駒王学園新校舎・会議室にて。
コカビエルとの戦闘を終え、疲労困憊ではあるものの、天魔の隠し事を明らかにするべくグレモリー眷属とシトリー眷属が集まっていた。
「さてと、何から話しましょうか」
全員が集まり、天魔が話を切り出すと何を聞くべきかと思案しだした。その中で一番に声をあげたのは意外な人物だった。
『まず最初に聞いておきたい。お前が現在の白龍皇なんだな? 兵藤天魔』
「ああ、その通りだ」
『こいつが俺の宿主であることは間違いない』
一誠から一誠でないものの声が上がる。一誠の身に宿る龍からの問いに天魔と天魔が身に宿した龍が答え、その場に集う悪魔たちが緊張する。もしや二天竜の戦いがと考えたが故の緊張だったが、当の白龍皇の言葉に霧散した。
「別に俺としては戦うつもりはないんですよね」
「それは、相手がイッセーだから、なのかしら?」
「いえ、そういうわけではなく、そんなくだらないことに巻き込まれたくないから、ですね」
リアスが緊張気味に問いかけるのに天魔があっけらかんとした風に答えた。そんな天魔に激高した声がかかる。
『くだらないだと! 貴様、龍の戦いをくだらないといったか⁉ 白いの! なぜ黙っている! 貴様の宿主は我らの決闘を侮辱したのだぞ!』
「何度でもいうさ。全くもってくだらない。もはや始めた理由もわからず、ただただ戦うために戦うなど愚の骨頂だ。必要なのはなんのために戦うかという意識だろ。俺は守るために戦う。一誠を、父さんを、母さんを、アーシアを、部長を、オカ研のみんなを、友人を、俺が力を引き寄せるような性質であるが故に俺の大切なものを傷つけられないために戦う。だからこそ、理由もなく戦っている暇なんてないんだよ、赤い龍帝・ドライグ」
『まぁ、今の相棒はこういう奴でな。悪いが、次の宿主に移動するまでは、こちらから仕掛けることはないだろうな』
「そんなわけでだ。戦うなら一誠から仕掛けるしかないわけだ」
天魔はそこまで言うと一誠に目を合わせると、オーラを放つ。それを受けてグレモリー眷属が臨戦態勢に入った。
「それで? イッセー、お前は俺と戦いたいのか?」
「いやいやいや! 無理だろ! 勝てるわけねぇし! そもそも俺は戦いたいわけじゃないんだって!」
天魔の問いに首を振って否定する。それを聞き、オーラをしまうと天魔は微笑んだ。
「それでいい。残念だな、アルビオン。俺は生まれつきの悪魔で寿命は長いし、一誠も悪魔になったから同様だ。次に移るのは時間がかかるだろう。そのうえ、俺も一誠も戦う意思はない。もう決着がつくことはないな」
『フン。お前が宿主となった時点で積極的に仕掛けることは諦めた。気長に待つさ』
笑いながら自分の中の龍に語り掛ける天魔に毒気を抜かれたのか構えを解き、特に疲労の強い祐斗は座り込む。それを確認した天魔は全員を見回し再び問う。
「さて、他に聞きたいことはありますか?」
「貴方の所属は、堕天使陣営でいいのね?」
リアスの指摘に天魔は寂しげに笑うと、恭しく御辞儀をすると話し出した。
「
「外部組織に逸れ者、ね。皮肉もいいところだわ」
リアスがため息をつき天魔を見やる。
「それで、貴方は私たちに敵対する意思はないということなのね?」
「はい、俺は一誠と戦うつもりもないし、恩人である貴女に敵対するつもりもありません」
「そう、ならいいわ。魔王様の援軍を迎えるためにも校庭に戻りましょうか。早く休みたいわね。明日は壊れた設備の補修なんかで休みでしょうけど、日中寝ているわけにはいかないものね」
リアスの言葉に抑揚のない声で天魔が答える。それを聞いたリアスは席を立つと、解散を告げる。それを契機にソーナたちも立ち上がり、移動の準備を始めた。
「あれ? えっと、もっと言うこととかないんですか? ほら、俺、滅茶苦茶怪しいですよ? 正直近くに置いておくには信用ならないと思うんですけど?」
「天魔君、今回散々迷惑かけた僕が言うのもなんだけど、僕たちは君を信頼している。それは君という一個人を知っているからこその信頼だ。それに、今言ったばかりだろ。僕たちと争う気はないって。それで十分じゃないか」
「木場……」
「名前は呼んでくれないのかい? さっきはあんなに熱く声をかけてくれたのに」
「わかったよ、祐斗……悪い、ちっと弱気になってた。もう大丈夫だ」
リアスの言葉にあっけにとられたような顔をする天魔は、肩に手を置いた祐斗の言葉にすっと目をぬぐい、笑いかける。ふと気を抜いた拍子に後ろから頭をはたかれた。
「ま、とりあえず解決ってことでいいだろ? 木場のことも、天魔のこともさ」
「……うん」
「……そうだな」
はたいたのは一誠。笑いかける一誠に一瞬考えたものの、祐斗と天魔も返事をする。そこにアーシアが寄ってきた。
「……木場さん。また一緒に部活できますよね?」
自身も不安定なはずのアーシアに気遣われたことに祐斗は目を丸くし、微笑んで答えようとしたとき、リアスが話しかける。
「祐斗、よく帰ってきてくれたわ。それに禁手だなんて、私も誇れるわよ」
「……部長、僕は……部員の皆に……。それに何より、一度命を救ってくれたあなたを裏切ってしまいました……。お詫びする言葉が見つかりません……」
「でも、貴方は帰ってきてくれた。それで十分。彼らの想いを無駄にしちゃだめよ」
リアスの言葉に涙ながらに応える祐斗だったが、慰めるようにリアスは頬をなでる。
「部長……。僕はここに改めて誓います。僕、木場祐斗はリアス・グレモリーの眷属「騎士」として、貴方と仲間たちを終生お守りします」
「うふふ。ありがとう。でも、イッセーの前で言ってはだめよ」
「俺だって、「騎士」になって部長を守りたかったんだぞ! でも、お前以外で部長の「騎士」が務まる奴がいないんだよ! 責任もって任務を完遂しろ!」
「うん、わかってるよ。イッセー君」
祐斗の宣誓に一誠が嫉妬とともに詰め寄り、祐斗がしっかりと頷く。魔力の波動を感じて視線を動かすと、手に魔力をあつめるリアスがいた。
「さて、祐斗、勝手なことをした罰よ。お尻叩き千回ね。天魔もよ、貴方は途中で直してしまったもの」
魔王からの援軍が到着したのは戦闘終了から三十分以上が経過した後だった。その間天魔と祐斗は尻を叩かれ、一誠と匙に笑われながら過ごすのだった。
数日後。
部室へと顔を出した一誠達は驚愕していた。
「やあ、二天龍」
部室に入ってきた天魔と一誠にあいさつしたのはゼノヴィアだった。一誠が指を突き付けて叫ぶ。
「な……なんでここにいるんだよ!」
「一纏めにすんな。個別に呼べ、個別に」
そんな二人の言葉に応えるようにゼノヴィアの背から悪魔の翼が広がる。一誠とアーシアが絶句し、気配で分かっていた天魔は嘆息した。
「随分とまぁ思い切ったなぁ、お前」
「ああ、神はすでにいないと知ったんでね、破れかぶれで悪魔に転生した。リアス・グレモリーから「騎士」の駒をいただいたよ。デュランダルがすごいだけで私自身はそこまですごくはなかったようでな、駒一つの消費で済んだぞ。この学園にも編入させてもらった。今日から高校二年生でオカルト研究部の所属となるらしい。よろしくね、天魔君♪ イッセー君♪」
「真顔でかわいい声を出すな」
「イリナの真似をしてみたのだが、難しいな」
「なんつーか、違和感がひどいな。そういうことを言う人間に見えなかったし」
「そういうものか」
天魔の声に反応するように経緯を説明し、表情を変えないままに声音だけを変えたゼノヴィアに一誠が突っ込み、天魔が批評する。顎に手を当てて考えるゼノヴィアをよそに一誠がリアスに振り返った。
「ってか、転生かよ! いいんですか、部長! 貴重な駒を!」
「デュランダル使いが眷属に加わるなんて頼もしいことだわ。これで祐斗とともに「騎士」の両翼が誕生したわね」
「いや、確かにレーティングゲームで相手にするのは悪魔ばっかですから聖剣使いがいるのは頼もしいかもしれませんけど」
「そうだ、私はもう悪魔だ。後戻りはできない。いや、これでよかったのか? うぅむ、しかし、神がいない以上、私の人生は破綻したわけだ。だが、敵である悪魔に降るというのはどうなのだろうか……。いくら相手が魔王の妹だからといって……ああ、主よ。我が迷いをお晴らし下さい、うぐっ」
「まぁ、悪魔だからな。祈ればダメージも来るだろう」
リアスは一誠の言葉に楽し気に笑い、一誠は首をひねる。それに反応したゼノヴィアは悪魔に転生したことにぶつぶつと独り言をつぶやき、最後に祈りを捧げて頭をおさえ、天魔はあきれたような声を出した。
「そういえば、イリナは?」
「イリナなら、私のエクスカリバーを合わせた五本のエクスカリバーとバルパーの遺体をもって本部に帰ったよ。統合されていた四本のエクスカリバーは破壊した際に残った芯の部分の「かけら」の状態で回収したがね。とはいえ、芯の部分だけあれば錬金術で再び聖剣へと鍛えなおすことができるから問題はないがね」
「エクスカリバーを返してよかったのか? っていうか、教会を裏切ってよかったのか?」
「一応あれは返しておかないとまずい。デュランダルと違い、使い手は他に見繕えるからね。私にはデュランダルがあれば事足りる。あちらへ神の不在を知ったことを述べたら、何も言わなくなったよ。私は神の不在を知ったことで異分子になったわけだ。教会は異分子を、異端のものをひどく嫌う。たとえデュランダルの使い手であっても捨てる。アーシア・アルジェントの時と同じだな。それにしても、イリナは運がいい。怪我をしていたため、戦線を離脱していたことで、あの場で神の不在を知らずに済んだんだからね。彼女は私以上に信仰が深かったからね。神がいないことを知れば、心の均衡は崩れてしまっていたかもしれない。ただ、私が悪魔になったことは残念がっていた、神の不在が理由だとは言えなかったしね。何とも言えない別れだった。今度会う時は敵かな」
「あ? まだデュランダル持ってんのか……教会も思い切ったな」
「ああ、退職金代わりにもらっておいた。あちらも返せといわなくなったからね」
少々寂しげな顔をしつつイリナのことを話すと、天魔がデュランダルについて言及する。ゼノヴィアが異空間をわずかに開いて存在を明かすと、天魔はそのオーラに感心したような顔になった。
そうこう話していると部員が全員揃い、リアスが話し出した。
「教会は今回のことで悪魔側、要するに魔王に打診してきたそうよ。「堕天使の動きが不透明かつ不誠実であるため、遺憾ではあるが連絡を取り合いたい」だそうよ。それと、バルパーの件についても過去に逃がしたことに対して自分たちにも非があるとして謝罪してきたわ」
「あの文じゃ不誠実って言われるのも仕方ないっすね」
「天魔は内容知ってんのか?」
「エクスカリバー強奪はコカビエルの独断専行であり、他の幹部の感知するところではなかった。目的は三勢力の均衡を崩すことによる戦争の再発。これを裁くためコカビエルは「
リアスの言葉に反応した天魔に一誠が問うと、堕天使側の声明の内容を話す。若干引いた顔をする面々に天魔は苦笑いすると再び話し出す。
「一応は堕天使側に所属する「白い龍」が解決したって形になっているから、自分の組織の不始末はしっかり自分で始末したって体裁は整っている。とはいえ、各方面に迷惑かけたのは事実なんで、話したいこともあるってことで会談の申し入れはしたらしいですけど」
「ええ、その件は聞いているわ。事件に関わったから、その説明のために私たちグレモリー眷属も出席するように言われているわ」
「俺は堕天使陣営での参加だけどな」
「マジっすか⁉」
天魔の話をしつつ、リアスへと視線を向けるとリアスも頷いて話し出す。その内容に一誠が驚愕していると、ゼノヴィアがアーシアへと向き直った。
「……そうだな。アーシア・アルジェントに謝ろう。主がいないならば、救いも愛もあるはずがなかったのだからね。すまなかった。アーシア・アルジェント。君の気が済むなら、殴ってくれてもかまわない」
「お、よっしゃ、やったれ、アーシア。イッセー、譲渡の準備だ」
「そこまでいったらやりすぎだろ」
「や、やめてください、天魔さん、イッセーさん。私はそのようなことをするつもりはありません。ゼノヴィアさん。私は今の生活に満足しています。悪魔ですけど、大切な人に、大切な方々に出会えたのですから。私はこの出会いと、今の環境だけで本当に幸せなんです」
ゼノヴィアの謝罪に天魔が乗っかり、囃し立てるのに、一誠が苦い顔をし、アーシアが慌てる。最終的にアーシアが謝罪を受け入れることでその場は収まった。
「クリスチャンで神の不在を知ったのは私と君だけ……もう君を断罪するなどといえないな。異端視か。尊敬される聖剣使いから、異端の徒。私を見る目の変わった彼らの態度は忘れられないよ……では、失礼する。この学園に編入するにあたって、私はまだまだ知らねばならないことが多すぎるからね」
「あ、あの! 今度の休日にみんなで遊びに行くんです。ゼノヴィアさんも一緒にいかがですか?」
僅かに寂しげな眼をして部室を去ろうとしたゼノヴィアをアーシアが呼び止める。アーシアの提案と屈託のない笑顔にゼノヴィアはわずかに目を見開くと苦笑した。
「今度機会があればね。今回は興が乗らないかな。ただ」
「ただ?」
「今度学園を案内してくれるかい?」
「はい!」
一度迷うように言葉を切ったゼノヴィアにアーシアが首をかしげて続きを促すと、やや言いづらそうにしながら提案するのにアーシアは即答する。笑顔のアーシアにふっと微笑むと祐斗へと顔を向けた。
「我が聖剣デュランダルの名に懸けて、聖魔剣使いとも手合わせ願いたいものだね」
「いいよ、次は負けない」
ゼノヴィアの提案に祐斗が笑顔で応じると、ゼノヴィアは部室を去っていった。
久しぶりの全員がそろった部活は始終談笑に花を咲かせることになったのだった。
感想・お気に入りありがとうございます。
お出ししているオリ主の設定が盛られていっていますが、まだ増えます。改めて確認してちょっとやりすぎかとも思いましたが
……今後ともお楽しみに(ヤケクソ)!
ソーナをヒロイン化する?
-
する
-
しない