由を話す中、途中で言葉を切るとリアスに向けて跪く。皆が動揺する中、特に動揺した一誠が名を呼ぶのを無視して言葉を紡ぐ。

 

「私はあなたに感謝しています。リアス・グレモリー様。家族を二度も助けていただいた。俺があなたに協力するのには十二分な理由だ。だというのに、「駒」を無駄に使うこともないでしょう」

 

 天魔がリアスに対し頭を垂れることしばし、リアスは息をつくと口を開いた。

 

「……わかったわ。そういうことなら、今回は見送っておきましょう。とはいえ、言ったからには協力してもらうわ」

 

「もちろんです。撤回するつもりなどありませんよ。眷属ではなく外部協力という形ではありますが助力させていただきます」

 

 跪く天魔にリアスが手を差し伸べ、それに気づいた天魔がその手を取って立ち上がる。

 

 オカルト研究部に部員が二人増えることとなった。

 

 

 




前回の投稿前に新規の投稿だと小説情報の編集ができないので、予約投稿してから本文の誤字確認等を進めていたのですが、予約時間前にUAが付いて驚きました。
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