変態の双子の兄弟として   作:篠白 春夏秋冬

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Life.68 英雄派来る

 二日目の夜。天魔は部屋の中央で深呼吸をしていた。

 

 裏京都で一旦雰囲気を整えた天魔は先に戻った一誠たちに少し遅れて合流し、金閣寺周辺で観光を再開した。

 

 ホテルに戻ってから祐斗やシトリー眷属を交えて話し合い、一旦は予定通りに観光地巡りをしながら連絡がきた場合は転移でホテルまで戻ることになった。

 

 天魔の班は嵐山方面に行く予定だったが、その案内を九重が買って出ていた。

 

 初日の襲撃の詫びの意味合いもあるようだが、それはもう気にしていないので一時は断ろうとした。しかし、妖怪サイドからも是非にということで九重の気分転換にならばということで受け入れることになった。

 

 冥界と妖怪の協力態勢の構築の架け橋というアザゼルの言葉に一誠が緊張する一幕もあったが、九重の方は張り切っていた。

 

 そんな事を思い返しつつ明日の観光中に周囲へ無用なプレッシャーを与えないため気を鎮めていたのだが、唐突に扉がノックされる。

 

「天魔さん、私です」

 

 聞こえた声はアーシアだった。

 

 ドアを開けて招き入れると、アーシアは天魔の手を取り回復を始めた。

 

「気づいてたのか」

 

 血が滲み、鈍く痛みを発していた手のひらが治癒されていく。痛みが消えていくとともに隠し事を暴かれたような気まずさが顔を出し、天魔は苦笑する。

 

 治療が終わるとアーシアは顔を上げた。

 

「天魔さん。天魔さんが私達を心配するように、私達も天魔さんを心配します。まだまだ頼りないかもしれませんけど、力になれるときには言って下さい」

 

 じっと目を見つめられ、天魔は微笑むと完治した手をするりと抜き、アーシアの頭を撫でる。

 

「ありがとうな。アーシアの言う通りだ。気をつけるよ」

 

「はい」

 

 天魔の言葉に嬉しそうにアーシアが微笑む。むず痒い気持ちを感じた天魔は誤魔化すように話題を変える。

 

「そういえば、アーシアは何かしてほしいこととかないか? ディオドラの件のお詫びもしてなかったし、大抵のことは聞くぞ」

 

 突然の提案にアーシアが目を瞬かせる。少し考えた後、顔を赤くし、恥ずかしそうに上目遣いで天魔を見た。

 

「キス―」

 

「ん?」

 

「キスがいいです……」

 

 意外な要望に天魔はふとここ最近の事を思い返す。ディオドラとの一戦以降、割とアーシアとはイチャイチャしている。

 

 前々から一緒に寝ているが、最近は風呂も共にすることがある。天魔が修学旅行に意識を割いてぼーっとしている間、自然とアーシアが世話をしていたように食事を食べさせ合うこともあったりする。

 

 しかし、キスはまだしたことがなかった。

 

 そんな事を考えている沈黙を否定的なものと受け取ったのかアーシアは少し俯きながら話す。

 

「駅のホームで、イッセーさんとリアスお姉さまがキスしているのが見えてしまったんです。それで、その……やっぱりなんでもありません。忘れてくださ」

 

 話す内に僅かに涙を溜めはじめたアーシアを見て思考を打ち切るとそのまま唇を奪う。数秒そのまま唇を重ね、ゆっくりと離れる。

 

 目を瞬かせ、涙を零したアーシアに天魔は目を伏せた。

 

「ごめん。あのタイミングで黙っちゃったらそう受け取っちゃうよな。アーシアに言われるまでキスしたことなかったってのにちょっと驚いてただけなんだ。……なんかアーシアに謝ってばかりだな、俺」

 

 天魔はそう自嘲しながら頭を掻く。苦笑する天魔に今度はアーシアからキスをしてすぐに離れた。

 

「ありがとうな」

 

 慈愛に満ちた微笑みを浮かべるアーシアに改めてキスをしようとしたところで、ドアが開かれた。

 

「あ」「あら!」「む?」

 

 入ってきたのはゼノヴィアとイリナ。まさに今、唇が合わさろうというタイミングを目撃したイリナは口に手を当て、ゼノヴィアは目を瞬かせる。

 

「部屋にいなかったから天魔の部屋にでも来ているのだろうと思ったが、案の定だったみたいだ。それにしても隠れてキスとは……アーシアはいつも私を超えていく……」

 

「そうねそうね! アーシアさんって、たまにとても大胆だからこういうのもスピーディなのよ!」

 

「こ、これは、その!」

 

 二人が頬を染めつつも盛り上がるのにアーシアが言い募ろうとする。しかし盛り上がる二人は聞く耳を持たずひとしきり騒ぐと、ゼノヴィアはアーシアの目元を見た。

 

「ん? アーシア、泣いていたのか? 何があった?」

 

「あ~、それはその、何ていうか……」

 

「そうか、天魔が原因か。色々と話し合う必要がありそうだな?」

 

 心配するゼノヴィアに天魔が思わず声をかける。それで勘が働いたのかゼノヴィアは天魔に詰め寄った。

 

 据わった目のゼノヴィアに誤魔化すことも出来ず、見回りで来たロスヴァイセが解散させるまで気まずい思いをするのだった。

 

 

 

 翌朝。

 

 予定通り天魔達は嵐山方面へ移動する電車に乗っていた。

 

 一誠は九重のこともあり気分が乗らず覗きには参加しなかったが、松田と元浜は誰にも気づかれないスポットを見つけたと喜び勇んで覗きを実行しようとし、天魔の配置したシトリー眷属にボコボコにされいた。

 

 到着したのは天龍寺最寄りの駅。

 

 少々歩き、境内の受付で料金を払っていると後ろから声がかかる。

 

「おおっ、お主たち、来たようじゃな」

 

 聞き覚えのある幼い声に振り返れば、巫女装飾姿の金髪少女が立っていた。

 

「九重か、今日はよろしくな」

 

「うむ。約束通り、嵐山方面を観光案内してやるぞ」

 

 一般人もいるため九重は獣耳と尻尾を隠している。

 

 突然現れた九重に松田と元浜が驚いていた。

 

「はー、かわいい女の子だな。なんだ、イッセー、天魔、お前達現地でこんなちっこい子をナンパしてたのか?」

 

「……ちっこくてかわいいな……ハァハァ……」

 

 変なことを言っている松田を無視し、天魔は松田の顔面を鷲掴みにする。そのまま普段の取り締まりよりも一段低い声で警告する。

 

「触れたら殺す。匂いを嗅いでも殺す。匂いを届けても殺す」

 

「どうしろと!?」

 

「お前と九重の間に流れる風と平行に二メートル以上の距離を保て」

 

「無理だろ!」

 

 二人が騒いでいる間に九重の紹介も終わり、リアス方面での知り合いで観光案内をしてくれる事になったということ説明に落ち着いた。

 

 元浜には杭のように太い釘を何十にも刺してから解放し、天魔は九重へと振り返った。

 

「さて、早速頼むぜ、九重」

 

「もちろんじゃ!」

 

 天魔の言葉に胸を張りながら応える九重の案内に従い、この日の観光が始まった。

 

 

 

 誰かに教えてもらったらしく、所々で思い出すような素振りをする九重を微笑ましく見守りつつ午前の観光を終え、九重のオススメの湯豆腐屋に入る。

 

 楽しそうに仕切る九重から湯豆腐を受け取り味わっていると、祐斗が入店する。

 

「お、祐斗。そういえばお前の班もこっちだったな」

 

「うん。そっちは天龍寺だっけ?」

 

「ああ、見応えのある龍だったよ」

 

「僕もこれから渡月橋を見てから午後は天龍寺に行こうとしていたところなんだ。楽しみだな」

 

「渡月橋か。俺達もこれ食べたら行くよ」

 

 などと話していると、「秋の嵐山、風流なもんだぜ」という聞き覚えのある声が聞こえる。

 

「おう、お前ら、嵐山堪能してるか?」

 

 視線を向けるとアザゼルが酒を片手に湯豆腐を楽しんでいた。昼酒を楽しむアザゼルに天魔はため息を吐く。

 

「そっちもな、不良教師。自由気ままなようで何よりだ」

 

「その人、私が何度言ってもお酒を止めないんです。生徒の手前、そういう態度は見せてはならないと再三言ってはいるのですが……」

 

 アザゼルの後ろではロスヴァイセが額に青筋を立てて怒っている。しかし当の本人はどこ吹く風だ

 

「まあ、そういうな。嵐山方面を調査した後でのちょっとした休憩だ」

 

 アザゼル達は嵐山で「禍の団」の調査をしていたらしい。だからといって教師が生徒の前で昼酒はいかがなものか。

 

「だがな、ロスヴァイセ。ちったぁ要領よくいかないとよ。そんなだから、男のひとりもできないんだぜ?」

 

 アザゼルの一言にロスヴァイセはテーブルを叩いて顔を赤くする。相変わらず男性関係は地雷らしい。

 

「か、か、彼氏は関係ないでしょう! 馬鹿にしないでください! もう、あなたが飲むぐらいなら私が!」

 

 そう言ってアザゼルの酒を奪い一気に呷る。そのまま勢いよく杯を置くと先ほどとは違う理由で赤さの帯びた顔を上げた。

 

「ぷはー。……だいたいれすね、あなたはふだんからたいどがダメなんれすよ……」

 

「い、一杯で酔っぱらったのか?」

 

 あまりの早さにさしものアザゼルも瞠目する。それに構わずロスヴァイセは注ぎ直した二杯目を再び豪快に飲み干してくだを巻き始めた。

 

「わらしはよっぱらっていやしないのれすよ。だいたいれすね、わらしはおーでぃんのクソジジイのおつきをしてるころから、おさけにつきあっていたりしててれすね。……だんだん、おもいだしてきた。あのジジイ、わらしがたっくさんくろうしてサポートしてあげたのに、やれ、おねえちゃんだ! やれ、さけだ! やれ、おっぱいだって! あほみたいなことをたびさきでいうんれすよ。もうろくしてんじゃかってはなしれすよ! ヴァルハラのほかのぶしょのひとたちからはクソジジイのかいごヴァルキリーだなんていわれててれすね、やすいおきゅうきんでジジイのみのまわりのせわしてたんれすよ? そのせいれすよ! そのせいでかれしはできないし、かれしはできないし、かれしはできないんれすよぉぉぉぉ! うおおおおおおおおおんっ!」

 

 そう言って大号泣し始めるロスヴァイセに、皆どう接するべきか迷う中、アザゼルが頭をポリポリかきながら言う。

 

「わかったわかった。お前の愚痴に付き合ってやるから、話して見な」

 

 そう言うとロスヴァイセはパァッと明るい表情になった。

 

「ほんとうれすか? アザゼルせんせー、いがいにいいところあるじゃないれすか。てんいんさーん、おさけ、じゅっぽんついかでー」

 

「まだ飲むのか……」

 

「お前等、さっさと食って他に行け。ここは俺が受け持つからよ」

 

 アザゼルのため息混じりの言葉に従い、手早く食事を済ませて店を出る。退店直前に聞こえたロスヴァイセの爆笑には聞こえないふりをした。

 

「ロスヴァイセちゃん、すごいことになってたな」

 

「ああ、あれは相当酒癖が悪いぞ」

 

「前職もそうとう大変だったらしいからな。今もアザゼル相手に仕事してるし、思うところはあったんだろ」

 

 ロスヴァイセの醜態に引いていた松田と元浜を見て天魔がフォローする。桐生が頷いて同意を示す後ろで九重が一誠に訊く。

 

「お主達の眷属は大変なのが多いのか?」

 

「……ちょ、ちょっとな」

 

 一誠が頬を引きつらせつつ答えたことは無視して一行は渡月橋へ。橋に差し掛かる頃、桐生が口を開いた。

 

「知ってる? 渡月橋って渡り切るまで後ろを振り返っちゃいけないらしいわよ」

 

「なんでですか?」

 

 聞いたのはアーシア。それを見て天魔は顎に手を当てながら解説する。

 

「それはな、アーシア。渡月橋を渡ってる時に振り返ると授かった知恵が全て返ってしまうらしい」

 

「そこのエロ三人組は振り返ったら終わりね。真の救いようのない馬鹿になってしまうわ」

 

「「「うるせえよ!」」」

 

 桐生の補足に当の三人が異口同音に返す。それを相手にすることなく桐生はアーシアに追加の情報を与える。

 

「あと、もう一つ。振り返ると、男女が分かれるってい言い伝えもあるそうね。まあ、こちらはジンクスに近いって話しだけど」

 

「絶対に振り返りませんから!」

 

 桐生の説明が終わる前にアーシアが天魔の腕にしがみつく。

 

「さっさと渡ってしまった方が良さそうだな」

 

 いつにない力を発揮するアーシアに苦笑しつつもアーシアがつまずかないよう注意を払いつつ歩を進める。

 

「気にせんでいいと思うんじゃが……。男女の話は噂にすぎんのじゃ」

 

 九重もそう呟くが、アーシアは頑として振り返らないまま渡月橋を渡りきった。天魔が緊張を解いて大きく息をするアーシアを労うように頭を撫でていると、どこからともなく流れてきた霧が周囲を包みこんでいった。

 

 

 

 気付けば周囲から人の気配は消えていた。足元に立ち込める霧を見て、アーシアが驚く。

 

「間違いありません。私がディオドラさんに捕まったとき神殿の奥で私はこの霧に包まれてあの装置に囚われたんです」

 

「ああ、間違いない。あのとき俺の腕に絡みついてきた感覚にそっくりだ」

 

 アーシアに天魔も同意し、この霧の正体を察する。

 

 神滅具「絶霧」―結界系神器の最上位。

 

 何者かに囚われたことが明らかな状況に警戒していると上空から声がかかる。

 

「お前等、無事か?」

 

 声の主はアザゼル。上空から降り立ったアザゼルは周囲を見回しながら続ける。

 

「俺達以外の存在はこの周辺からキレイさっぱり消えちまってる。俺達だけ別空間に強制的に転移させられて閉じ込められたと思って間違いないだろう。……この様子だと、渡月橋周辺と全く同じ風景をトレースして作り出した別空間に転移させたのか?」

 

 その気配を察していても実際に行われていたことを明言され、天魔は歯噛みする。何の対応策も講じる事もできずに囚われたのだ。

 

「ここを形作っているのは悪魔の作るゲームフィールドの空間と同じものですか?」

 

「ああ、三大勢力の技術は流れているだろうからな。これはゲームフィールドの作り方を応用したんだろう。で、霧の力でこのトレースフィールドに転移させたというわけだ。「絶霧」の霧は包み込んだものを他の場所に転移させることができるからな。……ほとんどアクションなしで俺と天魔にリアスの眷属を全員転移させるとは……。神滅具はこれだから怖いもんだぜ」

 

 アザゼルの言葉に一誠達が呻く。

 

 その横で、九重が震える声で呟くように告げる。

 

「……亡くなった母上の護衛が死ぬ間際に口にしておった。気が付いた時には霧に包まれていた、と」

 

 その言葉に天魔含め全員が察する。

 

 霧の発生源がこの京都で起きていている事件の黒幕に近いことを。

 

 周囲を見回す一行の前に薄く霧が立ち込め、そこから人影がいくつも浮かび上がる。

 

「初めまして、アザゼル総督、赤龍帝。そして、久しぶりだ、天魔」

 

 挨拶したのは学生服を着た黒髪の青年だった。

 

 学生服の上から漢服を羽織っており、肩に槍を乗せている。その槍から感じるゾッとするような気配に一誠達が僅かに震えるのを庇うように前に出る。

 

「お前が自ら出てくるのかよ、曹操」

 

「知り合いか?」

 

「アルの脱退でちょっとな。奴は三国志で有名な曹操の子孫―英雄派筆頭にして聖槍の担い手。あいつの槍には触れるな。あの槍の名は「黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)」最強の神滅具にして聖遺物(レリック)。神を貫く絶対の神器。神滅具の代名詞になった現物。魔なるものが触れればあっという間に消滅する」

 

 天魔の言葉に一誠達の視線が槍へと集まる。

 

「あれが天界のセラフの方々恐れている聖槍……!」

 

「私も幼い頃から教え込まれたよ。イエスを貫いた槍。イエスの血で濡れた槍。神を貫ける絶対の槍っ!」

 

 イリナが震える声で呟くのに、ゼノヴィアが低い声で続く。

 

 そんな二人にアザゼルが警告する。

 

「信仰のある者はあの槍をあまり強く見つめるな。心を持っていかれるぞ。さっき天魔も言ったが、聖十字架、聖杯、聖骸布、聖釘と並ぶ聖遺物の一つでもあるからな」

 

 いつの間にか天魔はアーシアと曹操の間に立ち聖槍が視界に入らないようにしていた。

 

 九重が憤怒の表情で曹操へと叫ぶ。

 

「曹操! 一つ訊くぞ!」

 

「これはこれは小さい姫君。なんでしょう? この私ごときでよろしければ、なんなりとお答えしましょう」

 

 曹操の声音は平然としているが、あきらかに何かを知っているふうな口調だ。

 

「母上をさらったのはお主達か!」

 

「左様で」

 

「母上をどうするつもりじゃ!」

 

「お母上には我々の実験にお付き合いしていただくのですよ」

 

「実験? お主達、何を考えておる?」

 

「スポンサーの要望を叶えるため、というのが建前かな」

 

 それを聞いて九重は歯を剥き出しにして曹操を睨む。目には薄っすらと涙を溜めていた。

 

「スポンサー、ね。マジに建前だな」

 

「はは、そうだった。キミは全部知ってたんだったな。なに、隠れる必要もなくなったもので実験の前に挨拶と共に少し手合わせをしておこうと思ってね。俺もアザゼル提督と噂の赤龍帝殿にお会いしたかったのさ」

 

 天魔がぼやくのに曹操は笑いながら答える。

 

 それを聞いて、アザゼルは手元に光の槍を出現させる。

 

「わかりやすくてけっこう。九尾の御大将を返してもらおうか。こちとら妖怪との協力提携を成功させたいんでね」

 

 アザゼルの構えを見て、一誠達も戦闘の態勢を整える。一誠は籠手を出現させると禁手のカウントを始め、アスカロンをゼノヴィアに投げ渡す。普段使っているデュランダルは天界からの要請で一時預けており、ゼノヴィアの武器は祐斗の創った短剣だけだった。そのためアスカロンが必要だったのだ。

 

「そういえば、ロスヴァイセさんは?」

 

「あいつもこちらに転移しているが、店で酔いつぶれて寝てる。いちおう強固な結界をあいつに張っておいたからそうそう酷いことにならんだろう」

 

「そうか……」

 

 アザゼルの言葉に天魔は口元を引くつかせる。

 

 天魔が禁手の鎧を纏うのを見て相手のへの警戒度を上げながら構えるが、曹操達は一向に構えない。

 

 曹操の横に少年が並び、天魔が顔を顰める。その理由を問う前に曹操が少年へと話しかけた。

 

「レオナルド、悪魔用のアンチモンスターを頼む」

 

 少年が曹操の要請に頷くと、その影が広がっていく。それが不自然に盛り上がると、地面から異形の怪物が次々に姿を表した。

 

 二足で断つ黒い肌の怪物は全身の各所が分厚い肉体で覆われ、鋭い爪と牙が剥き出しとなっていた。

 

「大盤振る舞いが過ぎるぜ、曹操」

 

「そう言うなよ、天魔。この場にいる者達を相手にするのだからこれぐらいはしないとな。この子の持つ神器は神滅具の一つ―「魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)」。そこの聖魔剣の木場祐斗の神器「魔剣創造」のようにいかなる魔獣をも作り出す力だ。成熟すれば映画にも出るような巨大な化け物を創れたりするんだが、彼はまだまだそこまでの生産能力はないが、優れている面もある。それは相手の弱点を突く魔物を創り出すという点に特化しているということ。今創り出したのは対悪魔のアンチモンスターだ」

 

 曹操が手を店の一つに向けると、怪物の一匹が口を大きく開けると光を吐き出した。

 

 光線が直撃すると店が吹き飛び、大爆発を起こした。

 

「曹操、貴様! 各陣営の主要機関に刺客を送ってきたのは俺達のアンチモンスターを創り出すデータをそろえるためか!」

 

「半分正解かな。送り込んだ神器所有者と共に黒い兵隊もいただろう?」

 

 アザゼルの言葉に曹操は笑いながら答える。

 

「あれはこの子が創った魔物だ。あれを通じて、各陣営、天使、堕天使、悪魔、ドラゴン、各神話の神々の攻撃をあえて受け続けた。雑魚一掃のために強力な攻撃も食らったが、おかげでこの子の神器にとって、有益な情報を得られた」

 

「あの黒い怪人でデータを収集していたのか!」

 

「禁手使いを増やしつつ、アンチモンスターの構築もおこなった。おかげで悪魔、天使、ドラゴン等、メジャーな存在のアンチモンスターは創れるようになった。悪魔のアンチモンスターが最大で放てる光は中級天使の光力に匹敵する」

 

 憎々しげに曹操を見るアザゼルだが一転して笑みを浮かべる。

 

「だが、曹操。神殺しの魔物だけは創りさせていないようだな?」

 

「……」

 

 アザゼルの一言に曹操は反論しなかった。

 

「どうしてわかったんですか?」

 

 一誠が訊くとアザゼルはにやけながら答える。

 

「やれるならとっくにやってる。こうやって俺達に差し向けてくるぐらいはな。各陣営に同時攻撃ができた連中がそれを試さないわけがない。それに各神話の神が殺されたら、この世界に影響が出てもおかしくないものな。まだ。神殺しの魔物は生み出せていない。これがわかっただけでも収穫はデカい」

 

 曹操は槍の切っ先をこちらに向けた。

 

「神はこの槍で屠るさ。さ、戦闘だ。始めよう」

 

 それが開戦の言葉となった。




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