変態の双子の兄弟として   作:篠白 春夏秋冬

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Life.8 天魔の策

「セイクリッド・ギアァ!」

 

 一誠が気合を込めて、天魔が静かに、籠手を生み出し、祐斗も剣を抜き放つ。

 

 天魔が小猫に目配せすると、小猫は自身の何倍もの大きさのある長椅子を持ち上げ、フリードに投げつける。

 

「……つぶれて」

 

「わーお! しゃらくせぇ!」

 

「戦車」の特性をもって持ち上げた長椅子が高速でフリードへと飛来するが、フリードは小躍りしつつ光の剣で両断した。

 

「そこだっ」

 

 長椅子を両断するために光の剣が振り切った隙に祐斗が切りかかるが、フリードは光の剣で受け止める。

 

「んー! んー! 邪魔くせぇ! しゃらくせぇ! てめぇら、なんでそんなにウザイのよ! もうチョベリバ! 死語でゴメンね! 死後に許してちょ!」

 

「てめぇが死ね」

 

「おぉっとぉ!」

 

 フリードが祐斗のほうに気をとられた隙に天魔が蹴りを差し込むが、フリードはひらりと身をひるがえす。

 

「かわされたか」

 

「そんな見え透いた不意打ちに当たるかよぉ! 前に当てられたからって調子乗ってんじゃねぇぞぉ!」

 

「まだまだ」

 

 祐斗が再び切りかかり、天魔が隙を縫うように打撃を放つも、急造であるためか、フリードはとらえきれずかわされていく。そうしてしばらく打ち合ったのち、天魔は一誠の横に戻ってきていた。

 

「イッセー、俺と木場でできるだけデカい隙を作る。その隙に突っ込め」

 

「それはいいけど、なんで俺なんだ? 二人がかりならあのまま倒せるんじゃ」

 

「この前撃たれたんだ。一発返したいだろ?」

 

「了解」

 

 天魔が策を弄して決定打を一誠に任せようとしているのにいぶかしむ一誠だったが、答えを聞いて少し笑って構える。それを見て天魔も笑うと魔法陣を展開した。

 

「やるね。かなりキミ強いよ」

 

「アハハ! あんたもやるねぇ! 「騎士」か! 無駄のない動きだぜ! もう最高! そうそう、これこれ。最近、こんなにいいバトルをしてなくてさぁ! ちょいと泣きが入ってたところなんですわ! んー! んー! ぶっ殺す!」

 

「じゃあ、僕も少しだけ本気を出そうかな」

 

 祐斗はフリードとつばぜり合いに持ち込み睨みあう。祐斗の言葉に疑問符を浮かべるフリードだったが、次の瞬間その表情は驚愕に染まる。

 

「喰らえ」

 

「な、なんだよ、こりゃ!」

 

「「光喰剣(ホーリー・イレイザー)」光を食らう闇の剣さ」

 

「て、てめぇも神器持ちか⁉」

 

 祐斗の言葉に応じて剣の柄から闇が沸き上がり、刃を覆う。フリードの剣に対となるような闇の剣となった祐斗の剣は光の剣を侵食し始めた。

 

「いけ! イッセー!」

 

「おう! 神器、動けぇぇぇ!」

 

『Boost!』

 

「だからぁぁ! しゃらくさいんだってばぁ!」

 

 天魔の合図で一誠が神器を起動して走り出す。フリードが気付いて拳銃を向けると一誠が叫ぶ。

 

「プロモーション、「戦車」!」

 

「! プロモーション! お前達「兵士」か⁉って足が⁉何だこりゃ⁉」

 

 一誠に向けて放たれた光の弾丸は「戦車」へと駒の力を変化させた一誠の体にはじかれ、大したダメージも生むことはなかった。それを見るや、泡を喰ってその場から飛びのこうとするフリードだったが、その足を氷が包んでおり、動けなかった。

 

「「戦車」の特性! 有り得ない防御力と! バカげた攻撃力だ!」

 

 一誠の拳がフリードの顔に突き刺さり、吹き飛ばす。その衝撃で足元の氷が砕け、転がったフリードだったが、すぐに口元の血をぬぐいながら立ち上がった。

 

「やっぱ小猫ちゃん程のパワーは出せねーか」

 

「いや、あいつの手をよく見ろ。あいつ、直前で武器を盾にしやがった」

 

 周囲の膳立てがあってもイメージに比べて有効打を与えられなかったことに悔しがる一誠だったが、天魔の言葉にフリードが武器を盾にしたことに気付き、その反射神経に驚いていた。

 

「……んー。……あらら、クソ野郎にはめられたうえ、クズ悪魔に殴られちゃいましたよ。俺ちゃんってば……。……っけんな。ふざけんなよッ‼クソがぁぁぁぁっ! 何、悪魔の分際でチョーシくれてんだよぉぉぉぉぉっ! 殺す! 絶対にだ! ぶっ殺す! 徹底的に切り刻みまくってやるよ、クソがぁぁぁ!」

 

 フリードは怒声を張り上げると、新たに柄だけの剣を取り出す。

 

 が、その周囲を囲まれていることに気付くと苦笑いしだした。

 

「おーおー。これはもしかしてピンチってやつですかね? んー、俺的に悪魔に殺されるのは勘弁と思う心情なので、退散したいねぇ。悪霊退散できないのが心残りだけどよぉ、でも死ぬのは嫌だよね!」

 

 フリードは懐から球を取り出すとそのまま床にたたきつける。

 

 閃光が広がり、天魔たちが目をくらまされた隙にフリードは消えていた。

 

「おい。そこのクソ野郎ども……テンマくんにイッセーくんだっけ? 俺、おまえらにフォーリンラブ。絶対に殺すから。絶対だよ? 俺のことはめやがったクソどもは絶対に許さないよ? んじゃ、ばいちゃ」

 

 どこからか聞こえてくる声で、今後、いかれた神父につけ狙われることを知らされ、辟易している天魔と一誠だったが、捨て台詞を吐いて消えたフリードにいつまでもかまっていられないと祭壇に向かうのだった。

 

 

 

 祭壇の下にあった階段を降りると、大きな通路が一本広がっているだけだった。

 

 天魔を先頭に、祐斗を殿にして進んでいくと両脇にところどころ扉が見つかるが、天魔たちは真っ直ぐ進んでいく。

 

「多分、一番奥です……天魔先輩のにおいがします」

 

「え? 俺そんな臭い?」

 

「……そういうわけでは」

 

 小猫のつぶやきに天魔が反応し、シャツのにおいを確かめる。困り顔で否定する小猫に天魔が笑顔を返すと、からかわれていたことに気付いたのか、頬を膨らませて背中を小突く。

 

 警戒しつつしばらく進むと大きな扉が現れた。

 

「この先か」

 

「おそらく、中には堕天使とエクソシストの大群がいるはずだ。覚悟はいいかい?」

 

「ああ、行こうぜ」

 

 祐斗の言葉に一誠が首肯し、天魔が扉に手をかけようとすると、押す前から扉が開き始めた。

 

 重い音を響かせながら扉が開くと、儀式のためとみられる魔方陣と大量の神父、ドーナシーク、十字架にはりつけにされた金髪の少女が見えた。

 

「アーシアァァァァ!」

 

「天魔さん、イッセーさん」

 

「ああ、助けに来たぞ」

 

「よく来たな……といいたいところだが、遅かったな。もう儀式が終わるところだ」

 

「それはどういうことだ⁉」

 

 少女を見つけて一誠が声を張り上げる。少女が天魔と一誠の名を呼ぶと、堕天使が割り込み得意げに声をあげる。一誠が疑問を投げると、魔方陣が輝き始め、臨界点を超えて輝きを増す。

 

「この儀式は人間から神器を取り出すためのものだ。そして、神器を抜かれたものは死ぬ。アーシア・アルジェントがどうなるか…分かるだろう?」

 

「っ!そんなことさせるか!」

 

 儀式の光を背にして、ドーナシークが効力について得意気に話す。それに呼応して一誠が飛び出すが、神父が立ちはだかった。

 

「邪魔はさせん!」

 

「悪魔め! 滅してくれるわ!」

 

「どけ! 神父ども! お前らには用はないんだよ!」

 

「……触れないでください」

 

「最初から最大で行かせてもらおうかな。僕、神父が嫌いだからさ。こんなにいるなら、遠慮なく光を食わせてもらうよ」

 

 一誠が声をあげながら相対し、小猫が静かに殴り飛ばす。祐斗も闇の剣を抜いて殺気をたぎらせる中、天魔は神父を蹴り飛ばしつつ魔法陣を操作していた。

 

「これで私はさらなる高みへ上ることができる! 私をバカにした者どもに報復ができるのだ!」

 

 そうこうしているうちに、光がはじける。一誠が愕然とし、小猫と祐斗が悔しげに表情を歪めるのを確認し、喜悦に沸くドーナシークだったが、光がはじけただけで何の変化もなかったため、いぶかしむ様な顔をする。

 

「っくくくく、はははははは!!」

 

 響いたのは笑い声。その発生源はドーナシークではなく、天魔だった。

 

「何がおかしい!」

 

 狂ったように笑う天魔に業を煮やしたのかドーナシークが吠えると、笑いを押さえて話し出した。

 

「いやいや、こちらの想定通りの行動をとるものだからうれしくてな。大方、なんで儀式が失敗したのか、わかんねぇんだろ?」

 

 注目をあつめた天魔はにんまりと笑うと真実を告げる。

 

「だって、そいつ、神器「聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)」を持ってねぇんだもんな」

 

「は? いやいやいや、アーシアが神器持ってないってどういうことだよ⁉アーシアは治癒の力を持ってただろ⁉」

 

 天魔の言葉に真っ先に反応したのは一誠だった。天魔へと詰め寄ると少女を指差して問い詰める。

 

「ああ、そうだ。アーシアが持ってないんじゃない。そこではりつけになってるそいつが持ってねぇってだけだ」

 

「だからどういう」

 

「イッセー、俺は一度でもあいつをアーシアって呼んだか?」

 

「ん? まさか……」

 

 可笑しそうにするの天魔が一誠を押さえつつ告げた言葉で一誠がなにか気づき、それをみて天魔は笑みを深めて話し出す。

 

「そう、ここにいる連中が得意顔であそこに貼り付けにしているのはアーシア・アルジェントじゃないのさ」

 

 天魔の語りにその場にいた全員が絶句する。最も早く復帰したのはドーナシークだった。

 

「バカな! 神器の反応は確かにあった! 騙されるはずはない!」

 

「そこが今回のミソだ。お前たちの神器の探知では存在は感知できても、それがどのようなものなのかまでは分からない。だから、そいつにも持たせておいた。効力はちょっとばかし気配を薄める程度の弱いものだが、アーシアをさらって俺の鼻を明かしてやったと得意になったお前は確認を怠った。見た目が同じだからと、神器の反応があるからと、「聖母の微笑」を持っていると信じ込んだ」

 

「だが、儀式は発動したはずだ!」

 

「ああ、なかなかよかっただろ? 俺の「演出」は」

 

 天魔が魔法陣を操作すると、磔となった少女の足元が、先程と同じように輝きを発する。それをみて、ドーナシークが愕然とした。

 

 そう、少女の体が光輝いたのは天魔の魔法によるものだった。突入と同時に儀式を始めることで、こちらの心を折ろうとするであろうということは想像に難くなかったからだ。

 

 そうして、言葉を切ると狂気的な笑みを浮かべて言い放つ。

 

「俺が何の対策もなくアーシアを一人にしたりするわけねぇだろ」

 

 その場の全員が絶句する中、天魔は動きを止めなかった。

 

「さて、これで茶番は終わりだ」

 

「あれ? もういいんだ? 悲劇のヒロインごっこはなかなか楽しかったのに」

 

「お前な……まぁ、いいか。助かったよ」

 

 天魔が手元に残していた魔法陣が発動し、少女が天魔の隣に転移する。

 

 少女は不敵な笑みを浮かべ、得意げにして頭を差し出すのを見て、天魔は脱力しつつも頭をなでる。そんな周囲を気にしない様子にドーナシークが激高する。

 

「ふざけるなぁぁぁぁ!!!! 貴様、このようなことをしてタダで済むと思うなよ!!!!」

 

「うるせぇな。そんなに叫ばなくても聞こえるっての」

 

 怒鳴るドーナシークに対して天魔はあきれ顔だったが、一つ息を吐くと真剣な顔になる。

 

「さあ! 気合い入れろよ、イッセー! アーシアを守りたいなら、ここでこいつは叩き潰さねばならん! 心を燃やせ! 四肢に力を籠めろ! 兵藤一誠はここにありと見せてみろ!」

 

「ああ! やってやる! 俺たちがアーシアを守るんだァァァァ!!」

 

『Dragon Booster!!』

 

 一誠の叫びに応えるように神器が動き出す。籠手が変形すると、手の甲の宝玉が輝きだし、紋様が浮かび上がった。

 

「っ! これはまた、えらいことになったな」

 

「あ! おい待て!」

 

「ここは狭いからな。上で待っておいてやる。精々頑張って上がってくるといい」

 

 一誠の様子を見ていた天魔がつぶやくのをよそに事態は動き出す。神父が天魔たちの周囲を囲み、立ちはだかるその上でドーナシークが扉から外に出ていく。

 

「あの野郎、こいつらに足止めさせて少しでも消耗させる気か? みみっちい奴」

 

「言ってる場合かよ! 囲まれてんだぞ!」

 

「ここは僕たちに任せて二人はあの堕天使を追ってくれ」

 

 天魔がぼやくのに一誠が突っ込みを入れると、祐斗が殿を買って出た。

 

「この数だぞ。大丈夫か?」

 

「それよりもあいつを追わないと。今日中に叩き潰すんだろ?」

 

「そうだな、ここは任せる。行くぞ、イッセー。一気に突破する!」

 

 天魔の心配に祐斗が突入前のセリフを使って返すと、天魔は手元に魔法陣を生み出して一誠を呼ぶ。魔法によって進路上の神父が吹き飛び、道ができると天魔と一誠は走り出した。

 

「木場、小猫ちゃん! 無事に帰ったら、俺のことは「イッセー」って呼べよ! 絶対だぞ! 俺たち仲間だからな!」

 

「フラグみたいな事言ってんじゃねぇよ!」

 

 戦いの前に約束するというありがちなフラグを建てる一誠の頭を天魔がはたきつつ、二人は地上に向けて進んでいく。祐斗と小猫の顔は微笑んでいるように見えた。

 

「いいか、イッセー。素人のお前が俺に合わせることはできないだろう。だから、回避を主体として動け。それでここぞというときに全力で叩き込む。フリードの時と同じだ」

 

「わかった。思いっきり叩き込んでやる!」

 

 地上への階段をのぼりながら、天魔は戦闘に対しての考えを示す。同時に攻撃しても足を引っ張ることを理解している一誠は反論することなくそれを受け入れた。

 

 時折、音声を鳴らして輝きを増す神器の力を感じながら、地上へとたどり着いた。

 

 

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