変態の双子の兄弟として   作:篠白 春夏秋冬

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Life.34 三大勢力会談

「お前ら、そろそろ行くぞ」

 

 マンションの一室にて紅茶を飲んでいた天魔と銀髪の少女にアザゼルが声をかける。

 

 二人が立ち上がり、魔方陣が起動すると、駒王学園の会議室へと転移した。

 

「よぉ、お前ら、こうして会うのも久しぶりじゃねぇか」

 

 雑に挨拶するアザゼルの頭をハリセンが横殴りにする。快音が響き、セラフォルーがわずかに口の端をゆがめシトリー眷属が驚く中、下手人である天魔はあきれ顔をしていた。

 

「何しやがる」

 

「シェムハザから言動が目に余るときには殴っておけと言われてな。青あざをつけては話し合いに差し支えるから用意しておいた」

 

「あの野郎……」

 

 アザゼルがここにはいない副総督に怨み言を言いつつ座ると、天魔もアザゼルを挟むように少女と座った。

 

 すると、ドアがノックされ、リアスたちが入ってくる。アザゼルの隣に座る天魔にわずかに眉を顰める者もいたが、とくに何も言わなかった。サーゼクスが紹介し、ミカエルが協力に礼を言う。そこにアザゼルがふざけた態度で謝り、再びハリセンの一撃が加えられる。再び響いた快音にセラフォルーがわずかに吹き出し、リアスたちが目を丸くする。

 

 彼らを放置してサーゼクスが神の不在を認識していることを確認し、会談が始まった。

 

 会談は順調に進んでいく。時折アザゼルが懲りずにふざけた態度を取り、快音が鳴るが、おおむね順調に進んでいく。

 

 リアスに話が振られると、リアスと朱乃が立ち上がり、先日の一件についての報告が始まる。緊張の混じった声音での報告が終わると、サーゼクスがねぎらいつつ着席を促し、リアスと朱乃が座った。

 

「さて、アザゼル。この報告を受けて、堕天使総督の意見が聞きたい」

 

「先日の事件は我が堕天使中枢組織「神の子を見張る者」の幹部コカビエルが他の幹部、及び総督の俺に黙って単独で行ったものだ。奴の処理は「白龍皇」が行った。その後、組織の軍法会議に掛けられ、刑は執行された。「地獄の最下層」で永久凍結だ。もう出てこれねぇよ。これはこの前送った資料に書いてあっただろう? それがすべてだ」

 

「説明としては最低の部類ですが、あなた個人が我々と大きなことを起こしたくないという話は知っています。それに関しては本当なのでしょう?」

 

「ああ、俺も戦争になんて興味はない。コカビエルも俺のことをこき下ろしていたとそちらの報告でもあったじゃないか」

 

 アザゼルの話に嘆息しながらミカエルが問うと、アザゼルも肩をすくめて応対する。そこにサーゼクスが問いかける。

 

「アザゼル、一つ聞きたいのだが、どうしてここ数十年、神器所有者を集めている? 最初は人間たちを集めて戦力増強を図っているのかと考えていた。天界か我々に戦争を仕掛けるのではないかと予想していたのだが」

 

「そう、いつまでたっても貴方は仕掛けてこなかった。「白い龍」を手に入れたと聞いた時には、強い警戒心を抱いたものです」

 

 サーゼクスの問いかけにミカエルものり、アザゼルに問いかける。アザゼルは苦笑すると話し出した。

 

「神器の研究のためさ。何なら、研究資料も一部お前たちに送ろうか? そもそも、研究したとしても戦争なんざ仕掛けねぇよ。戦に今さら興味もないからな。俺は今の世界に十分満足している。部下にも「人間の政治にまで手を出すな」と強く言いわたしているぐらいだぜ? 宗教にも介入するつもりはねぇし、悪魔の業界にも影響を及ぼさせるつもりもねぇ……ったく、俺の信用は三勢力の中でも最低かよ」

 

「それはそうだ」

 

「そうですね」

 

「その通りね☆」

 

「今までの行いを顧みろ」

 

 アザゼルのボヤキにサーゼクス、ミカエル、セラフォルー、天魔が言葉を発し、アザゼルは面白くなさそうに耳をほじっていた。

 

「チッ、神や先代ルシファーよりはマシかと思ったが、お前らもお前らでめんどくさい奴らだ。こそこそ研究するのもこれ以上性に合わねぇか……あー、分かったよ。なら、和平を結ぼうぜ。もともとそのつもりだったんだろ? 悪魔も天使もよ」

 

 アザゼルの面倒そうな態度に天魔はハリセンを構えかけるが、ミカエルが微笑んでいたことでハリセンから手を放す。

 

「ええ、私も悪魔側とグリゴリに和平を持ち掛ける予定でした。このままこれ以上、三すくみの関係を続けていても世界の害になる。天使の長である私が言うのもなんですが、戦争の大本であった神と魔王は消滅したのですから」

 

「ハッ! あの堅物ミカエル様が言うようになったね。あれほど神、神、神様だったのにな」

 

「……失ったものは大きい。けれど、いないものをいつまでも求めても仕方がありません。人間たちを導くのが我らの使命。神の子らのこれからも見守り、先導していくのが一番大事なことだと私たちセラフのメンバーの意見も一致しています」

 

「おいおい、今のセリフは「堕ちる」ぜ? と思ったが、「システム」は今、お前が受け継いだんだったな。いい世界になったもんだ。俺たちが「堕ちた」ときとは大違いだな」

 

「我らも同じだ。魔王がいなくても種の存続のため、悪魔も先に進まなければならない。戦争は我らも望むべきものではない。次の戦争をすれば悪魔は滅ぶ」

 

 アザゼルが自嘲するように話すのに応じ、サーゼクスが話すと、アザゼルは真剣な顔をする。

 

「そう、次の戦争をすれば、三すくみは今度こそ共倒れだ。そして、人間界に大きな影響を及ぼし、戦争は終わる。俺たちは戦争を起こせない。……神がいない世界は間違いだと思うか? 神がいない世界は衰退すると思うか? 残念ながらそうじゃなかった。俺もお前たちも今こうして元気に生きている。神がいなくても世界は回るのさ」

 

 アザゼルが手を広げながら言い切ると緊張感が和らいだ。三すくみとなる勢力すべてが戦争を望まないことが共有され、敵対意識が薄れたからだろう。

 

 そして、会談は和平後の話に変わっていく。今後の各勢力への対応や勢力図の確認などが一段落すると大きく息を吐く。

 

 グレイフィアが給仕を始める中、ミカエルが口を開いた。

 

「さて、話し合いもいい方向に片付きましたし、そろそろ白龍皇殿のお話を聞いても?」

 

 その一言で視線が天魔へと集まる。天魔は少し瞑目すると息を吐き、アーシアに目を合わせる。

 

「アーシア。これから話すことは君を傷つけることになるかもしれない。そのうえ、ここで話さないといけないことでもない。それでもいいか?」

 

「天魔さんがお聞きしたいのでしたら、それで構いません。私は天魔さんを信じてますから」

 

 それを聞き天魔は一つ頷くとゼノヴィアへと視線を向ける。同様の問いかけであることを理解したゼノヴィアも頷いたのを見て天魔はミカエルに視線を向けると口を開いた。

 

「ひとまず俺の話を聞いてほしい。これからするのは答え合わせだ。話の中核となるのは「なぜアーシアを追放するに至ったか」だ」

 

 その言葉を聞き、その場の全員が議題をあげたことに対して首をかしげる。が、最初に天魔が頼んだ通り、嘴を挟むことはなかった。

 

「本来、信仰に厚く癒しの力を持つアーシアを追放するのは悪手だと言わざるを得ない。眼の前で祈るシスターによって傷が治るだなんて、祈りが奇跡を産むというわかりやすい例示であり、こんなにプロパガンダにうってつけな存在はいない。悪魔や堕天使を癒せることに関しては天界側から箝口令を布いて、本人を悪魔や堕天使と接触させなければいいだけだ。にもかかわらず追放に至ったのは、神の奇跡を司る「システム」の運用に不都合が起きるから。敵である存在をも癒せる力を持った存在が周囲の信仰に影響を与えてしまうことを懸念した。信仰が揺らげばすでに十全とは言えない「システム」の運用が立ち行かなくなり、それは奇跡の行使を妨げ、また信仰が陰るというスパイラルに陥りかねない。だからアーシアを追放し、神の不在を知ったゼノヴィアも他の信仰を妨げないために追放するしかなかった」

 

 そこまでを話し切り天魔はミカエルの回答を待つ。帰ってきた回答は是だった。

 

「ええ、「システム」を神以外のものが扱うのは難しく、私を中心に「熾天使(セラフ)」がどうにか起動させていますが、神がご健在だったころに比べるとその力は十分に発揮できているとは言えません。救済できるものを少しでも多くするためには「熾天使」と一部の上位天使以外の神の不在を知るものを本部に直結した場所に近づけるわけにはいかなかったのです。申し訳ありません。アーシア・アルジェントとゼノヴィアは異端とするしかなかったのです」

 

 ミカエルがアーシアとゼノヴィアに頭を下げ、それに二人は目を丸くした。衝撃から先に立ち直ったゼノヴィアは首を横に振るとミカエルに話しかけた。

 

「いえ、ミカエル様。謝らないでください。これでもこの年まで教会に育てられてきた身です。いささか理不尽を感じてはいましたが、理由を知ればどうということもありません」

 

「あなたが悪魔に転生したこと。それはこちらの罪でもあります」

 

「いいのです、……多少後悔も致しましたが、教会に仕えていたころではできなかったこと、封じていたことが現在の私の日常を華やかに彩ってくれています。そんなことを言ってはほかの信徒に怒られるかもしれませんが、それでも今の私はこの生活に満足しているのです」

 

「ミカエル様、私も今幸せだと感じております。大切な人たちがたくさんできましたから。それに憧れのミカエル様にお会いできてお話までできたのですから光栄です!」

 

 今を幸せだというゼノヴィアにアーシアも続き、ミカエルは安どの表情を見せていた。

 

「あなたたちの寛大な心に感謝します。デュランダルはゼノヴィアにお任せします。サーゼクスの妹君の眷属ならば下手な輩に使われるより安全でしょう」

 

 ミカエルの言葉に驚きつつもゼノヴィアが礼をし、正式にデュランダルがゼノヴィアの管理に移る。それに満足そうにするとミカエルは再び天魔へと視線を移した。

 

「そういえば、堕天使側からの要望は貴方から聞くことになってましたね。今うかがっても?」

 

「そういやそうだった。お前に任すかどうかで結構もめたんだ。今話してもらうぞ」

 

 ミカエルの言葉にアザゼルが乗り、再び視線が天魔へと集中する。天魔は一瞬言いよどむような仕草を見せたが時間を空けずに口を開いた。

 

「アーシアとゼノヴィアはすでに悪魔なので教会の中枢に近づくことはないでしょう。和平が成ったことで悪魔と堕天使からの技術協力もあると思います。「システム」の安定化も望めることでしょう。そこで、アーシアとゼノヴィアが祈りをささげることでのダメージをなくしてはいただけないかと」

 

 天魔の言葉にその場の全員が驚愕する。特にアザゼルとアーシア、ゼノヴィアに与えた衝撃は大きいのか口が開いていた。

 

 最初に復帰したのはミカエルだった。少し考え込むような仕草をすると幾度か頷き、アーシアとゼノヴィアに問いかけた。

 

「二人分ぐらいなら何とかなるかもしれません。アーシア、ゼノヴィアに問います。神は不在ですが、それでも祈りを捧げますか?」

 

「はい、主がおられなくても私は祈りをささげたいです」

 

「同じく。主への感謝とミカエル様への感謝を込めて」

 

「わかりました。本部に戻ったら調整してみましょう。フフフ、祈りをささげてもダメージのない悪魔が二人ぐらいいてもいいでしょう。面白いでしょうね」

 

 ミカエルの問いに間を開けずに頷いたアーシアとゼノヴィアに微笑むと天魔の要望を了承する。涙目になるアーシアにサムズアップする天魔の頭から快音が響いた。

 

「なにすんだ、アザゼル」

 

「……お前なぁ……そういう交渉は個人でやれよ! 俺らが吹っ掛けようと思ってたのが台無しじゃねぇか!」

 

「最終的にはお前も納得してたろうが。今更がたがた言うなよ」

 

 隣に座っていたアザゼルが胸倉をつかんでゆするのを、天魔は止めることもなくしばらく放置していると、アザゼルは疲れが出たのか舌打ちして手を離した。

 

「チッ! この話はあとだ……とりあえず、俺たち以外に世界に影響を及ぼしそうな奴らに意見を聞こうか。無敵のドラゴン様にな。天魔、お前は世界をどうしたい?」

 

「俺は家族や仲間が平和に過ごせればそれでいいよ」

 

 アザゼルがひとまず落ち着き天魔に問いかけると、天魔は肩をすくめて答える。それを見てアザゼルはため息をつくと一誠に視線を移した。

 

「じゃあ、赤龍帝。お前はどうだ?」

 

「正直、よくわからないです。なんか小難しいことばかりで、頭が混乱しています。ただでさえ後輩悪魔の面倒見るのに必死なのに、世界がどうこう言われても何というか、実感わきません」

 

 アザゼルの問いに一誠は困ったように返す。アザゼルは少し考えると再び一誠に向けて話し始める。

 

「だが、お前は世界を動かすだけの力を秘めたものの一人だ。選択を決めないと俺をはじめ、各勢力の上に立ってる奴らが動きづらくなるんだよ。といっても、これまでそういったことを考えなかったお前さんには難しい話だろうから、恐ろしいほどわかりやすくかみ砕いて説明してやろう。俺たちが戦争を始めたら、お前も表舞台に立つ必要が出てくる。そうなったらリアス・グレモリーを抱けないぞ?」

 

 アザゼルの言葉に一誠が絶句し、衝撃を受ける。そんな一誠にアザゼルはさらに畳みかけた。

 

「和平を結べば戦争する必要はなくなる。そうなれば、あとに大事なのは種の存続と繁栄だ。毎日リアス・グレモリーと子作りに励むとができるかもしれない。どうだ? わかりやすいだろ? 戦争ならセッ〇スはなしだ。和平ならセッ〇スしまくりだ。お前はどっちを選ぶ?」

 

「和平でお願いします! ええ! 平和ですよね! 平和が一番です! 部長とエッチがしたいです!」

 

「リアス嬢のご家族がいることを忘れてやいねぇか、赤龍帝?」

 

 堕天使側のものとして呼び方を変えつつ忠告する天魔に、やってしまったという顔をする一誠が言いつのろうとしたとき、比喩抜きでその場の時間が止まる。

 

「来たか……」

 

「そのようだな」

 

 

 

 戦いが始まった。

 

 




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