変態の双子の兄弟として   作:篠白 春夏秋冬

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このたび本作に初めての評価が付きました。

ありがたいかぎりです。うん、ほんとうにありがたいです


Life.32 引きこもりの「僧侶」

 授業参観の日の夜。兵頭家のリビングにはサーゼクスが来訪したときの面々に加えてリアスの父―ジオティクスが撮影した映像の鑑賞会を行っていた。

 

「あら、アーシアちゃんよく映ってるわ」

 

「ハハハ! やはり娘の晴れ舞台を見るのは親の務めです!」

 

 ジオティクスは酒をあおったことで陽気になっており、その変化に一誠は驚いていた。そして話題に上がっている子供たちは部屋の隅で顔を赤くして固まっていた。自分たちのことを見られているというのは羞恥心が掻き立てられるものらしい。

 

「はい、お代わり持ってきましたよ」

 

「おお、悪いな、天魔」

 

「ありがとう、天魔君。ほう、旨いな」

 

「大切なお客様が来られるという話をしていたら、知り合いが譲ってくれるというのでそれに甘えました。「響」の三十年です」

 

 そんな中、天魔は給仕をしていた。つまみを出したり酒を用意したりとせわしなく動いていた。

 

「お前よくこの状況で平然とできるな」

 

「そんなに気にすることか?」

 

「見てください! うちのリーアたんが先生にさされて答えるのです!」

 

「耐えられないわ! お兄様のおたんこなす!」

 

「部長!」

 

 不思議そうにする天魔に信じられないようなものを見たかのようにする一誠だったが、サーゼクスの声に限界の来たリアスが部屋から逃げ出したのを追いかけて出て行った。

 

「うぅむ。少々はしゃぎすぎたか……昼の話の続きをしなければならないのだが、今はまずいな」

 

「昼の話……ですか?」

 

 リアスが飛び出したことでグレイフィアに張り倒されたサーゼクスが立ち上がりながらつぶやいたのに、天魔が尋ねるとその返事に驚くことになる。

 

「ああ、もう一人の「僧侶」の話をね」

 

 

 

 翌日の放課後。

 

 旧校舎一階の「開かずの間」の前にオカルト研究部の面々がそろっていた。

 

 新入りのゼノヴィア以外は知っていたその部屋は「KEEP OUT!!」と書かれた虎色テープや多数の呪術的な刻印で封じられ、一誠やアーシアが怖がっていた場所だった。

 

 厳重に封印されているのは、その能力がリアスでは扱いきれないものだと判断されたためだという。しかし、フェニックスとのレーティングゲームやコカビエルの襲撃事件、二天龍を実質的な支配下へと置いたことで四大魔王、大王バアル、大公アガレスの評価を得て、封印の解除が許可されたらしい。

 

「ここに私のもう一人の「僧侶」が住んでいるの。一応深夜には封印が解けて旧校舎内なら自由にできるのだけど、あの子自身がそれを拒否して出てこないのよ」

 

「引きこもりってわけですか」

 

「ですが、グレモリー眷属の中では一番の稼ぎ頭ですのよ?」

 

「マジっすか⁉」

 

 リアスがこれまで接触のなかった理由を話し、納得する一誠に、朱乃がその眷属について説明を入れ、それを知らなかった初対面組は驚いた。

 

 何でも、直接悪魔とは接触したくない契約者とパソコンを通じて契約をしており、新鋭悪魔の中では上位の契約率を誇るのだという。

 

「さて、扉を開けるわ」

 

 リアスは確認を取るまで呪術的な刻印を消し、扉に手をかけるとそのまま開いた。

 

「イヤァァァァァァァ!」

 

「「「「⁉」」」」

 

 開けた瞬間響いた叫び声に驚く天魔たちをよそに、リアスはため息をつくと朱乃とともに入っていった。

 

「ごきげんよう。元気そうで良かったわ」

 

「な、な、何事なんですかぁぁぁ⁉」

 

「あらあら、封印が解けたのですよ? もうお外に出られるのです。さぁ、私たちと一緒に出ましょう?」

 

「いやですぅぅぅ! ここがいいですぅぅぅ! 外出たくない! 人に会いたくないぃぃぃ!」

 

 内部からはリアスと朱乃がやさしく声をかけているのに対して中性的な声で拒否が返ってきていた。あっけにとられる天魔たちに対し、事情の知っている祐斗は苦笑し、小猫はため息をついた。

 

 これが平常運転であることを理解した天魔が部屋に踏み込み、一誠たちがそれに続く。その先にいたのは、リアスと朱乃から逃げようとしつつ震える金髪に赤い双眸の、見た目は美少女だった。

 

「おお! 女の子! しかも金髪の!」

 

「いや、イッセー。こいつ、男だぞ」

 

「んなわけねぇだろ。こんなにかわいいのに」

 

「いえ、この子は男の子よ」

 

 容姿を確認した一誠が騒ぎ出すが、天魔がいさめる。その内容に反論する一誠だったが、リアスが断言したことであっけに取られた顔をする。

 

「いやいやいや、どう見ても女の子ですよ!」

 

「女装趣味があるのですよ」

 

「ええええええ!」

 

「ひぃぃぃぃ! ごめんなさいぃぃぃぃ!」

 

 見た目と性別の違いに困惑する一誠だったが、朱乃の断言に叫び、それに驚いた「僧侶」が謝罪交じりに叫んだ。

 

「こんな残酷なことがあっていいのか……こんな美少女な姿で……男なんて……アレがついてるなんて」

 

「卑猥な言葉禁止」

 

「女装趣味ってのがさらに残酷だ! 似合っている分、知った時のショックが余計に大きい! 引きこもりなのに女装癖かよ! いったい誰に見せるための女装ですか!」

 

「人の部屋着ぐらいどうでもいいだろ……」

 

「だって、女の子の服のほうがかわいいもん」

 

「男のくせにもんとかいうなぁぁぁ!」

 

「イッセー、ミルたんを思い出せ。あれと同じだ。個性なんだよ」

 

「それはそうだけどよぉ! 俺はアーシアとこいつでのダブル金髪美少女「僧侶」を瞬間的にでも夢想したんだぞ! それを散らされたんだ! 俺の夢を返せ!」

 

「人の夢と書いて。儚い」

 

「お、うまい。チョコレートをあげよう」

 

「ありがとうございます」

 

 一誠が四つん這いになり嘆くのに天魔と小猫が突っ込み、それによりさらにがっくりとうなだれた。

 

「ところで、この方たちはいったい誰なんですか?」

 

「あなたがここにいた間に増えたオカルト研究部の部員よ。「兵士」の兵藤一誠。「騎士」のゼノヴィア。「僧侶」のアーシアに一誠の兄弟の兵頭天魔」

 

「ひぃぃ! 人がいっぱい増えてるぅぅぅ!」

 

「僧侶」の問いにリアスが答え、紹介された面々があいさつをしようとするが、おびえて後ずさっていく。

 

「お願いだから外に出ましょう? ね? もうあなたは封印されなくてもいいのよ?」

 

「いやですぅぅぅ! 僕に外の世界なんて無理なんだぁぁぁ! 怖い! お外怖い! どうせ僕が出て行っても迷惑かけるだけだよぉぉぉ!」

 

「ほら、部長が外に出ろって」

 

「ひぃぃぃ!」

 

 リアスの声に強烈に否定し、逃げようとする「僧侶」の手を一誠がつかむ。その時、「僧侶」の目が輝き、世界が停止した。

 

 動かなくなった一誠を見て顔を青ざめつつ腕を引き抜き、逃げようとするのを天魔が押し倒すように捕獲する。

 

「「停止世界の邪眼(フォービトウン・バロール・ビュー)」か。目に映る相手を停止する神器だな。なるほど、封印は感情の高ぶりによって制御できなくなるからか」

 

「な、なんで動けるんですかぁぁぁ!」

 

「しかも、吸血鬼の血を引いているのか。面白いな」

 

にゃにひゅるんでひゅかぁぁぁ(何するんですかぁぁぁ)!」

 

「ふ~む。こうして間近で見るとやはりよく似合ってるな。結構かわいいじゃんか」

 

「や、やめてくださいぃぃぃ!」

 

「よいではないか。よいでは、いった!」

 

「もう、何しているのよ」

 

「僧侶」に目を合わせ、彼の持つ神器を言い当て、口を広げて牙を覗き、くすぐり始める天魔に手刀が落とされる。

 

 痛みに呻きつつ顔をあげるとリアスが怒りの表情を浮かべていた。

 

 リアスからすれば意識が飛んだ隙に天魔が「僧侶」を押し倒し、その顔を覗き込んでいるのだ。

 

 リアスは天魔の手から「僧侶」を確保すると時間停止から解放された面々に説明する。それは天魔の推測通りだった。

 

「この子はギャスパー・ヴラディ。私の眷属の「僧侶」で、一応、駒王学園の一年生。そして、人間と吸血鬼のハーフよ」

 

 場所を移しオカルト研究部の部室。いつも通りのメンバーに加え、段ボールが設置されていた。段ボールの中には外に出ることを怖がったギャスパーが中に入っている。

 

「しかし、使いこなせないとはいえ、よく駒の消費が「僧侶」一つで済みましたね。能力の大きさとハーフとはいえ吸血鬼であることを踏まえるとヴラディの転生は駒価値三つ程度に収まりそうにないですが」

 

「「変異の駒(ミューテーション・ピース)」を使ったの」

 

 事情を聴き、疑問をあげたのは天魔。天魔は石抱きをさせられており、首からは「私は後輩を押し倒していたずらしようとしました」と書かれた板がぶら下がっている。アーシアはその状態の天魔を気にしていたが、ほかのメンバーは触れることはなかった。

 

「「変異の駒」っていうのは、通常では明らかに複数駒を使わないと転生できないような相手が一つの駒で済んでしまうといったような特異な現象を起こす駒のことだよ。十人に一人ぐらいはこの駒を持っているんだ。「悪魔の駒」を生み出した際のバグの類ともいわれているんだけど、それも一興ということで放置されているんだよ」

 

 聞き慣れない単語に不思議そうにする一誠に教えたのは祐斗である。その内容に得心いったという顔をする一誠に対し、リアスの表情は険しいものだった。

 

「問題は、ギャスパーの才能のほうなのよ」

 

「といいますと?」

 

「この子は類稀な才能の持ち主で、無意識のうちに神器の力が増していっているみたいなの。上の話ではそのうち「禁手」に至るのではという話もあるわ。危うい状態なのだけど、私の評価が上がったことで今なら制御できるのではと判断されたそうよ。イッセーと祐斗を「禁手」へと至らせ、白竜皇である天魔を従えていることになっているのが理由のようね」

 

「僕の話なんてしてほしくないのに」

 

「……」

 

「ヒィィィィィ!」

 

 リアスは考え込むような顔をしていると段ボールの中から声が上がる。そのネガティブさに苛立ったのか、一誠が段ボールを軽く蹴ると叫び声が上がった。

 

「能力的には朱乃に次いで二番目じゃないかしら。ハーフとはいえ由緒正しい吸血鬼の家柄だし、神器は人間としての部分で獲得している。吸血鬼の能力も有しているし、人間の扱う魔術にも秀でているわ。とてもじゃないけど、本来、「僧侶」の駒一つの消費では収まらないわね」

 

「しかし、こいつ吸血鬼ですよね? 太陽の光に弱いんじゃ?」

 

「この子はデイウォーカーという特殊な吸血鬼の血を引いているから太陽の光を浴びても平気なの。まぁ、苦手ではあるでしょうけど」

 

「日の光嫌いですぅぅぅ! 太陽なんてなくなっちゃえばいいんだぁぁぁ!」

 

「お前、授業に出てないだろ? 力を克服して、クラスに打ち解けないとだめだぞ」

 

「嫌です! 僕はこの段ボールの中で十分です! 外界の空気と光は僕にとって外敵なんです! 箱入り息子ってことでゆるしてくださぁぁい!」

 

 一誠の声にギャスパーがわめき、否定する。もはやあきれるしかなかった。

 

「こいつ吸血鬼ですけど、外出しないのに血を吸えなくて大丈夫だったんですか?」

 

「ハーフだから、あまり血に飢えているわけではないの。十日ぐらいに一度輸血用の血液を飲むだけでいいみたいよ。もともと血を飲むのは苦手みたいだけど」

 

「血、嫌いですぅぅぅ! 生臭いのだめぇぇぇ! レバーも苦手ですぅぅぅ!」

 

 一誠は引きこもりでは血を吸えないことを心配したが、血が嫌いという吸血鬼としてそれでいいのかと思うような発言が飛び出した。

 

「ヘタレヴァンパイア」

 

「うわぁぁぁぁん! 小猫ちゃんがいじめるぅぅぅ!」

 

 唐突に小猫が毒づきギャスパーがわめく。にぎやかな一年生たちに苦笑いを浮かべるとリアスが席を立った。

 

「申し訳ないけど、会場の打ち合わせがあるから私と朱乃は席を外すわ。その間、みんなでギャスパーの教育をお願いね。それと祐斗、お兄様があなたの禁手について詳しく知りたいらしいからついてきてちょうだい」

 

「はい、部長」

 

 リアスの言葉に祐斗も立ち上がり、一誠に後を頼んで去っていく。朱乃も一誠に声をかけて去っていくと、岩を魔法で浮かせて縄をちぎり、天魔が立ち上がった。

 

「あ~疲れた。石抱きって結構つらいな」

 

「さて、こいつを鍛えようか。軟弱な男はだめだぞ。私は幼少から吸血鬼と相対してきた。扱いは心得ている、任せてくれ」

 

「ヒィィィィィ! せ、せ、聖剣デュランダルの使い手なんて嫌ですぅぅぅ! 滅ぼされるぅぅぅ!」

 

「悲鳴を上げるな、ヴァンパイア。何なら十字架と聖水を用いて、ついでにニンニクもぶつけてやろう」

 

「ヒィィィィィ! ガーリック、らめぇぇぇ!」

 

 肩を回す天魔の横をゼノヴィアが段ボールにひもを括り付けて引きずっていく。悲鳴を上げるギャスパーにさらなる苦難を押し付けようとし、さらに悲鳴が上がった。

 

「……イッセー、俺はちょっとあいつを鍛えるのによさそうな奴を借りてくるから、ヴラディが死なないように監督を頼むわ」

 

「借りる? まぁ、いいや。さすがに死なさないと思うぞ……」

 

 天魔は一誠に声をかけるとゼノヴィアに続いて外に出ていく。

 

 そして少し後、天魔は生徒会室に来ていた。

 

「そういえば、会長も打ち合わせだったわ。交渉できねぇじゃん」

 

「お前は何しに来たんだよ」

 

「会長にお前を貸してくれって頼むつもりだったんだよ」

 

 天魔はソーナに会いに来ていた。が、リアス同様に打ち合わせで留守にしており、交渉はできなかった。

 

「会長への交渉でしたら、こちらをどうぞ」

 

「携帯? かけても大丈夫なのか?」

 

「判断に困る事案の場合はかけるように言われていますので」

 

 天魔が困り顔で退出しようとすると、生徒会のメンバーの一人が携帯を差し出す。画面には「会長」と表示されており、発信前の状況になっていた。天魔は勧められるままに携帯を受け取り、通話ボタンを押す。

 

『もしもし、何がありましたか?』

 

「あ、すみません、会長。兵頭天魔です」

 

『? 何かありましたか?』

 

 電話に出たソーナはいぶかし気な声を出すが、天魔は早めに要件を告げることにした。

 

「すみません。お忙しいと思うので手短に、うちの「僧侶」を鍛えるのに匙を貸してもらいたいんです」

 

『サジをですか?』

 

「ええ、相性がいいので。もちろん、ただとは言いません。悪魔ですしね。匙を貸してもらう代わりに、一度だけ、ソーナ様の望みをかなえて差し上げます。とはいえ、私にできることに限られますが」

 

 天魔の提案に生徒会室の面々がざわつく。ソーナもやや声を固くしつつ返答した。

 

『本気ですか?』

 

「ええ、ソーナ様を信頼しているが故の提案です。いかがでしょうか?」

 

『わかりました。それで契約といたしましょう』

 

「ありがとうございます。お忙しいところ失礼いたしました」

 

 無事に目的が果たせたことに安堵して、電話の先の様子を気に留めることなく電話を切ると、天魔は匙へと向き直る。匙は戦々恐々としていた。

 

「お前、とんでもないもんを」

 

「お前が気にすることじゃねぇよ。さ、契約は成った。付き合ってもらうぜ」

 

 そういうと天魔は匙を引きずり、生徒会室を後にして、ギャスパーのいる旧校舎近くの空き地へと向かっていった。

 

 




感想・評価・お気に入りありがとうございます。

また、前回の投稿後に誤字報告がありました。以前、更新停止中の作品でも誤字報告を頂いた方のようで、自分の作品を読んでくださっているのだと嬉しく思うのは機能の使い方としては間違っているような気もしますが、ありがたいと思います。
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