変態の双子の兄弟として   作:篠白 春夏秋冬

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Life.52 異次元の力

 天魔達がたどり着いたのは最深部にある神殿だった。

 

 その内部にはあちらこちらに怪しげな文字の刻まれた宝玉が埋め込まれた装置が設置されており、大きな魔方陣を描いていた。

 

 突入と同時にその魔方陣の中央を見ていた天魔の視線にならい、そこを視界に収めた一誠が叫ぶ。

 

「アーシアァァァァアアアアアッ!」

 

 中央に磔にされていたのはアーシアだった。

 

 目に映る範囲では外傷もなく、衣服の乱れもない。

 

「やっと来たんだね」

 

 そう言って装置の横からディオドラが姿を表す。

 

 その優しげに見える笑みが一誠達の怒りを煽っていた。

 

「イッセーさん、天魔さん」

 

 一誠の声で到着に気づいたのかアーシアが顔をあげる。

 

 その表情は悲し気であり、目元は赤く腫れていた。

 

「……ディオドラ、お前、アーシアに事の顛末を話したのか?」

 

 アーシアの顔を見てないていた事を察した一誠が問うと、ディオドラはニンマリと笑う。

 

「うん。全部、アーシアに話したよ。ふふふ、君たちにも見せたかったな。彼女が最高の表情になった瞬間を。全部、僕の手のひらで動いていたと知った時のアーシアの顔は本当に最高だった。ほら、記録映像にも残したんだ。再生しようか? 本当に素敵な顔なんだ。教会の女が堕ちる瞬間の表情は、何度見てもたまらない」

 

 ディオドラの言葉を聞き、一誠が歯を食いしばる。

 

「でも、足りないと思うんだ。アーシアにはまだ希望がある。そう、君たちだ。君達がアーシアを救ってしまったせいで、僕の計画は台無しになってしまったよ。あの堕天使が一度アーシアを殺した後、僕が登場して堕天使を殺し、その場で駒を与える予定だったんだ。君たちが乱入しても堕天使には勝てないと思っていた。そうしたら、君たちは伝説の存在だという。偶然にしてはおそろしい出来事だね。おかげで計画はだいぶ遅れてしまったけれど、やっと僕の手元に帰ってきた。これでアーシアを楽しめるよ」

 

「言いたいことはそれだけか?」

 

 天魔がポツリとディオドラへ問う。

 

 さほど声を張ったわけではないはずのその声は、なぜかよく通った。

 

 そしてその迫力は思わず叫ぼうとした一誠さえ思わず黙り込むものだった。

 

「アーシアはまだ処女だよね? 僕は処女から調教するのが好きだから、白龍皇のお古は嫌だな」

 

「言いたいことはそれだけか?」

 

 再び天魔が問いつつ一歩前へ出る。

 

 先程よりも声は大きかったが、ディオドラは止まらない。

 

「あ、でも、白龍皇から寝取るのも面白いかな? 君の名を呼ぶアーシアを無理矢理抱くのも良いかもしれないね?」

 

「言いたいことは、それだけか⁉」

 

 天魔が目を見開き、ディオドラを見る。

 

 天魔の身から迸るオーラが周囲の空間を震わせ破壊し始めるのを見てもディオドラはニヤニヤと笑っていた。

 

「凄いね! これが白龍皇! でも、僕もパワーアップしているんだ! オーフィスから貰った「蛇」でね! そして!」

 

 ディオドラはそう言うと手を掲げる。

 

 その手に握られた宝玉が輝くと天魔の右手首へと腕輪が装着され、広げていた白龍皇の翼が消え失せる。

 

 ちらりと腕輪へと視線を送る天魔をみて、ディオドラは哄笑する。

 

「アハハハハ! これで君は神器を使うことは出来ない。確かに上級悪魔の血を引くだけあってそれなりの力はあるみたいだけど、神器も羽もない君なんて僕からすれば塵芥さ! さあ、最後の戦いを始めようじゃないか!」

 

「全員下がっていて下さい」

 

 白龍皇の翼が消えると同時にオーラを静かにさせた天魔が呟くように告げる。

 

 端から見れば明らかな弱体化した天魔をリアスが制止する。

 

「駄目よ。今の貴方では「蛇」で強化されたディオドラは危険だわ。アーシアになにかされる可能性はもう低い。皆で戦うべきよ」

 

「下がっていて下さい」

 

「てん」

 

「邪魔をするな」

 

「っ!」

 

 なおも下がるように言う天魔に言い募ろうとしたリアスだったが、それを遮る天魔の声に小さく声をあげ一歩下がる。

 

 その様子を見てディオドラはあざ笑うかのように話し出す。

 

「本当に一人で()る気かい? 神器も使えない君なんてただのざ」

 

 しかしその言葉は最後まで続くことはなかった。

 

 その場の誰の目にも追えぬ程の速度で天魔がディオドラへと詰め寄り、その顔面へと回し蹴りを炸裂させたのだ。

 

 その一撃でディオドラは鼻血を彗星の尾のように引き連れながら吹き飛び、近くの柱へと叩きつけられた。

 

「こいつはアーシアの分だ。いまので顔面の骨がへし折れたようだが、アーシアがへし折ったんだと思え。そしてこれも!」

 

 柱へと激突したディオドラは反動で柱から離れると顔を抑えながらヨロヨロと立ち上がる。

 

 そのディオドラに今度は天魔のアッパーが突き刺さる。

 

「アーシアの分だァァァ!」

 

 その一撃でディオドラは宙へ浮き、後頭部から着地する。

 

 小さくうめきながら立ち上がるディオドラへと歩み寄りながら、天魔は結界を展開する。

 

「これでもうお前は逃げられない。そして次のもアーシアの分だ。その次の次のも。その次の次の次のも。その次の次の次の次のも……次の! 次も! アーシアの分だあああーッ!」

 

「ふざけるな! この下級以下のゴミがァァァ──ッ!」

 

 天魔の叫びに負けじとディオドラも叫び、大量の魔方陣から魔力弾を打ち放つ。

 

 天魔はその全てを最適な体捌きで躱し、最短経路でディオドラへと迫った。

 

「これも! これも! これも! これも、これも、これも、これも、これもこれもこれもこれも! アーシアの分だァァァッ!」

 

 天魔のラッシュがディオドラを打ちのめしていく。

 

 衝撃を余さず身体に伝え、後方へと吹き飛ぶエネルギーを発生させない精密なコントロールによる打撃を無数に浴び、ディオドラの身体が破壊されていく。

 

 最後に()()を作る為にディオドラを僅かに宙へ浮かすと、渾身の力を込めてトドメを放つ。

 

「俺のアーシアを泣かしてんじゃねぇよォォォッ‼」

 

 天魔の拳がディオドラの腹へと沈み込み、その身体を再び柱へと叩きつける。

 

 一度目とは違い、柱へと深くめり込み、柱の崩壊とともに床へと落ちた。

 

 「蛇」による強化もあってか、フラフラでありながらも立ち上がるとディオドラが叫ぶ。

 

「嘘だ! やられるはずがない! アガレスにも勝った! バアルにも勝つ予定だ! 才能の無い大王家の跡取りなんかに負けるはずがない! 情愛が深いだけのグレモリー如きに従うゴミクズなんかが僕の相手になるはずがない! 僕はアスタロト家のディオドラなんだぞ!」

 

 ディオドラは手を上に掲げると天魔の周囲に魔方陣が現れ、そこから円錐状の魔力がその身を貫こうと迫る。

 

 天魔が回避することなく突き刺さる魔力にディオドラは笑みを浮かべる。

 

 しかし、その切っ先は天魔の衣服一枚さえも貫くことはなく、ピンポイントに形成された結界によって阻まれていた。

 

 周囲に浮かぶディオドラの魔力を天魔の発した魔力が粉砕し、その下から現れた天魔がまったくの無傷であることを見て取り、ディオドラは青ざめ後ずさる。

 

 しかし、ふらつく足が瓦礫に取られて尻もちをつく。それでも少しでも逃げたいのか必死に足掻き、その背が砕けた柱へと当たったことで小さく悲鳴を挙げた。

 

 へたり込むディオドラへ天魔が歩み寄り、拳を振り上げる。

 

 ディオドラは悲鳴を挙げながらも必死に手を前にかざし、障壁を作り出すが、天魔の拳はそれを容易に打ち砕き―

 

 ディオドラの頬をかすめて、その背後の柱の残りを粉砕した。

 

 ディオドラが叩きつけられた箇所が半ばよりも上の部分だったため、天魔の身長以上に残っていた柱が障壁を突き破り、多少なりと勢いの落ちたはずの拳で粉砕されたことでディオドラは目元を引くつかせ、その下に水たまりを作り出す。

 

 足元に生まれた水たまりを踏まないように、床から僅かに離した結界の上に立ち天魔はディオドラを胸ぐらを掴んで釣り上げる。

 

「アーシアに二度と関わるな。次は容赦しない」

 

 それだけ告げると天魔は返事を待たずに手を離す。

 

 ディオドラが水音とともに落下し、ガタガタと震えるのを見下ろす天魔に一誠とゼノヴィアが歩み寄り、結界へと乗る。

 

「天魔、トドメを刺さないのか?」

 

 ゼノヴィアはそう言うとデュランダルの切っ先を向ける。

 

「アーシアにまた近づくかもしれない。ここで首をはねた方が今後のためじゃないか?」

 

 その目は殺気にまみれており、天魔が応じればすぐにでも首をはねかねない雰囲気だった。

 

「……いや、こんなのでも現魔王の血筋だ。殺せばサーゼ様や部長に迷惑がかかる。こいつは現政府に裁かせるほうがいい。それに」

 

 天魔はそこで言葉を切り、ちらりとアーシアへと視線を向ける。

 

 その視線に納得して折り合いをつけたのか、ゼノヴィアは一つ息を吐くと首筋から剣を離し、床へと突き刺す。

 

 その一撃は結界を貫通し、床へと小さなクレーターを作った。

 

「わかったよ。天魔がそういうななら私は止める。イッセーはどうする?」

 

「まあ、アーシアの前だしな。殴れないのはちょっと複雑だが、俺も止めとくよ」

 

「悪いな。二人共。さて、それはそれとして」

 

「「ああ」」

 

 ゼノヴィアの言葉に一誠も引き、天魔が謝る。

 

 そして、ゼノヴィアがデュランダルを、一誠がアスカロンを、天魔が拳を突きつけると同時に叫ぶ。

 

「「「もうアーシアに言い寄るなッ!」」」

 

 その言葉にディオドラがガクガクと頷くのを見て天魔が視線を外しアーシアへと足を向ける。それに合わせて一誠たちもアーシアの下へと集合した。

 

「ごめんな、アーシア。俺の都合で傷つけて」

 

「いえ、約束通りに助けてくれてありがとう御座います」

 

 天魔がアーシアをなでながら謝るのに、アーシアは僅かにほほえみながら応じる。

 

 やや和やかな空気が流れていたが、その横で枷を外そうとしていた祐斗の言葉に覆される。

 

「……枷が外れない」

 

 その言葉を受け全員で枷を外そうとするが、一誠の倍化や譲渡、リアスの魔力を使っても外れなかった。

 

 一誠が禁手のカウントダウンを始めるのを契機に天魔の禁手の力を活用できないかと腕輪を外そうとしたがこちらも外れず、その頑丈さに目を見開いているとうずくまっていたディオドラが口を開いた。

 

「……無駄だよ。その装置は機能上、一度しか使えないが、逆に一度しない限り停止しないように出来ているんだ。アーシアの能力が発動しない限り停止しない」

 

「どういうことだ? 後この腕輪が外れないのは?」

 

 天魔が問うと、ディオドラは淡々と語り始める。

 

「それらの装置は神滅具所有者が作り出した固有結界の一つ。このフィールドを強固に包む結界もその者が作り出しているんだ。「絶霧」という結界系神器の最強。所有者を中心に無限に展開する霧。その中に入った全てを封じることも、異次元へと送ることも可能。それが禁手に至った時、霧から任意の結界装置を作り出す能力へと成ったのさ。それが「霧の中の理想郷(ディメンション・クリエイト)」―創り出した結界は一度正式に発動しないと止めることは出来ない」

 

 敵の神器の解説を終えたディオドラへ天魔が再び問う。

 

「発動の条件と効果は?」

 

「白龍皇の方は宝玉に僕の魔力を流すことを起動合図に白龍皇の翼の機能を半日だけ機能停止にすること。対象と稼働時間を絞ることで強度を挙げているらしい。アーシアの方の発動の条件は、他の関係者の起動合図か僕が倒されること。効果は枷に繋いだ者―アーシアの神器を増幅して反転(リバース)させ、発動すること」

 

「反転だと⁉」

 

 天魔が返答に動揺し質問が止む。そのまま考え込む天魔に変わり、祐斗が質問する。

 

「効果範囲は?」

 

「……このフィールドと観覧席だよ」

 

 その答えを聞き、天魔が歯を食いしばる。その様子に疑問を持った面々に天魔が解説を始めた。

 

「「反転」ってのは神器のような固有能力ではなく体系化された技術だからやろうと思えば俺達にも出来る。多少なりとリスクはあるがな。そしてその効果は、文字通り効果を反転させること。つまり、聖なるオーラを魔のオーラに、回復をダメージに」

 

 その言葉を聞き、何人かが目を見開く。

 

 実際に効果が発動した際に起きる影響を想起したためだ。

 

「アーシアの回復能力は強力だ。それを増幅したうえで反転させれば、上層部が根こそぎやられるかもしれない。全滅までいかなくとも、間に合わないものは出るだろう。観覧席には悪魔だけでなく他勢力の上層部もいる。犠牲者によっては戦争は避けられない!」

 

 考えをまとめるために言語化したことで全員に伝わり、表情が変わる。

 

 特にアーシアはひどく青ざめており、その心情が伺えた。

 

「天魔さん」

 

「アーシア、それ以上言ったら許さん! いいか? 全員で帰るんだ! 二人三脚で他の奴らをぶっちぎって一位を取るんだ! 絶対になんとかする! だからそんな顔すんな!」

 

 泣きそうなアーシアの言葉を遮り、天魔が無理やりな笑顔を浮かべる。

 

 その左手は腕輪を掴んでおり、相当な力を入れているのか震えていたが、腕輪はピクリとも動かなかった。

 

 アーシアの目尻から涙がこぼれた瞬間、装置から稼働音がし始めた。

 

 その音に焦り、グレモリー眷属が思い思いの方法で装置を壊そうとする。

 

 天魔は押しても引いても嵌った場所から動かず腕に張り付くように装着された腕輪を見て、何かを思いついたのかアーシアの四肢に嵌った枷を確認し始めた。

 

 突然の行動に虚を突かれたグレモリー眷属が見守る中、確認を終えた天魔は苦い顔をして振り向いた。

 

「……」

 

「おい、天魔! どうしたんだ? なにか思いついたんじゃないのか⁉」

 

 何も話さない天魔に一誠が問いかける。

 

 装置の音が響く中、苦渋の決断といった表情のまま口を開く。

 

「……イッセー、お前に賭けるぞ」

 

「は? 俺? 倍化も譲渡も試したぞ?」

 

 一誠は突然の指名に驚くが次の言葉は全員をさらなる驚愕へと誘う。

 

「洋服崩壊だ……」

 

「は?」

 

「イッセー、洋服崩壊をアーシアへかけろ! カウントは終わってるだろ! ブーステッド・ギアの禁手状態の倍化を最大で掛けて、アーシアにピッタリ密着した枷を服に見立てて破壊しろ!」

 

「何を言ってるの⁉」

 

 天魔のトチ狂ったかのような発言にもっとも早く復帰したリアスが声をあげた。

 

「俺だって確実な方法があればこんなこと言い出しませんよ! でも実際に試していないのはイッセーの変態奥義だけです!」

 

「いや、変態奥義って」

 

「あの阿呆な技は魔力を使った攻撃とも仙術や聖剣のようなオーラを利用したものとも違う未知の反応を示す色んな意味で異次元の技です! 可能性があるのはこのクソ技しかない!」

 

「阿呆な技、クソ技……」

 

「妥当な評価です。変態先輩」

 

 天魔の反論に含まれた散々な評価に一誠が膝をつく。

 

 そのとなりに小猫がしゃがみこんで追撃を始めるが、それを気にせず天魔は一誠の肩を掴んで起こす。

 

「いいかイッセー! 正直癪だが今は許す! 全力でアーシアの裸をイメージしろ! 洋服崩壊の修行で散々見ただろ! お前の力が必要だ!」

 

「いや、しかし……」

 

「イッセーさん、お願いします!」

 

「ッ!」

 

「私、もっと皆さんといっしょにいたいです。この前のカラオケみたいにイッセーさんや木場さん、ギャスパー君と遊んだり、小猫ちゃんとお菓子を食べたり、部長さんや朱乃さんとお茶したり、ゼノヴィアさんやイリナさんとお祈りしたり、天魔さんとも……いっぱい、いろんな事を―」

 

 天魔の言葉に迷う一誠だったが、アーシアの言葉に覚悟を決める。

 

 赤い鎧を纏い、枷に触れると息を整え声をあげる。

 

「高まれ、俺の性欲! 俺の煩悩! 洋服崩壊ッ! 禁手ブーストバージョンッ!」

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost‼』

 

 鎧に嵌った宝玉が赤く輝き、枷に触れる一誠の手に流れ込む。

 

 イメージのせいか鼻血を垂らしながら力の波動が臨界点に達し、トドメに一誠が指を弾く。

 

 その音を契機に枷にヒビが入り、わずかな抵抗を見せた後アーシアの服とともに弾け飛んだ。

 

「いやっ!」

 

 開放と同時に全裸になったアーシアが素早くかがんで身体を隠す。

 

 アーシアには朱乃が素早く魔力で服を着せていた。

 

 一方一誠はアーシアの身体を視界に収めるとともに鼻血を噴き出し、同時に視界を失った。

 

 兜に包まれていたにも関わらず正確無比に視界を奪われのたうち回る一誠を他所に全員が装置へと注目すると、装置はゆっくりと稼働を停止し、音が収まる。

 

 安堵に長く息を吐く天魔にリアスが話しかける。

 

「よく洋服崩壊で壊せると思ったわね」

 

「ある意味極限状態だったからこそ思いついたウルトラCってとこですかね。ディオドラの眷属が身につけていた装飾品の類も一部壊れていたので禁手状態であればいけるのではと。本人がどれほど認識しているかわかりませんが、恐ろしい技ですよ。乳語翻訳も含めて―(あれ? なんだ? この違和感は)」

 

「なるほど、イッセーの想像力と妄想も枷を壊す要因になったのかしら?」

 

 天魔の言葉を聞き、リアスは枷を破壊できた理由を考察しつつ首をひねる。その横で天魔も思考にふけっていた。

 

 兜を貫通する勢いの目潰しで視界を奪われていた一誠をアーシアが治療し、それが終わった直後、一誠を跳ね飛ばしてゼノヴィアがアーシアへと抱きついた。

 

「アーシア! 良かった! お前がいなくなってしまったら、私は……」

 

 ゼノヴィアは目を潤ませながらアーシアへと告げる。その様子に跳ね飛ばされたことへの文句を言おうとしていた一誠が閉口した。

 

「どこにもいきません。天魔さんとイッセーさんとゼノヴィアさんが守ってくれますから」

 

「うん! 私はお前を守るぞ! 絶対だ!」

 

 アーシアがゼノヴィアの涙を拭いながら抱きしめかえし、ゼノヴィアが改めて抱き返す。

 

 暫くそうしていて満足したのかゼノヴィアは離れ、二人で立ち上がるとアーシアが一礼する。

 

「部長さん、皆さん、ありがとうございました。私の為に……」

 

 頭を下げたアーシアにリアスが歩み寄り抱きしめる。リアスは優しげな顔で告げる。

 

「アーシア。そろそろ私のことを家でも部長と呼ぶのは止めてもいいのよ? 私を姉と思ってくれていいのだから」

 

「―っ。はい! リアスお姉様!」

 

 アーシアもリアスを抱き返す。

 

 ギャスパーが感涙して小猫に頭を撫でられていた。

 

 そんな一幕のなか、違和感に気づいた天魔の思考が加速する。

 

 (待てよ。そうだ、ディオドラはアーシアが繋がれた装置の起動条件を「他の関係者の起動合図か()が倒されること」と言った。確かに奴は敗北していたが、それだと起動のタイミングがおかしくないか? 起動したのは祐斗が枷が外れない事を確認して色々と試した後だ。俺についたままの腕輪のことを考えても起動まで時間がかかるということはないだろう。という事は―)

 

「部長! アーシア!」

 

(まだ近くに敵がいる!)

 

 天魔が周囲を探りつつ旧魔王派が狙うであろうリアスと彼女と抱き合うアーシアへと声を掛ける。

 

 突然に声をあげた天魔の意図に気づけず、不思議そうにする二人の頭上に気配を感じ、一も二もなく二人を突き飛ばした。

 

「キャッ!」

 

 突き飛ばされた二人を一誠が受け止め、その瞬間先程まで二人のいた場所が光に包まれる。

 

「おい、天魔⁉ 一体なに、を」

 

 二人の勢いが受け止めなければ確実に怪我をする程のものだったことで天魔に事情を問いただそうと一誠が顔をあげる。

 

「天魔?」

 

 先程まで光に包まれていたその場所には誰もおらず、一誠の問いかけに応える者はいなかった。

 

 

 

「っ!」

 

「どうかしたのかい?」

 

「行かないと」

 

「は? いや、どこに? ちょっと! 待ってってば! ああ、もう! 暫くごまかしてて!」




感想・評価・お気に入りありがとうございます。

本作はこの回のために始めたものだったりします。

最初に今回のラッシュのシーンを思いつき、原作の巻数=当該の部数だったので多少無理にでもネタを混ぜていったという経緯でした。

なので、作成していたのはアーシア救出までで以降の部分は未作成でした。

一応6章終了時点までは作成してその後は未定です。
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