文書ファイルへの書き起こしは
偖、理事長室から無事解放され、寮に戻ろうかという
そんなこんなで、メジロ家の張った網の目を潜り校門へと戻って来た。道を挟んで向かい側の寮の敷地へは、新入生と思しきウマ娘が
「お~アジ~、久し振りやなぁ。元気しとったか?」
「……まぁ、ぼちぼち。タマモさんは何故此処に?」
「そんなんアジの事待っとったに決まってるやん。
「……然様で」
「ホンマ、よう来て呉れたなぁ。合格御目出度うやな。心の底から待っとったで~!」
「あの、タマモさんは有名人なんですから、こんな事されると目立って仕様が無いんですけど」
タマモさんが両手を握ってぶんぶん振ってくる。御蔭で目立つ事この上ない。周囲から痛痛しい程の視線が向けられる。
「色色話したい事もあるしな。ウチの部屋に来てや。
然う言って、迂拙を栗東寮の方へ引き摺る。迂拙はタマモさんとは別の寮らしい。「あ~れ~ゴムタイヤ~」抔とバ鹿丸出しな事を言ったら「厥を言うたら御無体なやろ。ウチは悪代官ちゃわ」と律儀に返して呉れる。矢張り彼女は善人である。そして、或る部屋の前で止まった。
「此処やで。オグリも一緒の部屋や」
「へえ、成程」
「オグリー。帰ったでー」
「御帰り、タマ。む、厥の子は……先刻言ってた子か?」
「せやで、期待の新人って奴や」
「初めまして、キョクアジサシと言います」
「オグリキャップだ。宜しく」
豪く簡潔な挨拶が返って来た。まあ、インタビュー映像とかを見ても
「いやー、信じとったでアジ。ちゃんと中央来てくれて、ホンマ嬉しいわ」
「そんなに凄いのか? 此の子は」
「噂聞いとらんか? 実技試験の1000m走で12バ身差付けたっちゅう話やで」
「1000mで12バ身? 本当か?」
「二着とのタイム差が二秒あったので、バ身換算すると然うなりますね」
「短距離で厥は凄いな。スプリンターなのか?」
「いや、此奴は峠道走り切れるスタミナ持っとるから、長距離も行けると思うで」
「? 適正距離が分からないな……。どの距離が得意なんだ?」
「真面にレースを走った事が無いので分かりません。実技試験の時に、初めて芝のコース走った位なんで」
「然うなのか。じゃあ模擬レースとか、選抜レースはどうするんだ?」
「取り敢えず、手当たり次第に出走して、感覚を確かめます。体力だけは無駄に有りますから」
「あんま無理しちゃアカンで。ランニングとレースじゃ疲労の溜まり方も全然ちゃうからな」
「然う言うもんなんですか。毎日の様に会津若松迄走ってたんで、脚は頑丈な方だと思いますけど」
「会津若松って何処だ?」
「福島や。然う言やぁアジの実家ってどの辺りや?」
「新潟の入広瀬の辺りです。会津若松迄は国道252号経由で、往復で240km位ですね」
然う言うと、タマモさんは口をあんぐりと開けて固まってしまった。オグリキャップ先輩も瞠目している。
「に、にひゃく、よんじゅっ、きろ?」
「え、片道二時間半位ですよ。皆さんも厥位走りますよね」
「いや走らんわ!! 何や240kmて! ランニングでもそんな距離走った事無いわ! え、ホンマにそんな距離毎日走っとったんか!?」
「此れ位走らないと、何か消化不良の感が残るんですよね」
「いや頭可笑しいやろ。何でそんな距離走って脚
「私も無理だな。ろっぺいにもベルノにも止められる」
「で、でも、一日で厥の距離やろ? 午前中片道走って、会津若松で飯
「いや、早起きして、午前中に走り切ってました。午後は色色と、走り方の研究してましたね」
「バケモンやん」
トレーナー向けの本にも、適切なランニング距離みたいなのは「ウマ娘個人に依る」みたいな曖昧な書き方だった気がする。書いてあったとしても完全に記憶から脱け落ちている。迂拙にとっては丁度良かったが、他の方は然うでも無いらしい。
「然もアジ、自分、此れから本格化迎えるやろ」
「然うですね、最近食事量が増えて来てますので」
「本格化迎えてない小学生の時に240km走れる奴が、本格化迎えたら……どう化けるか想像出来へん」
「如何成りますかねぇ」
「他人事みたいに言うなや」
「いや、実際分かりませんし。厥に、只長く走れる位しか能が無かったので、走り方の研究に手を出した、とも言えますね。生まれつき体が柔らかいとか、天性のレースセンスを持っているとか、そんなものは有りませんし」
「で、等速ストライドに手ぇ出して、初めて走った芝コースで、12バ身差か? 十分天才やろ。若しくは努力の鬼か?」
「私は小さい頃、自力で立てない位脚が弱かったから、羨ましいな。そんなに走れて、故障しない脚。ウマ娘なら皆慾しがるな」
「せやなぁ。大概頑丈や言われたオグリですら、
「脚に違和感覚えた事は特に無いですね。ブラックアイスバーンに脚を取られて、対向車線まで吹っ飛んでガードレールに激突した時も、擦り傷で済みましたし」
「頑丈過ぎるやろ。ターミネーターか」
彼の時は本気で死を覚悟した。ガードレールを越えて崖下に転落していたら今頃命は無かっただろう。牛乳に相談しておいて良かった。背は伸びなかったが。
「でもまぁ、此れからが楽しみやな。どんな走り見して呉れるか。ウチもオグリもドリームトロフィーリーグに移籍してもうてるから、公式レースで一緒に走れんのが悔しいな」
「うん、私も一緒に走りたい」
「御二人に然う言われると、むず痒いですね」
「今度、ベルノと一緒に併走しよう」
オグリキャップ先輩が透き通った眼で言ってくる。止めて下さい、貴方の綺麗な眼は、薄穢い迂拙には眩し過ぎます。
「せや、先刻ルドルフと一緒に学校の方行ってたけど、何しに行ったん?」
「明日の入学式で、新入生代表挨拶を任されましてね。厥の打ち合わせです」
「代表任されたんか。つっても、舞台袖から出るタイミングとか、そん位やろ」
「いや、「今年の挨拶文は、是非君に書いて慾しい!」と、理事長直直に言われまして、
「は? 何や厥。挨拶文って、学校が用意したのを読むだけちゃうんか?」
「例年は然うらしいんですけど、理事長の思い付きで今年は迂拙が書く事に成ったようです」
「
「国語の課題の作文が豪く評価されてしまいましてね。もう鳥渡手ぇ抜いときゃ良かったと後悔している所です」
「文才もあるのか。君は何でも出来るんだな」
「趣味全開で、心にも無い事適当に書いただけなんですけどね。あ、今原稿持ってますけど、読みます?」
「いや、明日の楽しみにしておく」
「で、厥の芋ジャースカートスタイルで理事長に
「然うです。明日の入学式も此の格好で行きます。
「ジャージ穿いてるっちゅう事は、ウチのアドバイス通りか?」
「ええもう。タマモさんのアドバイスが無かったら、今頃スカート燃やしてました。こんな腰布一枚で過ごせとか正気の沙汰じゃないですよ」
転瞬、オグリキャップ先輩の瞳がキラリと光り、此方を向いて両手を握ってきた。
「君も然う思うか、アジフライ」
「アジサシや。勝手に揚げんなや」
「と言うと、オグリキャップ先輩も?」
「私の事はオグリで良い。然うだ、私も前前から思ってたんだ。こんな腰布一枚で過ごすなんて正気の沙汰じゃないと。恥ずかしいし、スースーして落ち着かないし。でもベルノは「慣れて」としか言わないし、此の感覚は私だけだと思っていたんだ。でもやっと、やっと此の感覚を解って呉れるウマ娘に会えた」
「オグリさん……」
「アジ……」
無言で抱擁を交わす。同志が、同志が居た。此の苦しみを分かち合える同志に出会えた。今日は何て素晴らしい日なんだ。半眼で呆れた視線を寄越してくるタマモさんなんか気にならない位嬉しい。
「
「そうか、ルドルフが……よし、私も後でルドルフに言っておこう。一人より二人だ。意見が多ければ、提案も通り易くなるだろう」
「有難う御座います。一緒に、ズボン獲得目指して頑張りましょう」
「ああ!」
「……何や阿呆臭い同盟が出来たな……」
「何言ってるんですかタマモさん。此方からしてみれば、着られるのがスカートしか無いなんて死活問題なんですよ」
「然うだぞタマ。此のスースーから解放される為なら、私は何だってするぞ。よし、先ずはアジと同じようにジャージを穿くか」
「天下の葦毛の怪物様が芋ジャースカートスタイルは止めぇや」
「何故だ」
「今迄積み重ねて来たイメージっちゅうもんを考えろや。アジは未だ無名やから大丈夫かも知れんけど、オグリが厥の恰好したら、周りが全力で止めてくると思うで。オグリのイメージが打っ壊れるから」
「そんな……私には、芋ジャースカートスタイルは許されないのか……」
「ズボンタイプの制服出来る迄我慢せぇ」
耳を萎れさせ、項垂れるオグリさん。だがタマモさんの言い分も正鵠を得ている。一般世間から見たオグリさんのイメージは、何処か抜けている所が有る、口数の少ないクールキャラだ。そんな彼女が芋ジャースカートスタイルで御満悦、なんて姿を晒そうものなら、先述のイメージは粉微塵になる。
「こうなったら、他にもズボンタイプの制服を慾しがっているウマ娘を探して、連名で嘆願書でも作るしか……」
「そんなに嫌なんか」
「此処に来た許りの頃に較べたら大分慣れてはいる。でも、矢っ張りスースーして落ち着かない。ジャージの方が良い」
「……シリウスとかやったら、面白がって乗ってくれるかもなぁ……」
「シリウス……シリウスシンボリがか?」
「多分な。本人的にはスカートだろうとズボンだろうと何方でもええって感じやろうけど、彼の皇帝サマの仕事増やせるっちゅうて、面白がって一枚嚙んで呉れる可能性は無きにしも非ずって所やな。シリウスの性格を考えると」
「そうか、よし、後で話してみよう」
フンスフンスと鼻息を荒くし意気込むオグリさん。シリウスシンボリ先輩と言うダービーバ様を抱き込めれば、提案はより通り易くなるだろう。
「迂拙は面識無いんで、オグリさん、御願いします」
「分かった。必ず味方にして見せる」
「レースの時と同じ位気合入ってへんか?」
「漸く同志アジと会えたんだ。此の機を逃したら次は無い」
「共産主義者みたいな呼び方止めぇや。思想が赤なったなんて噂流れたら豪い事なるで」
思考が鳥渡危険な方向に転がって行ってないか? 長年の抑圧の結果であろうか。
「そうだ、タマも一緒に如何だ? 勝負服がズボンタイプだから、タマも此の感覚がわかるだろう」
「いや制服は制服、勝負服は勝負服や。別個に考えとるし、ウチは別にスカートに抵抗感はあらへんわ。……二人して捨てられた仔犬みたいな目ぇ向けんなや、
二人で潤ませた目をタマモさんに向ける。タマモさん、貴方は後輩を見捨てるんですか? 可愛い後輩の御願いを
「ま、二人で頑張りや。あ、せやった。一番大事な事訊いとらんかった」
「何で御座んしょ」
「アジ、寮は何方や?」
「美浦寮です」
然う言うと、タマモさんは笑顔で固まってしまった。
「い、いやー済まん、ちょっち聞こえんかったから、もっぺん言って呉れへんk」
「美浦寮です。美唄の"美"に浦賀の"浦"の美浦寮です。栗東ではありません」
「何っっで美浦やねん!! ウチもクリークも栗東寮やねんぞ!! 何っっで美浦寮やねん!! 肝腎のアジが栗東に居らんかったら意味無いやんけ!!」
「いや、迂拙を美浦寮に配したのは事務方なんで、迂拙に言われても如何しようもありませんが」
残念、対スーパークリーク用デコイは
「アジ、あんな、
「ええまあ、流れに任せましたね」
「そんで、厥の後な、クリークに気に入られた言う話したやろ?」
「然うですね」
「……聖蹄祭終わった後な、ウチ、豪いクリークにのられるようになってしもたんや」
「何故に」
「多分アジ欠乏症や。あんだけ好きに甘やかさせて呉れるアジが居なくなって、我慢出来なくなったんや。そんで、
「迂拙は違法薬物か何かですか」
一回関わっただけで禁断症状が出ている。MPTP*12の様な中毒性の強さである。
「ホンマ凄い勢いでのって来るねん。どっから持って来たんか知らんガラガラ手に持ってんの見た時は背筋凍ったわ」
「幼稚園児所か
「せやから、アジ見つけた時はホンマ嬉しかってん。やっとクリークの発作抑えられる思たんやもん。なのに何で美浦やねん……栗東も部屋空いとるやろ……」
見るからに縦線を背負って落ち込んでしまった。猶、オグリさんは話に付いて行けずにポカンとしている。
「いや、未だ手は有る……。昼飯は学校側に有る食堂で
「どれだけ迂拙にクリークさんを押し付けたいんですか」
「アジ、想像してみ。ハイライトどっか行った目ぇしたクリークが、ガラガラ手に持ってのってくるんやで。もう完全にホラーやろ。他人に押し付けたくなるやろ」
「……確かに」
クリークさんはウマ娘の中でもらり*14な方なので、そんな彼女が自分を孺孩扱いしようとのって来たら確かに恐い。……と考えていたら、何やら此の部屋へ向かってくる
「タマちゃ~ん、呼びましたか~?」
「来、来おったで……」
「何でこんなタイミング良く来るんですか」
「多分、先刻ウチが叫んだ時の声が聞こえてしもたんや……」
「どんな地獄耳してるんですか」
そして、ノックも其処其処にクリークさんがスルッと這入って来た。
「タマちゃ~ん、先刻呼ばれた気がしたんですけど……あっ、アジちゃん!」
迂拙を見つけたクリークさんが、電光石火の早業で迂拙の頭を撫でて来た。
「久し振りですね~。制服着てるって事は
抔と言い乍ら、流れる様に座り、流れる様に帽子を脱がし、流れる様に迂拙を抱え上げ自らの膝の上に収めてしまった。噫嚱、此の二つの
「クリーク、何で此の部屋来たんや」
「いや~、先刻タマちゃんが私の事を呼んだ気がしましてね。それで来てみたらアジちゃんが居るじゃないですか。内緒にするなんて狡いじゃないですか、私も混ぜて下さいよ」
「いや、別に内緒にしとった訳やないで。ウチも先刻アジが学校に這入ってくの見掛けて、出てくるの待っとったんや。で、帰ってきた所を捉まえて部屋に連れて来たんや」
「然う言う事だったんですね~。噫嚱、アジちゃんの此の感触、良いですねぇ~」
左腕で迂拙の腹を抱え込み、右手で頭をクリクリと撫で回してくる。斯うなってしまった以上、迂拙に脱け出す術は無いので、為すが儘にされるしかない。頭を撫でられると同時に腹を一定のリズムでポンポンされるので、次第に眠気に襲われる。今日は新潟から学園迄出てきて、厥の上打ち合わせをした所為か、
「あー、此の母親の様な安心感。寝そうです……」
「まぁっ、嬉しい。私の事、ママだと思っても良いんですよ~」
「あっちゃー、
「でも、迂拙の母親は白毛ですし、胸もこんなにデカくないんで全然違いますね」
「あら~、残念です」
「アジの母ちゃん白毛なんか」
「白毛ですよ~。そして、厥の白毛から誕まれたのが
色としては#FFEED0位である。そして、両耳の外側の付け根から外に向かって、頭を前後に
「河原毛じゃないのか?」
「違いますね。髪はそんなに伸びないし、黒い毛も
「佐目毛……も髪長いしな。それに、肌の色も普通やし。佐目毛やったらもうちょい肌に赤みがさしているからな」
「ですです。遺伝子検査もしましたけど、河原毛や佐目毛の特徴が無いというんで、
「へぇ、然うなんですね。ろとか青鹿毛は良く聞きますけど、驃は聞かないですね」
「まぁ、鹿毛って基本的に色が濃く出ますからね。鹿毛なのに色が薄いって医者も不思議がってました」
適当に毛色を
「で、厥の毛の色が中途半端に眼にも
「薄穢い言うなや自分の眼やろ。母ちゃんの眼は如何なんや?」
「澄んだ綺麗な
「白毛なら妥当な色やな」
「そんなウマ娘から何でこんな薄穢いのが誕まれたんですかねぇ」
「ええい、もう自分貶めんの止めい。つうか先刻出た代赭色ってどんな色や。確かにアジの眼ぇ言うたら鳥渡赤黒い感じするけど」
「赤土みたいな色です。常に三白眼で加えて眼がそんな色してたら、此奴何考えてんのか分かんねぇってなりません?」
「くっそ、他人の悪口やなくて自分の事言うてるだけだから止められへん」
自分で自分の事を言うだけなら侮辱にも名誉毀損にもならんのだ。と思っていたら、クリークさんに両頰をむにっと挟まれた。
「駄目ですよアジちゃん、そんな事言っちゃ。アジちゃんはちゃんと可愛いウマ娘ですよ」
「せやで、もっと自信持ちや」
「でも、タマモさんやオグリさんみたいな透き通った綺麗な騅という訳でもありませんし、只
「別にええやん。畸しいなら厥は厥で。厥に眼は只そんな感じに見えるだけやろ。後、ウマ娘なら皆慾深いやろ、特に中央に来るような奴等は。他の連中の捷ちたい一位に成りたいって思い
「成程、然う言うもんですか」
不味い、タマモさんに全肯定され、クリークさんに抱き抱えられている今、変な嗜好に目覚めそうである。
「タマモさん不味いです。クリークさんに甘やかされているのと全部肯定された事の多幸感で変な扉開きそうです。何か話題振って下さい」
「話の振り方雑過ぎやろ。うーんせやなぁ、あ、寮のルームメイト誰や?」
「ライスシャワー先輩です」
「ライスシャワー? 同期やないんか」
「迂拙の性格的に、巧くやっていけるだろうと寮長が判断したみたいで」
「ライスちゃんがルームメイトって事は美浦寮なんですか?」
「然うです」
「うーん残念、折角アジちゃんを沢山良い子良い子出来ると思ったのに……」
「噫嚱、わしゃわしゃが加速していく……」
「……やっぱアジ欠乏症やったんな。こら禁断症状出さん為にも、定期的にアジを投与せんと」
「迂拙はメサドン*20じゃありません……」
迂拙が原因の症状を迂拙に依って解決する。酷い
「ライスシャワーか……私は余り接点が無いな」
「オグリは長距離あんま走らんからなぁ。ん? ちょい待ち、ライスも春天捷っとるな。ウチにクリークにイナリにルドルフ……アジの周り、長距離に強い奴
「いや、イナリワン先輩に関しては会った事ありませんが」
「ウチ等と
「入学式も未だだってのに、再来年の話してます?」
「むぅ、厥だと私だけ仲間外れみたいだな……」
「オグリはマイルと中距離やろ。1000mで大差付けられるんや、マイルと中距離も結構走れると思うから色色教えたれ。後有馬やな。オグリは有馬二回捷っとるから、中山での走り方教えたれ」
「む、然うか。よし、後でろっぺいとベルノに教え方に就いて訊いておこう」
「じゃあ、京都に就いては私とタマちゃんとイナリちゃんですね」
「せやな。でも、京都ならライスが一番やろ。ライスの捷ったG1、全部京都やんか」
「あ……然うですね。じゃあライスちゃんも入れた四人で、アジちゃんを鍛えましょう」
迂拙の与り知らぬ所で話がどんどん膨れ上がっていく。これで
「ちゅうかクリーク、そろそろ放したれや。アジだって未だ荷解きとかする事あるやろ」
「もう鳥渡、もう鳥渡だけ……。噫嚱、アジちゃん可愛い……」
「……タマモさん。
「……せやろ」
スーパークリーク被害者の会が設立された瞬間であった。
でちゅねの悪魔からは逃れられない。