「エクスカリバーの破壊って……貴方たちねぇ」
「サジ、貴方はこんなにも勝手なことをしていたのですね? 本当に困った子です」
「あぅぅ……す、すみません。会長」
天魔たちはリアスとソーナに連れられ、噴水の前で正座させられていた。
ソーナに詰め寄られている匙の顔色は特に悪く恐怖を感じていることがよくわかった。
「祐斗はバルパーを追っていったのね?」
「ええ。ただ、エクスカリバーのことで頭いっぱいのあいつに、連絡をよこす余裕があるとは思えませんが」
リアスの確認に天魔が答えると、額を押さえてため息を吐く。そして、小猫へと視線を移した。
「小猫」
「……はい」
「どうしてこんなことを?」
「……祐斗先輩がいなくなるのは嫌です」
「過ぎたことをあれこれ言うのもね。ただ、貴方たちがやろうとしたことは、大きく見れば悪魔の世界に影響を与えるかもしれなかったのよ? それは分かるわね」
「「「はい」」」
小猫に対する問いの答えにリアスは困惑したような顔をすると、改めて天魔たちに状況の理解をできていたのかを問う。三人が同時に返事をして各々謝るのを聞き、リアスは頷いた。
ふと気づくと横の方から何かをたたくような音が聞こえ、一誠がそちらを向くと、匙がソーナに尻を叩かれていた。ソーナ曰く千回たたくらしい。
「コラ、イッセー。よそ見しないの」
「は、はい」
「使い魔に祐斗を捜索するように命じておいたから、発見次第、オカ研全員で迎えに行きましょう。それからのことはそのあとに決めるわ。いいわね?」
「「「はい」」」
一誠を向きなおさせると、これからの方針を伝え、三人がうなずくのを見ると、三人をまとめて抱擁した。
「バカな子たちね。心配ばかりかけて」
「うわぁぁぁん! 会長ぉぉぉ! あっちはいい感じで終わってますけどぉぉぉ!」
「よそはよそ。うちはうちです」
リアスの抱擁で緩やかに締められるオカ研側に対して仕置きの続く生徒会側に慄く一誠だったが、そんな一誠にも仕置きが待っていた。
「さ、貴方たちもお尻を出しなさい。下僕のしつけは主の役目だもの。お尻叩き千回よ」
「え……」
「いや、俺は下僕じゃないんで……」
「……わかりました」
「あら? 後輩は潔く受けようとしているのに逃げるのかしら」
あっけにとられる一誠に眷属ではないからと逃げようとする天魔に対し、小猫がおとなしくリアスへと尻を向ける。それを見て、リアスが天魔に声をかけると、天魔は声を詰まらせ、あきらめたように息を吐いた。
「部長。今回の件は俺と一誠が企んだことで搭城さんは無関係です。搭城さんは勘弁してやってください。どうかここは一誠一人ですべて背負うことで勘弁してもらえませんでしょうか!」
「天魔先輩……」
「天魔……ってちげぇ! 何お前も小猫ちゃんと一緒に助かろうとしてんだよ! お前も一緒にかぶれよ!」
「そもそも提案したのはお前だろ! 責任取るのは当たり前だろうが!」
「お前も割と乗り気だったじゃねぇか! 部長! こいつもお願いします!」
「やめろ! 俺を巻き込むな!」
「……はぁ、二人とも喧嘩しないの!」
喧嘩を始める天魔と一誠にリアスはため息をつくと、喧嘩を治める。
結局、小猫の分は、彼女を引き込んだ天魔が背負うと言い出し、天魔が二千回、一誠が千回尻を叩かれ、匙を含めた三人の尻は死んだ。
「天魔、遅れてるわよ」
「すみません」
仕置きが終わるころにはすっかり夜も更けていた。普段なら最も動きの機敏な天魔が二人に遅れており、ある種珍しい光景だった。
ちなみに天魔には仙術で尻の痛みを和らげることは禁止されている。とはいえ、そもそもの原因が仕置きなので天魔にはするつもりはなかったが。更に言うとリアスの手には負担がかかっていたので、仙術による治療をしていた。
「ただいまー」
「ただいま戻りました」
「ただいま……」
天魔たちが帰宅し靴を脱いでいると台所から母が手招きをしてきた。その表情から何か企んでいることを理解し、不思議そうにする天魔たちだったが、玄関に立ち尽くす訳にもいかず、結局台所の方へと歩いていった。
「ほら、アーシアちゃん」
「はぅ!」
母に押し出されアーシアが飛び出してくる。その姿を見て、一誠は鼻血を噴き出し、視界を失った。もちろん視界を奪った下手人は天魔である。天魔も顔を赤くしており、アーシアから目を離せていなかったが、一誠の視界は正確に奪われた。
アーシアの姿は裸エプロンだったのだ。
「……く、クラスのお友達に聞いたんです。……日本のキッチンに立つときの正装は裸にエプロンだって……は、恥ずかしいですけど、日本の文化に溶け込まないとだめですから……」
恥ずかしそうにもじもじしながら告げるアーシアから目を背けることはできないままだったが、ひとまず天魔は元凶が誰か問うことにした。
「アーシア、誰から聞いた?」
「き、桐生さんです……もちろん下に下着はつけてません……スースーします……あぅぅ」
「
「天魔、本音と建前が逆になってるわよ。あんたもやっぱりうちの子ねぇ」
変なところでつながりの深さを感じつつ、母がしみじみとつぶやく中、リアスがアーシアに語り掛けた。
「そんな手があったなんて、盲点だったわ。アーシア、貴方は魔性の女悪魔になれるわ。エッチな子ね」
「私、エッチな悪魔にはなりたくないですぅ!」
「少し待っていなさい。私もそれをやってくるわ。天魔、イッセーの目は治しておくのよ」
「待って、リアスさん。私も手伝うわ」
リアスはアーシアをほめると踵を返し、着替えのためにその場を去る。天魔に治療の指示を耳打ちしていく彼女に母がついていき、顔を赤くした天魔と裸エプロンのアーシア、目を押さえてうずくまる一誠が残された。
「そ、その、どうでしょうか」
「へ? えっと、うん。似合ってる? よ。うん。ありがとうございます」
沈黙を破ったのはアーシアだった。感想を求めたアーシアに、天魔はしどろもどろになりながら感想と礼を述べ、ふと思い至ったようにアーシアの肩に手を置くと目を見て話し出した。
「アーシア、この前みたいに教会の連中が来たとしても、俺が守るからな。何も心配しなくていい。神様だって殴り倒してやるよ」
「天魔さん、私、悪魔になったこと、後悔してません。信仰も忘れたことは在りません。でも、主への想いよりも大事なものができちゃいました。天魔さん、イッセーさん、部長さん、部員の皆さん、学校のお友達、お二人のお父様、お母様、みんな、みんな、私にとって大切な人たちです。失いたくない。ずっとずっと一緒にいたいです。もう独りは嫌です」
「そっか、そうだな、独りは、怖いもんな。約束するよ、アーシアを独りになんてしない。俺が全部守ってやる。ずっと一緒だ」
「私、日本に来てよかったです。天魔さんに会えてよかった……」
アーシアの独白に天魔が笑って約束し、涙ながらにアーシアが天魔に抱き着く。アーシアを抱きとめるとそこで再び天魔が固まった。アーシアの背中は全開であり、尻も丸見えになっていた。裸エプロンなので当然である。
最近では、一緒に寝るときに顔を真っ赤にして抱き着いてくるアーシアを抱き返すこともあったが、その時はもちろん服越しである。素肌に触れる機会はなく、さらりとした肌の感触に天魔の理性は崩壊しかけていた。
「追い出されちゃったわ。リアスさんったら恥ずかしがっちゃって……あらあら」
「母さん!」
「おやおや、オバサンったら、お邪魔だったわね。いい如? キッチンも立派な戦場だものね。お父さんともいろいろあったし、後始末さえしてくれるなら、問題ないのよぉ? あーあ、早く孫が見たいわねぇ」
天魔の理性は母が来たことで羞恥心とともに補強され、崩れることはなかった。からかいつつ、転がっている一誠を引きずっていこうとする母から一誠を奪い返し、こっそりと仙術で目を治療する。一誠の目に光が戻り、再びアーシアを視界に収める寸前にリアスが戻ってきた。
「イッセー! 私も着て来たわよ!」
一誠が鼻血を噴き出し、リアスを拝む。そのままキッチンに立つリアスとアーシアに天魔も限界を迎えた。帰宅した父も鼻血を噴き出し、三人そろって鼻にティッシュを詰める羽目になったのだった。
「父さんは幸せだ。一日の仕事疲れが吹っ飛んだよ」
「ああ、俺もだよ、父さん。いろいろ辛いこととかを忘れられたよ」
「久しぶりに鼻血とか出たわ」
「お前たち絶対に二人を娶れよ。そうすればリアスさんもアーシアちゃんも俺の娘だ」
「ハハハ。努力します。お父様」
「父さんも懲りないよな……」
その日も天魔はアーシアとともに寝ていたが、ふと目を覚ますと家に追加で結界を張り巡らせた。
「んぅぅ。天魔さん? おトイレですかぁ?」
「アーシア、しっかりしろ。お客さんだ」
隣で寝ていた天魔が大きく動いたことで目を覚ましたのか、目をこするアーシアの肩をゆすって意識をはっきりさせているとアーシアもプレッシャーを感じてハッと目を見開いた。
「行くぞ」
「はい!」
連れ立ってドアを開き外へ向かう。一誠とリアスも同時に部屋から出てきた。家の外に出ると、向かいの壁に立っていたフリードがへらへらとした態度で話し始めた。
「やっほー、イッセー君、天魔君、アーシアたん。ご機嫌麗しいね。元気してた? もしかしてセッ〇スしてた? 三人でとは業が深いねぇ。まぁ、悪魔だから気にしなくてもいかぁ。ごめんね。空気が読めないのが売りなの、僕ちん」
「数時間前に逃げて、煽れるメンタルすげぇな、あいつ」
「どこに感心してんだよ!」
「それで、何の用だ?」
妙なところに感心する天魔に一誠が突っ込むが、天魔はそれを無視して訪問の理由を問いかける。その視線はフリードではなく、空中をとらえていた。天魔の視線に釣られ、リアスたちが上を見上げると、十枚の羽根を広げる堕天使が天魔たちを見下ろしていた。
「初めましてかな、グレモリー家の娘。紅髪が麗しいものだ。忌々しい兄君を思い出して反吐が出そうだよ」
「ごきげんよう。堕ちた天使の幹部、コカビエル。それと私の名前はリアス・グレモリーよ。お見知りおきを。もう一つ付け加えさせてもらうなら、グレモリー家と我らが魔王は最も近く、最も遠い存在。この場で政治的なやり取りに私との接触を求めるなら無駄だわ」
リアスが険しい顔をし、一誠とアーシアがコカビエルの名に震える。天魔がアーシアの頭をなでて落ち着かせていると、コカビエルが腕に抱えていたものを投げてよこす。
「これは土産だ。俺達の根城まで来たのでな、それなりの歓迎をした。まぁ、二匹逃がしたがな」
「イリナ……アーシア、回復を」
「はい!」
投げられたのはイリナだった。天魔が受けとめたイリナは全身が傷だらけであり、そのままアーシアに渡し、回復をさせる。天魔の目が鋭くなるのを、コカビエルはニヤついた顔で受け止めた。
「魔王との交渉などというバカげたことはしない。まぁ、妹であるお前を犯して殺せば、サーゼクスの激情が俺に向けられるかもしれないな。それも悪くない」
「……それで、私との接触は何が目的なのかしら」
コカビエルの言葉に気分を害したのか睨むように告げるリアスにコカビエルが嬉々として告げる。
「お前の根城である駒王学園を中心にして、この町で暴れさせてもらうぞ。そうすればサーゼクスも出てくるだろう」
「そんなことをすれば、堕天使と神、悪魔の三つ巴の戦争が再び勃発するわよ?」
「それは願ったり叶ったりだ。エクスカリバーでも盗めばミカエルが戦争を仕掛けてくるかと思ったが、よこしたのは雑魚のエクソシストと聖剣使いが二名だ。つまらん。余りにつまらん。だから、悪魔の、サーゼクスの妹の根城で暴れるんだよ。ほら、楽しめそうだろう」
「これだから
リアスの確認を肯定し、コカビエルが話すのを聞き、天魔が舌打ちをしつつ呟く。それを聞き、コカビエルは笑った。
「そうだ、そうだとも! 俺は戦争が終わってから退屈で退屈で仕方がなかった! アザゼルもシェムハザも次の戦争には消極的でな。それどころか神器なんてつまらないものを集め始めて訳の分からない研究に没頭し始めた。そんなクソの役にも立たないものが俺達の決定的な武器になるとは限らん! まぁ、お前やそこの小僧の持つ「赤龍帝の籠手」クラスなら別かもしれんが……そうそう見つかるものでもないだろう」
「お前らは俺の神器もご所望なのかよ」
「少なくとも俺は興味はない。アザゼルは欲しがるかもしれんがな。あいつのコレクター趣味は異常だ」
コカビエルの言葉に一誠が警戒するのを鼻を鳴らして否定すると、一瞬天魔の方に視線を向け、再びリアスに視線を合わせる。
「どちらにせよ、お前の根城で聖剣をめぐる戦いをさせてもらうぞ、リアス・グレモリー。戦争をする為にな! サーゼクスの妹とレヴィアタンの妹、それらが通う学び舎だ。さぞ、魔力の波動が立ち込めて混沌が楽しめるだろう! エクスカリバー本来の力を解き放つのにも最適だ。戦場にちょうどいい」
「ひゃははは! 最高でしょ! 俺のボスって。いかれ具合が素敵に最高でさ。俺もつい張りきっちゃうのよぉ! こんなご褒美もくれちゃうしね!」
コカビエルの宣言に続いてフリードが声をあげ、左右の手に持った剣を掲げるとともに、腰に帯刀した剣を見せびらかすように立つ。
「右手のが「天閃の聖剣」、左手のが「
「バルパーの聖剣研究。ここまでくれば本物か。俺の作戦についてきたときには正直怪しいところだったがな」
狂気的に笑うフリードの状態を見てバルパーの研究を認めるようなことをつぶやくコカビエルにリアスが叫ぶ。
「エクスカリバーをどうするつもりなの⁉」
「ハハハ! 戦争をしよう! サーゼクス・ルシファーの妹、リアス・グレモリーよ!」
リアスの問いに答えず一方的に要求を告げ、コカビエルがフリードとともに消える。
「学園に向かうわよ!」
「「「はい!」」」
エクスカリバーをめぐる事件の決着がつこうとしていた。
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