変態の双子の兄弟として   作:篠白 春夏秋冬

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Life.69 霧の中で

 曹操が槍先を天魔達へ向けるのを合図に異形の怪物が向かっていく。

 

 それに対して

 

「とりあえず、初手だ」

 

 そう言いながら天魔の放った魔法が怪物を灰燼へと帰した。一撃で半数近くを屠った天魔だったが、残った怪物の数を見て顔をしかめる。

 

「思ったより残った……いや、守られたというべきか」

 

 見れば後方の怪物の周囲には霧がまとわりついていた。どうやら霧が防護壁の役割を担ったらしい。

 

「まさか簡易的とはいえ俺の霧を粉砕してこれほどの数を屠るとは……白龍皇は伊達ではないな」

 

 メガネをかけた男が冷や汗を垂らす。セリフからして「絶霧」の所有者と思われる。霧が怪物の身体を這い上がり鎧のようになるのを見て天魔は舌打ちする。

 

「曹操、お前は俺がやらしてもらおうか!」

 

 アザゼルは龍玉―ファーブニルの宝玉を取り出し素早く人工神器の黄金の鎧を身に纏うと、十二枚の黒い翼を展開して高速で曹操に向かっていく。

 

「これは光栄の極み! 聖書に記されし、かの堕天使総督が俺と戦ってくれるとは!」

 

 曹操は不敵な笑みを浮かべ、槍を構える。先端が開き、光り輝く金色のオーラが刃を作り上げると、それでアザゼルの光の槍を受け止めた。

 

 力の衝突により生まれた波動が桂川の水を巻き上げ雨のように降り注ぐのを尻目に、アザゼルと曹操は撃ち合いながら川の下流へと向かっていった。

 

 それを見送りながら天魔が怪物の放つ光を防御していると、カウントを進めていた一誠が声を上げる。

 

「ゼノヴィア! お前はアーシアと九重の護衛! それと聖なるオーラを飛ばす攻撃でこちらに近づく敵を倒してくれ!」

 

「了解だ!」

 

 一誠の指示に従いゼノヴィアが後ろに下がる。

 

 迷いながらでも指示を出す一誠に天魔が笑う中、指示は続く。

 

「木場! お前、光を食う魔剣を創れたよな!」

 

「え? うん。そうか!」

 

 一誠の確認の意図を一拍遅れて理解し、祐斗が闇の刃の剣を複数創り出す。それを投げながら祐斗が剣について説明する。

 

「その剣は普段、柄のみだ! 闇の刀身を出したいときは剣に魔力を送ってくれ!」

 

「ゼノヴィア、危なくなったらそいつを盾代わりに光を吸え! アーシアも不慣れかもしれないが、ソイツを持っているんだ! ないよりマシだ!」

 

「やるな、イッセー!」

 

「は、はい!」

 

 それぞれ闇の剣の柄を持ったのを確認して、一誠はアスカロンが収まっていた箇所に闇の剣の柄をはめ込む。籠手から闇の盾が生成出来た事を確認して今度はイリナに振り返る。

 

「イリナ! 悪いがゼノヴィアの代わりに前線頼む! 天使のお前なら光は弱点じゃないよな?」

 

「弱点じゃないってだけでダメージは受けるんだけど、悪魔ほどの傷は貰わないわ。解った! 私、やってみるよ! ミカエル様のAだもん!」

 

 イリナが応じて空中から撹乱し、隙を見つけて怪物に攻撃する。霧が剥がれた瞬間に天魔がトドメを刺し次々に怪物が減っていく。

 

 一誠も「僧侶」にプロモーションをして魔力を撃ち出し、レオナルドの生産能力に勝り始めた。

 

 不利を悟って英雄派の構成員が一誠へと迫るが、女性であったために天魔は見逃し、前方へと集中する。

 

 案の定、奇襲は失敗していつもの女性殺しのコンボにハマり、構成員は全裸で近場の家屋に逃げ込む事になった。

 

「さ、最低の技じゃな。こんなに酷い技を見たのは生まれて初めてじゃぞ……」

 

 九重の言葉に一誠は僅かに傷つく。自業自得なので誰からのフォローも入らなかった。

 

 構成員が逃げ込んだ家屋を尻目に優男が頷いた。

 

「やはり、女では赤龍帝に勝てないか。恥辱にまみれても戦い抜く鋼の精神が必要になるけど……若い女性では中々厳しいね。流石だよ、おっぱいドラゴン。噂の乳技を見させてもらった。男には通じないけどね」

 

「誰が男にやるもんかよ!」

 

「皆も気をつけて欲しい。彼は赤龍帝。歴代で最も才能がなく、力も足りないが、その強大な力に溺れず、使いこなそうとする危険な赤龍帝だよ。強大な力を持ちながら、それを過信しない者ほど、恐ろしいものはないね。あまり手を抜かないように」

 

「前半が無けりゃただの高評価なんだけどなぁ」

 

 天魔はため息混じりに魔法を放ち、怪物を消していく。レオナルドにも放つがそれは厳重にガードされ、届かなかった。

 

「さて、僕もやろうかな」

 

 優男が一歩前に出て、腰に複数携えていた鞘から剣を解き放つ。

 

「初めまして、グレモリー眷属。僕は英雄ジグルドの末裔、ジーク。仲間は「ジークフリート」と呼ぶけど、ま、そちらも好きなように呼んでくれてかまわないよ」

 

 優男―ジークフリートの顔をずっと怪訝そうに見ていたゼノヴィアが、何か得心したようだった。

 

「……どこかで見覚えがあると思っていたが、やはり、そうなのか?」

 

 ゼノヴィアの言葉にイリナが頷く。

 

「ええ、だと思うわ。あの腰に帯刀している複数の魔剣から考えて絶対にそう」

 

「どうした、二人共? あのホワイト木場みたいなイケメンに覚えがあるのか?」

 

「ホワイトって……酷いよ、イッセー君」

 

 嘆く祐斗に構わず、ゼノヴィアが答えた。

 

「あの男は悪魔祓い―私とイリナの元同胞だ。カトリック、プロテスタント、正教会を含めて、トップクラスの戦士だ。「魔帝(カオスエッジジーク)」。白髪なのはフリードと同じ戦士育成機関の出だからだろう。あそこ出身の戦士は皆白髪だ。何かの実験の副作用らしいが……」

 

「ジークさん! あなた、教会を、天界を裏切ったの!?」

 

「裏切ったってことになるのかな。現在、「禍の団」に所属しているからね」

 

 イリナの叫びにジークは愉快そうに返す。

 

 それを聞いて、イリナは眦を釣り上げた。

 

「……なんてことを! 教会を裏切って悪の組織に身を置くなんて万死に値しちゃうわ!」

 

「……少し耳が痛いな」

 

 イリナの怒りにゼノヴィアが頬を掻く。自暴自棄気味だったとはいえ教会を裏切ったのには変わらないからだ。

 

「いいじゃないか。僕がいなくなったところで教会にはまだ最強の戦士が残っているよ。あの人だけで僕とデュランダル使いのゼノヴィアの分も十分に補えるだろうし。案外、あの人は「御使い」のジョーカー候補なんじゃないかな? と、紹介も終わったところで剣士同士やろうじゃないか。デュランダルのゼノヴィア、天使長ミカエルのA紫藤イリナ、そして聖魔剣の木場祐斗」

 

 剣士三人に宣戦布告をしつつジークは剣にオーラを纏わせる。不気味なオーラを放つジークの剣に祐斗が切り込むが、それはあっさりと受け止められた。

 

「魔帝剣グラム―魔剣最強のこの剣なら、聖魔剣を難なく受け止められる」

 

 ジークと祐斗は鍔迫り合うと一度離れ、体勢を立て直して高速での切り合いを始める。しかし、祐斗の動きは読まれており、徐々に押されていく。

 

「うちの組織では、今は派閥こそ違えど「聖王剣のアルトリア」、「魔帝剣のジークフリート」として並び称されている。聖魔剣の木場祐斗では相手にならない」

 

 英雄派の一人が言った言葉に一誠が瞠目する。

 

 スコルを切り刻んでいたアルトリアと同格という言葉に焦燥をにじませていると、ゼノヴィアが飛び出した。

 

「ゼノヴィア!」

 

「木場! おまえ一人では無理だ! 悔しいかもしれないが、私も加勢する!」

 

「っ。ありがとう!」

 

 祐斗はこの場での剣士としてのこだわりを捨て、ゼノヴィアとの同時攻撃に乗る。

 

「私も!」

 

 そこにイリナも参戦し、三対一のバトルとなった。

 

 ゼノヴィアの二刀、祐斗の聖魔剣、イリナの光の剣による連続攻撃をジークは剣一本で捌いていく。

 

 連携して隙を作り、イリナが切り込む。防いだところへのゼノヴィアの攻撃には二本目を抜いて対応し、最後の祐斗には()()()を抜き放った。

 

 ジークは剣を手放した訳では無い。両手に剣を握ったまま背中から第三の腕を生やし、その腕で剣を抜いたのだ。

 

 第三の腕は銀の鱗に包まれており、想像を超える事象に一誠達が驚く。

 

「この腕かい? これは「龍の手(トゥワイス・クリティカル)」さ。ありふれた神器のひとつだけれど、僕のはちょいと特別でね。亜種だよ。ドラゴンの腕みたいなものが背中から生えてきたんだ」

 

 「龍の手」は本来、「赤龍帝の籠手」のように籠手が発現するものである。しかし、ジークはこれを第三の腕を生み出す形で発現したのだ。

 

 三本の腕それぞれに剣を持っての三刀流が本来の形と察して祐斗が臍を噛む。

 

「……同じ神器使い。けれど、あちらは剣の特性どころか、その神器の能力すら、まだ出していない、か」

 

「ついでに言うなら、禁手にもなっていないけどね」

 

 ジークの言葉に一誠が歯噛みする。

 

 剣士三人の攻撃を全力すら出さずに受け切る実力の高さに背筋を寒くさせていると、アザゼルと曹操が戻ってきた。

 

 下流は焦土と化しており、景観は見るまでもなかった。

 

 アザゼルの鎧と翼がダメージを残しているのに対し、服のあちこちが敗れているだけの曹操に一誠が驚く。

 

「……心配するな、イッセー。お互い本気じゃない。ちょっとした小競り合いだよ」

 

 アザゼルのいう小競り合いで景観が変わったことに一誠は絶句する。曹操は首をコキコキ鳴らしながら言う。

 

「いい眷属悪魔の集団だ。これが悪魔の若手でも有名なリアス・グレモリー眷属か。天魔がいるとはいえ、もう少し、楽に戦えると思ったんだが、意外にやってくれる。俺の理論が正しければ、このバカげた力を有すグレモリー眷属を集めたのは兵藤一誠、キミの力だ。身体機能と魔力の才能は無いかもしれないが、ドラゴンの持つ他者を惹きつける才能は歴代でもトップクラスだと思うけどね。ほら、ドラゴンは力を集めるっていうだろう? 君の場合は良くも悪くもその辺が輝いていたってことだよ。連続する名うての存在の襲来、各龍王との邂逅、そして多くに支持される「おっぱいドラゴン」が良い例だ。そして、「王」なき眷属をこの状況で眷属の誰より冷静に対処できた。まだ稚拙で穴だらけともいえるえはいだが……手慣れたら怖くなるかもしれない」

 

 曹操は彼の評価に目を見張る一誠へと槍先を向ける。

 

「だから、俺達は旧魔王派のように油断はしないつもりだ。将来、君は歴代の中でも最も危険な赤龍帝になると確信している。そして、眷属も同様。今のうちに摘むか、もしくは解析用のデータを集めておきたいものだ」

 

 自身を俯瞰して見ている曹操に一誠は生唾を飲み込む。

 

「一つ訊きたい。貴様ら英雄派が動く理由はなんだ?」

 

 アザゼルの問いに曹操が目を細めながら答える。

 

「堕天使の総督殿。意外に俺達の活動理由はシンプルだ「人間」としてどこまでやれるのか、知りたい。そこに挑戦したいんだ。それに悪魔、ドラゴン、堕天使、その他諸々、超常の存在を倒すのはいつだって人間だった。いや、人間でなければならない」

 

「英雄になるつもりか? って、英雄の子孫だったな」

 

 曹操は人差し指を青空に真っ直ぐ突き立てた。

 

「よわっちい人間のささやかな挑戦だ。蒼天のもと、人間のままどこまでいけるか、やってみたくなただけさ」

 

「……イッセー。油断するなよ。こいつは旧魔王派、シャルバ以上の強敵だ。お前を知ろうとする者はこれから先、全て強敵だと思え。考えやすくするなら、天魔が敵に回るようなもんだ」

 

 アザゼルの言葉に一誠は驚きつつ、僅かに震える。

 

 天魔はその力の底をみせたことはない。鍛錬にあたってその力の特性程度は解っているが、ロキとの戦いでも途中から転移してしまったためその根底まで見られたような気はしなかった。

 

 アザゼルと曹操が戻ったことで仕切り直しとなり、互いに構える。今度は先程まで動かなかった英雄派も構えを見せ、そちらを警戒して前衛に入らなかった天魔も構えた。

 

「あら?」

 

 そのとき、両者の間に魔方陣が出現する。それを見て声を上げた天魔に問いただす前に、魔方陣からは魔法使いの少女が現れた。

 

 少女は天魔達の方を向くと深々と頭を下げる。

 

「はじめまして。私はルフェイ。ルフェイ・ペンドラゴンです。「逸れ者」に属する魔法使いです。以後、お見知りおきを」

 

 ルフェイの自己紹介に全員の視線が天魔へと集まる。

 

「えっと、名前で察したと思うが、アルの妹だ。それとイッセー」

 

「え? 俺?」

 

 突然の指名に一誠が自分を指す。それに頷いた天魔は悲しい目をしていた。

 

「あれだ、ルフェイは「乳龍帝おっぱいドラゴン」のファンなんだ……なんか、ファンサでもしてもらえると、助かる」

 

「さ、差し支えなければ握手などしていただけると……」

 

 キラキラした目のルフェイのリクエストに応じ、一誠は握手をする。無邪気に喜ぶルフェイを微笑ましそうにしながらも死んだ目で見ていた。

 

「ヴァーリのところの者か。それで、ここに来た理由は?」

 

 曹操の問いにルフェイは屈託のない満面の笑みで返した。

 

「はい! ヴァーリ様からの伝言をお伝え致します! 「邪魔だけはするなと言ったはずだ」だそうです♪ うちのチームに監視者を送った罰ですよ~」

 

 ルフェイが可愛らしく告げると大地を揺り動かす程の振動が全員を襲う。

 

 一誠達がなんとか踏ん張っていると、地を割り雄叫びを上げながら巨人が現れた。

 

 十メートルはあろうかという無機質な材質の巨人を見上げ、天魔が呟く。

 

「ゴグマゴグ、見つかったのか」

 

「え、何お前知ってんの、あれ!?」

 

 感心した様子の天魔に一誠が問いかける。

 

「元々は次元の狭間に放棄されたゴーレム的なもので、古の神が量産した破壊兵器とかいう話だ。全部機能停止にされていたはずなんだが、オーフィスが前に動きそうな奴を感知したとか言ってて、じゃあ探してみるかってなったらしくてな」

 

「何やってんだよ」

 

「今や主流派があいつ等なせいで、監視はほぼなくてな。オーフィスが遊びたがってるらしくて」

 

 天魔はため息を吐きながら顔を覆う。

 

 一誠は視線を反らしながらアザゼルへと話しかけた。

 

「しかし、先生、次元の狭間ってあんなのやグレートレッドがいるんですね……」

 

「次元の狭間は、ああいう処分に困ったものが行き着く先でもある。グレートレッドも次元の狭間を泳ぐのが好きなだけで実害はないぞ。各勢力でもグレートレッドはブラックリストや各種ランキングに入ることは無い。あれは特例だ。つつかず自由に泳がせておけばいいものを……」

 

 アザゼルが呟く中、ゴグマゴグは英雄派へと拳を降らせる。

 

 一撃で渡月橋が粉砕され、大量の怪物が吹き飛ばされていく。しかし、英雄派は天魔達とは逆の岸に全員退避していた。

 

「ハハハ! ヴァーリはお冠か! どうやら監視していたのがバレたようだ!」

 

 曹操は愉快に高笑いしながら、槍をゴグマゴグに向ける。

 

「伸びろっ!」

 

 槍先が伸び、ゴグマゴグを突き転ばす。

 

 地響きとともに土砂が巻き上がり、一誠達がたたらを踏む。

 

 英雄派が退避した向こう岸にどう攻撃を仕掛けようかと考えていると、土煙の中からロスヴァイセが現れた。

 

「……ういー。ヒトが気分良く寝ているところにドッカン! バッタン! チュドーンって! うるさいんれすよ!」

 

 どうやらまだ酔っているらしく足元がおぼつかない様子だ。

 

 酔っ払いの登場に英雄派の面々も間の抜けた表情となっていた。だが、相手がグレモリー眷属の者と認識するやいなや、攻撃の態勢を取り出していた。

 

 酔った状態ではロスヴァイセが危険と判断し、一誠達が飛び出そうとしたのだが

 

「なんれすか? やるんれすか? いいれすよ。元オーディンのクソジジイの護衛ヴァルキリーの実力、見せてやろうじゃないれすかっ!」

 

 ロスヴァイセは大きく叫ぶと魔法陣を次々に展開していく。その数は数十にのぼり、天魔の発動した魔法の規模を大きく超えた。

 

「全属性、全精霊、全神霊を用いた私の北欧式フルバースト魔法をくらえぇぇぇぇええええッ!」

 

 魔法陣から縦横無尽に魔法が発動され、周囲の風景を次々に吹き飛ばしていく。一応敵味方の区別は出来ているらしく、天魔達を避けて魔法が撒き散らされていく。

 

 英雄派にも降り注ぐがそれは霧使いに防がれた。

 

「少々、乱入が多すぎたか。が、祭りの始まりとしては上々だ。アザゼル総督!」

 

 霧の中から曹操が楽しそうに宣言する。

 

「我々は今夜この京都という特異な力場と九尾の御大将を使い、二条城で一つ大きな実験をする! 是非とも制止するために我らの祭りに参加してくれ!」

 

 言い終わるなり霧が濃くなっていく。足下に漂っていた霧が胸の位置、そして顔の位置にまで迫ってくる。

 

 そして視界が全部、霧に包まれた。一寸先も見えないほどだ。

 

「お前等、空間が元に戻るぞ! 武装を解除しておけ!」

 

 アザゼルの言葉に従い全員が武装を解いていく。

 

 霧が晴れると周囲は観光客であふれる渡月橋に戻っていた。

 

 曹操をはじめとする英雄派やルフェイ、ゴグマゴグは姿を消しており、周囲に気配もない。

 

 深呼吸してスイッチを切るように意識を切り替えた天魔の横でアザゼルは苛立ちも露わに電柱を横殴りにする。

 

「……ふざけたことを言いやがって……ッ! 京都で実験だと……? 舐めるなよ、若造が!」

 

「……母上。母上は何もしてないのに……どうして……」

 

 九重が悄然と身体を震わせるのに、有効な慰め方などなく頭を撫でるに留まる。

 

 勘違いの襲撃に端を発した騒動はクライマックスを迎えようとしていた。




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