うまく切れるところが見つからなかりませんでした。
コカビエルの宣言を受けて、天魔、祐斗とまだ見ぬ「僧侶」を除いたグレモリー眷属、シトリー眷属が駒王学園前に集合していた。
「リアス先輩、学園を覆うように結界を張ってあります。よほどのことがない限り、周囲に被害は出ないはずです」
報告をしてきたのは匙である。いまだに尻が痛むのか立ち方がぎこちなかったが、顔に出さないその姿に天魔はちょっと感心した。ちなみに天魔は堕天使の幹部との戦闘ということもあって仙術での回復を終わらせている。
「この結界は被害を最小限に抑えるためのものです。正直言って、コカビエルが本気を出せば、このような結界など、意味をなさないでしょう。学園だけでなく、この町全てが崩壊する。そして、コカビエルはその準備をしているようなのです。校庭で力を解放しつつあることを私の下僕が確認しました」
ソーナの報告に一誠が憤り声をあげようとするが、話しの途中であるため天魔が後ろから小突いて黙らせた。
「攻撃を少しでも抑えるために、私と眷属は結界を張り続けます。できるだけ被害は押さえたいですから。学園が傷つくのは耐えがたいですが、堕天使の幹部が出てきた以上、こらえなければならないでしょうね」
ソーナは目を細めて学園の方を憎々し気に見つめる。これから学園を破壊するであろうコカビエルを意識しているのは明らかだった。
「ありがとう。ソーナ。あとは私たちが何とかするわ」
「リアス、相手は桁違いの化物よ。戦えば確実に負けるわ。今からでもあなたのお兄様に」
「貴方だってお姉さまを呼ばなかったじゃない」
「私のところは……。貴方のお兄様はあなたを愛している。サーゼクス様に応援を頼めばきっと動いて」
「サーゼクス様には私から打診しておきました」
「朱乃!」
リアスとソーナがそれぞれの兄と姉に救援を頼むかどうかに話していたが、朱乃がサーゼクスに連絡していたことを知り、リアスが激高する。そんなリアスと目を合わせて朱乃は真剣な顔で語りだした。
「リアス、貴方がサーゼクス様にご迷惑をおかけしたくないというのは分かるわ。貴方の領土、貴方の根城で起こったことだものね。しかも、お家騒動の後。だけれど、幹部が出てきたのなら話は別よ。貴方個人で対処できるレベルをはるかに超えているわ。魔王の力を借りましょう」
朱乃の言葉を聞き、リアスは大きく息を吐くとうなずいた。それを見ていつものような笑顔に戻ると、いつものように話し出した。
「ご理解いただきありがとうございます、部長。ソーナ様、サーゼクス様の加勢が到着するのは一時間後になるそうですわ」
「一時間ですか。分かりました、シトリーの名に懸けて、それまで結界を張り続けて見せます」
「みんな、私たちはオフェンスよ。結界内に飛び込んで、コカビエルの注意を惹くわ。フェニックス戦と違い、これは死線よ。でも、死ぬことは許さない。生きて帰ってまたこの学園に通うわよ!」
「「「「「はい!」」」」」
オカ研のメンバーの返事を受け、リアスがうなづく。
「兵藤、あとは頼むぞ!」
「わーってるよ、匙。お前は尻のダメージでも気にしてろ」
「いうな! いわれると余計に痛く感じる! 兵藤、お前らは?」
「ふっ、部長からの愛が痛いぜ。まぁ、いまの状況はまさに尻に火が付いたようなもんか」
「いやいや、笑えねぇよ。で、木場は?」
「あいつなら大丈夫だ。あとスマン、戦闘になったら痛みは邪魔だから俺はもう直したわ」
「「この裏切りもんが!!」」
匙からの激励に一誠が笑いながら返し、匙が突っ込む。そこに続いた天魔の告白に一誠と匙が同時に突っ込み、オカ研のメンバーが結界内部に突入した。
結界内部に入ると同時に一誠が「女王」へとプロモーションを行う。校庭へと向かうと聖剣四本が神々しい輝きとともに宙へ浮かび、その下に展開された魔方陣の中央にバルパー・ガリレイが立っていた。
「これは一体……」
「四本のエクスカリバーを一つにするのだよ」
「バルパー、あとどれぐらいでエクスカリバーは統合する?」
「五分もいらんよ、コカビエル」
「そうか、では頼むぞ」
一誠のこぼした疑問にバルパーが答え、そこにコカビエルが問いかける。コカビエルは宙に浮かせた椅子に腰かけており、余裕そうに足を組んでいた。
「サーゼクスは来るのか? それともセラフォルーか?」
「お兄様とレヴィアタン様の代わりに私が」
コカビエルがリアスに問いかけるとリアスは気丈に答えるが、それを言い切る前にコカビエルが光の槍を投げ、その先にあった体育館が消滅した。
「つまらん。まあいい、余興にはなるか」
「そんな顔すんな、イッセー。なんかあっても俺が何とかしてやんよ」
一撃で体育館が消えたことに一誠がおびえるが、軽い感じで告げる天魔と身に宿す赤龍帝から声をかけられ、ひとまず震えを治めた。
「さて、地獄から連れてきた俺のペットと遊んでもらおうか」
そう言って魔方陣を展開すると、その中から三つ首の狼が現れた。
「ケルベロス―地獄の番犬をわざわざ連れてきたのか」
「そんなにヤバいんですか? あいつ」
「やるしかないわ! イッセー!」
「はい! ブーステッド・ギア!」
『Boost!!』
ケルベロスを見てリアスが気合を入れるように声をあげ、一誠に声をかける。一誠が神器を起動し、前に出ようとするのをリアスが押しとどめる。
「イッセー、今回私たちはあなたをサポートするわ。けれど、貴方の役目はフィニッシャーではなくてサポーターよ。貴方の「赤龍帝の籠手」の譲渡の力でみんなをサポートするの」
リアスの言葉を聞き、一誠がうなずくのを見て、リアスは質問を重ねる。
「イッセー、譲渡は貴方自身のパワーアップを含めてどれぐらい可能かしら」
「現時点の俺の体力を考えて限界まで高めたのを四回です。でも、四回目の後は少し倍化を使うだけで俺がぶっ倒れるんで、最大だと三回と考えてください」
「そう、無駄撃ちはできないわね。朱乃!」
一誠の神器がどの程度活用できるかを確認すると、朱乃に声をかけ、共に飛び上がった。
朱乃は自身に向けて吐かれた炎を瞬時に凍らせ、その後ろから現れたリアスが滅びの魔力を放つ。それに反応してケルベロスが火球を吐き出し、拮抗したのを見て、他の首から追加の火球を放ち押し返し始める。最後の首が火球を放って完全に押し返そうとするが、その前に邪魔が入った。
「隙あり」
腹の下に入った小猫による一撃でわずかだがケルベロスの体が浮き上がり、火球が中断される。
「もう一撃あげますわ」
小猫の離脱に合わせて朱乃が雷を落とし、全身から煙を上げる。それでもなお鋭いケルベロスの眼光を見て、一誠が自身の強化がいまだに終わらないことに歯噛みしていると後ろから獣の悲鳴が上がる。
「不意打ちなんてしょっぱい真似すんなよ」
「もう一匹いたのか……」
「イッセー、こっちは任せて強化に集中してろ」
「おう!」
いつの間にか現れていたもう一匹のケルベロスを魔法によって封じ込めていると、天魔の相手をしていたケルベロスの首が一本吹き飛び、消滅する。
「加勢に来たぞ!」
「ゼノヴィアか。さすが聖剣、効果は抜群だな」
切り飛ばしたのはゼノヴィア。彼女が手にした聖剣の効果で与えられるダメージに、天魔は少し引きながらゼノヴィアへの攻撃を防ぐ。そのままゼノヴィアが剣を胸に突き刺し、ケルベロスを消滅させた。そうこうしていると一誠の籠手が強化とともにこれ迄以上に強く輝いた。
「部長、朱乃さん、ケルベロスを倒せるだけの力を得ました!」
一誠の声を聞き、リアスと朱乃が下りてくる。それに反応したケルベロスを天魔が魔法で防ぎ、その間に譲渡を行う。力を増した朱乃が指を向けるとケルベロスが回避行動をとろうとするが、その四肢が魔剣に貫かれた。
「逃がさないよ」
木場の作り出した剣によって身動きの取れなくなったケルベロスは強化を受けた朱乃の一撃で消滅していった。
「くらえ! コカビエル!」
放たれたリアスの魔力はかつてないほどの大きさだったが、コカビエルは片手で受け止めると上空へと弾き飛ばした。唖然とする一誠だったが、煙を上げる自身の手を見つめてコカビエルは口角をあげていた。
「なるほど、赤龍帝の力があればここまでリアス・グレモリーの力が上がるのか。面白いぞ。これは酷く面白い」
「完成だ」
哄笑するコカビエルをよそにバルパーが声をあげる。バルパーの方に顔を向けると魔方陣がさらに輝きを強くした。
「四本のエクスカリバーが一つになる」
神々しい輝きに目を覆う中、聖剣が統合され、最後に青白い輝きを放つ剣が残された。
「エクスカリバーが一つとなった光で下の術式も完成した。あと二十分もしないうちにこの町は崩壊するだろう。この術式を解除するにはコカビエルを倒すしかない」
その言葉を聞きその場の全員が驚く。なにせ、魔王からの援軍がたどり着くころにはすでに全てが終わることになるからだ。
「フリード!」
「はいな、ボス」
「陣のエクスカリバーを使え。最後の余興だ。四本の力を得たエクスカリバーで戦って見せろ」
「へいへい、うちのボスは人使いが荒くてさぁ。でもでも! チョー素敵仕様になったエクスカリバーちゃんを使えるなんて光栄の極み、みたいな! うへへ! ちょっくら悪魔でもチョッパーしますかね!」
オカ研のメンバーが絶句する中、コカビエルがフリードに指示を出し、それを聞いたフリードがエクスカリバーを構える。
「リアス・グレモリーの「騎士」、共同戦線の話がまだ生きているのならば、共にあのエクスカリバーを破壊しようじゃないか」
「いいのかい?」
「最悪、私はあのエクスカリバーの核となっている「かけら」さえ回収できるなら問題はない。フリードが使っている以上、あれは聖剣であって聖剣でない。聖剣とて武具だ。使い手によって場合も変わる。あれは異形の剣だ」
フリードに相対する祐斗にゼノヴィアが並び立ち声をかける。その内容に祐斗は驚くが、続いた言葉に納得し、共に剣を構えると聖剣の統合が成功したことにほくそ笑むバルパーに向けて話し出した。
「バルパー・ガリレイ、僕は「聖剣計画」の生き残りだ。いや、正確には貴方に殺された身だ。悪魔に転生したことで生き永らえている」
「ほう、あの計画の生き残りか。これは数奇なものだ。こんな極東の地で出会うことになるとは。縁を感じるな。ふふふ。私はな聖剣が好きなのだよ。それこそ、夢に見るまでにな。幼少のころエクスカリバーの伝記に心を躍らせていたからだろうな。だからこそ、自分に聖剣使いの適性がないと分かった時の絶望といったらなかった。自分では使えないからこそ、使えるものに強いあこがれを抱いた。その思いは高まり、聖剣を使えるものを人工的に作り出す研究に没頭するようになったのだよ。そして完成した。君たちのおかげだよ」
「どういうことだ。僕たちを失敗作と断じて処分したじゃないか」
自分語りを始めたバルパーの言葉に反応し祐斗が眦を吊り上げる。それを聞き、バルパーは首を振ると再び口を開く。
「聖剣を使うのに必要な因子があることに気付いた私は、その因子の数値で適性を調べた。被験者の少年少女ほぼ全員に因子はあるものの、どれもこれもエクスカリバーを扱える数値には満たなかったのだ。そこで私は一つの結論に至った。足りないのならば「因子だけを抽出しあつめることはできないか」と」
「なるほど、読めたぞ。聖剣使いが祝福を受けるとき体に入れられるのは」
「そうだ、聖剣使いの少女よ。持っている者たちから因子を抜き取り、結晶を作ったのだ。こんな風に」
バルパーの言葉から真実を察したのかゼノヴィアが忌々しそうな顔をしてバルパーをにらむと、バルパーは笑いながら懐から聖なるオーラをほとばしらせる球体を取り出した。
「これにより、聖剣使いの研究は飛躍的に向上した。それなのに教会の者どもは私だけを異端として排除したのだ。研究資料だけは奪ってな。貴殿を見るに私の研究は誰かに引き継がれているようだ。ミカエルめ。あれだけ私を断罪しておいて、その結果がこれか。まぁ、あの天使のことだ。被験者の因子を抜くことはあっても殺すまではしないだろう。その分だけは私よりも人道的かもな」
愉快そうに笑うバルパーに複数の殺気が向けられる。特に祐斗の殺気が強く叫ぶように問いかけた。
「同志たちも殺して、聖剣適性の因子を抜いたのか⁉」
「そうだ、この球体はその時のものだぞ。フリードたちに三個ほど使ったがね。これが最後の一つだ」
「ヒャハハハ! 俺以外のやつは因子の方に体がついていけなくなって死んじまったよ! うーん、そこを考えると俺様はスペシャルだねぇ。あ、こういうやつばっかしぶといとか思ったっしょ、イッセー君。のんのん、俺はこんぐらいじゃ死なないぜ?」
祐斗の言葉にバルパーがニヤリと笑い、フリードが哄笑する。ついでのように心を読まれた一誠が苦々しい顔をしていた。
「バルパー・ガリレイ。自分の研究、自分の欲望のためにどれほどの人数の命をもてあそんだんだ」
「フン。それだけ言うのならこの因子の結晶は貴様にくれてやる。環境が整えばあとで量産できる段階まで研究は進んでいる。まずはこの町をコカビエルと破壊しようか。そのあとは世界各地の聖剣をかき集めるとしよう。統合したエクスカリバーを用いてミカエルとヴァチカンに戦争をしかけてくれる。私を断罪した愚かな天使どもと信徒どもに私の研究を見せつけてやるのだ」
「なるほど、戦争を起こしたいって点で一致したわけだ」
険しい顔をした天魔がコカビエルとバルパーの通じた理由に得心いったという風につぶやく中、バルパーは興味のなくなったおもちゃを放り投げるように結晶を投げ、転がった結晶は祐斗の下へとたどり着いた。
「……皆……」
祐斗がかがみこみ、結晶を拾う。哀しそうに、愛おしそうに、懐かしそうに、結晶をなでていた。
祐斗の頬には涙が伝い、その表情は悲哀と憤怒を現していく。
その時、結晶が輝き、発された光が校庭を覆いつくすと、各所からぽつぽつと光が立ち上り形を成していく。
それは大きくなると人の形を成し、祐斗の周囲に集っていく。
その姿はまだ幼さの残る少年少女だった。
「この戦場に漂う様々な力が、因子とともに取り込まれた魂を解き放ったのですわ」
そう話すのは朱乃。聖剣や悪魔、堕天使、複数の神器の力が混じりあった状況が引き起こしたと考えられたのだった。
「皆! 僕は……僕は……ずっと……ずっと、思ってたんだ。僕が、僕だけが生きていていいのかって……。僕よりも夢を持っていた子がいた。僕よりも生きたかった子がいた。僕だけが平和な場所で暮らしてもいいのかって」
祐斗は少年少女たちをみつめ、涙を流しながら語り掛ける。その場にいる者たちは理解した。その子たちが聖剣計画に投じられた子供たちだということを。そして、祐斗の言葉を受けた子供の一人が祐斗へと語り掛けた。
「「自分たちのことはもういい。君だけでも生きてくれ」、か……」
祐斗以外には声が届くことはなかったが、天魔が読唇術により読み取って周囲に伝える。祐斗の双眸からは涙があふれていた。
子供たちは音無きままに歌い始める。祐斗もそれにつられたように歌い始めた。それは、過酷な実験の中での唯一の糧であった聖歌だった。それを歌う祐斗と子供たちは無垢な笑顔に包まれていた。
子供たちの魂が輝きを強くすると、その光は祐斗を中心に集まっていく。
『僕らは、一人ではだめだった』
『私たちは聖剣を扱う因子が足りなかった。けど』
『皆が集まればきっと大丈夫』
彼らの声が天魔たちにも聞こえるようになる。彼らの歌う聖歌も聞こえるようになったが、特殊な状況ゆえなのか、悪魔たちに影響が及ぶことはなかった。
『聖剣を受け入れるんだ』
『怖くなんてない』
『たとえ、神がいなくても』
『神が見ていなくても』
『僕たちの心はいつだって』
「一つだ」
子供たちの声を祐斗が引き継ぐと、彼らの魂が天に昇り一つとなって祐斗の下へと降りてくる。
優しく神々しい光が祐斗の体を包み込んでいく。
「悪魔として生きる。それが我が主の願いであり、僕の願いでもあった。それでいいと思った。けれど、エクスカリバーへの憎悪と同士の無念だけは忘れることができなかった。……いや、忘れてもよかった。だって、彼らは復讐なんて望んでいなかったんだから……でも、全てが終わったわけじゃない。バルパー・ガリレイ。貴方を滅ぼさない限り、第二、第三の僕たちが生を無視され続けるだろう」
「フン。研究には犠牲が付き物だと昔から言うであろう。それだけのことなのだぞ?」
光が収まると、祐斗はゆっくりと立ち上がり、バルパーに向き直る。バルパーは鼻を鳴らし、祐斗の言葉を一蹴した。
「木場ぁぁぁ! フリードの野郎とエクスカリバーをぶっ叩けぇぇぇ! お前はリアス・グレモリーの「騎士」で、俺の仲間だ! 俺のダチなんだよ! 戦え木場ぁぁぁ! あいつらの魂を無駄にすんなぁぁぁ!」
「祐斗! やりなさい! 自分で決着をつけるの! エクスカリバーを超えなさい! 貴方はこのリアス・グレモリーの眷属なのよ! 私の「騎士」はエクスカリバーごときに負けはしないわ!」
「祐斗君! 信じてますわよ!」
「祐斗先輩! ファイトです!」
一誠が叫ぶのに合わせ、グレモリー眷属が声をあげる。その声に祐斗の頬には新たに涙が伝った。
「ハハハ! 何泣いてんだよ? 幽霊ちゃんたちと戦場の真ん中で楽しく歌っちゃってさ。ウザイったらありゃしない。もう最悪。俺的にあの歌が大っ嫌いなんすよ。聞くだけで珠のお肌ががさついちゃう! もう嫌。もう限界。てめぇを切り刻んで、気分を落ち着かせてもらいますよ! 四本統合されたこの無敵の聖剣ちゃんで!」
「お前ごときじゃ、祐斗とその同士の意思の尊さなんてわからねぇよ。哀れすぎて、何も言えねぇな。祐斗! こんなのに負けたら後がひでぇぞ!」
涙を流す祐斗にフリードはふざけた笑いを浮かべて、聖剣を突き出す。天魔はため息をつくと、祐斗に向けて声をかける。その言葉に目を見開くと、わずかに口角をあげるとフリードを見据えた。
「僕は剣になる。部長の、仲間たちの剣になる! 今こそ、僕の想いに応えてくれ! 「魔剣創造」!」
祐斗の声にこたえるように、祐斗の前で力が渦巻く。現れた魔剣へと聖なる力が流れ込み、融合していく。力の奔流が収まると、神々しい輝きと禍々しいオーラを放つ一本の剣が完成した。
「
いうやいなや、祐斗がフリードに向けて駆けだす。「騎士」の速度での切り込みにフリードは反応し、エクスカリバーで受け止めた。その瞬間、エクスカリバーが纏うオーラが祐斗の剣によりかき消されていく。
「本家本元の聖剣を凌駕すんのか! その駄剣が!」
「それが真のエクスカリバーであったならば、勝てなかっただろうね。でも、そのエクスカリバーでは、僕と同士達の想いは断てない!」
オーラが消えたことにフリードが驚愕し、祐斗が吼える。フリードは剣をはじいて後ずさると、統合された力を解放する。
「伸びろぉ!」
エクスカリバーが伸び、枝分かれして凄まじい速度で祐斗を襲うが、それはすべてかわされていく。擬態と天閃の二種を合わせた攻撃が当たらないことにいら立つように叫び始めた。
「なんでさ! なんで当たらねぇぇ! 無敵の聖剣様なんだろぉぉぉ! 昔から最強伝説を語り継がれてきたんじゃねぇのかよぉぉぉ! なら! なら、こいつも追加でいってみようかねぇぇぇ!」
フリードの声に応じ、剣先が透明になり、不可視の攻撃となる。決着を予見しフリードが笑みを浮かべるが、祐斗にそれを全て捌かれ、驚愕の表情へ変わる。そこにゼノヴィアが介入してきた。左手にエクスカリバーを持ったまま右手を中に掲げる。
「そうだ、そのままにしておけよ。ペトロ、バシレイオス、ディオニシウス、そして聖母マリアよ。我が声に耳を傾けてくれ」
ゼノヴィアの声に従い、開いた右手の先の空間が歪んでいく。その中に手を入れると、そこから聖なるオーラをほとばしらせる剣を引き出した。
「この刃に宿りしセイントの御名において我は解放する! デュランダル!」
「デュランダルだと⁉」
その名に全員が新たな聖剣の登場に驚愕する。バルパーは特に泡を喰ったように騒ぎ始めた。
「貴様、エクスカリバーの使い手ではなかったのか⁉」
「私は元々デュランダルの使い手だよ。エクスカリバーの使い手も兼任していたにすぎん」
「バカな⁉私の研究ではデュランダルを扱えるまで達していない!」
「それはそうだろう。ヴァチカンでも人工的なデュランダル使いは創れていない」
「ならなぜ!」
「私はイリナたちのような現存する人工聖剣使いと違って数少ない天然物でね」
その言葉に全員が絶句した。異形のもの達には背筋が凍るようなオーラをまき散らす聖剣を構え、ゼノヴィアが語りだす。
「このデュランダルは想像をはるかに超えた暴君でね。触れたものすべてを切り刻む。私の言うこともろくに聞かない。ゆえに亜空間に封印しておかないと危険極まりないのだよ。使い手の私ですら手に余る剣だ。さて、フリード・セルゼン。お前のおかげでエクスカリバーとデュランダルの頂上決戦ができるな。私は今歓喜に震えているぞ。一太刀目で沈んでくれるなよ? 精々エクスカリバーの力を存分に振るうことだ!」
ゼノヴィアが好戦的な笑みを浮かべると、デュランダルのオーラがさらに高まり、まき散らされる。
「そんなのありですかぁぁぁ! ここにきてのチョー展開! クソったれのくそビッチがぁぁぁ! そんな設定要らねぇんだよぉぉぉ!」
フリードが叫び、透明化した剣先が伸びてゼノヴィアに襲い掛かるが、デュランダルの横なぎの一撃で砕けていった。
「所詮は折れた聖剣か……このデュランダルの相手にもならない」
余波で地面をえぐりながら、ゼノヴィアが嘆息する。聖剣が砕けるのを見てフリードが騒ぎ始めた。
「マジかよマジかよマジですかよ! 伝説のエクスカリバーが木っ端みじんの四散霧散かよ! ひどい! これはひどすぎる! かぁーっ! 折れたものを再利用しようなんて思うのがいけなかったんでしょうか! 人間の浅はかさ、教会の愚かさ、いろんなものを垣間見て俺様は成長していきたい!」
騒ぐフリードに祐斗が詰め寄り、剣を振るう。フリードは慌ててエクスカリバーで受け止めようとしたが、祐斗の剣はエクスカリバーを断ち切り、そのままの勢いでフリードを切り裂いた。
「見ていてくれたかい。僕たちの力はエクスカリバーを超えたよ」
寂寥を感じる声で祐斗がつぶやき、折れたエクスカリバーとフリードが崩れ落ちた。
感想・お気に入りありがとうございます。
アンケートは月末までで締め切ろうと思います。
ソーナをヒロイン化する?
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