今回は、一人称と三人称とが交互に出てきます。
ちらっと総合評価を見てみたら334ptでした。何でや!(ry
結果から言えば、メジロ家の刺客に依る夜駆けや闇討ちは無かった。
朝食を摂りに食堂へ向かうと、昨日のメジロ三人衆が既に席を確保していた。ライアンさんが
「アジちゃんお早う。眠れた?」
「不思議と普通に眠れましたね。緊張や不安から
「阿婆擦れって悪口の筈なんだけど、自分で言っちゃうんだ……」
「アジさんは阿婆擦れではありませんよ。年齢以上に
「いやぁ、此の死んだ三白眼は阿婆擦れの
「要するに、死んだ魚の様な目って事ね……。
「小学生なんてそんなもんですよ。厥に、事実なので如何とも思いませんでしたし。何なら魚の特徴を聞き出して、買って食べましたよ」
「……厥のコメント、
昨日迄底知れぬ恐怖を感じていたメジロ家の御令嬢相手に、こんな口を利ける辺り、迂拙の心臓は毛だらけなのかもしれない。
「ルドっさん、全然起きてこないですね」
「ルドルフは朝が弱いのよ。昨日あれだけ
「入学式の日に生徒会長が寝坊は鳥渡まずくない?」
「ルドルフさん、ちゃんと起きられますでしょうか」
「私達が食事を始めてから其処其処経つものね。そろそろ起きてこないと、ルドルフ、食事する時間が無くなるわね」
「よっしゃ、モーニングコール掛けたろ」
ポケットからウマホを取り出し、ルドっさんに電話を掛ける。三十秒程のコールの後、漸く出た。
『うーん……誰だぁ……?』
ウマ娘のウマホに於ける会話なので、当然スピーカーモードである。普段の凜凜しさ
『えーっとぉ……今何時だぁ……』
「
『うわああぁーっ!!?』
悲鳴と共にドッタンバッタンと取り乱した様な音がし、最後にドスンとベッドから落ちた様な音と共に通話が切れた。
「よし、こんだけ派手にドタバタやってりゃぁ有繫に起きるでしょ」
「ふふふふっ、ルドルフのあんな声初めて聞いたわ。アジ、貴方面白いのね」
「ルドルフさんも、あんな声出すんですねぇ。意外ですわ」
「ってか、今の何? 呪いの言葉?」
「呪いとは失礼な。般若心経という有難いお経ですよ」
「何でお経なんて覚えてるの……」
「262字しか無い一番短い経の一つなので、頑張れば覚えられるかなと思いました」
「絶対起き抜けの人に聞かせるものじゃないよね……」
「有繫に此処迄露骨に反応するとは思いませんでした」
「久久にこんなに笑ったわ。暫く此れでルドルフを揶揄えるわね」
「会長さん、朝から大変だなぁ……」
「ライアンさん、其処はちゃんとルドりんと呼んであげないと」
「いやルドりんなんて昨日も言って無かったよね」
「然うですね。ちゃんと綽名で呼んであげないと、ルドりんが拗ねてしまいますね」
「アルダンさんは何でそんなに順応が早いの……?」
周囲から「今のって会長さんの声……?」みたいな騒めきが聞こえてくる。生徒会長の株が入学式の日に
「整備士、貴様か。
「呪詛ではありません。般若心経と言う仏教の有難い御言葉です」
「厥は如何でもいい。起き抜けにあんな低い声で延延と訳の分からん言葉を聞かせるな。心臓が止まるかと思ったぞ」
大分表情で凄んではいるが、寝癖が有る所為で全く恐くない。
「結果的に聢り目が覚めたのだから結果オーライでは?」
「頼むから手段を選んで呉れ。呪いの電話かと思って本気で
「ルドルフ、貴方にアジを責める権利は無いと思うわよ」
「何故だ。起き抜けに呪い殺されそうになったんだぞ」
「電話に出た時のルドルフ、相当寝惚けてたんじゃないの? 普通のモーニングコールじゃあ絶対二度寝してたわよ。あんな腑抜けた声出して」
「腑抜けた声?」
「普段のルドルフさんからは想像出来ない位、気の抜けた声が聞こえてきましたわ」
「そ、そんな声出してたのか?」
「覚えてないんですか?」
「全然記憶に無い……」
「ルドルフ、アジに感謝なさい。御蔭で入学式に寝坊して、株が暴落するのを
「ぐっ……ラモーヌ、
「味方も何も、事実を言っているだけよ。皇帝様が裸の王様になるのを防いだ、有能な後輩の味方をするのは当然じゃない」
「……何も言えん……」
「所でルドルフ、貴方ちゃんと鏡見たの?」
「鏡……時間に余裕が無かったから全然見てないな……若しや……」
「寝癖、未だ残ってるわよ」
「……やってしまった」
「朝食摂ったらちゃんと直しなさい。副会長の敬愛が敬遠に変わるわよ」
「傾延*10が敬遠になってしまいますねぇ」
「え、如何言う事?」
「傾くに延長の延と書く、しきりに慕うという意味のケイエンという単語が有りまして、敬うに遠いと書くケイエンの対義語となるんです。ケイエンという同音異義語で、対義語の組が作れるんですよ。面白いでしょう?」
「ほら、アジに言われているわよ。大体、貴方がちゃんと起きていればこんな事には成らなかったのだから、甘んじて受け入れなさい」
すっかり意気銷沈してしまったルドっさん。耳と尻尾とを萎れさせ乍ら、もそもそと朝食を摂っている。
「然う言えばルドっさん。昨日迂拙に訊きたかった事ってなんですか?」
「……ああ、然う言えばそんな事言ったな……。すっかり
「おお、オグリさん、早速行ったんですね」
「私以外に知っているのは理事長とたづなさんを除けば君しかいないからな。何か知っているかと訊きたかったんだが、厥の様子を見る限り一枚嚙んでいるな」
「
「成程な。其処迄は解った。だが、何故シリウスがオグリキャップと一緒に行動しているんだ?」
「誰とは言いませんが、
「くっ、然う言う事か。やけにシリウスがニヤニヤしていると思ったんだ」
「と、言う訳でシンボリルドルフ生徒会長様、ズボンタイプの制服の件、何卒宜しく御願い致します」
「
「厥は厥、此れは此れです。阿婆擦れを自称しているんですから、此れ位は何とも」
「ルドルフ、寝坊に関しては貴方の自業自得でしょう」
「それに、何処の牛の骨*14とも知れぬ迂拙だけでなく、皆が認めるアイドルウマ娘のオグリキャップさんが先導して呉れれば、他の生徒も声を上げ易くなると思いますし、提案も通し易くなると思いますよ」
「只の厚顔無恥かと思えば、急に現実的な利点を挙げてくるな……」
「迂拙としては切実な問題なので。
「今度は自分を人質に取って来たか。強かと言うべきか、あくどいと言うべきか……」
「そんなあくどいウマ娘に受験を
「……何故だろう、正論ではあるが、君が言ってくるとなると受け入れたくない自分が居る……」
迂拙なんぞに目を付けてしまったのが運の尽きである。
「はぁ……。今朝の事に関しては箝口令を敷いて、美浦寮内に留めておきたいな……」
「
「頼むからえらす様な真似はしないで呉れよ」
「まあ、迂拙は何も言いませんよ迂拙は。只、目の前に居る御三方が如何動くかに就いては迂拙の関知する所では無いので」
「あ、あたしは言いませんから、絶対に!」
「然う言う奴に限って、「此処だけの話」とか言って話広めるんですよね」
「アジちゃぁん! 余計な事言わないでぇ!」
「ふふふっ。ルドルフさんの貴重な御茶目な姿。堪能させて頂きました」
「さあ、此の話を如何料理しましょうか」
「……もう好きにして呉れ」
「相手はメジロ家の御令嬢ですからねぇ。レンガ*17で殴る位では駄目ですね。座布団*18を敷いて漸くと言った所でしょうか」
「こんな下らん事の口封じに3億円も使えるか」
「此れが本当の3億円事件ですか」
「
「丁度良いじゃないですか。水清ければ魚棲まずと言いますし、今迄が完璧過ぎたんですよ。此の一件でイメージが軟化すれば、後輩が寄ってきますよ。多分」
「今迄の努力を全否定されている感じがして、全然喜べん」
人生、努力が一瞬の油断で台無しになる抔良くある事である。TASさんでもない限り、ノーミスで切り抜けるなんざ出来っこないのだ。
「そうだ整備士、朝食が終わったら生徒会室に来てくれ。最終確認をしたい」
「あ、あ。分かりました。持ってくのは原稿だけで良いですよね?」
「ああ、厥で良い」
「最終確認?」
「入学式の新入生代表挨拶はキョクアジサシが任されているんだ。式が始まる前に聢り確認をしておきたくてな」
「アジちゃんが今年の代表なんだ。凄いねぇ。有繫、ルドルフ先輩に一目置かれるだけあるね」
「……色色と覚悟しておいた方が良いぞ」
「え、覚悟?」
「内容が色色とアレだからな……色色と」
「如何言う事よ」
「まぁ、其処は聞いてからの御楽しみと言う事で」
しれっと整備士呼びが定着しているが、此れは憂さ晴らしか、
ライスシャワーの方寸*19は安堵と
そして年度が改まろうという時期、新入生が這入って来る事をヒシアマゾンから
先立って送られて来た私物を詰めた段ボールが搬入された時、ライスシャワーは書いてある字から新入生の
結局、入学式の前日、相部屋となる新入生が入寮する日迄、ライスシャワーの方寸には、一抹の不安が
然う斯うしている内に、キョクアジサシの方から自己紹介をされ、厥に流される形で会話が始まってしまった。先輩として牽引する筈が、逆に後輩に気を使われてしまい、ライスシャワーは己の腑甲斐無さを痛感した。然も、キョクアジサシはライスシャワーが捷ったレースを覚えており、厥のレース名を出して
然し、直後のキョクアジサシの言動に依り、暗い考えは完全に吹き飛んだ。最初こそは此方を気遣う様に褒めて
其処から会話を重ねる毎に、ライスシャワーは心を開いていった。キョクアジサシは、基本的に落ち着いた言い回しで話し、時折物騒な単語も飛び出してくるが、ちゃんと先輩を立てて呉れる出来た後輩であった。事ある毎に自分を神聖視し、崇め奉ろうとするのは恥ずかしいから止めて慾しいが。そして、そんな彼女が新入生代表挨拶を任された事を知った時は、素直に愕いた。中央トレセン学園は毎年600人以上の新入生が入学してくるが、代表挨拶を任されるのは第一の成績を叩き出した者である。
入学式が行われる会場へ向かう
「ステータス『御譏嫌』を確認。ライスさん、何やら楽しそうですね」
「あっ、ブルボンさん。うん、今日の入学式、鳥渡楽しみなの」
「何故ですか」
「何何? 何の話?」
「テイオーさん」
「ライスさんが、入学式を楽しみにしていると言うので、厥の理由を訊いていました」
「えー入学式が楽しみ? カイチョーの話以外に聞く所無いじゃん」
「テイオー、有繫に厥は如何かと思いますわよ」
「マックイーンさん」
「だって理事長の話とか、毎年同じ様な内容で詰まんないじゃん」
「先輩が入学式で居眠りなんてしたら、威厳もへったくれもありませんわ。去年だって船を漕いでいましたものね」
「いやぁ、マヤノとゲームで盛り上がっちゃって、気付いたら消灯時間過ぎてたんだよね」
「今年も船を漕いだら、トレーナーさんに言ってはちみーを禁止して貰いますわよ」
「ピエッ。厥だけは勘弁して~」
「はちみーは脇に
「ムッ、はちみーを蔑ろにするのは見過ごせないなぁ」
「えっとね、今日の新入生の代表挨拶をするのが、ライスのルームメイトになった子なんだ」
「無視された……」
「代表挨拶? と言う事は、首席合格した方がライスさんのルームメイトになったという事ですの?」
「うん、キョクアジサシちゃんって言うんだ」
「成程。ルームメイトの方が登壇するから、ライスさんは御譏嫌であると」
「おっ、皆さん御揃いですな~」
「あっ、ネイチャ」
「何の話してたの?」
「ライスのルームメイトになった子が、新入生代表挨拶やるんだって」
「お~代表って事は首席合格って事ですな。
「いや、首席は毎年居るんですから、別に今年が特別って訳では……」
「ううん、今年は特別なの」
「へっ?」
「今年の挨拶文はアジちゃんが全部書いて来たんだって」
「ステータス『愕き』を検出。挨拶文と言う物は、学園側が用意するものでは?」
「普通は然うなんだけど、今年はアジちゃんが書いて呉れって、理事長に言われたんだって」
「如何言う事ですの? 何故今年に限ってそんな事が……」
「入学試験の作文が凄く評価されたから、今年はアジちゃんに書いて貰おうってなったんだって。理事長の思い付きらしいよ」
「首席って事は走りの実力もあって、更に文才もあると。いや~キラキラしてますなぁ」
「首席で合格された方がルームメイトに成り、代表挨拶を任された上に、例年には無い対応をされたと。ステータス『納得』を獲得」
「で、厥のキョクアジサシってどんな子なの?」
「うーん、結構癖が強くて変わってる子かな。私服が作業着だし」
「へっ? 何で作業着が私服なの?」
「女物の服が嫌いなんだって。初めて会った時、上も下も真っ黒で、帽子迄真っ黒だったから、ライス喫驚しちゃった」
「行き成りそんな格好のウマ娘が現れたらそりゃ喫驚しますわな」
「ライスよりも身長ちっちゃいけど、凄く大人びてる子なんだ。ヒシアマさんとも、全然緊張しないで普通に会話してたし」
「え、ライスよりちっちゃいって、身長幾つなの?」
「139cmって言ってた」
「ちっちゃ~。ブルボンよりも20cm以上低いじゃん」
「でも、会長さんと普通に話してたし、ライスみたいにおどおどしないから凄い子だよ」
「新入生なのに会長さんと会話して緊張しないのか。肝が据わってるね」
「うん、最初はルドルフさんって呼んでたけど、昨日の晩御飯の時には、ルドっさんて、綽名で呼んでたよ」
「え、カイチョーに綽名付けたの?」
「うん、それに、会長さんはアジちゃんの事「整備士」って呼んでた」
「いや何で整備士?」
「アジちゃんの小学校での綽名なんだって。アジちゃんは気に入ってるみたいで、ライスにも「整備士って呼んでも良いですよ」って……」
「まぁ本人が気に入ってるなら良いの……か?」
「鳥渡待ってよ! ボクですらカイチョーに綽名で呼ばれた事なんて無いのに、何で新入生の子が綽名で呼ばれる位仲良いの!?」
「アジちゃんの実家がね、お米作ってる農家さんなの。それで、厥のお米がシンボリ家やメジロ家に気に入られてるって言ってたから……」
「……思い出しましたわ。キョクアジサシさん。御婆様が矢鱈と会いたがっていたウマ娘ですわね」
「え、メジロ家に目ぇ付けられるって如何言う事?」
「会えば解るという感じで、理由は教えて呉れませんでしたの。でも、兎に角凄いウマ娘だから会って話がしたいと御婆様が仰ってましたわ」
「それで?」
「何とかメジロ家に御呼びしようと、御茶会やパーティーの招待状を何度も送ってましたわね。でも、今迄一度も来た事はありませんわ」
「え、メジロ家の誘いを
「うん、厥が原因で、昨日の晩御飯の時、アジちゃん死にかけてた」
「何がありましたの!?」
「食堂で、ラモーヌさんと、アルダンさんと、ライアンさんの三人に一度に鉢合わせしちゃって……アジちゃん、完全にメジロ家に殺されるって思ってた。顔真っ青にしてブルブル
「あちゃー、矢っ張りメジロ家の誘いを蹴ると然うなるのか……」
「いやメジロ家はそんな野蛮な家ではありませんわ!?」
「
「何厥のカオス」
「バッドステータス『混乱』。話についていけません」
「
「ああ、貰して貰えたんだね」
「一番酷い時は、白目剝いて痙攣してた。余っ程恐かったんだと思うよ」
「……メジロ家って、そんなブラック企業の圧迫面接みたいな事するんだ」
「寧ろヤクザの借金の取り立ての方が近いんじゃない? 下手すりゃドラム缶に
「メジロ家をそんな風に思うのは止めて下さいまし! 絶対に向こうが変に勘違いしているだけですわ!」
「で、色色あって誤解も解けてアジちゃんが元に戻ったから、何でアジちゃんが凄いウマ娘なのかって話になったの」
「
「私も一番気になる所ですわね。余程のウマ娘でもない限り、御婆様があそこ迄執着する事は有りませんわ」
「で、厥のチビッコの何が凄いの?」
「幼稚園児の時から自分の走りを研究していて、小学生になってからは等速ストライドの研究を始めたんだって」
「等速ストライドって、彼のセクレタリアトが使ってたって奴?」
「うん、アジちゃんが普段走ってるランニングコース、カーブが多くて一一減速するのが嫌だったから、何とか減速せずにクリア出来ないかなって。厥で等速ストライドに行きついたらしいよ」
「うん、意味分かんない。カーブって減速するのが普通でしょ」
「此れが効率厨って奴か……」
「それで、実際等速ストライドを使う事は出来るんですの?」
「アジちゃんが言うには、完成にのいてはいるって言ってたけど。実際に走ってる所はライスも見た事無いから分かんない……」
「適当に噓吐いてるだけなんじゃないの?」
「いや、首席で入学出来る位なんだから、使えるんじゃないの?」
「入試の1000m走では、2着に2秒差で捷ったって会長さんが言ってたけど」
「……何厥のテスコガビーさんみたいな着差」
「等速ストライドでコーナーを減速せずに突っ切れるなら、厥の着差も納得出来ますけど……」
「いやいや、1000m減速せずに走り切るって、入試って事は厥の時小学生でしょ? そんな事出来んの?」
「アジちゃんなら多分出来るんじゃないかな。ランニングで毎日240km走ってるし」
「ちょちょちょ、ちょい待ちライスさんや、今何kmって言いました?」
「え、240km……」
「噓だよね、絶対噓だよね、ウマ娘がそんな距離毎日走れる訳無いじゃん、絶対噓だよ!」
「ウマホのランニングアプリのデータが残ってたから見せて貰ったの。本当に走ってたよ。午前中で240km」
「ちょちょちょ、ちょい待ちライスさんや、今何って言いました?」
「え、午前中で240km……」
「噓だよね、絶対噓だよね、ウマ娘がそんな距離午前中だけで走れる訳無いじゃん、絶対噓だよ!」
「データベースを検索……ヒット、『天丼』を確認しました」
「いやブルボン、分析する所違うでしょ! 午前だけで240kmだよ!? マックイーンでも無理でしょ! ねぇ!?」
「私でも……聢り休息を取りつつ、一日掛けて少し
「時速50km換算でも5時間弱……って事は休憩
「うん、略ノンストップって言ってた。あ、240kmは往復の距離だよ? 片道120kmの道を行って、休憩挟んで帰ってきて240kmって言う……」
「ライス、毒されてない? 大丈夫? 片道120kmでも大概
「高低差の少ないコースでも、ノンストップで120kmはキツイですわね……」
「あ、アジちゃんが走ってるコースは峠道だよ? 一番高い所で、標高860m位だったかな?」
「打っ飛び具合が余計に酷い事に成ったんだけど!? え、厥の子本当にウマ娘!? サイボーグか何かじゃないの!?」
「テイオーさん、呼びましたか?」
「ブルボンのサイボーグってのは綽名と言うか二つ名じゃん! 厥の子本当に生きてるウマ娘なの!?」
「普通のウマ娘だよ?」
「普通のウマ娘は午前中で240kmも走れないんだよ! 然も往復って事は2回山越えしてるって事!? ワケワカンナイヨー!」
「御婆様が会いたがる筈ですわ。話すだけで有益な情報が得られる可能性があるのですから」
「バケモノの話聞いた所で自分に活かせるのかなぁ。自分に適用したら体壊れない?」
「厥だけの距離を走り切れるのですから、スタミナ消費の少ない走り方とか、自然と会得しているのでは?」
「うーん、参考になるのかなぁ」
「厥でね、アジちゃんが走っているコースってもう一つあって、一日掛けて走って、一周400km位有るんだけど……」
「ワケワカンナイヨー!?」
「そんな走って脚大丈夫なの?」
「うん、ピンピンしてる。一度も怪我した事無いって」
「羨ましいですわね……私にもそんな頑丈な脚が有ればもっと……」
「あ、厥のコースの標高は2200m位あったかな……」
「エラー。脳が理解を拒否しています」
「坂路何本とか然う言う次元じゃないよね……」
「俄然気に成りますわね、厥のキョクアジサシさんと言うウマ娘。是非とも会いたいですわ」
「うーん、でもマックイーンさんは大丈夫なのかなぁ……」
「え、如何言う事ですの? メジロ家に対する誤解は解けたのですよね?」
「ラモーヌさんと、アルダンさんと、ライアンさん"は"大丈夫みたいな口振りだったから……他のメジロ家のウマ娘は命を狙ってくるかもしれない、みたいな事言ってたよ」
「幾ら何でも疑り深過ぎではありませんの!?」
「多分、マックイーンさんが単独で会いに行ったら、逃げられるかなぁ……」
「私は何もしてませんわよ!?」
「多分、大丈夫な人以外は全部駄目って思ってるから」
「何厥、ホワイトリスト方式?」
「うん、アジちゃんのホワイトリストに登録されないと会話も儘ならないかな」
「うう、ライアンに頼めば仲介して呉れるかしら……」
「厥が一番無難だと思うな」
「ボクも会って、カイチョーとの関係を聞き出さないと」
「アジちゃん、人気者だなぁ」
「いやいやライスさんや、絶対貴方が原因ですよ」
駄弁り乍ら会場へ向かう五人。そして、会場へ着き各各席へ着き、式が始まった。式次第は
朝食の後、生徒会室へと向かい最終確認を行った。副会長以下他の人員は別の仕事が有るようで、迂拙とルドっさんの二人
会場の入り口で待機を命じられ、「新入生入場」の合図と共に場内へ順次這入って行く。迂拙の座る席は、サーバールームで言うコールドアイルの際であった。聢りと配慮されている。開会の挨拶や祝電披露抔、式次第は恙無く進行し、遂に迂拙の出番となった。名前が呼ばれ、「あ!」と腹から声を出して返事をし、ステージへ向かう。一応演壇の前には、丈の
眼前に目を遣ると、新入生在校生併せて2000名近いのウマ娘が
「
迂拙の口から放たれた薬師如来の真言を理解出来た者は少なく、皆一様に疑問符を浮かべていた。ルドっさんは何やら
偖、先日の打ち合わせで演説の様だと言われたので、演説っぽく腹から声を出して読んで遣ろう。然も先刻名前を呼ばれた時、御叮嚀にも今年の挨拶文は迂拙が総て書いた事迄紹介して呉れたのだ。耳を
「えー、では、
……
本日、
本日、我我新入生は、
然し、我我はトゥインクル・シリーズに関わる、厥の真の意味を未だ解さずにいる
又、先達の打ち
最後に、学園生活を送る上で多くの助援*151を賜るであろう
猶、本年度に於ける迂拙への挨拶文の作成依頼は、理事長である秋川やよい女史の思い付きである事を茲に
一礼し、降壇する。此の入学式にはテレビのカメラも這入っており、今の
入学式を終え、教室へ戻る
「……凄かったね。アジちゃんの考えた挨拶文……」
「ねぇ、
「平仮名が這入っていたから、多分日本語なんじゃない?」
「……口調も豪く堅苦しかったですし、文節毎に呼吸を入れて話すものですから、何と言うか、明治や大正時代の演説を聞いているような気分でしたわ」
「エラーが多発。理解不能。データベースにヒットしない単語が多過ぎます」
「アジちゃんの言う通り、予習しとけば良かった……」
「何か、挨拶文は学園のウェブページに、解説付きで載せるから見てくれって言ってたけど、解説付きでも理解出来る気がしない……」
「然も、最後に理事長の思い付きだって盛大に暴露してたよね」
「入学式であんな暴露を出来るとは、大物ですわね……」
「ブルボンさん、途中からフリーズしてなかった?」
「余りの情報の奔流に、処理が追い付きませんでした」
「いや、皆然うでしょ。ターボは早早に目を回してたし、タンホイザは「無理無理ですぅ」とか言って頭クラクラさせてたし、イクノは何とか耐えてたけど、眼鏡に罅が這入ってた気がする……」
「
「ネイチャさん的には、物には限度があるって思うけどなぁ」
「あ、気付いちゃったんだけどさ……」
「テイオー、如何しましたの?」
「来年の代表挨拶任される子、飛んでもなくハードル高くなってない? 今年みたいな文章書かされるって言うか、書かなきゃ不可ないって言うか……」
「今年は例外だから……来年は復学園が用意する文章を読む形に戻ると思うけど」
「受験生は、厥の様な学園の内部事情は知らないかと」
「結局は、来年になってみない事には分かりませんわね」
「彼の子のSNS、炎上しないと良いけど」
「あ、アジちゃんはSNS、何にも遣ってないから大丈夫じゃないかな。炎上するものが抑抑無いし」
「え、ウマッターもウマスタも遣ってないの?」
「うん、面倒だから遣らないって、ハッキリ言ってた」
「今時の中1とは思えん……」
皆押しも押されもせぬ
偖、入学式を終え、無事に教室へ戻って来た次第である。尤も、周囲は満身創痍のようであるが、違乱*174は彼の文章にGOサインを出した理事長へ御願いしたい。少し許りの休憩を挟み、授業が始まった、と言っても、先ずはクラス全員の自己紹介からである。取り敢えず迂拙は「キョクアジサシです。新潟の田舎から出てきました。好きな言葉は特に此れと言って有りませんが、嫌いな言葉は責任です」と言っておいた。周囲から何とも言えぬ視線を寄越されたが、言葉の通り迂拙に責任を取る気は無い。生徒の自主性を重んじる校風を謳っているのだから、彼の挨拶文も自主性で片付けて呉れ。抔と考えていたが、迂拙の後に自己紹介をしたウマ娘の中に、無視出来ない名前が2つ程挙がった。メジロドーベルとメジロブライトである。
抔と考えている間に自己紹介は終わり、次は学級委員だの何だのの選定である。当然役付きになろうものなら走れる時間が減るので迂拙は御免蒙るが、新入生代表挨拶を任された事もあってか、学級委員長に
斯くして迂拙は役付きから逃れる事が出来た。立候補者が居らず誰がやるのかと揉める事が無い辺り、ウマ娘と言う種族は根本的に善良な者が多いのかもしれない。一通りクラスとして遣るべき事が済み、丁度良く終業の鐘が鳴った。早速学級委員長となったウマ娘が号令を掛け、昼食の時間となった。脱兎の如くメジロ家から逃走したかったが、迂拙の名前はカ行であり、五十音順に席が排列されている現在、出入り口に一番近い席ではない。前後左右にウマ娘が居り、不幸な事に隣のウマ娘に話し掛けられてしまった。此処で無視して逃げようものなら確実に今後の生活に支障を来すので
そして、こんな会話をしていれば当然向こうに猶予を与えてしまう事となり、食堂へ向かおうとすると、件の二人が待ち構えていた。
「ねぇ、鳥渡良い?」
メジロハウスだ!(2回目)