変態の双子の兄弟として   作:篠白 春夏秋冬

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Life.35 テロリスト来る

「ヴラディが狙われたな。いや、狙われたのは神器の方か」

 

「例のヴァンパイアか。あいつの神器は「停止世界の邪眼」だったな。無理矢理に力を与えて禁手状態まで持って行ったってことか。リアス・グレモリーの眷属は末恐ろしいねぇ」

 

 天魔の言葉にアザゼルが反応し、にやりと笑うのをしり目に見つつ、周囲を見回す。

 

 動けるのはサーゼクス、グレイフィア、セラフォルー、アザゼル、ミカエルのトップ陣に加え、聖魔剣のイレギュラーな波動により停止を免れた祐斗と停止の直前にデュランダルのオーラで防御したゼノヴィア、天魔と堕天使側として天魔とともに来た少女だけだった。

 

「イッセーも動けないか?」

 

「みたいだね。相当数が停められたみたいだ」

 

 ゼノヴィアと祐斗が他の眷属を観察していると窓から閃光が飛び込んできた。

 

「可能性として考えていたが、やはり来たか」

 

 窓の向こうにいたのは大量の魔術師だった。放たれた攻撃は結界によって阻まれたが、懲りることなく攻撃が続く。

 

「あれを潰したら終わりになんないかな……っと!」

 

 天魔が魔法を打ち返し、魔術師を一掃していく。しかし、すぐに次の魔術師が転移してきて攻撃が再開された。

 

「まぁ、これで終わるなら襲撃してこないわな」

 

 再び始まった攻撃にアザゼルが嘆息しながら光の槍を降らせて一掃するが、先ほどのように魔術師が転移してくるだけだった。

 

「周囲に配置されていた各勢力のものはどこかに飛ばされているようですね」

 

「結界も張られているようですね。このままでは外には出られませんが、かといって、結界を解けば付近の人間に被害が及ぶ。我々が出てくるのを待っている可能性もありますね」

 

「しばらくは籠城かしらね。こちらから黒幕につながる手がかりを探りつつ、しびれを切らすのを願うしかないわね」

 

「ひとまずはギャスパー君を奪い返す必要があるね。このまま力を増していけば我々でも停められかねない」

 

「旧校舎ごと吹っ飛ばすって手もあるぜ」

 

「ありなわけねぇだろ。ざけんな」

 

 動ける面々で周囲の状況を把握していく。最中で出たアザゼルの意見にハリセンが飛び、快音が響いた。

 

 

 

「あら?」

 

「お、赤龍帝の復活だ」

 

 撃退を何度か繰り返していると、一誠とリアスが動き出した。

 

「いったい何が?」

 

 不思議そうにする一誠に対し、冷静なリアスが状況を把握していく。事態を把握したリアスは怒り出す。

 

「ギャスパーが旧校舎でテロリストの武器にされている……どこから私の眷属の情報を得たのかしら……しかも、会談をつけ狙う戦力にされるなんて……これほど、侮辱される行為もないわ!」

 

 情報を共有し、憤るリアスはギャスパーの救出を宣言した。

 

「言うと思っていたよ。妹の性格ぐらいは把握している。しかし、どうやって旧校舎まで行く? この新校舎の外は魔術師だらけだ。通常の転移も妨害されている」

 

「旧校舎のオカルト研究部の部室に未使用の「戦車」の駒を保管しています」

 

「なるほど、「キャスリング」か。普通に奪い返しに行くことは彼らも予測しているだろうから、虚をつける。何手か先んじえるね……よし。だが、一人で向かうのは無謀だな。グレイフィア、「キャスリング」を私の魔力方式で複数人転移可能にできるかな?」

 

「そうですね。この場では簡易術式でしか展開できそうにありませんが、お嬢様ともう一人ぐらいなら可能かと」

 

「リアスともう一人か……」

 

「サーゼクス様、俺が行きます!」

 

 リアスが「悪魔の駒」の機能の一つである、「王」と「戦車」の位置を入れ替える「キャスリング」による奇襲を提案し、サーゼクスによる補助をもってリアスと一誠の二人による突入が決定した。

 

「イッセー、これを持ってけ」

 

 突入が決まった一誠に天魔が懐から取り出したものを投げる。一誠が慌てて受け取めて検めると二つのリングだった。

 

「神器の力を抑える腕輪だ。あいつを確保したらはめてやれ。力の制御の役に立つ」

 

「二つともはめればいいのか?」

 

「片方はお前がはめておけ、一時的に代価なしで禁手状態になれる。体力の消耗まではカバーできないから最終手段にしておけよ」

 

 リングの説明を聞き、腕にはめる一誠にうなずくと天魔は窓へと向かっていく。

 

「俺はちっと暴れてくる。敵陣中央への転移で混乱はするだろうが、こっちから叩いたほうがより混乱するだろうしな。それとヴラディに伝言頼む。「最も難しいことは自分を乗り越えることだ。だが、お前ならできると思ってる。もし次に会うときにできてたら、その時は名前で呼んでやるよ」だ。ちゃんと伝えろよ」

 

 天魔は窓の前に立つと神器を起動すると、右手を前に出し、叫ぶと同時に両手を手を腰へと当てる。

 

「禁手化!!」

 

『Vanishing Dragon Balance Breaker!!!!』

 

 天魔が窓を開き、飛び出していく。飛び出してきた天魔に魔術師が攻撃を加えていくが、それをはじきつつ、次々に反撃で撃ち落とすが、すぐに追加の魔術師が送られてきた。

 

「きりがねぇな。それにしても、これで本当にうまくいくのか?」

 

 天魔がぼやきながら魔術師を始末していくと、先程飛び出してきた窓が周囲の壁ごと吹き飛ぶ。何かあったのかと目を見開く天魔の視線の先でアザゼルとともに女性の悪魔が飛び出してきた。

 

「アザゼル!」

 

「天魔、手を出すなよ。こいつは俺がやる」

 

「俺が校舎に気を遣って窓を開けたのに、ぶっ壊してんじゃねぇよ!」

 

「そっちかよ!」

 

 飛んできた天魔に不敵な笑みを浮かべるアザゼルだったが、予想だにしなかった方向への指摘に声を上げる。しかし、天魔はアザゼルを放置し視線を下に送っていた。

 

「祐斗とゼノヴィアも出てきたか。援護してやるかね」

 

「こっちの心配はなしかよ。かわいくねぇやつだな」

 

「? お前があの程度のやつに負けるわけないだろ」

 

 天魔の言葉にあきれながら告げるアザゼルだったが、心底不思議そうにする天魔の顔に一瞬あっけにとられた後、笑みを深めると女性悪魔に相対した。

 

 

 

 天魔は転移してくる魔術師を消し飛ばしつつ、戦い始めた二人を眺めていた。

 

「まったく、こいつらは周囲を見てなさすぎだろ」

 

 天魔は魔術師を片手間に処理しつつ、二人が躱した攻撃を撃ち落としながら眺めていると女性悪魔が小瓶を取り出し、その中の蛇を飲み込んだ。その直後彼女の力が膨れ上がる。

 

 ちょうどそのタイミングでギャスパーの神器による停止が解かれ、それを見届けた天魔は上からの攻撃によって叩き落された。

 

「うおっ! なんだ!?」

 

「くっそ、いくらなんでも勢いつけすぎだろ……」

 

「この状況下で反旗かよ、ヴァーリ」

 

 天魔が落ちた先では一誠たちが旧校舎から出てきたところだった。天魔が撃ち落とされたことで動揺し、同じく落とされたアザゼルは上を見上げていた。

 

「そうだね。ここまでは計画通りに進んで安心しているよ」

 

「計画だと?」

 

「ええ、和平が決まった瞬間、拉致したハーフヴァンパイアの神器を発動させ、テロを開始させる手筈でした。頃合いを見てから私とヴァーリが暴れる。三大勢力のトップの一人でも葬れればよし。少なくとも会談を壊せればよかったのです。……なんだかいやらしい視線を感じるわ。本当にあの子が赤龍帝なの?」

 

「ああ、カトレア。残念ながら彼が天魔のライバルらしい」

 

「憐れむような眼を向けんな! こっちだって頑張ってんだ! ってか、なんであんたが天魔を攻撃するんだよ?」

 

 自身の計画を語る女性悪魔-カトレアに向けていた視線の質を見抜かれ、かけられた言葉に一誠が反応し、その立ち位置に抱いた疑問を投げかけると、アザゼルが自嘲するように話し始めた。

 

「……まったく俺もやきが回ったもんだ。身内がこれとはな」

 

「やべぇ、落ちた時に頭から血ぃ出てきてふらふらしてきた。……のむか?」

 

「い、い、いりませんッッッ!」

 

 苦笑するアザゼルを置いて、ふらりと立ち上がった天魔が頭部からの出血を抑えつつ、ギャスパーへと血を勧める。血まみれになった天魔が恐ろしいのかギャスパーは全力で首を横に振っていた。

 

「いつからだ? いつからそういうことになった」

 

「さぁ、いつからだろうな? もしかすると、最初からそのつもりだったのかもしれないよ?」

 

「こいつはお前たちの楔になると思ったんだがな」

 

「いや、むしろ彼がそこにいるからさ」

 

「どういう意味だ?」

 

 アザゼルの言葉にヴァーリは答えない。そのまま体をリアスのほうへ向けると胸に手を当てて話し始める。

 

「初めまして、リアス・グレモリー。私の名はヴァーリ。ヴァーリ・ルシファーだ」

 

「旧ルシファーの血筋のものですって⁉では、今回のテロも」

 

「私は死んだ先代魔王の孫と人間での混血児でね。それゆえにいろいろあったが……まぁ、それはいいだろう」

 

「今回の下準備と情報提供はヴァーリによるものです。彼女の本質を見抜けなかったのが仇となりましたね、アザゼル。さぁ、覚悟を決めてもらいましょうか」

 

 ヴァーリの自己紹介にリアスが絶句する。カテレアが得意気にするのにアザゼルは苦々しい顔をしつつ問いかける。

 

「……チッ、先ほど膨れ上がったオーラの量……オーフィスの野郎に何をもらった?」

 

「ええ、彼、いえ、彼女ですか。オーフィスは無限の力を有するドラゴン。世界変革のために少々力を借りました。おかげであなたと戦える。サーゼクスとミカエルを倒すチャンスでもあります。そしてそれは愚かな提督、あなたもです」

 

「……そうだな、俺は愚かかもな。シェムハザがいなけりゃ、何にもできねぇ。ただの神器マニアだ。けどよ、サーゼクスとミカエルはそこまで馬鹿ではねぇと思うぜ? 少なくともお前よりは遥かに優秀だ」

 

「世迷言を! いいでしょう、いまここでとどめを刺します。新世界創造の第一歩として、堕天使の総督であるあなたを滅ぼす!」

 

 自身の得意げな返答に愉快そうにするアザゼルにイラついたようにするカテレアだったが、その言葉には答えず、アザゼルは懐から短剣を取り出した。

 

 怪訝な顔をするカテレアを置いてアザゼルは短剣の切先を向けて語り始める。

 

「俺は神器マニアすぎてな。自分で制作したりすることもある。レプリカを作ったりな。まあ、ほとんどのものが屑でどうしようもないが。神器を作り出した神はすごい。俺が唯一、奴を尊敬するところだ。だが、甘い。「神滅具」と「禁手」なんていう神や魔王を滅ぼせる―世界の均衡を崩せるだけの「バグ」を残したまま死んじまったんだからな。そこが神器のおもしろいところなんだが」

 

「安心なさい。新世界では、神器なんてものは絶対に作らない。そんなものがなくとも世界は機能します。いずれは北欧のオーディンにも動いてもらい、世界を変動させなくてはなりません」

 

「それを聞いてますます反吐が出る思いだ。ヴァルハラ⁉ アース神族⁉ 横合いからオーディンに全部かっさらわれるつもりかよ。というよりもな、俺の楽しみを邪魔する奴は、消えて無くなれ」

 

 アザゼルの言葉に続いて短剣から光があふれ、形を変えていく。カテレアが狼狽するのを見てニヤリと笑うと決定的な言葉を告げる。

 

「禁手化ッ!」

 

 一瞬の閃光がやむと、アザゼルは黄金の全身鎧を纏っていた。背から十二枚の黒い翼を広げると光の槍を作り出し、カテレアへと差し向ける。

 

「「白い龍」と他のドラゴン系神器を研究して作り出した、俺の傑作人工神器だ。「堕天龍の閃光槍(ダウン・フォール・ドラゴン・スピア)」、その擬似的な禁手状態、「堕天龍(ダウン・フォール・ドラゴン・)の鎧(アナザー・アーマー)」だ」

 

「禁手って、レアな現象じゃなかったのか!?」

 

「いや、あれは正確には禁手じゃない。一種の暴走状態みたいなもんだ。核さえ無事なら新造も可能だが、使い捨てにするつもりだな。ちなみに核には五大龍王のファーブニルを契約による封印で使っている」

 

 天魔の解説に納得するよう一誠たちを置いて、カテレアが激昂する。

 

「アザゼル! それだけの力を持ちながら、あなたは!」

 

「カテレア、「無限の龍神」をバックにしておいてよく言うぜ」

 

「神器の研究はそこまで進んでいなかったはずです」

 

「その様子じゃ、俺の組織を裏切ったやつが神器研究の一部を持ち出したみたいだが、無駄だ。真理に近い部分は俺とシェムハザしか知らない。天魔もざっくりとした部分だけだ」

 

「私は偉大なる真のレヴィアタンの血を引くもの! カテレア・レヴィアタン! あなたごとき忌々しい堕天使に負けはしない!」

 

「来いよ」

 

「なめるなっ!」

 

 手招きするアザゼルに向かってカテレアが突進し、一瞬交錯する。カテレアの体から鮮血が噴出し、その後ろには余波による衝撃の跡が刻まれた。

 

「ただではやられません!」

 

 カテレアが叫ぶとともに腕が触手のように変化し、アザゼルの左腕に巻き付ける。そして、カテレアの体表に紋様が浮かび上がった。

 

「自爆用の術式か。しかも、術者が死んだときに連動して接触した相手を殺す呪詛まで練ってやがる」

 

「犠牲覚悟で大ダメージってか? 安っぽい考え方だが、効果は絶大ってわけだ」

 

「この触手は私の命を吸った特別性です。切れませんよ」

 

 リアスたちを後ろに下げながら天魔が魔法で切断を試みるが、カテレアの言葉に舌打ちする。アザゼルも切断を試みて光の槍をふるっていたが、切断は不可能と判断して肩をすくめると、左腕を切断した。

 

「自分の腕を!?」

 

「片腕ぐらいお前にくれてやるよ」

 

 アザゼルの行為に驚くカテレアに光の槍が突き刺さり、その体を消滅させる。

 

 その直後、人工神器の鎧が解除され、核の宝玉だけが残り、地面に落ちた。

 

「チッ、人工神器の限界か。改良の余地が多分にあるな。まだまだ付き合ってもらうぜ、「黄金の龍王(ギガンティス・ドラゴン)」ファーブニル」

 

 アザゼルは宝玉を拾うと軽くキスを落とす。そこに拍手が響いてきた。

 

「さすがアザゼル。しかし、鎧が解除されたね。まだまだ人工神器は研究が必要なわけだ」

 

「さて、ヴァーリ。まだやるか? 片腕にはなったが、俺はまだやれるぞ」

 

「そうだね。立場を鑑みると、カテレアの計画を引き継ぐのも手ではあるけれど、流石にこの状況で続けるのは無謀だ。私もやりたいことがあるしね。でも、ただ去るだけではつまらないし、赤龍帝には一つアドバイスでもあげておこうか」

 

 ヴァーリがニヤリと笑いながら告げるのに皆が怪訝な表情をする中、向けられる視線など知らぬ存ぜぬというように話し出した。

 

「兵藤一誠。君は強くなるべきだ。このままでは何かの拍子に死んでしまう。それはよくない。君は両親含め、先祖が何かしら超常に関りがあるわけでもなく、その年になるまで戦闘に役立つ努力をしたわけでもない。要するに、その「赤龍帝の籠手」以外には何もないということだ。そこで、命を懸けてみるのも一興だと思うのだよ」

 

 ヴァーリは見惚れるような笑顔で悪魔の取引を持ちかけたのだった。

 




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