先々のことを考えると必要なイベントなのですが、これでいいのかと思ったり…まぁ、突っ走っていきましょう
「命をって、どういうことだよ」
一誠は眼の前の少女の言葉の意味を捉えきれず訝しむ。
「文字通りの意味さ。強くなるためにリスクを背負うということだよ」
ヴァーリはゆっくりと地に降り立つと、転がっていた宝玉を拾い、一誠へと投げ渡した。一誠が慌てて受け止めたのを見て、笑みを深めて方法を告げる。
「それを使ってみるというのはどうかな?」
それを聞いて最も驚愕をあらわにしたのは天魔だった。
「おい! 待て! そんなことをしたら」
「口を出さないでくれないかな? 決めるのは本人だ」
ヴァーリは天魔の言葉を受け流し、一誠へと視線を合わせると再び話しだした。
「その宝玉は天魔の鎧から落ちたもので、白龍皇の力が宿っている。聖書の神と魔王が死に、聖と魔のバランスの崩れた今なら、聖魔剣のように相反する力の融合も果たせる可能性がある。それを実現することができれば、君は強くなれるだろうさ。ただし」
「相反する力を取り込むことはかなり危険な行為だ。うまく取り込めたとしても寿命を削ることになるし、失敗すれば死ぬだろう」
天魔がヴァーリの言葉を引き継ぐと、自分で語りたかったヴァーリは口をとがらせ、面白くなさそうにをする。そのまま表情を笑みへと戻すと一誠に決断を促した。
「さぁ、どうする? 決めるのは君だ。ただ、実行するなら腕輪を使って禁手の状態になる方がいいだろう。本元である左手に移植するのは流石に無謀だからね」
ヴァーリの言葉に手にした宝玉を見つめ、思案する一誠にその場の全員の視線が集中する。
不安そうにする天魔をよそに一誠は顔を上げると腕輪を輝かせ禁手へと移行した。決意をあらわにした顔を上げ、自身に視線が集中していたことを知り、居心地悪そうな顔になるも、気を取り直すと語りだす。
「ずっと、天魔の背に庇われるままじゃいけないとは思ってたんだ。同じように育った家族ってのもそうだけど、一応ライバルみたいだし、守られてるってのは嫌だった。だから、チャンスが来たならやってみたいって思っちまったんだよな……」
「だが」
「確かに天魔がここまで言うってことは死ぬリスクもあるんだろけど、俺は死ぬ訳にはいかないからな。なにせ、まだ部長の処女をもらってないんだぜ」
一誠の決意を聞きつつも不安そうに声をあげる天魔を遮り笑って告げる一誠に二の句を告げられなくなった天魔だったが、しばらく時間を開け、頭をかくと一誠に声をかける。
「イッセー、一個よこせ」
「え?」
「宝玉一個よこせって言ってんだよ」
天魔の言葉の意味を測りかねた一同だったが、意味を理解すると驚愕に包まれた。そんな中最も慌てたのはヴァーリだった。
「正気か⁉ 命の危機があることは先程まで自分で語っただろう! なぜ今十分に力のある君がリスクを犯す!」
「黙れよ、ヴァーリ。決めるのは本人だってさっきお前が言ったじゃねぇか。それに、俺がこんなところで死ぬわけねぇだろ」
天魔の笑いながらの言葉にヴァーリは何も言えなくなり、黙り込む。その間に一誠に目で促し、一誠も諦めたようにため息をつくと、右手の甲にハマる宝玉を外し、天魔へと投げ渡した。
「さて、改めて、だ。覚悟は良いか、イッセー? 始まってから「やっぱりやめた」はできねぇぞ」
「こっちのセリフだぜ、天魔。間違っても先に音を上げるなよ? 俺が諦めづらくなるからな」
天魔と一誠は互いの宝玉を手に笑いあうと、合図もなく同時に宝玉を手の甲にはめる。
直後、二人から四人分の絶叫が上がる。
白龍皇と赤龍帝、それぞれの宿主と神器に宿るドラゴンが自らと相反する力を取り込むことへの拒絶反応に悶え苦しんでいく。
絶叫とともに神器の各部にはまる宝玉が不規則に明滅を繰り返し、明らかな異常がおきていることを知らしめる。
先に神器の反応を抑え込んだのはなんと一誠だった。
『Vanishing Dragon Power is taken‼』
「「
一誠の鎧の右肘から先は純白に染まっており、色の統一が崩れているため不格好ではあったものの、その力を我が物としたのは明らかだった。
そこからわずかに時間を開けて天魔も力の掌握を完了した。
『Welsh Dragon Power is taken‼』
「「
天魔の鎧の変化は一誠のものと違い、宝玉をはめた左手の色が変わるものではなかった。その代わりに鎧の各部に赤いラインが走り、元の色を残した赤龍帝の宝玉からオーラが流れ出ているように脈動していた。
「……なんとまぁ、脱帽だね。本当に君は無茶をする」
「無茶をしなけりゃ大変なことになることばかりなんでね」
神器の異常を治めた天魔の様子にヴァーリは大きく息を吐くと、天魔と和やかな雰囲気で話し始める。
そんな二人の間にアザゼルが割り込んだ。
「さて、お前が何をしたいのかは計りかねるが、これ以上付き合うわけにはいかねぇからな。とっとと始めようぜ」
「全く、アザゼルは風情というものがないのかい? そんなだから配下に先を越されて行くんだよ」
「うるせぇ! 今はそれ関係ねぇだろ!」
「それに、もう遅いよ」
ヴァーリはアザゼルへと呆れたように告げると視線を外す。その瞬間、ヴァーリの外した視線の先に一人の少女が降り立った。長い黒髪を流した中華服の少女は気軽そうにヴァーリへ話しかけた。
「ヴァーリ、もうここでやるべきことは終わったでしょ? 早く帰らないとお姫様が不機嫌になっちゃうわよ」
「そうだね、美猴。帰ろうか。そちらはどうだい?」
「もちろん大成功。まぁ、当然よね」
「てか、誰だよあんた」
軽い調子で話し続ける少女に問いかける一誠だったが、答えたのは少女ではなくアザゼルだった。
「そいつは闘戦勝仏の末裔だよ。と言ってもわからんか。即効で理解できるように言ってやろう。やつは孫悟空―西遊記で有名なクソザルだ」
「えぇぇぇぇぇぇ!」
「正確に言うなら、孫悟空のちからを受け継いだ猿の妖怪だ。あいつも「逸れ者」の一人だったんだがな」
少女の正体を聞き驚愕する一誠だったが、続く天魔の言葉に更に驚愕することになる。
「というか、お前と祐斗、あと塔城さんはあったことあるぞ」
「え⁉ 嘘だろ、いつ⁉」
「ドーナシークを殴るために廃教会に行ったとき。あのときにアーシアに化けてたのがあいつだ」
「まじかよ……」
笑顔で手を振る美猴に愕然としたまま応じる一誠だった、 美猴が棒を突き立て、闇が広がり出したのを見て慌て始めた。
「お、おい! 待てよ!」
「君の許可を得る必要はないな。アザゼル、この場を借りて宣言しておこう。我ら「逸れ者」は堕天使陣営と袂を分かち、「禍の団」へと合流する。せいぜい我らを拾ったことを後悔することだね」
その言葉を最後にヴァーリと美猴が消える。あとには戦闘の余波だけが残された。
天魔たちが校庭へと戻ると、サーゼクスとセラフォルー、ミカエルが指揮を取って戦後処理を行っていた。戻ってきた天魔たちをみて表情を和らげるサーゼクスだったが、アザゼルの腕をみて表情を曇らせた。
「無事……とはいえないようだな。その腕は?」
「カテレアに捕まって自爆されそうになってな。切り落とした」
「そうか、彼女については悪魔側に問題があった。その傷については」
「そんな顔をしないでください、サーゼ様。さっさと決めればいいのに油断した結果の自業自得です」
「このバカに言われるのは業腹だが、実際その通りだしな。それに、こっちもヴァーリが迷惑を掛けた」
保証についてはなし始めるサーゼクスを遮り、言葉を返す天魔に呆れた顔をしながらもアザゼルが肩を竦める。
「彼女は裏切ったのか」
「ああ、もともと堕天使に忠誠を誓うわけでもなく、ただ天魔がいるからうちにいるだけのやつだったから、こんなことになるとは思わなかったがな」
サーゼクスの疑問にアザゼルがため息でもつきそうにしながらこぼす中、天魔が防諜用の結界を張った。各勢力の首脳陣、グレモリー眷属とその他の者たちを分かつ状態となったことで疑問を呈する前に天魔の下へと通信が入る。
『天魔、こちらはうまくいきましたよ。少々炸薬の量を間違えたのか想定より範囲が大きくなりましたが、燃えたのはアザゼルの私室なので問題はないでしょう』
「そうか、何よりだ。……もう少し炸薬増やしても良かったかもな」
「おい待て! 通話の相手はシェムハザか! んで、今俺の部屋が吹っ飛んだとか行ったか⁉」
「
アザゼルが天魔の通信の相手を見抜き、声を上げると、天魔とその通信相手であるシェムハザは事もなげに告げる。あまりにもあっさりとした声に絶句するアザゼルをよそに、サーゼクスが天魔に話しかける。
「天魔君、うまく言ったというのはどういうこと何だい?」
「あぁ、それですか。まぁ、言ってしまえば、今回の一件は俺の仕込みも兼ねてたってことです」
「仕込み……つまり、ヴァーリたちの裏切りは事実ではなく、スパイとして送り込んでいるということかい?」
「ご明察の通りです。勿論本人たちも同意の上ですよ」
「それを証明する手立てはあるのかい?」
「本部に戻ってすぐだと思うんで、今からあいつらに連絡を取るわけにはいけませんが、シェムハザの証言と、今回の件で各陣営で死者がでていないことを参考としていただければと」
天魔の言葉を聞き、サーゼクスは思考にふけるのをみて、リアスが進み出て、天魔を支持する旨を告げると、サーゼクスの表情が柔らかくなった。やや恐縮そうにする天魔にリアスが微笑みかける。
その間に各勢力で話した結果、今後の働きをみて判断するとして、処分に関しては保留となったのだった。
「では、私は天界に戻り、「禍の団」についての対策を講じてきます。堕天使側からの要望にも答える必要がありますからね」
「すまないな、今回このような結果になって。会談の場をセッティングした我々としては不甲斐なさを感じている」
「サーゼクス様、今回の件は徹頭徹尾我らの事情に巻き込んだだけに他なりません。責を問われるべきは私の方です」
「いや、会場を設定した以上、その場の安全を担保するのは我々の責務だよ。そんなことよりも私のことはこれまで通り呼んでくれたまえ」
「そもそも、サーゼクスが責任を感じる必要はないのですよ。私はむしろ三大勢力が平和の道を共に歩めるようになったことに喜びを感じているのです。無益な争いも減るでしょうしね」
「ま、納得しない奴らも出るだろうがな」
ミカエルがその場を辞そうとするのをみて、危険にさらしてしまったことをサーゼクスが謝罪し、再び天魔が言い募ろうとしたが、各トップ陣に軽く流され、口を閉ざした。
「ああ、そうだ。ミカエル、ヴァルハラや須弥山への報告は任せたぞ。オーディンのやつに動かれると面倒だし、須弥山の連中も伝えないとうるさそうだ」
「承りました。悪魔と堕天使が報告するのでは説得力がありませんものね。幸い「神」への報告は慣れてますし」
その言葉を最後にミカエルは天使を率いて去っていく。
それを見送るとアザゼルも自身の配下を見渡した。
「俺は和平を選ぶ。堕天使は今後一切、悪魔や天使とは争わない。不服やなやつは去ってもいい。ただし、次に会うときは容赦なく殺す。ついてきたい者だけ俺についてこい!」
アザゼルの宣言に返ってきたのは力強い肯定と揺るぎない忠誠だった。怒号にも似た返答にアザゼルは小さく礼を言うと、指示を出し配下を先に帰らせる。全員が戻ったのを確認すると、校門の方へ歩き出した。
「後始末は、サーゼクスに任せる。俺はつかれた」
そのまま去っていくアザゼルだったが、ふと思い出したように一誠へと向き直った。
「そうだ、赤龍帝。当分この街に留まる予定だから、リアス・グレモリーの「僧侶」共々面倒見てやるよ。制御できていないレア神器を見るのはムカつくからな。天魔も世話しているようだが、そいつは専門ってわけでもない」
突然の提案に驚愕する面々をよそに再び振り返ると去っていく。
「赤は女を、白は平和を―簡単にとはいかないだろうが純粋な奴らだぜ」
その後、天界代表天使長ミカエル、堕天使中枢組織「神の子を見張るもの」総督アザゼル、冥界代表魔王サーゼクス・ルシファーの連名で和平条約が調印された。
以降、三大勢力での争いは禁止され、協力体制を取ることとなる。
その協定は会談の行われた場所の名前をとって、「駒王協定」と称されることとなる。
「てなわけで、今日からこのオカルト研究部の顧問になった。アザゼル先生と呼べ。もしくは総督でもいいぞ?」
駒王協定調印から数日後、オカルト研究部の部室にはアザゼルがいた。スーツを着崩し、くつろぐ姿にグレモリー眷属が困惑する。
「どうしてここに?」
「セラフォルーの妹に頼んだら、この役職だ。まぁ、俺は知的でチョーイケメンだからな。女生徒を食いまくってやるぜ」
「それはダメよ! というかなんでソーナがそんなことを」
「サーゼ様曰く、ソーナ様に昼の管理は任せているので交渉はそちらにとのことで……おそらくこいつの興味が主にこちらに向いているので……その……」
リアスの問に対する答えにグレモリー眷属の困惑が加速する。そんな中、天魔が気まずそうに考えを話し、それを聞いたリアスは嘆息した。
「そういえば、その腕は? 確か、切り落としてましたよね?」
「ああ、これか? 神器研究のついでで作った本物そっくりの義手だ。光出力レーザーや小型ミサイルも搭載できる万能アームだ。一度こんなのを装備して見たかったんだ。せっかくだから取り付けてみた」
一誠の問に答えると同時にアザゼルの左腕が変形し、何回転もすると、最終的にロケットパンチが射出される。急に飛び出した腕に驚く者たちを見やり、満足そうにすると腕を戻して話し始める。
「俺がこの学園に滞在できる条件は、グレモリー眷属の悪魔が持つ未成熟な神器を正しく成長させること。まぁ、神器マニアとしての知識が役に立つってことだ。お前らも聞いただろうが、「禍の団」なんていうけったいな組織がある。天魔がスパイを紛れ込ませていたりするが、脅威であることは変わりない。で、将来的な抑止力として二天龍を擁するお前らの名前が挙がった。すぐに攻めてくることはないだろうが、備えるに越したことはねぇからな」
アザゼルの言葉に部員の表情に真剣味が増す。それを確認すると、アザゼルは一誠に目を合わせた。
「それで、白龍皇の力は使えるようになったのか?」
「いえ、あれ以来右腕が白くなることもないです。天魔は鎧にラインを通したり出来るようになって来ましたけど」
一誠があのとき手にした白い籠手は顕現さえできていなかった。相手の力を半減できることはわかっていたが、扱うことはできなかった。
天魔のラインも常に使えるわけではなく、発動できない場合がほとんどだったが、時間を掛けて集中を深めることで修練ができる程度に発動する可能性を高めることに成功している。
「まぁ、だろうな。強力な力をそう簡単に使えるわけがない。取り込むことはできても使いこなせるかどうかは別の話だ。下手をすれば、禁手に至るよりも難しいかもしれん。天魔が使えるのもお前より長い期間死ぬような訓練を積んだ結果身についた応用力によるものだ。まぁ、神器の核であるドライグの魂には力が刻まれているだろうから、地獄のシゴキを受けていればそのうち使えるようになるだろう。だが、弱いからと張り切り過ぎると死ぬぞ?」
弱いという言葉にぐうのねもでない一誠に向けてアザゼルは更に畳み掛ける。
「そもそも、赤龍帝の力も不安定過ぎる。爆発力は凄まじいが、それも一時だ。格下ならそれで十分だろうが、格上なら封殺されて終いだ。お前も悪魔としてレーティングゲームに参加するなら、強力な赤龍帝の力を安定化させる必要がある。まぁ、それもこれも禁手に至るところからだな。とはいえ、レーティングゲームは単純じゃない。駒消費一の「兵士」が「王」を取ることもある。要はやりよう次第ってことだ。そこんとこも含めて教えてやらなきゃな」
「ゲームに詳しいんですね」
「悪魔以外の勢力にもファンが結構いるんだぜ? 和平も成ったし、天使や堕天使の観戦者も出てくるだろうよ。まぁ、何にせよまずは長時間戦える体力づくりからだな」
「……はい」
アザゼルの総評に一誠が沈みながら返答する。アザゼルが次に目を向けたのは祐斗だった。
「聖魔剣の、お前、禁手状態でどれぐらい戦える?」
「現状一時間が限界です」
「だめだな。最低でも三日継続できるようにしろ」
祐斗の返答にアザゼルが厳しく返すが、それで気合が入ったのか祐斗の纏う雰囲気が引き締まる。その状況に一誠が気まずそうに声を出した。
「俺は、限定条件付きで十秒ですけど……」
「お前は一から鍛え直す。天魔は禁手状態を一ヶ月以上持たせられるぞ。敵対することはないとはいえ、それだけ差があることは自覚しとけ」
一誠の言葉にアザゼルは半目になると、現状の天魔との差を告げる。その言葉に天魔に視線が行くが、否定はしなかった。
話は続き、朱乃へと視線が映る。
「まだ俺等がーいや、バラキエルが憎いか?」
朱乃への問に部室の空気が重くなる。そんな中、朱乃は不機嫌を隠すこともなく言い放つ。
「許すつもりはありません。母はあの人のせいで死んだのですから」
「あいつはお前が悪魔に降ったときに何も言わなかったよ」
「当然ですね。あの人が私になにか言える立場であるはずがありません」
「そういう意味じゃねぇさ。まぁ、お前ら家族の間に俺が立ち入るのも野暮か」
「あれを父とは思いません!」
「そうか、でもな、俺もお前がグレモリー眷属になったのは悪かないと思うぜ。それ以外だったらバラキエルもどういったかな」
朱乃が強く否定するがアザゼルは表情を緩めて告げる言葉に何も言わなくなった。その反応に満足したのかアザゼルは再び一誠に視線を合わせる。
「そういえば赤龍帝―イッセーでいいか。お前、ハーレム目指してるんだってな?」
「ええ、まぁ、そうですけど……」
一誠は少しムッとした風に返事をした。また否定されるのかと少し気にかかったのだ。しかし、続くアザゼルの言葉に驚愕する。
「俺がハーレムを教えてやろうか? これでも過去数百回ハーレムを築いた男だ。話を聞いておいて損はない」
「マ、ママママ、マジっすか⁉」
一誠は驚愕とともに、天魔を見やる。アザゼルをよく知っており、信頼できる天魔に真偽を問うためだ。視線を向けられた天魔はため息でもつきそうな顔で話し出す。
「こいつはモテるよ、実際。さっき言ってた女生徒を食いまくるってのも、やろうと思えば夏休みに入るまでの短い期間に何人犠牲になるやら……」
「天魔が身近にいるわけだし、童貞だろう? この際だ、女ってのを教えてやろう。な~に心配すんな、適当な美女でも引っ掛けてやるさ。これでも女の乳をもんで堕天した身だ。エロに関して妥協はしない」
「え⁉ そんなことで堕天したんですか⁉」
「伝承通りだ。女性による誘惑にハマり、天界の知識を与え堕天している」
「なんか堕天使の皆さんに急に親近感が湧いてきたよ」
天魔の言葉に苦手意識が和らいだのか感心するような顔になった一誠にアザゼルは笑みを深めた。
「おっ、話が分かるじゃねぇか。そうだ、男なら欲望のままに生きろ。女を食らえ! 抱いて抱きまくれば強さも自然についてくる。俺が卒業式をプロデュースしてやろう。部下の美少女堕天使を何人か紹介してやる。伝説のドラゴン相手ならアイツラも喜んで抱かれるだろうさ」
「はぁ、その時の声掛けは俺がするからな。お前が声を掛けるとその気じゃないやつも同調圧力で参加しかねん。万が一でも一誠に変な相手をあてがうわけにはいかんからな」
「マジで卒業できるんですか⁉ 俺、一生先生についていきます!」
「よーし、その意気だ。早速童貞卒業ツアーに出かけるか!」
アザゼルと天満の言葉に会話の内容が現実になるのだと気持ちを昂らせる一誠だったが、リアスによって阻止される。
「待ちなさい! そんなこと許さないわ! 大体イッセー! 人の貞操を守っておいて、自分はよそで散らすだなんてどういう了見かしら!」
リアスを筆頭に部員たちとの会話が大きくなり、一気に騒がしくなる。
それを見てアザゼルは豪快に笑い出した。
「ハハハ! 賑やかだな、お前らは! まぁ、ドラゴンは自然と一夫多妻を形成すると言うし、俺が教えるまでもないか。ここは三大勢力の同盟の代表的な場所の一つになる。堕天使の総督、魔王の妹、天界のバックアップ、そして伝説の二天龍だ。仲良くやっていこうや。当面の目標は赤龍帝の完全な禁手化、そしてお前たちのパワーアップだな。それらを夏休みの修行を経て達成すべきだ」
「わたしたちも強くならなければならないのね」
「強くなっておいて損はない。話では近々若手悪魔同士の会合があるんだろ? デビューが近くて将来有望な悪魔がリアス・グレモリーを含めて数人いると聞いているが」
「ええ、旧家、名家、その手の若手悪魔何名かでの顔合わせね。習わしみたいなものよ」
「テロがあったってのにゲームの話のことなんて考えていていいんですかね?」
「俺はむしろ推奨するね。実戦経験のない若手悪魔にはゲームはいい経験になる。今の悪魔には人間や妖怪なんかからの転生悪魔がひしめき合っているからな。相手のバリエーションには困らない。その上、豊富な種類のフィールドにルール、それに応じて戦い方も千差万別と来たもんだ。しかも、リタイアによってリスクの低減もしている。これほど若手の育成に最適な環境はない。案外、サーゼクスは今の状況を見据えてゲームを創り出したのかもな。悪魔同士で競わせて力の質を高める。欲の深い悪魔だからこそハマったのかもな。食えない奴らだ。な~に、俺が直接神器の使い方を叩き込んでやるよ。それと、合宿中に試合もセッティングするつもりだ。レーティングゲームの形式でやれるようにサーゼクスに打診している。ククク、未知の進化を始めた「赤龍帝の籠手」。それに聖魔剣。更に「停止世界の邪眼」だ。俺の研究成果を叩き込んで独自の進化形態を模索してやる」
「ここに滞在する条件が「正しく成長させる」ってものなのを忘れるなよ」
そして、時は過ぎ、終業式の日。
明日から夏休みとなるこの日に兵藤家はその人数を増やすこととなった。
「こんにちは」
「や、どうも。今日からお世話になるよ」
訪れたのは朱乃とゼノヴィア。サーゼクスの提案によりグレモリー眷属は兵藤家へと集結する形になるのだった。
「イッセー君! あなたの朱乃、ただいまあなたのもとへ到着しましたわ」
「お兄様の提案とはいえ、なんでこの家に……近くに住むのでもいいじゃない……朱乃! いつまで抱きついているの! 離れなさい!」
「私の部屋はアーシアと同室でいいのか?」
「ああ、普段は手狭になるかもしれんが、寝る時はアーシアが俺の部屋に来るし、ベッドは普通に使えるぜ。それにしても、荷物少なすぎないか? 事前に荷物を送ったわけでもなくこれだけとは……」
「む、天魔、自分の荷物ぐらい自分で持てるぞ」
「いいから、元の部屋からずっと抱えて来たんだろ? ゆっくりしとけ」
朱乃が一誠に抱きつき、リアスと火花を散らすのを横目に天魔がゼノヴィアの荷物を運んでいく。リアスは一誠を朱乃から奪い取ると嘆息して話しだした。
「しかし、今後小猫も来るとなると、この家もより手狭になるわね……決めたわ。この家を改築しましょう。お兄様に連絡を取ってみるわ」
その言葉に天魔と一誠が驚くが、朱乃が一誠をリアスから取り戻し、再び騒がしくなる。
詳しく聞きたくとも聞けない状況に憮然としつつも賑やかになる日常に天魔は頬を緩めるのだった。
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