変態の双子の兄弟として   作:篠白 春夏秋冬

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Life.51 最低のゲーム

 神殿の奥は広大な空間が広がっていた。

 

 巨大な柱が立ち並ぶ広間を通り抜けると通路があり、その先にも同様の神殿が並ぶ。

 

 似たような神殿を幾つか通り抜けていくと、天魔が唐突に立ち止まり、片手で全員を制する。

 

 何か罠かと一誠達が前方を観察すると、十人の人影があった。

 

『やー、リアス・グレモリーとその眷属の皆。おや、白龍皇も来たのか、これは予想外だ』

 

 なにもない空間から響くディオドラの声に警戒し、グレモリー眷属が周囲を見回すが、それを馬鹿にするような笑い声が響く。

 

『ハハハ、辺りを見渡しても僕は見つからないよ。僕はこのずっと先の神殿で君たちを待っているからね。さて、せっかく来てくれたんだ、白龍皇、遊ぼう。するはずだったレーティングゲームの代わりだ』

 

 ディオドラの言葉に一誠達の表情がこわばる。

 

 それに気づかないかのようにディオドラは続ける。

 

『お互いの駒を出し合って、試合をしていくんだ。一度使った駒は僕の所へ来るまで二度と使えないのがルール。あとは好きにしていいんじゃないかな。僕の下までたどり着けたなら僕と戦う権利をあげようじゃないか。さてと、第一試合、僕は「兵士」八名と「戦車」二名を出す。ちなみにその「兵士」達は皆既に「女王」に昇格しているよ。ハハハ、いきなり「女王」八名だけれど、それでもいいよね? 何せ、リアス・グレモリーは強力な眷属を持っていることで有名な若手なのだから』

 

「いいだろう、乗ってやるよ。精々わずかな余命を噛み締めておくんだな」

 

 ディオドラの話すルールを聞き、ずっと一点を見つめていた天魔が応じる。

 

 天魔が視線を動かしリアスを見ると、リアスは頷いたが一誠が食って掛かった。

 

「天魔! こんなの受けるっていうのかよ!」

 

「イッセー、今の俺には余裕がないから一度しか言わない、よく聞け。あっちはアーシアを人質に取ってるようなものだ。()()を無視して進もうとすれば、アーシアを害して()()に持ち込むかもしれない。であれば、早いうちに受けるのが得策だ。そういうわけで、ここからの指揮は俺が取ります。異論はありませんね?」

 

 天魔は一誠へと淡々と返すと全員を見渡す。

 

 その言葉に各々同意を返すと天魔は少し考えて結論を出した。

 

「よし、初戦はイッセー、ギャスパー、小猫、ゼノヴィアに任せる。イッセー、ゼノヴィアにアスカロンを。ゼノヴィアには「戦車」二人を任せる。で、残りの三人だが……イッセー、お前が前に話したコンビネーションを覚えているな?」

 

 天魔の言葉を受け、一誠はなんのことかわからない様子だったが、祐斗の苦笑をみて思い出したのかハッとした顔をすると天魔を見る。

 

「……え? やっていいのか?」

 

「これはゲームじゃねぇ。縛りはあくまでゲームを成立させるためのものだからな。今回護衛はギャスパーに小猫をつけるだけだが、今のお前なら大丈夫だろう。相手は女性ばかりだしな」

 

「よっしゃ、任せろ!」

 

 一誠の確認に諾と返すと一誠はヤル気に満ちた顔をして不気味に笑いながら前へ出る。不思議そうにする小猫にざっと事情を話すと小猫は冷え切った目で続き、その雰囲気に怯えるギャスパーを引きずってゼノヴィアが進み出た。

 

『じゃあ、始めようか』

 

 ディオドラの言葉を合図に八人の「兵士」と二人の「戦車」一斉に構え、一誠たちへと走る。

 

 戦闘開始とともに一誠は祐斗の作った剣で軽く指を切るとギャスパーに血を与え、ギャスパーの雰囲気が変わる。

 

 その横でゼノヴィアは静かにデュランダルを開放した。

 

「アーシアを返してもらおう」

 

 アスカロンとデュランダルの二刀を構え、かつてない程に重圧を放つゼノヴィアが、走ってくる「戦車」二人へと足を向ける。

 

「……友と呼べる者を私は持っていなかった。そんなものがなくても生きていけると思っていたからだ。神の愛さえあれば生きていける、と」

 

 パワー重視である駒の「戦車」であるが、ディオドラの眷属の動きは素早く、一誠は心配そうにゼノヴィアへと向けるが、ゼノヴィアは構わずに独白を続けていた。

 

「そんな私にも分け隔て無く接してくれる者達が出来た。特にアーシアはいつも私に微笑んでくれていた。この私と「友達」だと言ってくれたんだ」

 

 ゼノヴィアは「戦車」の攻撃を既で避けつつ憂いのある目を見せていた。

 

「だから、助ける! 私の親友を! アーシアを! 私は助けるんだ!」

 

 声と同時にゼノヴィアから発された波動が「戦車」を吹き飛ばす。

 

 デュランダルを振り上げたゼノヴィアが涙混じりに叫ぶ。

 

「だから! だから頼む! デュランダル! 私に応えてくれっ! アーシアがいなくなったら、私は嫌だ! アーシアを失ったら私は……ッ! お願いだ! 私に! 私に友達を救う力を貸してくれッ! デュランダァァァァァァルッ!」

 

 ゼノヴィアの声に応えるようにデュランダルから聖なるオーラが迸り、天をつく光の柱のようにそびえ立つ。

 

 後方にいる天魔達でさえ刺すような感覚を覚えるオーラの奔流はその周囲の石畳を破壊し始めた。

 

「私はデュランダルをうまく抑えることなんて出来ないと最近になって理解した。この前の木場のような静寂なオーラを漂わせるなど長期間かかるだろう。ならば、今はそのまま突き進めばいい。私はデュランダルの凄まじい切れ味と聖なるオーラを増大させることにしたんだ」

 

 そう言うとゼノヴィアはアスカロンを重ね、構える。

 

 アスカロンが加わったことで聖なるオーラは増大し、デュランダルに触発されたアスカロンはさらなるオーラを放出していく。

 

 二刀が放つオーラは更に濃く、力強くなっていく。

 

「さあ、いこう! デュランダル! アスカロン! 私の親友を助けるために! 私の想いに応えてくれぇぇぇぇぇっ!」

 

 その声に応え、更にオーラの奔流が強まる。

 

 天井を貫き大穴を開ける光の柱を、ゼノヴィアはそのまま振り下ろした。

 

 轟音と衝撃が響き、爆風が巻き起こる。

 

 それが収まると、見るも無惨に破壊された神殿が姿を表した。

 

 柱と壁はまとめて吹き飛び、ゼノヴィアよりも前方の天井も消滅していた。

 

 肩で息をするゼノヴィアの前に敵影はなく、今の一撃で消滅したようだった。

 

 仮にリタイヤ機能が生きていても逃れ得ぬであろう一撃に震えつつ、一誠は「兵士」八名に向き直った。

 

 そこからの展開はまさに圧倒というものだった。

 

 「女王」へとプロモーションした一誠の「乳語翻訳」によって攻める相手もタイミングもさらけ出された少女たちはギャスパーの神器により止められ、無駄に「洋服崩壊」を決められてあっさりと打倒された。

 

 大した損耗もなく生き残った全員の魔力を封じて縛り上げ、天魔達は次へと進む。

 

 次の神殿にいたのは三人だった。

 

「「女王」と「僧侶」が二人か。後の「騎士」は祐斗一人で十分ですね。部長と姫島先輩でお願いします」

 

 天魔の指名に頷き、リアスと朱乃が前に出る。

 

 眷属でも魔力に長けた二人とはいえアガレス戦で「女王」同士の戦いを制していた相手と魔力重視の「僧侶」が相手とあって不安そうにしていた一誠だったが、小猫の耳打ちを受けて驚く。

 

「それでほんとにいいの?」

 

「はい、これで朱乃さんはパワーアップします」

 

 あまりふざけるタイプではない小猫が何を耳打ちしたのか不思議に思う面々の前で、一誠は僅かに息を吸い込んだ。

 

「朱乃さーん。その人たちに完勝したら、今度の日曜デートしましょう!」

 

 その言葉を受け、朱乃の周囲に電光が飛び始める。

 

 明らかに戦意が向上し、雷光の出力が高まっていた。

 

「……うふふ。うふふふふふ! イッセー君とデートできる!」

 

「酷いわ、イッセー! 私という者がありながら、朱乃にだけそんなこと言って!」

 

 雷光を撒き散らす朱乃に対し、涙目で訴えるリアスだったが、一誠にはその真意は届かなかった。

 

「うふふ、リアス。これも私の愛がイッセー君に通じた証拠よ。もう諦めるしかないわね?」

 

「な、な、何を言っているの! デ、デ、デート一回ぐらいの権利で雷を迸らせる卑しい朱乃になんか言われたくないわ!」

 

 そのまま口論が発展し、あたりにオーラを撒き散らしながら騒ぎ出す。

 

「あなた方! いい加減にしなさい! 私達を無視して男の取り合いなどと」

 

「「うるさい!」」

 

 戦いの最中に敵を無視するような態度を取られ口を挟んだディオドラの「女王」だったが、八つ当たりの一撃で「僧侶」共々吹き飛ばされた。

 

「うぬぬ! ……まあ、いいわ。後はアーシアを救ってからゆっくり話し合いましょう。まずはアーシアの救出よ」

 

「ええ、わかっていますわ。私にとってもアーシアちゃんは妹のような存在ですもの」

 

 アーシアの無事が第一である点は一致した二人が八つ当たりもあってクールダウンし先へと進んでいく。

 

 念の為再起不能のディオドラの眷属を縛り上げ、天魔達も続くのだった。

 

 そして、次の神殿。

 

 本来であれば残る「騎士」二人が待つはずだったが、そこにいる人影は一人だけだった。

 

「や、おひさ~」

 

 そこに立っていたのは白髪の神父

 

「フリードッ!」

 

 一誠が初めて悪魔として戦った相手であり、エクスカリバーの事件でコカビエルとともに転送された不良神父だった。

 

「まだ生きていたんだなって、思ったっしょ、イッセー君? イエスイエス。僕ちんしぶといからキッチリキッカリ生きてござんすよ? って、無視はひどくな〜い? ああ、もしかして「騎士」二人をお捜しで?」

 

 以前と同様に心中を言い当てられた一誠がそれを無視して周囲を見回すのにフリードが気付くとニンマリと笑う。

 

 そしてモゴモゴと口を動かすと小さなモノを吐き出す。

 

 よく観察すると、それは人の指だった。

 

「俺様が食ったよ」

 

 フリードの言葉を理解しきれない者もいたが、天魔と小猫が不快そうに眉を潜めた。

 

「その人、人間をやめてます」

 

「ヒャハハハハハッハハハッハハハハッ! てめぇらに切り刻まれた後、そこのクソ悪魔の野郎に回収されてなぁぁぁぁぁあっ! 腐れアザゼルにリストラ食らってよぉぉぉぉおおっ!」

 

 小猫の言葉の真偽を疑う者もいたが、笑い始めたフリードの肉体が奇怪な音を立てながら変貌していくのを見て目を見開く。

 

「行き場を無くした俺を拾ったのが「禍の団」の連中さ! 奴ら! 俺に力をくれるってよぉぉおおおっ! きゃははははっははっ! 合成獣だとさ! ふはははははっはははっはっ!」

 

 全身が膨れ上がり、神父服の背を突き破って片側には翼が、もう一方には腕が生えていく。顔は原型を留めない程に変形し、口はドラゴンのようなものになっていた。

 

「ヒャハハハハハ! ところでさ、ディオドラ・アスタロトの女の趣味を知ってたかい? これがもう素敵にイカれてて、聞くだけで胸がドキドキだぜ!」

 

 変貌を終え、唐突に語りだすフリードに一誠達が疑問符を浮かべる。

 

 だが続く言葉に疑問も吹っ飛んだ。

 

 ディオドラの趣味―それは、シスターのような教会と通じている少女を堕とすこと。

 

 それも狙う相手は熱心な信者や本部に馴染みのある者ばかり。

 

 屋敷に囲っている女や眷属も元は有名なシスターや聖女だったと聞き、一誠達の心中に暗雲が広がっていく。

 

 そう、ディオドラがアーシアを標的とし、追放から堕天使の組織に拾われ、一度殺されるところまでディオドラが仕組んだことだったのだ。

 

 それを知り、追放されても神を信じていたアーシアを貶めようとしていたディオドラに一誠達が激昂する。

 

 それでも冷静さが残ったのは、すぐ横に激情を溢れさせていた天魔がいたからだ。

 

 その表情は今まで一誠達が見たことのないほどに憤怒に彩られ、握り込まれた拳から垂れる血が滴る床は踏みしめられてヒビが入っていた。

 

「祐斗、ルールは、ルールだ。最後の一戦はお前に任せる」

 

「ああ、任せてくれ。あの汚い口を止めてこよう」

 

 天魔の指名に剣を抜きながら祐斗が進み出る。

 

 一人で出てきた祐斗を見て、フリードは哄笑する。

 

「やあやあやあ! てめぇはあのとき俺をぶった斬りやがった腐れナイトさんじゃあーりませんかぁぁぁっ! てめぇのおかげで俺はこんな素敵なモデルチェンジをしちゃいましたよ! でもよ! だいぶ強くもなったんだぜぇぇ? ディオドラの「騎士」二人をペロリと平らげましてね! そいつらの特性も得たんですよぉぉぉぉっ! 無敵超絶モンスターのフリードくんをよろしくお願いしますぜぇ、色男さんよぉぉぉぉっ!」

 

 祐斗は剣を構えると冷淡な声で一言だけ言う。

 

「君はもういない方がいい」

 

「調子くれてんじゃねぇぇぇぞぉぉぉぉっ!」

 

 激昂したフリードが鋭利な刃を生やし、祐斗に迫る。

 

 それに対した祐斗は一瞬姿を消すとフリードの後ろへと移動していた。

 

「んだ、それ……強すぎんだろ」

 

 一拍遅れフリードの身体が四散し、頭部だけとなったフリードが転がった。

 

「……ひひひ。ま、お前らじゃ、ディオドラの計画も裏にいる奴らも倒せないさ。何よりも神滅具所持者の恐ろしさをまだ知らねぇんだからよ……ひゃはは―」

 

 頭部だけで笑っていたフリードにゆうとは容赦なく剣を突き立てると、抜き放った刃を振って血糊を落とす。

 

「続きは地獄の死神相手に吼えているといい」

 

 半円状に広がった中心で呟く祐斗を見届けると、天魔が宣言する。

 

「行くぞ」

 

 空気が冷え込むような天魔の声に従い神殿の奥へ進んでいく。

 

 

 

 その頃、アザゼルはフィールドの外れで旧魔王派の悪魔をある程度始末し、残りは配下に任せて気を抜いていると、すぐ近くに転移用の魔方陣が組み上がる。

 

 転移してきたのは貴族服の男だった。

 

「お初にお目にかかる。俺は真のアスモデウスの血を引く者、クルゼレイ・アスモデウス。「禍の団」真なる魔王派として、堕天使の総督である貴殿に決闘を申し込む」

 

 名乗りを受けて、まさかの首謀者の登場にアザゼルは頭をかく。

 

「旧魔王派のアスモデウスが出てきたか」

 

 その言葉を聞いた瞬間、オーラをほとばしらせる。

 

 カテレアと同様に本来の悪魔のものとはわずかに違うオーラにアザゼルはオーフィスの力を借りている事を察する。

 

「旧ではない! 真なる魔王の血族だ! カテレア・レヴィアタンの敵討ちをさせてもらうッ!」

 

 アザゼルはクレイゼイの物言いに怪訝な顔をするが、首謀者を打ち取るチャンスあるため相手になろうと構えるが、そこに新たな魔方陣が現れた。

 

 そこから現れたのは紅髪の魔王―サーゼクスだった。

 

「サーゼクス、どうして出てきた?」

 

「今回結果的に妹を我々大人の政治に巻き込んでしまった。私も前へ出てこなければな。いつもアザゼルばかりに任せては悪いと感じていた。クルゼレイを説得したい。これぐらいしなければ妹に顔向けできそうにないんでね」

 

「……お人好しめ。無駄になるぞ?」

 

「それでも現悪魔の王として直接訊きたかった」

 

 アザゼルの目を細めての問に対するサーゼクスの回答にアザゼルはため息をつきながら下がる。

 

 クレイゼイはサーゼクスの姿を認めると激昂する。

 

「サーゼクス! 忌々しき偽りの存在ッ! 直接現れてくれるとはッ! 貴様さえ、貴様らさえいなければ、我々は……ッ!」

 

「クルゼレイ。矛を下げてはくれないだろうか? 今なら話し合いの道も用意できる。前魔王の血筋を表舞台から遠ざけ、冥界の辺境に追いやったこと、いまだに私は「他の道もあったのでは?」と思ってならない。前魔王子孫の幹部たちと会談の席を設けたい。何よりも貴殿とは現魔王のアスモデウスであるファルビウムとも話してほしいと考えている」

 

 サーゼクスの言葉は真摯なものだった。

 

 だからこそ、それがクレイゼイの神経を逆なでする。

 

「ふざけないでもらおう! 堕天使どころか、天使とも通じ、汚れ切った貴様に悪魔を語る資格などないのだ! それどころか、俺に偽物と話せというのか⁉ 大概にしろッ!」

 

「よく言うぜ、てめぇら「禍の団」には三大勢力の危険分子が仲良くあつまっているじゃないか」

 

 激昂するクレイゼイにアザゼルが嘆息しつつ告げる。

 

 すると、クレイゼイは口の端を吊り上げた。

 

「手を取り合っているわけではない。利用しているのだ。忌まわしい天使と堕天使は我々悪魔が利用するだけの存在でしかない。相互理解? 和平? 悪魔以外の存在はいずれ滅ぼすべきなのだ! それをなぜわからない⁉ 悪魔こそが! 否! 我々、魔王こそが全世界の王であるべきなのだよ! オーフィスの力を利用することで俺達は世界を滅ぼし、新たな世界を創り出す! そのためには貴様ら偽りの魔王共が邪魔なのだ!」

 

 堂々と宣言するクレイゼイにアザゼルは頭を抱える。

 

 それに対し、サーゼクスは寂しげなめで呟く。

 

「クレイゼイ。私は悪魔という種を守りたいだけだ。民を守らなければ、種を繁栄しない。甘いと言われてもいい。私は未来ある子供たちを導く。今の冥界に戦争は必要ないのだ」

 

「甘いッ! 何よりも稚拙な理由だッ! それが悪魔の本懐だと思っているのか⁉ 悪魔は人間の魂を奪い、地獄へ誘い、そして天使と神を滅ぼす為の存在だッ! もはや、話し合いは不要! サーゼクスよ! 偽りと偽善の王よッ! ルシファーとは! 魔王とは! 全てを滅する存在だっ! 滅びの力を持っていながら、何故横の堕天使に振る舞わない⁉ やはり、貴様は魔王を名乗る資格などないッ! この真なる魔王であるクルゼレイ・アスモデウスがお前を滅ぼしてくれるッ!」

 

 それが最後の話し合いだった。

 

 どうあっても敵対を避けられない事を理解したサーゼクスは僅かに空を仰ぐと瞑目し、クレイゼイへと視線を合わせる。

 

 その瞳には見たものの背筋が凍りそうな程に冷たい光が宿っていた。

 

 それを確認したクルゼレイは距離を取り、両手に巨大な魔力の塊を創り出していく。

 

「そうだ! それでいい! そのほうがわかりやすいのだよ、サーゼクスッ!」

 

 戦意をたぎらせるクレイゼイに対し、サーゼクスは無言で右手を前に突き出して手のひらを上に掲げる。

 

 そこに滅びの魔力が圧縮され、小さな魔力弾が二つ出来上がった。

 

「クルゼレイ、私は魔王として今の冥界に敵対する者を排除する」

 

「貴様が! 魔王を語るなッ!」

 

 クレイゼイは激昂し、魔力を掃射する。

 

 対するサーゼクスは滅びの魔力を操りクレイゼイの魔力を削り取っていった。削りきれないものは魔力の障壁で防ぎ、その最中、クレイゼイの口の中に滅びの魔力の片方が入り込んだ。

 

 直後、一瞬クレイゼイの腹が膨張すると、魔力がガクンの減少する。

 

「「滅殺の魔弾(ルイン・ザ・エクステインクト)」。腹に入っていたオーフィスの「蛇」を消滅させてもらった。これで絶大な力を振るえないだろう」

 

 自身に力を与えていた存在を消されたことでクレイゼイが焦り始める。

 

 全てを削り取る滅びの魔力とそれを小さく圧縮して自在に操るサーゼクスの力にアザゼルが圧倒されていると、クレイゼイが喚き出す。

 

「おのれ! 貴様といい! ヴァーリといい、なぜこうも「ルシファー」を名乗る者は恵まれた力を持っていながら、我々と相容れないッ⁉」

 

 そう毒づくと目減りした魔力を再び放とうとする。

 

 その瞬間、滅びの魔力がクレイゼイの腹に大穴を開けた。

 

「……な、なぜ……本物が偽物に負けねばならない……?」

 

 血を吐き、無念の血涙を流しながらクレイゼイが呟く。

 

 サーゼクスが手を薙ぐのに合わせ、滅びの魔力がクレイゼイを削り取っていった。




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