変態の双子の兄弟として   作:篠白 春夏秋冬

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ここ最近投稿せずにいて申し訳ありませんでした。

評価バーにも色が着きありがたい限りです。


Life.43 黒猫と王

「このヒトが小猫ちゃんのお姉さん」

 

 小猫を追い、その先で出会った美女ー黒歌の様子を確かめ、一誠が僅かにつばを飲む。傷だらけの黒歌は服にも擦り切れている部分があり、その豊満な身体がところどころ見え隠れしていたのだ。

 

「ほんとに聞いていた通り、視線がいやらしいわね……白音、その子の目を潰せない?」

 

「……イッセー先輩の視線がいやらしいのはどうしようもないです。諦めてください」

 

 黒歌は一誠の視線に不快感をあらわにしながらできうる限りで肌を隠そうとする。服の修復に回す魔力も惜しそうな様子にリアスが手を貸し、ひとまず服装が整った。

 

「それで? 貴女がなぜここにいるのかしら? はぐれ悪魔である貴女が」

 

 リアスの言葉に一誠と小猫の表情がこわばる。暴走し主を殺したはぐれ悪魔とあって、構えを取る一誠に対して、黒歌はあっけらかんとした具合だった。

 

「別に何かしに来たわけじゃないわよ。そうねぇ、改めて自己紹介してあげる。「逸れ者」所属のはぐれ悪魔、黒歌よ。よろしくねん♪」

 

 再びのウインクとともになされた自己紹介に一誠たちから気勢が削がれる。印象深く聞き覚えのある組織名に警戒が緩んだのだった。

 

「「逸れ者」ってことは……」

 

「そ、ここには天魔に会いに来たの。「禍の団」関係でちょっと伝えといたほうが良さそうなネタがあってね。まぁ、厄介な奴に捉まってこのザマだけど……」

 

 自嘲するように告げる黒歌に一誠はなんともいえない表情になる。小猫のこともあり、どう声をかけようかと考えていると、上空から声がかかった。

 

「フハハハハハ! ようやく見つけたぞ! 猫め! さっさとこの我の前にやつを引きずり出す餌の役割を果たすがいい!」

 

 一誠達が上へと視線を向けると金髪の男が高笑いをしていた。その男を視界に収めた黒歌が苦虫を噛み潰したような表情になるのをみて一誠が声を掛ける。

 

「知り合いか?」

 

「まぁね……あいつも一応「禍の団」のメンバーで、私をズタボロにした、一応追手」

 

 黒歌の回答にリアスが目を見開く。言葉に端々に気になる部分はあるものの、SS級と言われる実力者の黒歌を満身創痍に追い込む相手にどう対応するべきかと考えていると、唐突に金髪の男が火炎に包まれた。

 

「全く、ほんとに女を待たせるのが好きよね」

 

「悪い、黒歌。遅くなった」

 

 呆れ声で話す黒歌に答えたのは、いつの間にか黒歌のそばに鞄を置いていた天魔だった。火炎を起こしたのが天魔であることを察し、金髪の男を意識から外しかけた一誠だったが、直後に炎が弾け、中から無傷の男が現れた。

 

「いきなり魔法とは、相変わらず礼儀のなっておらんものよな、雑種」

 

「自業自得だ。こんぐらい受け止めろよ。まったく、家の猫を傷だらけにしやがって……覚悟できてんだろうなぁ〜⁉」

 

 天魔と男の会話から見知った相手であることを察した一誠達だったが、その怒気にのまれ問うことはなかった。

 

「ふん、そこの猫が大人しくしていれば傷を負うこともなかったのだ。むしろうっかり殺さなかったことを感謝すべきだろう」

 

「チッ、お前ら、離れてろ。あいつは強いぞ」

 

「よかろう、乗ってやろうではないか。だがまぁ、義理は果たさねばな」

 

 男が指を鳴らすと結界が構築され、多数の魔法陣から悪魔が現れる。明らかに敵意をもつ様子の悪魔たちに一誠が困惑していると男が話しだした。

 

「現魔王関係者の周囲が手薄であるようなら呼べと言われていてな。雑種の言いなりになっているかのようで癪だが、奴の頼みとあれば致し方あるまい」

 

 ため息でもつきそうな顔でそれだけ告げると飛行魔法で上空へと浮き上がる。それを見ながら天魔は舌打ちをすると一誠に向かって叫ぶ。

 

「イッセー、そいつ等は任せる。死ぬなよ! 禁手化!」

 

 言うが早いか天魔は右腕を左上に左腕を後ろに引き、両腕をクロスさせると腕を広げ、鎧を纏うと男を追って上空へと舞い上がった。

 

「てめえ、しつこいんだよ! 俺達には俺達なりの事情があるって言ってるだろうが!」

 

「笑止、貴様さえいなければ、あ奴も目が覚めるというものよ! 娶るつもりもないのならとっとと去ね、雑種!」

 

「こっちにも色々事情があんだよ! 羽もないくせに天使(キューピット)気どんな末裔が!」

 

 まるで中の良い友人同士がじゃれて喧嘩するように男のもった剣と天魔の籠手が火花を散らし、金属音を響かせる。

 

 攻防の最中、何本もの剣が折れるがそのたびに新たな剣を取り出し切り結ぶ。

 

 不快感をもたらす金属音が響く中、一誠たちも攻防を始めていた。

 

 

 

「あーもうっ! あんたさえ来なけりゃこんな面倒なことにならなかったのにぃ!」

 

「私に当たらないでくれるかしら⁉そもそも貴女が小猫を誘い出さなければよかったのよ!」

 

「誘い出したわけじゃないわよ! あのバカがなかなか戻って来ないから白音が私を補足しちゃったんじゃない!」

 

 男の呼んだ悪魔達の攻撃が始まり、黒歌が必死に防いでいく。その合間にリアスが反撃し、打ち倒していくが、防戦一方であることは違いなかった。

 

「イッセー! 赤龍帝の籠手を使いなさい! 譲渡の力でこの場を覆う結界ごと破壊して救援を呼ぶわ!」

 

「了解です、部長! ブーステッド・ギア!」

 

 黒歌の結界があっても押されているのをみて、リアスが逆転のための指示を出す。それに従い神器を起動する一誠だったが、顕現した籠手からは何の効果も及ぼさなかった。

 

「何だ? なんで動かない?」

 

『神器が曖昧な状態になっているんだ。あの修行で分岐点へと至ったのさ。あと一押しで変化が起きるとは思うんだが、それが単なるパワーアップか禁手へと至ることになるのかはわからん』

 

「つまり、パワーアップか禁手かで神器が迷ってるってことか?」

 

『簡単にいえばそういうことだ。選択肢が増えたことで神器のシステムが混乱しているとも言えるな。パワーアップなら気合一閃でできるかもしれないが、禁手に至るには劇的な変化が必要になる。とにかく、お前には今、禁手へと至るチャンスがあるということだ』

 

「んなこと言われても、劇的な変化ってどうすれば」

 

『それは俺にはわからん。だが、これを逃せば次のチャンスがいつ来るか……数カ月後、あるいは数年後という可能性もある』

 

 ドライグの言葉に一誠は左手の神器を見つめながら歯噛みする。すると、行動を起こさない一誠を心配してリアスが振り返った。

 

「イッセー、何かあったの?」

 

「すみません、禁手に至れるかもしれないんですけど、その分岐点で神器が動けない状態みたいで……」

 

「あの時と同じってわけね……お姫様! 答えが出るまで私達で耐えるしかないわよ!」

 

 一誠の言葉に黒歌がいち早く気を取り直し、リアスに対し発破をかける。その言葉にリアスも意思を固めると、敵へと向き直った。

 

 そして、消耗戦が始まった。

 

 黒歌の結界の内側からリアスが必死に応戦する。

 

 一度本当に危なくなった瞬間には上空から天魔による援護が入り事なきを得たが、防御のために前にでている黒歌には僅かずつ怪我が増えていった。

 

 気づけば一誠は涙を流していた。

 

 守ろうと決意した主に守られ、越えたいと思っている兄弟に援護を受け、それでも先程出会ったばかりの女性に傷を負わせている。

 

 何もできない自分が情けなくて、悔しくて、涙を止める事ができなかった。

 

「……イッセー先輩」

 

 遠距離攻撃の術をもたないため、戦線に参加できず、守られていることに歯噛みしていた小猫が一誠の涙に気づき、一誠を呼ぶ。

 

 気づかれたことに一誠は苦笑いを浮かべると、内心を隠すこともできずにこぼし始めた。

 

「小猫ちゃん……俺には伝説のドラゴンが宿っているのにさ……何もできないんだ……アーシアのときも、部長のときも、天魔がいなきゃ、きっと取り返しのつかないことになってた。今だってそうだ。俺がもっと強ければ、誰も傷つくことはなかったのに……俺は才能のないダメ悪魔なんだよ……」

 

 自暴自棄のように涙とともに言葉をこぼす一誠に小猫は口を開きかけて、姉の視線を感じて止める。黒歌の目が一誠の言葉を待つように促していた。

 

「歴代の赤龍帝は皆、短期間で禁手に至ったってさ……何ヶ月もかかっているのは俺だけだって……わかってた。わかってたんだよ。赤龍帝の力が宿ってても、俺がクズなんだ……俺がダメだから「そんなことありません!」

 

 黒歌の静止を振り切り、小猫は一誠の自嘲を遮り声をかける。

 

 いつもは大声を出さない小猫の声に一誠は目を瞬かせる。あっけに取られた様子の一誠に小猫はいつも通りに話しかけた。

 

「イッセー先輩はクズじゃないです。知っていますか? 歴代の赤龍帝は力に溺れたものが多かったって……絶大な力に飲み込まれたんだと思います。きっと、力があっても優しさがなければ暴走してしまう。イッセー先輩は優しい赤龍帝です。ちょっと力が足りなくても……それは素敵なこと。きっと歴代の中でも初めての優しい赤龍帝です……だから、イッセー先輩は「優しい赤い龍の帝王」になってください」

 

 結界に魔力の弾があたり、閃光が散る中かけられた言葉に一誠は両頬を叩いて前を向く。

 

 その表情に黒歌は僅かに笑むと、結界へと集中する。これからが重要だと気を引き締め、決して邪魔が入らないように魔力を振り絞る。

 

「部長。俺、自分に何が足りなくて禁手に至れないか、少しわかった気がします……俺が禁手に至るにはおそらく部長の力が必要です」

 

「わかったわ。私で良ければ力を貸すわよ! それで、何をすればいいかしら?」

 

 決意をはらんだ声をかけられ、リアスが応じる。信頼の眼差しを前に、一誠は生唾を飲み込むと、協力の内容を話しだした。

 

「部長のおっぱいを突かせてください!」

 

 その瞬間、世界から音が消失した。

 

 否、魔力による攻撃が結界を叩く音は続いているし、上空では未だ天魔達も金属音を響かせてる。一誠のセリフへの理解を拒む黒歌と小猫の精神が意味のない音声を遮断したのだった。

 

「……わかったわ。それで貴女の思いが成就できるなら」

 

「ほ、本当ですか⁉つつくんですよ⁉俺が部長の乳首を俺の指で押しちゃうんですよ⁉いいんですか⁉」

 

 まさかの承諾に、提案した一誠が困惑する。周囲をよそにリアスはドレスをはだけていき、胸を露出した。それを見た一誠の鼻から血が吹き出す。

 

「あんたらこんなときに何やってんの⁉」

 

 一誠が鼻血を吹く音にようやく正気を取り戻した黒歌が思わずといった様子で叫ぶ。その声に上空の二人も事態に気づいた。

 

「む? お前の兄弟分は何やら面白い事をしようとしているらしいな。女の乳で禁手へといたろうとは」

 

「は? ……何やってんだあいつは⁉おい黒歌、隠せ! 結界厚くしろ!」

 

「ああ、もう! こっちは限界だってのに!」

 

 興が削がれたという様子で手を止めた男に対し、天魔が激昂しながら黒歌を急かす。上からの指示に苛立ちを隠すこともせず結界の視認性を上げ、モザイクでもかけるかのようにリアスたちを隠した。

 

 その様子に感謝しながらリアスへと向き直った一誠だったが、困惑に満ちた声を上げた。

 

「天魔! 大変だ!」

 

「今のお前以上に変なものなんてねぇよ!」

 

「いいから聞いてくれ! 右と左、どっちをつつけばいいのかわからないんだ!」

 

「知るか馬鹿野郎ぉぉぉ! つーかなんだ! 部長の乳って! タンニーンとの修行は無駄だったってのか⁉泣くぞ! 元龍王が!」

 

「「知るか」ってなんだよ! 大切なことだ! 俺のファーストブザーなんだぞ! 人生かかってんだ! 真面目に答えろぉぉぉ!」

 

「まぁ、なんだ。雑種には雑種なりの苦労があるということか」

 

「どーでもいいから早くしてよぉ!」

 

 一誠と天魔の叫びに男が憐れむような目をし、結界にヒビが入り始めた黒歌が泣きそうになりながら叫ぶ。

 

 空中でうなだれる天魔からは有効な答えが得られないと考えた一誠は答えをリアスへと求めた。

 

「部長! オススメは⁉」

 

「もう! それなら同時につつけばいいでしょう!」

 

 リアスの言葉に一誠は天啓を得た聖者ように衝撃を受けた顔をすると、真剣な顔でリアスな乳首へ指を向ける。

 

 鎧の中でさめざめと涙を流す天魔と男が憐れみを込めて首を振る下で、劇的な変化が起きた。

 

『Welsh Dragon Balance Breaker‼‼』

 

 慎重に狙いを合わせ、指を押し込んだことで、リアスから漏れた僅かな嬌声に一誠から鼻血とオーラが噴出し、神器が姿を変えていく。

 

 一誠の全身を鎧が覆っていき、その身に纏うオーラが濃く、大きく膨れ上がる。

 

 オーラが黒歌の結界を内側からブチ抜き、それでもなお止まらぬ奔流が悪魔たちを押しのけていく。

 

「最低です……やらしい赤龍帝なんて」

 

禁手(バランスブレイカー)赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)」! 主の乳をつついてここに降臨!」

 

『相棒、おめでとう。しかし、酷い。俺は本格的に泣くぞ。そろそろ』

 

『本当に酷い。お陰でこっちは大号泣ですよ。自分の禁手が成ったときより泣いてます。まぁ、あの時と違い悲しみで、ですが』

 

 小猫の冷ややかな声を振り切るように声を上げる一誠だったが、二天龍から悲しみを込めたツッコミを受けて僅かに怯んだ。

 

「エロくてごめんな! ほんと! で、首尾はどうよ?」

 

『ああ、時間にして三、四十分は維持できる。初めての禁手にしてはまずまずの持続時間だ。これまでの修行の成果が出たな。最大の倍加で六分程度消費すると考えろ。他の行動も考えると五回が限度。これは譲渡の回数も含んだ数だから、考えて使え』

 

「うまく使えば二十分ぐらいはいけるか」

 

『そんなにいらんさ。いつもみたいに魔力を打ってみろ』

 

 禁手による変化を確認する最中、ドライグの提案に従い、立て直し始めた悪魔達へ向けて魔力を打ち出す。

 

 倍加を繰り返した後でもないため、一誠はさほど威力に期待していなかったが、その予測を裏切り、放たれた閃光が一直線にあらゆるものをなぎ倒し、遥か遠くで爆音を響かせた。

 

「え……? 何がおきたんだ?」

 

「山ごと吹き飛んだな。ついでに結界も吹っ飛んだ」

 

『全身のオーラを手に集めて放つタイプの技だ。溜めておけるるものが少ない相棒では連発できんがな』

 

「これが禁手による変化、か。なるほど、あやつが求めるわけだ」

 

 横に降り立った天魔から聞かされた、今の一撃による結果に一誠が慄いていると上空から声がかかる。見上げれば男が顎に手を当て、面白そうに笑っていた。

 

「結界が壊れては、これ以上ここにおれんな。引き上げだ。雑種、精々その首を丁寧に洗っておくことだ。我が落とすときに不愉快にならぬようにな」

 

 男は二、三度頷くと捨て台詞とともにその場を去る。それに続いて悪魔たちも転移で去っていき、緊張の途切れた黒歌が意識を飛ばす。

 

 天魔は限界まで力を使い切った黒歌を受け止めて頭を撫で、安心したように息をつくのだった。

 

 

 

「どうだった?」

 

「まぁ、順調と言っていいだろう。飼い猫も無事に届いたことだしな」

 

「一人だけ天魔と会えるのはずるい……」

 

「戯けめ。そのための我慢ではないのか? それとも貴様のために骨を折る雑種の行動を無駄にしたいのか?」

 

「……したくない」

 

「であれば大人しくしておくことだ。何、貴様のこれまでの生に比べれば瞬き程度の時間だ」

 

「むぅ……やっぱりずるい」




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Life.43登場の「金髪の男」について

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