遠ざかるロスヴァイセとヘラクレスを見送ると曹操が愉快そうに笑った。
「いいだろ? 禁手のバーゲンセールってやつは。人間もこれぐらいインフレしないと超常の存在相手に戦えないんでね」
曹操は槍をくるくると回しながら一誠からゆっくりと距離を取る。一見隙だらけだが、先程の最小限でドラゴンショットを弾いた動きから、迂闊な攻撃はカウンターをもらうだけだと判断して観察に留める。
「お前も奴らみたいにここで禁手になるのか?」
一誠の問いに曹操は首を横に振った。
「いやいや。そこまでしなくてもキミ達は倒せる。だが、今日は十分に赤龍帝を堪能するつもりだよ」
「……こいつはまた舐められたもんだ。でも、俺をバカにしているようには思えないな」
「ああ、どうやればキミの力を引き出して戦いを満足できるか考えているところだ」
そこまで言って曹操は指を一本立てた。
「仲間がキミを倒せるある説を唱えた。時間を早める能力の神器でキミに攻撃する。禁手の制限時間がどんどん早まっていき、満足に戦えないまま鎧は解除されてしまう。仲間が持つ能力にそういう制限時間のあるものに効果がある神器があるのさ。時間の経過を一気に加速させて、浪費させることができる。ただ、それだけの能力だ。直接的な攻撃力も特異な効果もない。ただただ、制限時間を操作できるだけだ。しかし、制限時間のあるキミには決定的な打撃となる。だが、おそらくこれではキミを倒せない」
一誠本人にも有効な手段に聞こえるがあっさりと撤回した曹操を訝しむ。会話の意図が見えないのだ。
「キミは神器を深く知ろうとしている。もし、自ら禁手を解除し、十秒ごとに倍加していく禁手前の神器能力にそれを付加しようとしたら……? 瞬時に倍加していく厄介な存在と化すだろうな。もちろん、禁手状態で食らった攻撃が禁手前の神器にそういう影響を及ぼすかどうかは不透明だ。けれど、神器の深奥に潜るキミなら、その可能性を叶えそうでね」
「何が言いたい?」
「案外、姑息な手よりもストレートな攻撃のほうがキミを無理なく倒せるんじゃないかって話さ。キミはテクニックタイプを注意深く警戒していて、そのタイプでは逆にやりづらいんじゃないかってね」
短い対面で考察を進める曹操に一誠は鎧の中で冷や汗を垂らす。曹操は槍を構え直しながら話を続ける。
「だが、兵藤一誠。キミにも決定的な弱点が二つある。龍殺しと光だ。ドラゴン、悪魔、二つの特性を有するキミは凶悪な分、自然と弱点も多くなってしまうわけだ。俺はこの弱点ってのに注目していてね。この世に無敵の存在なんていないという証明をしてみたいと感じてもいる。ま、この話はここまで。さて、やろうか」
「アーシア! 「女王」にプロモーションだ!」
「はい!」
曹操の宣言に合わせて一誠がプロモーションする。実験にはこだわらず最強の駒に成ると、ブーストをふかして一気に突撃する。
あっさりと躱された瞬間、再びブーストとふかし、急激な方向転換を行う。曹操が再びの突撃を避ける寸前に両手からドラゴンショットを放とうとしたが、右は蹴り上げられ、左は槍で払われてあらぬ方向へと撃ち出される。
悔しがる暇もなく腹に衝撃を感じ見下ろすと、聖槍が深々と刺さっていた。一拍置いて一誠の口から大量の血が吐き出された。
「弱くはないんだけどね。真正面からの戦いだとまだ隙が多いな」
曹操が槍を抜くと、一誠はその場に崩れ落ちる。
激痛に意識が薄れるがアーシアの回復が繋ぎ止め、その間に煙の上がる傷口にフェニックスの涙を使って回復した。
「いま、死にかけたのがわかったかい? 聖槍に貫かれて、キミは消滅しかけたんだ。案外、すんなりと逝くだろう?」
軽く笑って放たれた言葉に一誠は震える。
貫かれた瞬間の力の抜け方と身体から上がっていた煙に消滅の可能性は事実だったと思い知ったのだ。
「よく覚えておくといい。いまのが聖槍だ。キミがどんなに強くなってもこの攻撃だけは克服できない。悪魔だからね。たとえ天魔やヴァーリであろうとも悪魔である限り聖槍のダメージは絶対だ」
曹操が話す内に一誠の震えは止まり、再び構える。それを見て曹操は意外そうな顔をした。
「……あらら、ビビんないな。もっと怖がって面白い様をみせてくれると想像していたんだが……」
「あ? 怖いに決まってんだろう? だけどよ、ビビってもいられなくてさ。お前の顔に一発入れないと後で皆に怒られそうなんだよ。赤龍帝やってんのもけっこうキツいんだぞ」
「アハハハハッ!」
一誠の言葉を聞いて曹操は大笑いする。
「いいな、それ。実にいい」
笑い涙を指で拭い、曹操は槍の先端を開いて光の刃を作り出す。
「やろう」
その一言で曹操からのプレッシャーが上がる。
一誠の返答は倍加により高めたドラゴンショットだった。
「ソイツを生身にもらうのはマズいか」
曹操は回避せずに槍を振るい両断する。
ドラゴンショットの後ろから追いかけるように接近してきた一誠が右拳を振り上げる。
「パワーのなかのパワーを感じるよ!」
曹操は嬉々としながら、槍を素早く戻して拳を払おうとするが、一誠は直前でそれを止め、迎撃は空を切る。
一誠はそのまま退いて距離を取りながら左手の力を高め、アスカロンの刃を出現させると波動を繰り出す。
流石に予想外だったのか曹操は避け切ることは出来ず、腕が宙を舞った。
内心でガッツポーズを決めていると、曹操は槍を地面に突き刺し、落ちてくる腕を受け止めた。そのまま腕を小脇に挟むと懐から瓶を取り出し中身を切断面にかける。
そのまま切断面を接着すると何事もなかったかのように腕が機能を取り戻した。
紛れもないフェニックスの涙の効果に愕然としつつも一誠が問い詰める。
「な、なんでお前がそれを!」
「裏のルートで手に入れた。ルートを確保し、金さえ払えば手に入るものさ。フェニックス家の者はこれが俺達に回っているなんて露ほども思っていないだろうけど」
曹操の答えに一誠の心中が義憤に満たされる。彼等の活動で不足しているものを得意げに使っていれば怒りも湧くというものだ。
「……怒りでオーラが増した、か。感情でオーラが上下するのは時と場合では破滅を生むぞ? キミの場合はそれで一度「覇龍」になっているんだから」
一誠が以前の失敗に閉口していると鎧が崩れていく。
「キミが飛び退くとき、いくつか斬った。少し時間差が生じたようだが、ちょっとした槍の攻撃でも赤龍帝の鎧は壊せるようだ」
曹操が語るのを聞きながら鎧の修復は始める。しかし、ドライグ曰く聖槍のオーラの影響で修復には時間がかかるらしい。
「良い攻撃だった。強い強い。こちらもギアをもう少し上げないとダメか」
楽しそうに告げるのに一誠が歯噛みしていると、アーシアの悲鳴混じりの叫び声が聞こえた。
「イリナさん!」
「あら? こちらはまだやってるんだ?」
振り返るとジャンヌが血まみれのイリナを抱えていた。
「ま、赤龍帝だからね。彼等よりはやるんじゃないの?」
続いて現れたジークが六本の腕で抱えていたのは同じく血まみれの祐斗とゼノヴィア。
「これなら俺が赤龍帝とやればよかったぜ」
そう言ってヘラクレスが、やはり血に塗れたロスヴァイセを放り投げる。
仲間の敗北に愕然とする一誠の耳に苦しげな咆哮が届く。
視線を上げるとヴリトラが九尾の狐の九本の尾に縛られ動きを封じられていた。
「悪いな赤龍帝。どうやら、フィナーレだ。強い。強いよ。君達は。悪魔の中でもなかなかのものだ。けど、まだその力では英雄の力を持つ俺達に勝てない。それにな、悪魔や堕天使、ドラゴン、妖怪、人間の敵同士が協力したら怖いだろう? 人間にとって脅威と感じてしまうだろう? なら立ち上がらないとさ。人間が魔王やドラゴンを倒すのはごく自然なことだ。それが俺達英雄派の基本的な行動原理さ。ま、俺やここにいるメンバーにとってみればそれは目的のひとつだけど。おっと」
唐突に曹操がその場を飛び退く。
直後、銀光が飛来し、轟音とともに土砂を巻き上げた。
「っと」「うわっ」
土煙が晴れる前にジークとジャンヌが声を上げ、影が一誠の元まで下がってくる。
気付けば天魔が祐斗達を腕と翼で抱えて隣に立っていた。
「今、俺の仲間を笑ったか?」
返答はない。それに舌打ちを一つして、天魔は優しく祐斗達を下ろすと、降ってきた九重を受け止める。
「アーシア、回復を」
「は、はい!」
回復が始まったのを確認して、下ろした九重と視線を合わせる。
「九重、お母さんに語りかけてやってくれ。何か変化があるかもしれない」
「うむ」
九重が八坂のもとへと駆けていく。英雄派はそれを見逃し、天魔を見ていた。天魔は立ち上がり、視線を向けぬままに一誠へと語りかけた。
「立て、一誠。まだ負けてねえ」
「へえ? この状態をまだ覆せるって?」
天魔に答えたのはジャンヌだった。値踏みするような視線は無視して、天魔は話を続ける。
「まだ生きてる。拳も握れる。お前はまだ戦える。立ち上がるのに時間がかかるってのなら、その時間ぐらいは稼いでやるよ」
天魔は左手を前へと突き出すと力強く唱え始める。
「ペトロ、バシレイオス、ディオニュシウス、聖母マリア。我が声に耳を傾けてくれ」
「へえ」「おいおい、まじかよ」
紡がれる言葉の意味を察して英雄派が驚愕する。
「聖なる刃に宿りしセイントの御名において、俺は解放する。デュランダル!」
亜空間から柄が飛び出し、それを握り込むと一気に引き抜いた。そこにエクスカリバーの鞘はない、素のデュランダルだった。
「バカな! 聖剣使いから悪魔に転生したゼノヴィアや聖魔剣の発現を起こした木場祐斗ならまだしも、元より悪魔のキミが、何故聖剣を!」
ジークが思わずといった様子声を荒げる。元とはいえ教会の戦士だったジークには信じられない光景なのだろう。
そんなジークに天魔はあっさりと返す。
「因子ってやつを集めてな」
「因子だと?」
「ああ、思いついたのは夏休みのゲームを振り返っていたときだ。祐斗がデュランダルを使っているのを見て、バルパーの話を思い出した。因子の後付でも聖剣を扱うことはできるということだ」
「悪魔にも因子が適合出来たと? デュランダル使いの因子の結晶は教会側でも作成できていないはず。それを何故」
「いや。そもそも、因子は受け取っていない」
「では、どうやって」
「もう少し話そうか。因子について考える内にそもそも因子とはどこにあるのかを考えた。そこで元になったのが、祐斗の同士の魂が解き放たれた瞬間だ。バルパーの回収した因子に魂が付随するのなら、その逆もあるのではないか、とな」
「魂―そんな当てがあったと?」
「あるんだな、これが。それも身近なところに」
そう言って天魔は親指で後ろを指す。
背後にはアーシア達がいるが、指しているのはそうではない。
「そうか! 白龍皇の光翼! 「覇龍」の際に憎悪を撒くという歴代所有者の残留思念か!」
「その通り。すでにあらかた掌握していてな。それを解析にかけ、因子をかき集めて白龍皇の光翼に馴染ませた。故に、禁手の鎧で腕を覆っていれば問題なくデュランダルを振るえる。エクスカリバーはまだだから鞘付きのデュランダルは無理だけどな」
手の中でデュランダルを軽く回し、再び構える。空いていた右手の籠手から刃が生え、それが変形しながら手の中に収まる。
それを見て曹操が呟いた。
「もう、なんだか呆れるしかないな」
禍々しいオーラを放つそれはジークの持つグラムと瓜二つだった。
「グラム・レプリカ。ロキの一件でオーディンのジジイにもらった報酬だ。俺に扱えるように特殊儀礼のおまけ付きでな」
天魔は相反するオーラを放つ剣二振りを構え、宣言する。
「さぁ、相手になってもらうぜ、英雄派。九尾の御大将の解放に邪魔なんでな」
一気に加速するとジークの正面からグラム・レプリカを大上段から振り下ろす。禁手の四本の内二本で受け止めたジークだったが、漏れ出るオーラを肌で感じて目を剥いた。
「ジャンヌ! ヘラクレス!」
鬼気迫る様子のジークに二人が割って入る。
ジャンヌの聖剣を受け止め、ヘラクレスの拳を身体をひねって躱すと一度距離を取った。
「レプリカとはいえ、龍殺しは健在か……」
「そうだ、赤龍帝の籠手と同化したアスカロン同様、標的にならないのは所有者たる俺だけで「龍の手」はこいつの適応範囲に入る。光が強ければ影が濃くなるように、禁手の影響で高まったその龍の力はこいつの力をより強く受ける」
天魔の説明を受けてジークは禁手を解いてグラムとバルムンク、光の剣の三刀流になる。そのまま無言でジャンヌ、ヘラクレスと連携しながら攻撃を仕掛けるが、当然のように対応され歯噛みする。
「剣は本業ではないはずなのにこれか……曹操と打ち合ったのは伊達ではないね」
「ジークはともかく、ほか二人は禁手が集団戦に向いていないからな。お前の禁手もグラムで封じた。相性で補うのはお前達の十八番だろ?」
頬を釣り上げて煽る天魔だったが、ジーク達は不用意に手を出すことはなく仕切り直す。その間を割くように赤い輝きが戦場を照らした。
「なんだ?」
視線を向けると一誠が懐から宝玉を取り出していた。そこから映し出された何かは徐々に人の形をとり、次々に増えていく。
全員が何が起きているのかの把握に努めていると、人影が喋り始める。
『おっぱい……』
『お、おっぱい』
『おっぱいーん』
『すごい、おっぱい』
『大変なおっぱい……』
人影の発した言葉に天魔の表情が消える。一誠さえも困惑する前で人影は「おっぱい」と連続で呟きながら歩き回り、円形に並んでいく。
「……おっぱいゾンビか?」
異様な光景を前に曹操が呟く。天魔が頬を引きつらせる中、人影は地面へと融けるように沈み、巨大な魔方陣を作り上げた。
完成した魔方陣を前に一誠がヤケクソ気味に叫んだ。
「
叫びに応じ、異様なオーラが巻き起こる。ふと見ると魔方陣に刻まれた紋様には「おっぱい」と書かれ、各所には乳房を模した象形文字が描かれていた。
魔方陣は一層輝き、その中央にリアスが出現する。
「な、何事!? ここはどこ? ほ、本丸御殿……? きょ、京都? あ、あら、イッセーじゃないの? どうしてここにって、私がどうしてこんなところに!? しょ、召喚されたの!? え? え?」
リアスは着替え中だったのか上下下着姿だった。混乱しながら周囲を見回すリアスの声を聞きながら、天魔は破壊された状況でも本丸御殿だと看破したことに感心するという現実逃避をしていた。
そうこうしているとリアスの身体は金色に輝き始め、一誠は僅かに困惑していたがリアスに歩み寄っていく。
「……イッセー?」
「部長、乳をつつかせてください」
次々と起こる不可解な事態に困惑していたリアスだったが、一誠の告白に絶句する。そのまま無言で考え、顔を上げる。
「……よくわからないわ。よくわからないけれど……わかったわ!」
理解を超える現状に天魔の目が死んでいく。
一誠は立ち位置を調整してリアスの乳房が英雄派や天魔の目に入らないようにすると籠手の指部分だけ解除して宣言する。
「いきます!」
一誠の宣言の後、一拍置いてリアスの乳がまばゆい閃光を放ち始める。
「こ、これは……! あ、ああああああああっ!」
あまりの展開にリアスは声を上げると、そのまま天高く昇っていく。輝きはそのままのため周囲を照らしながら昇っていく姿は、状況を何も考えなければ神々しささえあった。
そのままリアスは消え、外されたブラジャーだけがリアスが存在していたことを示す。
呆然としていた全員の中で最も早く気を取り直したのは天魔だった。
「どういうこった、これは!? 何がどうしてこうなった!?」
素早く一誠へ詰め寄り、問い詰める。答えることなくぼうっとしていた一誠だったが、刮目すると叫ぶ。
「どうせ俺も変態ですよぉぉぉおおおおっ!」
「うおっ!」
「いくぜぇぇぇぇええっ! ブーステッド・ギアァァァアアアッ!」
一誠の全身から放たれる極大のオーラに天魔も思わずたじろぐ。そのオーラを見て、アルビオンが誰に聞かせるでもなく話し始めた。
『これは、このオーラは……赤いのの本来のオーラだ……激情に駆られたものでもない、純粋な戦意にあふれていたときの』
「おい、アルビオン?」
天魔は自身の相棒に問いただすも答えはない。誰も答えを得ることのないまま、一誠は英雄派へと視線を向ける。
「さあ、いくぜ! 赤龍帝を! 俺達の力を! グレモリー眷属の底力、とくとぶっ放してやるぜェェッ!」
『
『
『
『
『
『
『
『DDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDD!!!!!!!』
各所の宝玉から壊れたように音声が鳴り響く。
オーラの流れが「女王」へのプロモーションが解除されていることを示していたが、それを気にすることなく一誠は高らかに叫んだ。
「モードチェンジッ! 「
宣言に合わせ、一誠の肩から背中にかけて赤いオーラが集まり、バックパックと両肩に砲門が形成される。同時に脚甲が変形し、形成された爪が地面を掴む。
静かな鳴動が始まり、砲門へと力が集まっていく。
「……おぉ」
「……あれは、マズいな……」
集まっていく力の大きさに天魔が感心したように声を漏らし、曹操が警戒する。
『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!』
「吹っ飛べェェェェェェェッ! ドラゴンブラスタァァァァアアアアッッ!」
極大の一撃が英雄派へと向かっていく。
あまりの勢いに一誠も後退するのをこらえるよう踏ん張ることしか出来ず、天魔がアーシア達の風防を担っていた。
「おもしれぇ、受けてやるぜ、伝説のドラゴンさんよォッ!」
「受けるなッ! 避けろッ!」
曹操は受け切るつもりであったヘラクレスを槍の石突きで吹き飛ばし、自身も避ける。
目標を失った一撃ははるか先で大爆発を引き起こし、空間全体を震わせる程の振動が広がっていく。
爆心地は更地となっており、空間にも歪みが生じる威力を見て、ヘラクレスは驚愕に声を上げる。
「……町が丸ごと吹っ飛びやがった! おい! こんなのを立て続けに放たれたらこの空間が保たんぞ!」
「疑似空間が歪む、か。ここはかなり強固に創られているんだけどね。……なんて威力だよ」
ヘラクレスに続いてジークが目を細める。空気が弛緩しているが、まだ終わっていない。
「曹操ォォォォォオッッ!」
一誠は叫びながら背中の砲門を捨てる。地に落ちる前に霧散していく砲門には見向きもせず、一誠は僅かに前傾姿勢を取った。
「モードチェンジ! 「
一誠はドラゴンの翼を広げ、倍に増えたブーストを噴かせて加速する。
「装甲パージッ!」
追加の宣言に赤龍帝の鎧の各所が吹き飛び、最低限の装甲を纏った姿になる。薄く鋭角なフォルムの鎧は防御を捨て、最大限の加速を生んだ。
速度に慣れていないため方向転換は望むべくもない。
それでも
「てめえに体当りするぐらいなら問題ねぇよなァァァッ!」
『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!』
「速い!」
曹操は迎撃を選択する。一誠の突撃を吐瀉しつつも受け止め、槍を握りしめる。
一方の一誠は曹操の身体を掴んだまま飛び上がった。
「やっと、捕まえたぜ。これなら、文句ねぇだろ?」
「まったく、キミは正面から本当に突っ込んでくるんだなッ! だが、その装甲の薄さで俺の槍は耐えられないだろうッ!? パワーアップ早々悪いが、これで終わりだッ!」
加速のGに息を切らせながらの一誠に曹操は嬉しそうに笑う。曹操の言葉が事実なのは明らかだが、一誠は怯まずに宣言する。
「モードチェンジ! 「
宣言に合わせて一誠の全身が赤いオーラに包まれ、鎧を形成していく。通常の鎧よりも分厚く、大きく、とても空を駆けることは出来ないほどの鎧が形成された。特に両腕は分厚く、普段の五、六倍もありそうな極太の様相をみせていた。
変形に伴って加速は止まり、一誠と曹操は共に空へ投げ出される。そのまま空中で槍を突き出すが、切先は籠手に阻まれ止まる。
「もっと出力を上げないと、この鎧は壊しきれないというのか! 上級悪魔なら瞬殺できる出力なんだぞ!」
「おっぱいドラゴンなめんな、このクソ野郎ォォォォッッ!」
『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!』
驚愕に叫ぶ曹操に一誠は左の拳を撃ち込む。曹操は槍を盾にしたが、拳が当たる瞬間に籠手の肘部分に形成されていた撃鉄が打ち込まれ、膨大なオーラの噴出とともに拳を加速させる。
これに耐えきることは出来ず、曹操は地面へと勢いよく叩きつけられる。一誠は着地すると鎧を通常の形態へと戻し、肩で息をしていた。
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勢い任せにちょっとやりすぎたか……?
一応、天魔のスペックは常に一誠を上回れるイメージで作っています。