変態の双子の兄弟として   作:篠白 春夏秋冬

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「この不良神父のセリフ書くの難しい」というメモがファイルにくっついてました。

誤字の確認をしているときに難しいと思いました。


Life.4 はぐれもの来る

「はぐれ悪魔」

 

 上級悪魔の眷属となったものが、主である上級悪魔を裏切り、または殺害して逃げ出したもののことを指し、一誠が堕天使のドーナシークに襲われた際に間違われたのがこれである。

 

 はぐれ悪魔の多くは力に酔い、自身のために力をふるおうとするのだ。それゆえ、他勢力に無用な被害を出し、問題の発生を引き起こさないよう、その存在を補足し次第、排除するように決められている。

 

 そういった背景から、はぐれ悪魔となったものに関しては他の勢力のものも堂々と殺すことができるため、鬱屈した感情を持つものの中には喜び勇んで狩りに行くものもいるのだ。

 

 そして、そんな存在を狩るために、その地で活動している悪魔に討伐依頼が来ることがある。今回は駒王町にはぐれ悪魔が逃げ込んだためリアスたちに依頼が来たのだった。

 

「ほら、そんなガタガタ震えんな、イッセー」

 

「だけどよ、めちゃくちゃ殺気ばらまいてるじゃねぇか」

 

「イッセー、いい機会だから悪魔の戦いを経験しておきなさい」

 

「マジっすか⁉ 天魔ならともかく、俺は戦力にはなりませんよ⁉」

 

「別に今すぐ戦えというわけではないわ。見て学ぶのよ。ついでに駒の特性も説明しておきましょうか」

 

 天魔が震える一誠の尻をはたきながら緊張をほぐそうとするが、堕天使の時のような遊び半分のものとは違う本気の殺気を感じ震える一誠には通じなかった。続くリアスの言葉にさらに震え上がる一誠だったが、直接戦闘に参加する必要はないという言葉にわずかに震えはましになった。

 

「駒の特性、ですか?」

 

 一誠の疑問にリアスたちは作られるようになった理由から話していく。

 

 悪魔、天使、堕天使の三つ巴の戦争を長年行っており、それが終結するころには純粋な悪魔は大多数が死亡していた。その結果どの上級悪魔も戦争前のような軍勢を保てないほどになっているが、各勢力とのにらみ合いは続いている。

 

 そこで、少数精鋭の眷属を持つというように方向転換した。そのために作られたのが「悪魔の駒(イーヴィルピース)」だ。チェスをモチーフとするそのシステムは主となる上級悪魔を「(キング)」とみなし、その配下とするために使う「女王(クイーン)」、「戦車(ルーク)」、「騎士(ナイト)」、「僧侶(ビショップ)」、「兵士(ポーン)」の駒をチェスの駒と同じ個数受け取り、眷属集めに使用する。

 

 このシステムは現在の悪魔に好評であり、実戦の訓練や眷属の優秀さを示すために行われる「レーティングゲーム」という競技が眷属となった悪魔の昇級に影響するほどになっていた。レーティングゲームに参加できるのは成熟した悪魔だけなのでリアスたちは参加したことはなかった。

 

「じゃぁ、俺の駒って何なんですか?」

 

「イッセーの駒は──」

 

「お出ましのようですよ」

 

 リアスが一誠に駒についての説明をしようとしたが、天魔がそれに待ったをかける。直後に暗がりの中から重い足音を響かせて化け物が姿を現した。

 

「ああ、餌だ。うまそうなにおい……嫌な臭いも交じって入るか? まぁいい。食えるのは久々だからな、ぜいたくは言うまい」

 

「はぐれ悪魔バイサー、主のもとから逃げ、己の欲求のために暴れまわるその行為、万死に値するわ。あなたをここで消し飛ばしてあげる」

 

「小賢しいぃぃぃ! 小娘ごときがぁぁぁ! 貴様の体をその髪と同じ色の鮮血で染めてくれるわぁぁぁ!」

 

「雑魚のくせにシャレの効いたセリフを吐くものね! 祐斗!」

 

 現れた化け物、バイサーのセリフにリアスが臆することなく言い返すと、そのセリフに激高したバイサーがリアスたちに襲い掛かる。

 

 その瞬間、リアスの指示により祐斗が飛び出し、バイサーに肉薄する。

 

「騎士」の駒を与えられた祐斗は速度が強化されており、その速度でバイサーを翻弄すると剣によって腕を両断した。

 

「すげぇ速さだ」

 

 祐斗の動きを目で追えなかった一誠が声をこぼし、呆然とした様子の一誠に祐斗が爽やかに笑いながら手を振った。

 

「次は小猫ね」

 

 叫び声をあげるバイサーの前に小猫が進み出ると、バイサーはその巨体によって押しつぶさんと迫る。かわそうとしない小猫を見て、思わず一誠が声を上げる。

 

「危ない!」

 

「大丈夫よ。あの程度じゃ、あの子はつぶせないわ」

 

 が、しかし、その目論見がなされることはなかった。「戦車」の駒を与えられた小猫は攻撃力と防御力が劇的に強化されており、バイサーの一撃をあっさりと受け止めると拳の一撃で吹き飛ばした。

 

「うそん」

 

 自身と比べて体格が明らかに小さい小猫の力をみて、一誠は再び呆然とする。また、その力を自身に向けられる可能性に震え、一誠の中での力関係に天魔と並んで怒らせるべきでない相手として刻まれた。

 

「最後は朱乃ね」

 

 吹き飛ばされたバイサーのもとに今度は朱乃が近づいていく。

 

 小猫の一撃により動けないバイサーの前に立つと、朱乃は手を上に掲げ、魔方陣を展開すると、雷が落ちバイサーの体を焼き焦がした。

 

 朱乃に与えられた「女王」の駒は「騎士」、「戦車」、「僧侶」、「兵士」のすべてを複合した強化を与える駒であり、その中でも魔力の強化を行う「僧侶」との相性のいい朱乃による雷はかなりの威力が出ており、肉が焼ける匂いを漂わせていった。

 

「なんか、笑ってないですか、姫島先輩」

 

「普段は優しいのだけどね。一度火が付くと自分の興奮が収まるまで攻撃をやめない究極のSよ」

 

 攻撃を行いながら、笑い始めた朱乃に怪訝そうにしながら天魔が問うとリアスから返答があり、一誠は震え上がる。

 

「俺、朱乃さんが怖いっす」

 

「大丈夫よ。味方には優しいから。今度甘えてあげなさいな」

 

「俺も少しは力見せときたいんで、とりあえず一回止めますね」

 

 いうが早いか天魔は朱乃の後ろから近づくと魔法で氷を作ると首筋にぴたりと当てる。朱乃が突然の冷気に驚き、思わず攻撃の手が狂って天魔や祐斗に向かうのを天魔が魔法陣によって防ぐ。

 

「いきなり何をするんですか⁉」

 

「姫島先輩、いくら何でもやりすぎです。俺の分も残しといてくださいよ。欲求不満ならあとで俺が相手しますから」

 

「ふぇ⁉」

 

「? 結界には自信ありますから的ぐらいにはなりますよ」

 

「ああ、そういう」

 

「木場、剣貸してくれ」

 

 赤面する朱乃を適当にあしらい、天魔は祐斗から剣を受け取ると、軽く振って感触を確かめると、ゆるりと構えそこから一気に加速する。天魔の姿がぶれ、気づけばバイサーの残っていた腕が切り飛ばされていた。

 

「がぁぁぁぁぁ!」

 

「ま、こんなもんだろ。木場、剣借りて悪いな」

 

「いや、大丈夫だよ。それにしても、速いね。僕も鍛えているつもりだったけど駒のサポートなしでこれだと自信なくしちゃうね」

 

「これでもガキの頃から死ぬ思いしてきてるからな。部長、あとはお願いします」

 

 天魔は祐斗に剣を返すと最後の処理をリアスへと任せるため道をあける。

 

「何か言い残すことはあるかしら」

 

「殺せ」

 

「そう、なら消し飛びなさい!」

 

 リアスの放った特大の魔力がバイサーを包む。魔力が空中に溶けて消えると異形の姿はどこにもなかった。

 

「そういえば聞きそびれてたんですけど。俺の駒って何なんですか?」

 

「イッセーの駒は「兵士」よ。「僧侶」は別命を受けてここにはこれないの」

 

「そう落ち込むなよ、イッセー。駒なしでも強くはなれるんだ。お前も頑張れば昇格できるくらい強くなれるって」

 

 自身の役割が最弱の駒であると分かり、がっくりとうなだれる一誠に天魔から慰めが入るが、それが響くことはなかった。

 

 

 

 

 

 その翌日。

 

 一誠は契約をとるために端末の示す住所に向けて自転車をこいでいた。

 

 自身の昇格への難易度の高さにため息をつきながら目的地である一軒家に到着し、自転車を降りると、自身の気持ちを脇に置き依頼者を呼び出すために呼び鈴を押そうとしたとき、玄関のドアが開いていることに気付いた。

 

「こんな深夜に……不用心ってことはないよな」

 

 一誠はいぶかしみつつも屋内へと足を踏み入れた。人の気配が感じられないことに不安を覚えつつも、唯一ほのかに明かりのついている部屋へと進むとその部屋の中を覗き込む。

 

 ろうそくで照らされた部屋の内部を確認すると一誠の視線はある一点に引き付けられ、状況を認識すると同時に生じた衝動に従い胃の中のものを吐き出した。

 

 そこには、血塗れとなった男性が逆十字の形で貼り付けにされていた。

 

 男性の四肢と胴体が太い釘によって打ち付けられており、腹部は深く切り裂かれて臓物があふれ出ていた。

 

 その明らかに異常な光景に震える手で懐に手を入れると持っていた機械のスイッチを押す。

 

 この機械は天魔から持たされていたものだった。先日のバイサーとの戦闘後、知り合いに会いに行かなければならなくなったといい、何か有事の際に呼び出すためのものだとのことだった。転移には少し時間がかかるので、その場からはすぐに逃げるように言われたが、遺体の近くに何か書かれていることに気が付き、遺体に近寄った。

 

「(スイッチは押した、まだ弱くて誰かに頼らないといけないのは悔しいな)なんだ? この文字、血で書かれているみたいだけど」

 

「「悪いことする人にはお仕置きよー」って、聖なるお方の言葉を借りたのさ。って、おやおや? これはこれは、悪魔(あ~くま)君じゃあ~りませんか」

 

 謎の血文字に意識を奪われた一誠の後ろに気が付けば神父のような服を着た少年が座っていた。以前リアスから「悪魔祓い」と接触することについての危険性を聞いていた一誠は警戒をあらわにするが、少年はふざけた態度で歌い出す。

 

「俺は神父♪ 少年神父~♪ デビルな輩をぶった斬り~、ニヒルな俺が嘲笑う~♪ おまえら、悪魔の首刎ねて~、俺はおまんま貰うのさ~♪ 俺のお名前はフリード・セルゼン。とある悪魔祓い組織に所属している末端でございますですよ。あ、別に俺が名乗ったからっておまえさんは名乗らなくていいよ。俺の脳容量にお前の名前なんざメモリしたくないから、止めてちょ。大丈夫、すぐに死ねるから。俺がそうしてあげる。最初は痛いかも知れないけど、すぐに泣けるほど快感になるから。新たな扉を開こうZE!」

 

「お前がこの人を殺したのか?」

 

 フリードと名乗る少年のセリフから感じられる異常性に引きながら気になっていたことについて質問する。

 

「イエスイエス。俺が殺っちゃいました。だってー、悪魔を呼び出す常習犯だったみたいだしぃ、殺すしかないっしょ。あんれ? 驚いてるの? 逃げないの? おかしいねぇ、変だねぇ。つーかね、悪魔と取引するなんて人間として最低レベル、クズ街道まっしぐらっスよ。その辺ご理解できませんかねぇ? 無理? あーそうですか。クズの悪魔ですもんねぇ」

 

「人間がなんで人間を殺すんだよ! お前たちが殺すのは悪魔だけじゃないのか⁉」

 

「はぁぁぁ? 何それ? 悪魔の分際で俺を説教? ハハハ、笑える笑える。お笑いの賞取れますですよ、それは。いいか、よく聞けクソ悪魔。悪魔だって、人間の欲を糧に生きてるじゃねえか。悪魔に頼るってのは人間として終わった証拠なんですよ。エンドですエンド。だから、俺が殺してあげたのさー。俺、悪魔と悪魔に魅入られた人間をぶっ殺して生活してるんで、お仕事でござんすよ」

 

「あ、悪魔だってここまでのことはしない!」

 

「はぁ~? 何、言ってんの? 悪魔はクソですよ。クソのような存在なのですよ? 常識ですよ? 知らないんですか? マジ、胎児からやり直したほうがいいって。って、人間から転生したっぽい悪魔のおまえさんに胎児もクソもないか。むしろ、俺がおまえを退治! なーんてな! 最高じゃね? 最高じゃね? 俺的におまえがアレなんで、斬ってもいいですか? 撃ってもいいですか? OKなんですね? 了解です。今からおまえの心臓にこの光の刃を突き立てて、このカッコイイ銃でおまえのドタマに必殺必中フォーリンラブしちゃいます!」

 

 罪悪感も感じさせないフリードの言葉に一誠は激高するが、フリードは何も聞き入れることなく懐から柄だけの剣と拳銃を取り出すと、柄だけの剣から光の刀身が伸び、戦闘準備が整うと一誠に襲い掛かる。

 

 一誠は慌てて光の剣をギリギリで避けるも足に激痛が走りその場に崩れ落ちた。痛みから天魔から持たされた機械が滑り落ちて転がっていくのを横目に見つつ、フリードのほうを見ると手に持った拳銃から煙が上がっていた。

 

「どうよ! 光の弾丸を放つエクソシスト謹製祓魔弾は。発砲音なんてございません。光の弾ですからねぃ。達しそうな快感が君とオレの体を襲っちゃうだろう? さあ、死ね死ね悪魔! 死ね悪魔! 塵になって、宙を舞え! 全部、俺様の悦楽のためにぃ!」

 

「オラァ!」

 

 光によるダメージに一誠の動きが止まる。隙をさらした一誠にとどめを刺すべく襲い掛かるフリードだったが、すぐ横から吹き飛ばされ、机やいすを巻き込んでいく。一誠がその原因に目を向けるとそこには拳を振りぬいた天魔がいた。

 

「すまんなイッセー。遅れた」

 

「悪い。すぐ逃げろっつてたのに」

 

「気にすんな。生きてるだけ儲けもんだ」

 

 機械を渡された際に天魔から言われていたことを無視していたことを一誠が謝ると、天魔はあっさりと許す。そうこうしているとフリードが壊れた机などを押しのけ怒りをあらわに叫び出す。

 

「てめえいきなり何してくれてんだぁ! 俺っちのお楽しみタイム中によぉ!」

 

「うるせぇ、黙れ。こちとら兄弟殺されかけてんだ。簡単に眠れると思うなよ」

 

「兄弟ぃ? 人間のくせに悪魔と兄弟とか笑えるなぁ。まぁいいや。不意打ち決まっていい気になってるみたいだが、てめぇも一緒にぶっ殺してやんよぉ!」

 

「フリード神父? 何かありましたか?」

 

 フリードの叫び声に不信感を持ったのか女性の声がかかる。その声は天魔たちにも聞き覚えのあるものだった。

 

「あの時のシスター……アーシアだったっけ」

 

「おんや、助手のアーシアちゃんじゃあーりませんか。どうしたの? 結界は張り終わったのかなかな?」

 

 現れたのはアーシアだった。不安そうな顔で現れたアーシアは貼り付けになっていた遺体を確認すると悲鳴を上げる。

 

「! い、いやぁぁぁぁぁっ!」

 

「かわいい悲鳴ありがとうございます! そっか、アーシアちゃんはこの手の死体は初めてですかねぇ。ならなら、よーく、とくとご覧なさい悪魔に魅入られたダメな人間さんはそうやって死んでもらうのですよぉ」

 

「……そ、そんな。……フリード神父。そちらの方々は」

 

「人? 違う違う。こいつはクソの悪魔とそれに魅入られたクソ野郎だよ。ハハハ、何を勘違いしているのかなかな」

 

「天魔さんたちが、悪魔の……」

 

 アーシアは悲鳴が落ち着くと天魔たちに目を止めフリードに質問する。その回答に敵得あることを知ったからか絶句する。

 

「何何? 君ら知り合い? わーお。これは驚き大革命。悪魔とシスターの許されざる恋とかそういうの? マジ? マジ?」

 

「接触するつもりはなかったんだけどな」

 

 面白おかしそうに天魔たちとアーシアを交互に見やる中、天魔はひとりごちる。

 

「アハハ! 悪魔と人間は相入れません! 特に教会関係者と悪魔は天敵さ! それに俺らは神にすら見放された異端の集まりだぜ? 俺もアーシアたんも堕天使さまからのご加護がないと生きていけない半端ものですぞぉ?」

 

「あ? 堕天使?」

 

「まあまあ、それはいいとして俺的にこのクズ男達を斬らないとお仕事完了出来ないんで、ちょちょいといきますかね。覚悟はOK?」

 

「できると思ってんのか?」

 

 にらみ合う天魔とフリードだったが、そのにらみ合いは間に割り込んできたアーシアによってさえぎられる。天魔と一誠の前に立ちふさがるアーシアを見て、ふざけたような態度は消え失せ、険しい表情で問い詰める。

 

「おいおい。マジですかー。アーシアたん、キミ、自分が何をしてるか分かっているのでしょうか?」

 

「……はい。フリード神父、お願いです。この方達を許して下さい。見逃して下さい」

 

「もう嫌です……。悪魔に魅入られたといって、人間を裁いたり、悪魔を殺したりなんて、そんなの間違ってます!」

 

「はぁぁぁぁぁああああっ⁉︎ バカこいてんじゃねぇよ、クソアマが! 悪魔はクソだって、教会で習っただろうが! お前、マジで頭にうじでもわいてんじゃねぇのか⁉︎」

 

 フリードの表情は憤怒に包まれていた。

 

「悪魔にだって、いい人は居ます!」

 

「いねぇよ、バァァァカ!」

 

「私もこの前までそう思ってました……。でも、天魔さんはいい人です。悪魔にゆかりのある人だって分かってもそれは変わりません! 人を殺すなんて許されません! こんなの! こんなの主が許すわけがありません!」

 

 涙を目にためつつも自身の信じる道に従い意見をはっきりと口にするアーシアに暖かい気持ちになりながら天魔は素早く動き、フリードの手を押さえつける。

 

「当たったらどうすんだ、クソ野郎。女の子の顔に傷つんじゃぁねぇよ」

 

「こっちの事情に口はさんでんじゃねぇよ」

 

「庇ってくれてる女の子身代わりにするなんてかっこ悪いだろ。アルジェントさん、下がっててくれ」

 

「え? え? マジ? マジ? 俺と戦うの? 死んじゃうよ? 苦しんで死んじゃうよ? 楽に殺すなんて俺様にはないからね? さてさて、どれくらい肉が細切れになるか世界記録に挑戦しましょうかね!」

 

 アーシアを後ろに下げ、戦う構えを見せる天魔にフリードは楽しそうに笑う。いざ戦闘開始となるタイミングで、部屋の一角が光り、天魔たちが見知った魔方陣が浮かび上がる。

 

「何事さ⁉」

 

「二人共、助けに来たよ」

 

「あらあら。これは大変ですわね」

 

「……神父」

 

 天魔たちに笑顔を向ける木場も含め、表面上はいつも通りの朱乃と小猫の雰囲気に殺気が混じっている。そんな彼らにフリードは切りかかっていく。

 

「ひゃっほう! 悪魔の団体さんに一撃目!」

 

「悪いね。彼等は僕らの仲間でさ! こんなところでやられてもらうわけにもいかないんだ!」

 

「おーおー! 悪魔のくせに仲間意識バリバリバリューですか? 悪魔戦隊デビルレンジャー結集ですか? いいねぇ。熱いねぇ。萌えちゃうねぇ! 何かい? 君が攻めであいつらのどっちかが受けだったりすんのかい?」

 

 フリードの不意打ち気味の一撃を祐斗が受けとめ、つばぜり合いに持ち込む。そのさなか、フリードが舌をべろりと揺らしながらふざけ半分にセリフの繰り出すした。明らかに相手をバカにするような態度とセリフの内容の下劣さに、祐斗も珍しく嫌悪感をむき出しにしていた。

 

「……下品な口だ。とても神父だと思えない……。いや、だからこそ、「はぐれ悪魔祓い」をやっているわけか」

 

「あいあい! 下品でござーますよ! サーセンね! だって、はぐれちゃったもん! 追い出されちゃったもん! ていうか、ヴァチカンなんてクソ食らえって気分だぜぃ! 俺的に快楽悪魔狩りさえ気が向いた時に出来れば大満足なんだよ、これがな!」

 

「一番厄介なタイプだね。君は。悪魔を狩る事だけが生き甲斐……僕達にとって一番の有害だ」

 

「はぁぁぁぁぁ⁉悪魔さまには言われたか無いのよぉぉ? 俺だって精一杯一生懸命今日を生きているの! てめぇら、糞虫みてぇな連中に、どうこう言われる筋合いはねぇでござんす!」

 

「悪魔だって、ルールはあります」

 

 あくまでふざけた態度を崩さないフリードに朱乃が敵意と戦意をのせた視線を向ける。それを感じ取ったフリードは歓喜に染まった声音でしゃべりだす。

 

「いいよ、その熱視線。お姉さん最高。俺を殺そうって思いが伝わってくる。これは恋? 違うね。俺は思うよ。これは殺意! 最高! これ最高! 殺意は向けるのも向けられるのもたまらんね!」

 

「なら、消し飛ぶがいいわ」

 

 天魔たちの横に現れたのはリアス。フリードに厳しい視線を向けつつ一誠に謝り始めた。

 

「イッセー、ゴメンなさいね。まさか、この依頼者の元に、はぐれ悪魔祓いの者が訪れるなんて計算外だったの。……イッセー、ケガをしたの?」

 

「す、すみません……そ、その、撃たれちゃって……」

 

「俺も来るの遅れちゃいまして、申し訳ないです」

 

 半笑いでごまかす一誠とけがをさせてしまったことを謝る天魔に薄く微笑むと再びフリードに目を向ける。

 

「私のかわいい下僕達を可愛がってくれたみたいね?」

 

「はいはい。可愛がってあげましたよぉ。本当は全身くまなくザクザク切り刻む予定でござんでしたが、どうにも邪魔が入りまして、それは夢幻となってしまいましたぁ」

 

 多勢に無勢の状況でありながらふざけた態度を崩さないフリードだったが、後ろの壁が吹き飛んだのを見て、やや驚いた表情に変わった。

 

「私は、私の下僕を傷つける輩を絶対に許さないことにしてるの。特にあなたのような下品極まりない者に自分の所有物を傷つけられる事は本当に我慢できないわ」

 

 リアスの怒りに応じて魔力があふれ、周囲に放たれていく。そんな中、天魔と朱乃が何かを感じたのか顔を上げ、朱乃がリアスに話しかけた。

 

「! 部長、この家に堕天使らしき者たちが複数近づいていますわ。このままでは、こちらが不利になります」

 

「イッセーを回収して帰還するわよ。朱乃、転移の準備を」

 

「部長、あの子も一緒に!」

 

「イッセー、魔方陣を使えるのは悪魔だけなの。それにこの転移で送れるのは本来私の眷属だけ。ちょっと無理をして天魔も転移できるようにしてるけど、あのシスターは無理よ」

 

「そんな⁉」

 

 リアスの指示で朱乃が呪文を唱えだし、それを見て一誠がリアスにアーシアも連れて行けるように頼むも不可能だと返答され愕然とする。その間に床の魔方陣が輝き、転移が始まろうとする。

 

「逃がすかよ!」

 

「しゃーないな。よし、イッセー。この子のことは任せろ」

 

「天魔⁉」

 

 天魔が頭を掻きながら魔方陣の外に飛び出すと転移の邪魔をしようとするフリードを魔法陣によって受け止め、押し返す。

 

「みんなは先に帰っててください。俺は後で合流します」

 

「待ちなさい、天魔! あなた一人でそんなこと」

 

「大丈夫。ちゃんと帰りますって。こいつも返さないといけないし」

 

「いつの間に」

 

 そういって天魔が示したのは祐斗の持っていた剣だった。どうやら飛び出す直前に持っていったらしく、祐斗自分の腰を確認して驚く。

 

「天魔! 頼むぞ、マジで」

 

「任せろ!」

 

 一誠の声に天魔がはっきりと返すと同時に、魔方陣によってその場に残った全員が転移する。

 

 その場には天魔、アーシア、フリードの三人が残された。

 

 

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