変態の双子の兄弟として   作:篠白 春夏秋冬

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Life.22 ちょっとした意見対立

「で、なんで俺がやる羽目になるんだよ……」

 

 アーシアをかばいイリナとゼノヴィアに相対していたのは天魔だったのだが、一誠も内心フラストレーションを溜め込んでいたことを天魔に見抜かれ、あれよあれよというまに対決の場に出されていた。

 

「お前にはもっと実力の近い相手との実戦経験が必要だと思ってな。普段の俺との組手だと、実力差が激しいからあまりイッセーに必要な訓練にならないし」

 

 こともなげに告げる天魔にゼノヴィアが食ってかかった。

 

「……それは私達が君よりも弱いと言っているのか?」

 

「お前、頭が悪いな。そういう意味以外に捉えられる余地はないだろう」

 

「……ほぅ」

 

「お前なぁ! あっちが本気になっちまってんじゃねぇか! 怖いんだけど⁉」

 

「大丈夫だ。リアス・グレモリーの配下を消滅させるわけにはいかないからな。死ぬことはないだろう」

 

 天魔の言葉を聞き、聖剣を手にした二人からの圧が増していく。それにおびえた一誠は天魔を非難するが、天魔はどこ吹く風といった感じだった。

 

「分かった分かった。木場と戦ってまだやる気あるなら相手してやるよ」

 

「どうやらさっさと片付ける必要がありそうだな」

 

 天魔の言葉に怒りを覚えながらもゼノヴィアは目の前の祐斗に集中することにした。そして、祐斗の様子に気付く。

 

「? 笑っているのか?」

 

「うん。倒したくて、壊したくて仕方のなかったものが目の前に現れたんだ。悪魔やドラゴンの近くには力が集まるといわれるからいつかはと思っていたけれど、こんなに早く出会えるだなんてね」

 

 不気味に思えるような笑顔を浮かべる祐斗にゼノヴィアがいぶかしそうにする。

 

「「魔剣創造」か……所有者の思い描く魔剣を作り出すことが可能。魔剣系の神器でも特異なものだ。「聖剣計画」での処分者で生き残りがいるかもしれないと聞いたことがあるが……それが君か?」

 

 ゼノヴィアの問いに祐斗は答えない。ただ剣を構えて殺気を放つのみだった。

 

 その一方で

 

「兵藤一誠君。再会したら、懐かしの男の子は悪魔になっていた……」

 

「え~と、紫藤イリナだったよな? イリナでいいか……俺の言いたいことって天魔がだいたい言っちゃったしさ、この後天魔とバトるんなら、温存兼ねて戦わなてもいいと思うんだけど」

 

 心底残念そうな顔をしながら剣を構えるイリナに一誠は自分が戦わなくていいように説得する。

 

「可哀想な兵藤一誠君! いえ、昔のよしみでイッセー君って呼ばせてもらうわね。そして、なんて運命の悪戯! 聖剣の適性を見込まれ、イギリスにわたり、晴れて主のお役に立てる代行者になれたと思ったのに! これも主の試練なのね! 久しぶりに訪れた故郷の地! 初恋の人が悪魔だっただけでなく、懐かしのお友達まで悪魔になっていた過酷な運命! 時間の流れって残酷だわ、でもこの試練を乗り越えることで一歩、また一歩と真の信仰へと近づくことができるはずなの! さぁ、イッセー君! 天魔君の前に、この聖剣エクスカリバーであなたの罪を裁いてあげるわ! アーメン!」

 

「ほんと、時間の流れって残酷だな……昔はこんなキマった子じゃぁなかったと思うんだが……」

 

 しかし、イリナの耳には届かず、一誠の困惑は加速した。天魔は苦々しい顔をして、時間の流れを悲しんでいた。

 

「畜生、やるしかねぇのか……ブーステッド・ギア!」

 

『Boost!!』

 

「それって「赤龍帝の籠手」? こんな極東の地で赤い龍の帝王(ウェルシュ・ドラゴン)の力を宿すものに出会うなんて……」

 

「イッセー君の方ばかり見ていると怪我では済まなくなるよ!」

 

 一誠が自身の神器を起動させると、それを見たイリナが驚き、それにつられたゼノヴィアが一誠の方に視線を送る。その様子に祐斗の殺気が増していく。

 

「「魔剣創造」に「赤龍帝の籠手」、それにアーシア・アルジェントの「聖母の微笑」か。我々の異端視する神器ばかりだな。悪魔となったのも必然といえるのかもしれないな」

 

「僕の力は無念の中に散っていった同胞の恨みが生み出したものでもある! この力でエクスカリバーを持つものを打ち倒し、そのエクスカリバーを叩き折る!」

 

 リアスの眷属の持つ神器を確認し、ゼノヴィアが納得するようにこぼし、祐斗が吼える。祐斗の速度が増し、剣筋が鋭くなるが、ゼノヴィアは危なげなく対応していた。

 

 そんな彼らに合わせるように、一誠とイリナの戦闘も本格化し始めた。

 

「こちらも行くよ! イッセー君!」

 

「おおっと!」

 

『Boost!!』

 

 イリナの攻撃をかわしつつ力を高めていく一誠だったが、ふとした瞬間に相好を崩し始めた。それを見て、天魔が声をあげる。

 

「イリナ、気を付けろ! イッセーは触れた女の服を消し飛ばし、裸に剥く技を習得している!」

 

「なんでそれを教えるんだよ!」

 

「なんて最低な技なの! 悪魔に堕ちただけでなく、精神まで邪悪に染まるなんて! ああ、主よ。この罪深き変態をお許しにならないでください!」

 

「……女の敵、最低です」

 

 一誠の表情から「洋服崩壊」を狙っているのを察し、警告する天魔を一誠が非難し、イリナが神に祈る。小猫の視線が絶対零度に冷え切り、突き放すような声をかけ、一誠がひるんだ。

 

「なるほど、性欲の塊か。欲望に忠実な悪魔らしいと、私は思うよ」

 

「ごめん」

 

「木場! お前も謝るんじゃないよ!」

 

 嘆息しながら告げるゼノヴィアに祐斗も思わず謝る。一誠が声をあげるが、誰も擁護しなかった。

 

「気を取り直して、燃え尽きろ! そして凍り付け! 「炎熱剣(フレア・ブランド)」! 「氷空剣(フリーズ・ミスト)」!」

 

「「騎士」の軽やかな動き、そして炎と氷の魔剣か。だが、甘い!」

 

 祐斗の片方の魔剣から業火が渦巻き、もう一方からは霧氷が発される。その二本と「騎士」のスピードでもって神速の攻撃を加えるが、ゼノヴィアは最小限の動きでかわすと一撃で魔剣を破壊した。

 

「我が剣は破壊の権化。砕けぬものはない」

 

 ゼノヴィアが剣を掲げ、振り下ろす。

 

 その直後、轟音と地響きがおきる。

 

 観戦者への衝撃波と土砂を天魔が防ぎ、土煙が晴れると、ゼノヴィアを中心にクレーターができていた。

 

「これが私の聖剣だ。有象無象のすべてを破壊する。「破壊の聖剣」の名は伊達じゃない」

 

「真のエクスカリバーでなくともこの威力…七本すべて消滅させるのは修羅の道か」

 

 振り下ろす際に特段力を込めたわけではなさそうだったために驚愕している面々に告げるようにゼノヴィアがつぶやく。その威力をみて、祐斗が殺気をさらに膨れ上がらせた。

 

『Boost!!』

 

「もう! ゼノヴィアったら、急に地面を壊すなんて! 土だらけじゃない! まぁ、いいわ。こっちもそろそろ決めちゃいましょうか!」

 

 そんな剣士同士の戦いをよそに、一誠の三回目の強化が終わり、悠長に構えられないイリナが剣を構えて詰め寄る。一誠は応戦するか少し迷うも、倍化を優先し回避を選択した。

 

「避けるのがうまいわ! 主に鍛えられているようね!」

 

「まぁね! 俺のご主人様と兄弟はしごきが厳しくってさ! おかげで、格上相手でも頑張れちゃうんだよね! こんな風に!」

 

『Boost!!』

 

「よっしゃ、行くぜ!」

 

『Explosion!!』

 

 イリナの称賛に一誠が返している間に四度目の倍化が完了し、一誠が倍化を止め攻勢に出る。

 

「剥ぎ取り御免!」

 

「卑猥な!」

 

「いつも以上にイッセー君の動きがいいですわ」

 

「……スケベ根性が先輩の身体能力を底上げしているなんて」

 

「いつも通りっちゃぁ、いつも通りだけどなぁ」

 

 朱乃が一誠の動きの変化に気付き、小猫と天魔が呆れた声を出す。その間にも一誠の攻勢は続き、イリナは必死に避けていた。

 

「なっ! 私の動きに追いついたの⁉」

 

「もらったぁ!!」

 

 一誠がイリナの動きに追いつき、動揺して動きを止めたところに一誠が飛びつく。

 

「ひゃあ!」

 

「あり?」

 

「セコム!」

 

「ごはぁ!」

 

 飛び込んできた一誠をイリナがとっさにしゃがみこんでかわし、その上を一誠が通過した。その先にいたアーシアと小猫を守るように一誠を天魔が蹴り上げ、一誠は地面へと転がる。

 

「お前が悪いのだ、イッセー。お前の責任だ。これはイッセー、お前の所為だ。お前がやったのだ」

 

「蹴ったの、お前じゃねぇ、か」

 

「イッセー君。これはね、卑猥な技を開発した天罰だと思うの。これに懲りたら、その技は封印すること。いいわね」

 

「いやだ、魔力の才能を、この技を開発するためにほぼすべて使い切ったんだ。もっともっと女の子の服を消し飛ばすんだ。これでも女の子の服を透過させる技と随分と悩んだんだ。俺はいつか、この技を見ただけで女の子の服をはじけ飛ばす技に昇華させてみせる!」

 

「なんて最悪の決意だよ」

 

「……最低です」

 

 一誠はイリナの忠告をはねのけ、よろよろと立ち上がると猛然と向かっていく。その際の叫びに天魔と小猫の冷え切った声がむなしく響いた。

 

「性欲だけでここまで戦えるなんて、どうかしているわ!」

 

「紫藤イリナ! 俺にとって性欲は力で、正義なんだよ!」

 

「アーメン! 主よ、この変態を断じる力をお貸しください!」

 

 一誠がイリナに迫り聖剣の攻撃をかわしつつ拳を繰り出す。アッパーの反撃に繰り出された一撃をバックステップでかわし、戦えていることに笑顔を浮かべたが、その直後崩れ落ちた。

 

「ごめんなさい。貴方のことを見くびっていたみたいだわ。それが聖剣のダメージよ。悪魔と堕天使は聖剣の攻撃を受ければ、力と存在を消される。この程度のほんの僅かな傷でもそれだけのことになるわ。もう少し深く入っていれば危なかったかもね」

 

 一誠の腹にはわずかに傷が走っており、そこから煙が出ていた。傷の浅さとダメージの大きさのギャップに一誠が驚いているとイリナが続ける。

 

「あと一回パワーアップしていれば、今の攻撃も完璧に避けられたでしょうね。貴方の敗因は相手との力量差の認識不足。その神器を使う上で読み違えれば致命傷になることを理解するべきだったわね」

 

「く、まだ……」

 

『Reset!』

 

「……クソっ」

 

 聖剣のダメージを押して立ち上がろうとする一誠だったが、籠手から音声が響き、力が抜ける。立ち上がろうと四つん這いになっていた一誠はうつ伏せになり、完全にダウンした。イリナはそれを見て剣をひもに変え、しまい込んだ。

 

「はああああああ!」

 

 一方、祐斗とゼノヴィアの戦いも佳境を迎えていた。

 

 祐斗が巨大な魔剣を作るとそのまま振りかぶりゼノヴィアへと向かっていく。

 

「その聖剣と僕の魔剣! どちらの破壊力が上か勝負だ!」

 

「残念だ。選択を間違えたな」

 

「あのバカ。頭に血が上りすぎだろ」

 

 吠える祐斗にゼノヴィアと天魔が呆れたように声を出し、ゼノヴィアが応戦する。

 

「君の強みは多彩な魔剣と俊足だろう。巨大な剣はその強みを無駄にするだけだ。破壊力など君には不要なものだろうに、そんなこともわからないのか?」

 

 祐斗の剣が半ばから断ち折られ、隙を晒した祐斗の腹部に聖剣の柄頭による殴打が突き刺さる。その一撃でさえ衝撃波が生じ、祐斗は血を吐きながら崩れ落ちた。

 

「刀身でなくとも、いまの一撃だけでも当分は立ち上がれないだろう。「先輩」、次はもう少し頭を冷やしてから挑んでくるといい……さて、兵藤天魔、だったか? 君の番だ」

 

「待て、まだ……」

 

「フンっ!」

 

 ゼノヴィアは決着がついたとみなして祐斗から視線を逸らす。それを見た祐斗は動こうとするが、天魔が気絶させた。

 

「悪いな。ご指名は俺らしい。アーシア、治療はしばらく待っておいとけよ」

 

 天魔が祐斗を放り投げ小猫が受け取る。アーシアに治療をしないように言い含めると、ゼノヴィアに向き直った。

 

「さて、やろうか」

 

「ああ、君はグレモリーの眷属ではないようだし、うっかり消滅させても問題はあるまい」

 

「一人でいいのか? 別に二人がかりでも構わないぞ?」

 

「……随分と大口をたたく男だな。慢心は身を亡ぼすぞ」

 

「俺は弱いものいじめは嫌いなんだ。……まぁ、どっちでも結果は変わんないけど」

 

 ゼノヴィアの挑発に天魔も挑発で返し、雰囲気が剣呑なものへと変わる。天魔がイリナも煽るように挑発したため、イリナは再びひもを取り出すと、天魔に向けて剣を構える。

 

「ここで過去にけじめをつけるのも、きっと主が私に与えた試練なのね……行くわよ、ゼノヴィア!」

 

「ああ!」

 

 イリナが一つ深呼吸をすると、ゼノヴィアとともに突撃する。

 

「へぇ、勢力が違うから同時攻撃は難しいと思っていたが、ペアで聖剣奪還に向かわされるだけあって、コンビネーションが取れる程度には息が合うらしい」

 

「言葉は選ぶべきだな! どれが最期の言葉になるかわからんぞ!」

 

 天魔がゼノヴィアとイリナの同時攻撃をするすると避けつつ評価を紡ぐと、その侮られているような口ぶりにゼノヴィアが叫ぶ。

 

「あっぶね!」

 

「ゼノヴィア!」

 

 イリナの面をとらえる一撃を手首をつかむ形で止め、足の止まった天魔にゼノヴィアが切りかかる。ギリギリでイリナの手を放し剣を避けるとゼノヴィアの剣が地面に激突し、再び地鳴りと衝撃がまき散らされる。舞い上がる土煙の中、天魔はイリナとゼノヴィアの腹に指先で触ると素早く後ずさり、距離をとった。

 

「天魔君⁉ 急にセクハラしないでくれる⁉」

 

「解せないな、兵藤天魔。兵藤一誠への対応を見るに、君はそういうことをする輩ではないかと思ったが」

 

 急に腹に触れたことで顔を赤くするイリナと行動の意図を読み切れないゼノヴィアを前に天魔が籠手を顕現させ、爪を出して行動の目的を告げる。

 

「俺の今の得物って、この籠手から出した爪なんだよな。つまり、いまの瞬間、お前達は本来なら腹を貫かれていたってわけだ。二人ともアーシアからの治癒なんて望まないだろうからっていう気づかいだったんだがね」

 

 その言葉を聞き、イリナはうつむき、ゼノヴィアは舌打ちした。

 

 天魔は悪魔に自分たちの事情を斟酌した手加減をされたのが悔しいのだろうと考え、何も言わずにアーシアの元まで戻ると祐斗の回復を頼む。ゼノヴィアは一つため息をつくと一誠へと視線を合わせた。

 

「一つだけ言おう、「白い龍」はすでに目覚めているぞ」

 

 その言葉に驚き一誠は左手に視線を移す。

 

「いずれ会うことになるだろう。それまでに鍛えておくことだ、その調子では勝てないだろうからね」

 

「……あれ? もう、待ってよ、ゼノヴィア」

 

 一誠に忠告するとそのままゼノヴィアは去っていった。少し遅れてイリナが続き、やがて見えなくなる。祐斗が目覚めたのはそれからすぐのことだった。

 

「……僕は」

 

「よう、お目覚めか? 馬鹿野郎」

 

「天魔君「先に言っとくが、謝んねぇぞ」

 

「お、おい、天魔」

 

「あのまま無理に突っ込んで応戦されていたら、お前は死んでいた。勝算のない無謀な突撃を許容するほどお前が嫌いなわけではないからな」

 

「……そうだね。僕が弱いのがいけないんだ」

 

 天魔の物言いに一誠が諫めようとするが、天魔がかまうことはなく、祐斗も納得したように返す。肉体的なダメージはないはずだが、ふらりと体を起こすと、そのまま歩き始めた。

 

「待ちなさい、祐斗! 貴方はグレモリーの眷属の「騎士」なのよ! 「はぐれ」になられては困るわ! とどまりなさい!」

 

「……僕は同士達のおかげであそこを生き延びた。彼らの恨みを魔剣に込めなければならないんだ」

 

 そう告げて去ろうとする祐斗にリアスはなおも声をかけようとするが、天魔が肩に手を置きとめる。悲しそうにするリアスを見て、一誠の中で一つの決意が固まった。

 

 




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