最近はコロナやら元々投稿していた方に時間を割いてこちらの投稿を忘れたりしていました。
これからもちまちまやって行きます。
天魔は通話を終え、それを黒歌と共有すると、部屋を出る。
一階では露出過多な改造を施した巫女服でコスプレをしたアーシア達が待っていた。
「む、天魔、来たのか。もう少し待っても来なければ呼びにいったところだ」
天魔がリビングに入り、最初に気づいたのはゼノヴィアだった。
「ちょっと冥界にいく用事ができたから部長にも伝えとこうと思ってな。まだ帰ってきてなかったか」
「ああ、まだだ。しかし、この国の神職の、巫女服だったか? これは動きやすいな。下着はつけられないが、身軽でいい」
「一応いっておくが、それは正式なものではないからな?」
天魔がゼノヴィアの感想に頭を痛めていると、アーシア達同様コスプレをした小猫が近寄り、尻尾を振り、耳を揺らす。
愛らしさに天魔が頬を緩め、小猫の頭を撫でると、僅かに小猫は目を見開いたが、すぐに心地よさそうに目を細めた。
「そういえば、姫島先輩は?」
「朱乃さんはイッセーに見せるために部屋で待機しているよ。コスプレ姿を見せると約束していたらしい」
「なら、一回引き上げたほうが良さそうだな。先に誰かのコスプレ見てたら第一印象のインパクトが薄れる」
天魔の言葉に従い、全員で天魔の部屋へと向かう。
小猫を伴っているためか姿を消した黒歌に苦笑すると、暇つぶしにと冥界式の人生ゲームを始める。
備え付けのルーレットを回し、順調に勧めていく最中、聡いものであればわかる程度に階下が騒がしくなり始めた。
「帰ってきたみたいですね」
「だな。お、昇格だ」
気配を掴む天魔と小猫の言葉に一誠とリアスに帰宅を知りつつ、誰も動こうとしなかったためゲームを続行していると、一誠が入室してきた。
「あ、おかえりなさい。イッセーさん」
「ただいま。って、皆もコスプレしてたのか」
「で、二人はまた喧嘩か?」
「まぁな」
アーシアに手渡されたティッシュを鼻に詰めながら一誠が着席し、ゲームを眺め始める。
報告できる程度まで落ち着くまで放っておこうとゲームを再会していると今度はイリナが帰ってきた。
冥界式の人生ゲームに興味を示すイリナのためにゲームを中断し、最初からやり直そうと駒を並べ直していると、バニーガール姿のリアスがドアを開いた。
「突然で悪いけれど、取材が入ったわ。冥界のテレビ番組に私達グレモリー眷属で出るの。若手悪魔の特集だそうよ」
リアスの言葉にグレモリー眷属が驚愕に声を上げる。完全に他人事な天魔は声が四階部分で収まるように結界を張っていた。
そうして数日後。
リアス達のインタビューと前日に呼ばれていた天魔は、黒歌を伴って冥界へと赴いていた。
案内に従い部屋に入ると、天魔を呼びつけた人物が待っていた。
「こうして面と向かって話すのは初めてだったね、兵藤天魔君。改めて、アジュカ・ベルゼブブだ、よろしく」
「よろしくお願いいたします、アジュカ・ベルゼブブ様。して、本日の件ですが」
「ああ、そちらのお嬢さんの件だ。無事、はぐれ解除は完了した。こちらの駒の調整も完了しているよ」
そういうとアジュカは青みがかった銀色の僧侶の駒を取り出す。後ろで控えていた黒歌が思わずといったように顔を上げた。
その一部始終を見ていたアジュカが僅かに笑むのを見て、背後の様子を察した天魔が苦笑しつつ振り返ると、黒歌は僅かに顔を赤くしていた。
「さて、早速始めよう。二人共こちらに」
アジュカの手招きに従い、天魔と黒歌が設置された魔方陣へと進み、指定された位置に立つ。
その間に「僧侶」の駒を持ったアジュカが立ち、魔方陣を起動した。
天魔の身体から発されたオーラがアジュカの手の中で魔方陣に囲まれる駒へと移り、駒が膨大なオーラを宿す。
その駒をアジュカが黒歌の胸元へと近づけると、駒が黒歌へと吸い込まれ、その代わりに二つの駒が弾かれたように飛び出した。
天魔は駒が部屋の隅へと転がっていくのを一瞥し、黒歌の様子を確認する。
瞑目し、駒の吸い込まれた胸元へ手を置いていた黒歌が目を開き、天魔と目が合う。
魔方陣を通して黒歌の様子を観測していたアジュカが一つ頷き二人の間から避けると黒歌が天魔へと飛びついた。
「これで終わりですか」
「ああ、恙無くね。ただし、彼女をトレードは出来ない。その様子では心配はないだろうけど、念の為だ。彼女に入った「変異の駒」が持つ機能に俺の調整を加えたイレギュラーな眷属化だからね」
「まぁ、手放すつもりはありませんよ。ご心配なく―おい! 服で鼻をかむなよ! ぶち壊しもいいとこだぞ!」
アジュカの念押しに真剣な顔で答える天魔の胸元で鼻をかむ音が響く。
魔王を訪ねるということで着込んでいた礼服にべっとりといろいろな汁がつき、思わず天魔が顔を覆う。
天魔が空いた手で黒歌の背中をなでて落ち着かせようとしているのを、アジュカは楽しそうに笑っていた。
「で、え~と、何でしたっけ……」
黒歌が落ち着くまで待つことしばし。
色々と吐き出して眠りについた黒歌を膝にのせ、天魔はソファに座っていた。
「とりあえず、もう一度言っておくが、彼女のトレードは出来ない。イレギュラーな眷属化というのもあるが、改めて確認したところ、調整する際に君のオーラをなじませる工程を入れたことで、結びつきが強くなっている。故にトレードをしようとしても失敗するだろう」
アジュカの解説に天魔が頷きで返すとアジュカもまた頷いた。
「それと、ディオドラ・アスタロトの件だ」
瞬間―天魔の纏う雰囲気が変わる。
目つきが鋭くなり僅かに歯を食いしばる。
その拍子に黒歌が目覚め、それを受けて天魔の表情が和らぐのを見て、アジュカは笑みを浮かべた。
「その様子では聞き及んでいるようだが、前任のグラシャラボラス家次期当主の不審死と彼の力が増した件が繋がった。身内の不祥事で申し訳ないが、例の案を実行することになりそうだ」
アジュカの言葉が進むにつれ、天魔の雰囲気が剣呑なものへと変わっていき、殺気にも似た様相へと至るがアジュカは動かない。
天魔は深く長く息を吐くと口を開いた。
「……承知致しました。では、一つだけ」
「何かな?」
「出来うる限り加減はするつもりではあります。ですが、ディオドラの生存は約束出来ません」
それだけ言うと、天魔は返事を聞くこと無く転移で去っていった。
一人残されたアジュカの表情を見たものは誰もいない。
その翌日。
リアスたちのインタビューと同日に行われる撮影のためにスタジオへと移動した天魔が係のものについて歩いていると、正面から見覚えのある男が現れた。
「お前は……白龍皇の」
「兵藤天魔です。兵藤一誠、リアス・グレモリー様が「兵士」、赤龍帝とは義兄弟に当たります。以後、お見知りおきを、サイラオーグ・バアル様」
記憶をたぐるサイラオーグに先んじて天魔が名乗る。
その口ぶりにサイラオーグは苦笑した。
「済まないな、情報が断片的ですぐに繋がらなかった」
「いえ、お気になさらず」
そう言うと天魔は頭を垂れ、礼をする。それを見てサイラオーグが不思議そうにする。
「そうかしこまる必要はないぞ。話は聞いている。脱落したゼファードルに代わり、お前が参戦するとな。つまり、俺達は対等と言っていい」
「そういうわけには参りません。私は未だ眷属が一人だけ。ゲームに参加するにはまだ早いと制止されているのです。此度の特例が終われば当面はゲームは出来ないでしょう。そのような状況でバアル家次期当主様と対等など烏滸がましいとしか」
サイラオーグの言葉にも天魔は応じず、頭を垂れ続ける。そんな天魔にサイラオーグは諦めを込めた溜め息をこぼすと口を開く。
「リアスとソーナ・シトリーでの試合の戦略は見事だった。強大なパワーであってもカタにハマれば負けてしまうのだと改めて学ばせてもらった。神器の持つ未知の部分へ警戒すべきだということもな。お前と戦える日を楽しみにしているぞ」
それだけ言うと、サイラオーグは歩を進め、天魔の横を通り抜ける。それに続く眷属が全員通り過ぎたのを確認して、天魔は顔を上げる。
「どうにも勘違いしていらっしゃるものが多いようなので訂正しておきます。アレはソーナ・シトリーの戦略だ。俺が関わったからと、相手に赤龍帝がいたからと、何でもかんでも白龍皇、二天龍へつなげるのは止めてもらおう」
先ほどまでと一転し、強い口調で告げると、サイラオーグたちに背を向けたまま去っていく。
しばらく呆けていた天魔の案内をしていたものが追いかけ始めるまで、サイラオーグは天魔の背を見つめていた。
「お疲れ様です」
グレモリー眷属が使用する楽屋へ天魔が入室する。
以前の経験から声をかけての入室であったため、全員が気づき、リアスが声をかける。
「あら、天魔。貴方も来ていたのね」
「ええ、あ―サーゼ様の依頼でイッセーの方の撮影の補助を少し。インタビューはどうでした?」
「朱乃と祐斗に注目が集まってたわね。質問が行くたびに歓声が上がるぐらいだったし。注目というならイッセーもかしら」
天魔の言葉に答えると、リアスがふと思い出したようにイッセーへと視線を向ける。
「そういえば、イッセーの撮影ってなんだったの?」
「内緒です。スタッフの人にも本放送までは身内にも話さないで欲しいって言われてるんで」
「そうですね……言えないです。色々と……」
リアスの疑問に一誠が笑って、天魔が遠い目をしながら答える。同じ撮影に参加した二人の対象的な態度に不思議そうにしていると、楽屋の扉がノックされ、少女が入室した。
「天魔様、こちらにいらしていたんですのね」
「レイヴェルか。悪いな、ここ最近立て込んでて、もうしばらく先になりそうだ」
入室直後に目に入った、扉のすぐ近くに立っていた天魔に驚き、動きを止めたレイヴェルに天魔が対応する。
声をかけられて我を取り戻したレイヴェルが後ろ手に隠し持っていたものを差し出した。
「これ、ケーキですわ! このあと次兄の番組があるので、ついでです!」
差し出された包を開くと中にはチョコケーキが入っていた。
天魔はケーキを見回し、その丁寧な仕事に感心したようにする。
「へぇ、きれいに出来てるな」
「と、当然ですわ! ケーキに関しては自信がありますの! ご馳走すると約束しましたし」
「そういうことか、済まなかった。落ち着いたら伺わせてもらうよ。―美味いな。ありがとう、レイヴェル。続きは家で食わせてもらうよ」
天魔は一つ謝罪すると、神器の爪を伸ばしてケーキを切り取り、口に運ぶ。
予想以上の出来栄えに天魔が驚きつつ、感謝を告げてレイヴェルの頭を撫でる。
以前のように払われることはなく、顔を紅潮させつつも受け入れる様子のレイヴェルに天魔は微笑みつつ、後ろからの視線を感じて手を離す。
レイヴェルは離れていく天魔の手を一瞬だけ物欲しそうな顔で見やり、すぐに気を取り直すと礼をして去っていった。
レイヴェルを見送り天魔が振り返ると、不機嫌そうな表情を浮かべる女性陣どう対応したものかと冷や汗を流すのだった。
そして後日。
撮影したものを編集した映像が送られてきた。
それを天魔と一誠は確認し、二人揃って頭を抱える事になった。
映像が終わり、画面が暗くなる。
映像の代わりに二人の姿が映し出された。
「どうすんだよ、これ」
「どうって……見せるしかないじゃね?」
「いや、でも、これ……本当に放送する気なのか……」
天魔が沈痛な面持ちで呟くのに、一誠は何も言えなかった。
しばらく暗い雰囲気のまま時間を無駄にし、ため息を一つ吐くと、どちらともなく立ち上がり、なんの言葉もなくともに風呂へと向かうのだった。
「あー、まぁ、あんまり悩んでも仕方ないよな」
「だな。ドライグが泣いてるときがあるのが気になるけど」
「それならアルビオンもだ。無理もないが……」
そうして風呂から上がり、やや楽観的な考えとなった二人は地下一階の大浴場の脱衣所で牛乳を呷っていた。
リアスのこだわりによって、各種牛乳が常備されており、好みによって各自飲むものを選んでいる。
消費期限の管理は天魔がしているため、期限切れ近くになったものの消費をこだわりのない天魔と一誠が行っている。
一息つき、脱衣所を出ると、天魔が足を止めた。
「ん?」
「どうしたんだ?」
「誰かいるみたいだ。オーバーワークにならないように言ってくる。先に行ってていいぜ」
一誠を見送ると、大浴場の向かいにある大広間の扉を開ける。
映画の上映やトレーニングもできる空間へ足を踏み入れると、ゼノヴィアがトレーニングウェアで練習用の剣を振っていた。
扉を開けた音で気づいたのか、ゼノヴィアが天魔へと視線を向けた。
「……天魔か」
「日中も相当打ち込んだだろ。そろそろ休んだほうがいいぞ。本番で疲れがでたら本末顛倒だ」
ゲームの日付が近づくにつれ、ゼノヴィアの練習量は増えていた。
手合わせをしていた祐斗が気圧される場面もあったものの、ゼノヴィアの焦りが隙を生み、カウンターを食らっていた。
「……私は、木場より弱いからな」
天魔の声にゼノヴィアはやや目を伏せながら答える。
「記録映像でも、私以上にデュランダルを扱う木場の姿があった……才能という点では木場のほうが上なのだろう」
「そうか? ゼノヴィアの方がパワーはあるし、俺は一発一発が怖いよ。祐斗は細かく攻撃できるが、逆に耐久力に物を言わされたら、打つ手がなくなるからな。良し悪しあるってだけだろ」
「だが、天魔の指導があったとは言え、あの時は完全に受け流された。だから、次は油断しないように鍛え直しているんだ」
ゼノヴィアの焦りの原因に自分が一枚噛んでいたと知り、天魔は頭をかく。
天魔の表情から何か感じ取ったのか、ゼノヴィアは話題を変えた。
「そういえば、天魔も上級悪魔になったんだったな」
「ん〜、まぁ、「王」として眷属を持つことはできるようになったが」
「? まぁ、いいか。でだ、アーシアも眷属にするんだろう?」
「まだ部長には何もいってないけどな。その話題を出すってことは、プール開きのときの答えが出たのか?」
転換した話題にトレーニングを切り上げる様子になったのに天魔は気を緩めると、思い出したように以前出した課題を取り上げる。
「いや、もう少し考えるよ。でも、アーシアを守りたいし、アーシアを眷属にするときは私も一緒がいいかな」
「なら、いいか。もし足りなかったら……そのときはその時だ」
ゼノヴィアの答えを聞き、天魔は少し思案すると、懐から箱を取り出し、そこからつまみ上げたものを投げ渡す。
ゼノヴィアが受け取ったものを開くと、「騎士」の駒だった。
「予約は取っておいてやる。なくすなよ?」
「責任重大だな、これは。だが、任せてくれ」
天魔の言葉にゼノヴィアは僅かに震えると、駒を握り直し、緊張をにじませつつも口角を上げる。
その表情に天魔も頷くと、身体を解しながら退室しようとしたところで、呼び止められた。
「天魔、少し待ってくれ」
「ん? どうし」
天魔の言葉は最後まで続かなかった。
天魔の頬にはゼノヴィアの唇が触れていた。
「信頼への礼だ。次は口のほうがいいのかな。今日は休むとするよ。おやすみ」
「おやすみ……」
天魔はややぼーっとしたままゼノヴィアを見送り、しばらくして部屋へと戻った。
ここ最近はゼノヴィアもともに寝ていたが、この日は流石に来なかった。
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大分アンケートにも偏りが出てきたので一週間後ぐらいに締め切りたいと思います。