変態の双子の兄弟として   作:篠白 春夏秋冬

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Life.30 プール掃除

 魔王襲来から数日。

 

 天魔達は魔王の駒王町散策に付き合い、様々な場所をめぐっていた。ゲームセンターやチェーン店を巡ったり、魔王が神社で無理矢理に神の力をはねのけてお参りをする姿に引いたりしつつも案内をした。

 

 そしてこの日は休日にもかかわらず、天魔達は駒王学園を目指していた。

 

「にしても、冥界でのトップである魔王の食事にチェーン店なんて案内してしまってよかったんだろうか」

 

「本人は喜んでたけどな。それ以前に格ゲーでボコボコにするのはまずかったんじゃないか?」

 

「勝負事で手を抜くのはよくないかなって……サーゼ様も笑ってたし」

 

「私も力をつければ頭痛に悩まされずにお祈りできるのでしょうか」

 

「おはよう。アーシアは何を悩んでいるんだ?」

 

 魔王の観光時のことを振り返りながら学園に向かっていた天魔たちに合流したのはゼノヴィアだった。以前のアーシアのように旧校舎に住むことを拒否したゼノヴィアは兵藤家付近のマンションで暮らしていた。

 

「おはよう、ゼノヴィア。まぁ、アーシアは気にしないでくれ。ちょっと迷走しているだけだから。ほら、アーシア、ゼノヴィアが来たぞ」

 

「ふぇ? あ、ゼノヴィアさん、おはようございます」

 

 サーゼクスの無理矢理なお参りを見て、自分の力を高めるべきかと考え、うわの空だったアーシアを引いていた手を離し、肩を天魔がゆすると、アーシアはようやくゼノヴィアの存在に気が付いたのだった。

 

「ああ、おはよう、アーシア。ところで、日本語の宿題は終わったか?」

 

「はい。ゼノヴィアさんは?」

 

「私は……日本語で分からないところがあってね。今度教えてくれないか?」

 

「はい。お任せください! けど、私も漢字はちょっと……」

 

「私もだ。日本人とはこんなにも複雑な文字を覚えていくというのだから恐ろしい。経済大国の片鱗を垣間見るね」

 

「まぁ、その辺は俺も教えるからさ」

 

「すまないな。世話をかける。これも主のお導きだな」

 

「はい、主のお導きです」

 

「「アーメン……うっ!」」

 

「懲りないな、二人とも。交渉権の奪取をしておいてよかった」

 

 ゼノヴィアとアーシアが日本語について悩んでいると天魔が話しかける。初対面の時から随分と変わった関係性だが、和やかに過ごせていることがうかがえた。いまだに祈りの習慣が抜けきらず、たびたび頭痛に襲われるのは困りごとである。

 

「やっと来たわね、貴方たちで最後よ。今日は私たち限定のプール開きよ!」

 

 この日は生徒会からの指示で、オカルト研究部はプール掃除をすることになっていた。掃除の後はプールの利用をしてもいいということで、他の生徒よりも少し早いプール開きと相成ったのだ。

 

 

 

 およそ一年ぶりの掃除ということもあって、積もり積もった汚れを落としきり、天魔が魔力で水を張っている間に女子部員たちが着替えを行った。ちなみにその間一誠は天魔の目潰しで目をおおってうずくまっていた。

 

「ほら、イッセー? 私の水着、どうかしら?」

 

 一誠は感涙していた。リアスの水着は布面積の少ない赤色のビキニだった。その大胆な水着に天魔もともに目を奪われていた。

 

「あらあら。部長ったら、張りきってますわ。うふふ、よほどイッセー君に見せたかったんですわね。ところでイッセー君、私の方はどうかしら?」

 

 そこに朱乃が現れ、リアスと色違いの白いビキニ姿を披露する。一誠の視線が移動し、リアスの機嫌が下がるのを目の端に収めつつ、天魔はすっと目を逸らした。

 

「天魔さん、わ、私も着替えてきました」

 

 次に現れたのはアーシアと小猫だった。紺と白のスクール水着の胸にはひらがなで名前が書かれており、一誠は性意識よりも庇護欲が勝ったのか珍しく欲の薄い目で小猫を見ていた。

 

「珍しく天魔先輩の目の方がいやらしいです」

 

「お前……」

 

「イッセーの目に欲が薄すぎるだけだって……」

 

 小猫のことをいつも通りに―いやらしい意味でなく―一人の女性としてみている天魔に対して純粋な庇護欲のみの一誠との違いを当の小猫に指摘され、一誠が僅かに引いた眼で見るのを天魔が弁解する珍しい絵が出来上がった。

 

 弁解むなしく一誠の視線が変わらないことに、どう言い募るかと考える天魔の肩に手が置かれる。振り向くとそこにいたのはリアスだった。

 

「部長、どうかしました?」

 

「ええ、貴方に頼みたいことがあるの」

 

 リアスはそういうとにっこり微笑んだのだった。

 

 

 

「いち、にー、いち、にー」

 

 リアスから命じられたのは小猫の練習の手伝いだった。全く泳げない小猫に付き合い、手を握ってバタ足の練習をさせる。時折息継ぎをする小猫の手を引きながらゆっくりと後退し、練習を進める中、顔をあげた小猫は顔を曇らせた。

 

「先輩、付き合わせてしまってすみません」

 

「かまわないさ。後輩の面倒見るのは先輩として当然だろ? それに普段からイッセーが迷惑かけてるしな」

 

 笑顔で答える天魔にわずかに顔を赤くすると小猫は再び水中に顔を戻す。その後進んでいき天魔の背がプールの端に付くと小猫が勢い余って進み、抱き着くような体制になる。

 

「端についたな。ひとまずお疲れ様」

 

「……」

 

「搭城さん?」

 

「何でもないです。アーシア先輩と交代しましょう」

 

 抱き着くような体制のまま動かない小猫に天魔が声をかけるとふと顔をあげてプールサイドへ移動していく。それに続いて天魔も移動し、アーシアとともに練習を始める。

 

 そのころ一誠は高めた力を目に譲渡して視力をあげ、水の中で泳ぐリアスと朱乃を観察していた。

 

 そうしてしばらく練習を続け、アーシアの体力を鑑み、天魔が一旦休憩を宣言するとアーシアは座りこんだ。

 

「疲れましたぁ」

 

「アーシア、水分補給はしっかりするんだぞ。水に流れて汗がわかりづらいが、気温は高いからな」

 

「は、はい……あ、なくなっちゃいました」

 

「自販機で買ってくるよ。俺の飲んでてもいいぞ」

 

「あ、私も……」

 

「疲れてるんだからじっとしてな。行ってくる」

 

 アーシアの水筒の中身がなくなったことで補充のため天魔は自販機のある場所と向かうことにした。同行しようとしたアーシアを制し、上着を確保するため更衣室へと向かった。

 

 

 

 休日のため人気のない校舎を飲み物を持って歩き、更衣室へと戻ると、プールの方から破砕音が鳴る。

 

「プールの掃除が元々の目的のはずなんだが、なぜものが壊れる音がするんだ……」

 

 更衣室から出てプールサイドに出ると、リアスと朱乃がトップレスのまま争っていた。アーシアと小猫はそんな騒ぎの中眠っており、一誠は隅で震えていた。祐斗に至っては我関せずと泳いでいるあたり、まだ平和な方なのだろう。

 

 上空の二人も気を付けているが、念の為アーシアと小猫のそばに寄って余波から守るために結界を張り、飲み物を置くとその中に一誠が転がり込んでくる。

 

「何があったんだ?」

 

「いや、俺はオイル塗りを……」

 

「ああ、うん。もういいわ。だいたい分かった」

 

 一誠の言葉から、リアスがオイル塗りを指示し、それを一誠が堪能しているところに朱乃が挑発したことで騒ぎになったことを理解し、ため息をつく。視線を感じ、顔を向けると扉から顔を出したゼノヴィアと目が合う。手招きをするゼノヴィアに応じて、空中戦に呆然とする一誠を置いて移動すると、天魔は扉の中に引きずり込まれた。

 

「こんなところで何してるんだ?」

 

「水着を着るのは初めてでね。手間取っていたんだ。ところで、外が騒がしくないかい?」

 

「今は出ない方がいいだろうな」

 

「よくわからないが、まぁいいか。どうかな? 可笑しなところはないと思うが」

 

 天魔の言葉に、上空へ目を向けていなかったのか首をひねるゼノヴィアに苦笑を返すと、その姿態を観察する。リアスや朱乃のような布面積ではないが、体の凹凸のわかりやすいビキニタイプの水着だった。

 

「ああ、よく似合ってるぜ。にしても、水着は初めてなんだな。さすがに教会じゃこういうのは無理か」

 

「ああ、そうだね。というよりも私自身こういったものに興味がなくてね。ほかの修道女や女性の戦士は不満を漏らしていたが。まぁ、私の身の上も変わったからね、こういう女らしい娯楽にも触れてみようと思うところもある。そこでだ。兵藤天魔、折り入って頼みがあるのだが」

 

「天魔でいいぞ。イッセーもみんなと同じ呼び方で問題ないだろう」

 

「そうか、ならそうしよう。では改めて、天魔。私と子供を作らないか?」

 

 天魔の思考が停止する。呆然自失となった天魔が反応を示さないのを、外の破砕音で聞き逃したと考えたのか。天魔に目を合わせて再び告げる。

 

「天魔、私と子供を作ろう」

 

「あ、聞き違いではなかったか、そっかぁ」

 

「なんだ聞こえていたのか。それなら返事くらいしてくれ」

 

 誤解ではなかったことを理解し、遠い目をする天魔にゼノヴィアはその考えに至った理由を話し始める。

 

「私はローマで生まれ育ち、聖剣使いの因子も十分だったこともあって幼少から主のために修行と勉学に励んできたんだ。そのせいか子供のころから夢や目標といったものが神や宗教が絡んだものでね。例えば、悪魔を倒すのは主のため。布教をするのはヴァチカンのため。といったような具合だった。だから、悪魔になった以上、夢や目標がなくなったのと同義なんだ」

 

「それは分かったが……そこから子供をってのは突飛すぎやしないか?」

 

「最後まで聞いてくれ。私は神に仕えている以上、女としての喜びを捨てることにしていたんだ。我が身、我が心は信仰のために封印すべし、とね。けれど、この通り、今は悪魔だ。何をしていいか最初は分からなかった。そこで現在の主であるリアス部長に尋ねたら、「悪魔とは、欲を持ち、欲を叶え、欲を与え、欲を望むもの。好きに生きてみなさい」といわれてしまってね。だから、私は封印していたものを解き放ち、それを堪能しようと思うんだ。そして、私の新しい目標、夢は、子供を産むことなんだ」

 

「話は分かった。が、なんで俺なんだ? 身近な男っていうと、イッセーや祐斗もいるが」

 

 天魔はゼノヴィアの話に納得するようにうなずき、自分である理由を問う。

 

「不服か? 確かにこれまで考えたことはなかったから心情的な機微には疎いが、体つきにはそれなりに自身があるぞ。確かに胸はリアス部長ほどではないが、アーシアよりも大きいぞ。揉みごたえはあると思う」

 

 天魔の言葉にゼノヴィアが首をひねる。一方、天魔も望んだ回答ではなかったため、冷静に質問を返す。

 

「いや、不服ってわけじゃないんだがな? ゼノヴィアも十分美人だと思うし。今聞きたいのは俺である理由なんだ」

 

「ああ、済まない、回答を間違えたか。私は子供には強い子になってほしいと思っていてね。父親には特殊な力、もしくは強さを持つ者がいいと思うんだ。そこで、天魔が適任だと考えた。伝説の白龍皇の力。神器は受け継がれなくとも、オーラは受け継がれるかもしれないだろう? これは好機なんだ。きっと、これも主のお導き、くぅ! 思わず祈ってしまったが、そういうわけだ。ちょうど二人きりだ。早速一度試してみようじゃないか。こういうのは早め早めがいい」

 

 そういうとビキニの上を外し、胸を露出すると天魔に迫る。普段であれば、多少慌てる天魔だったが、今回は冷静だった。

 

「つまり、俺がゼノヴィアの望む白龍皇という特殊性を持っているから俺との子供が欲しいと。そういうことか?」

 

「言い方は悪いが、そういうことになってしまうか」

 

「ゼノヴィアの考える条件が整う親が欲しいということは、一誠が条件を整えるまで修行を積むことができれば、一誠でも問題ないわけだ」

 

「まぁ、確かに、そうだな。イッセーでもいいわけか……」

 

 天魔が確認をとると、ゼノヴィアは考え始め、天魔の考えを肯定する。

 

「なら、やはりだめだ」

 

「別にともに育ててほしいわけではないぞ。妊娠した後は私一人で育てるさ。子供が父の愛を望んだ時は少し手伝ってほしいところだが」

 

「そうじゃない。むしろ逆だな。俺は子供を作るようなことをするならちゃんと責任を取りたいんだ。だから、俺が条件に沿うからって理由なら断る。そこら辺の考えが固まったらまた誘ってくれ」

 

「む、そういうことなら仕方ないか。分かった。考えておくよ。それはそれとして君の強さには見習うところがある。ぜひ手合わせ願いたいね」

 

「ああ、うん。そうだな。考えといてくれ」

 

「どうした? なぜ目を逸らす」

 

 天魔の話が終わり、ゼノヴィアからことに及ぼうという雰囲気がなくなるとともに天魔の目は泳ぎ出した。本人が気にしていないが、ゼノヴィアは胸をはだけていたため、完全に見えていたのだった。

 

「取り敢えずゼノヴィアは胸を隠せ! んでもってそこの覗き組! 何も起きないんで出てくるなりどっか行くなりしてくれませんか! いたたまれないんで!」

 

 気配を感じて扉の向こうにいるのがわかっていた天魔が叫ぶと、扉が開き、ぞろぞろと入ってきた。

 

「ごめんなさいね。邪魔するつもりはなかったんだけど」

 

「私だって、その、うぅぅ」

 

「やっぱり天魔先輩もスケベです」

 

「なんで天魔ばっかりおいしい思いを……」

 

 顔を出したリアスたちに口々に言われ、天魔はため息をつく。一応恨み言を言いつつゼノヴィアの胸を盗み見ようとした一誠には目つぶしをプレゼントした。

 

 

 

 

 

 




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