陋見箚記   作:車輛運搬具減価償却累計額

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 復びの2万字超え。注釈の数は180弱。何だこの文章。

 今回は、一人称と三人称とが交互に出てきます。(あらかじ)め御諒承下さい。

 ちらっと総合評価を見てみたら334ptでした。何でや!(ry


十二 詰誳聱牙な詛盟

 結果から言えば、メジロ家の刺客に依る夜駆けや闇討ちは無かった。東涌(とうゆう)*1する朝暾(ちょうとん)*2を見て、命が有る事に心の底から感謝した。此れも総てライス大明神様の御加護の御蔭ですと、跪拝(きはい)*3し奉謝*4したら、「恥ずかしいから止めてー!」と顔を(あから)めてポカポカ叩いてきた。有難う御座います。我我の業界では御褒美です。

 (さて)、入学式当日である。儘教(さもあらばあれ)*5と既に諦観しているからか、不思議と緊張は無い。邌曙(れいしょ)*6に起き出して走りに行く習慣が付いている為、今日も早くに目が覚めたが、有繫(さすが)に汗臭い体で入学式に臨む訳にはいかないのでランニングは自重した。

 朝食を摂りに食堂へ向かうと、昨日のメジロ三人衆が既に席を確保していた。ライアンさんが此方此方(こっちこっち)と手招きしている。

 

「アジちゃんお早う。眠れた?」

「不思議と普通に眠れましたね。緊張や不安から輾転反側(てんてんはんそく)*7するもんだと思ってましたけど。矢っ張り阿婆擦れの迂拙に緊張や不安と言う概念は薄いようです」

「阿婆擦れって悪口の筈なんだけど、自分で言っちゃうんだ……」

「アジさんは阿婆擦れではありませんよ。年齢以上に(しっか)りしているだけです」

「いやぁ、此の死んだ三白眼は阿婆擦れの(それ)ですよ。同級生に「御前とおんなじ目の魚が売ってた!」って言われた事ありますし」

「要するに、死んだ魚の様な目って事ね……。()の同級生も却却(なかなか)口が悪いわね」

「小学生なんてそんなもんですよ。厥に、事実なので如何とも思いませんでしたし。何なら魚の特徴を聞き出して、買って食べましたよ」

「……厥のコメント、過日(こないだ)迄ランドセルを背負ってた子とは思えないわ……」

 

 昨日迄底知れぬ恐怖を感じていたメジロ家の御令嬢相手に、こんな口を利ける辺り、迂拙の心臓は毛だらけなのかもしれない。譚笑(だんしょう)*8しつつ食事を進めるがルドっさんが一向に起きてこない。

 

「ルドっさん、全然起きてこないですね」

「ルドルフは朝が弱いのよ。昨日あれだけ綽名(あだな)で弄ったから、何時もより疲れて余計に起きられないのかもね」

「入学式の日に生徒会長が寝坊は鳥渡まずくない?」

「ルドルフさん、ちゃんと起きられますでしょうか」

「私達が食事を始めてから其処其処経つものね。そろそろ起きてこないと、ルドルフ、食事する時間が無くなるわね」

「よっしゃ、モーニングコール掛けたろ」

 

 ポケットからウマホを取り出し、ルドっさんに電話を掛ける。三十秒程のコールの後、漸く出た。

 

『うーん……誰だぁ……?』

 

 ウマ娘のウマホに於ける会話なので、当然スピーカーモードである。普段の凜凜しさ(など)欠片も感じられない寝惚けた声が返って来た。厥の場に居る全員が口許を抑えて笑いを怺える。

 

『えーっとぉ……今何時だぁ……』

佛說摩訶般若波羅蜜多心經(ぶっせつまかはんにゃはらみたしんぎょう)觀自在菩薩(かんじざいぼさつ)行深般若波羅蜜多時(ぎょうじんはんにゃはらみたじ)照見五蘊皆空(しょうけんごうんかいくう)度一切苦厄(どいっさいくやく)舍利子(しゃりし)色不異空(しきふいくう)空不異色(くうふいしき)色即是空(しきそくぜくう)空即是色(くうそくぜしき)受想行識(じゅそうぎょうしき)亦復如是(やくぶにょぜ)舍利子(しゃりし)是諸法空相(ぜしょほうくうそう)……」

『うわああぁーっ!!?』

 

 悲鳴と共にドッタンバッタンと取り乱した様な音がし、最後にドスンとベッドから落ちた様な音と共に通話が切れた。

 

「よし、こんだけ派手にドタバタやってりゃぁ有繫に起きるでしょ」

「ふふふふっ、ルドルフのあんな声初めて聞いたわ。アジ、貴方面白いのね」

「ルドルフさんも、あんな声出すんですねぇ。意外ですわ」

「ってか、今の何? 呪いの言葉?」

「呪いとは失礼な。般若心経という有難いお経ですよ」

「何でお経なんて覚えてるの……」

「262字しか無い一番短い経の一つなので、頑張れば覚えられるかなと思いました」

「絶対起き抜けの人に聞かせるものじゃないよね……」

「有繫に此処迄露骨に反応するとは思いませんでした」

「久久にこんなに笑ったわ。暫く此れでルドルフを揶揄えるわね」

「会長さん、朝から大変だなぁ……」

「ライアンさん、其処はちゃんとルドりんと呼んであげないと」

「いやルドりんなんて昨日も言って無かったよね」

「然うですね。ちゃんと綽名で呼んであげないと、ルドりんが拗ねてしまいますね」

「アルダンさんは何でそんなに順応が早いの……?」

 

 周囲から「今のって会長さんの声……?」みたいな騒めきが聞こえてくる。生徒会長の株が入学式の日に惨落(さんらく)*9してしまった。だが、迂拙は謝らない。そして、通話が切れてから十分もしないうちにルドっさんが食堂へ現れた。余程慌てて身支度をしたのか、髪に寝癖が若干残っている。迂拙を見つけると一直線に向かって来た。

 

「整備士、貴様か。先刻(さっき)のモーニングコールの呪詛は」

「呪詛ではありません。般若心経と言う仏教の有難い御言葉です」

「厥は如何でもいい。起き抜けにあんな低い声で延延と訳の分からん言葉を聞かせるな。心臓が止まるかと思ったぞ」

 

 大分表情で凄んではいるが、寝癖が有る所為で全く恐くない。

 

「結果的に聢り目が覚めたのだから結果オーライでは?」

「頼むから手段を選んで呉れ。呪いの電話かと思って本気で喫驚(びっくり)したぞ」

「ルドルフ、貴方にアジを責める権利は無いと思うわよ」

「何故だ。起き抜けに呪い殺されそうになったんだぞ」

「電話に出た時のルドルフ、相当寝惚けてたんじゃないの? 普通のモーニングコールじゃあ絶対二度寝してたわよ。あんな腑抜けた声出して」

「腑抜けた声?」

「普段のルドルフさんからは想像出来ない位、気の抜けた声が聞こえてきましたわ」

「そ、そんな声出してたのか?」

「覚えてないんですか?」

「全然記憶に無い……」

「ルドルフ、アジに感謝なさい。御蔭で入学式に寝坊して、株が暴落するのを迴避(かいひ)出来た上に、斯うして朝食を摂る時間も出来たのだから」

「ぐっ……ラモーヌ、(えら)くキョクアジサシの味方をするじゃないか……」

「味方も何も、事実を言っているだけよ。皇帝様が裸の王様になるのを防いだ、有能な後輩の味方をするのは当然じゃない」

「……何も言えん……」

「所でルドルフ、貴方ちゃんと鏡見たの?」

「鏡……時間に余裕が無かったから全然見てないな……若しや……」

「寝癖、未だ残ってるわよ」

「……やってしまった」

「朝食摂ったらちゃんと直しなさい。副会長の敬愛が敬遠に変わるわよ」

「傾延*10が敬遠になってしまいますねぇ」

「え、如何言う事?」

「傾くに延長の延と書く、しきりに慕うという意味のケイエンという単語が有りまして、敬うに遠いと書くケイエンの対義語となるんです。ケイエンという同音異義語で、対義語の組が作れるんですよ。面白いでしょう?」

「ほら、アジに言われているわよ。大体、貴方がちゃんと起きていればこんな事には成らなかったのだから、甘んじて受け入れなさい」

 

 すっかり意気銷沈してしまったルドっさん。耳と尻尾とを萎れさせ乍ら、もそもそと朝食を摂っている。

 

「然う言えばルドっさん。昨日迂拙に訊きたかった事ってなんですか?」

「……ああ、然う言えばそんな事言ったな……。すっかり(わす)れていた。昨日、オグリキャップとシリウスが揃って私の所に来てな、珍しい組み合わせだから何事かと思ったら、ズボンタイプの制服を作るという提案を何としても通して呉れと言われてな」

「おお、オグリさん、早速行ったんですね」

「私以外に知っているのは理事長とたづなさんを除けば君しかいないからな。何か知っているかと訊きたかったんだが、厥の様子を見る限り一枚嚙んでいるな」

()の後ですね、寮の門の所で待ち構えていたタマモさんに拉致されまして、其処でオグリさんと情意投合*11しましてね。一緒にズボンタイプの制服を手に入れようと同盟を結んだんです。オグリさんも、スカートはスースーして落ち着かないらしいですよ」

「成程な。其処迄は解った。だが、何故シリウスがオグリキャップと一緒に行動しているんだ?」

「誰とは言いませんが、何某彼某(なにがしかがし)*12がですね、シリウスシンボリ先輩なら面白がって一枚嚙んで呉れるんじゃないかとオグリさんを指嗾(しそう)*13しましてね。厥の結果じゃないですか?」

「くっ、然う言う事か。やけにシリウスがニヤニヤしていると思ったんだ」

「と、言う訳でシンボリルドルフ生徒会長様、ズボンタイプの制服の件、何卒宜しく御願い致します」

先刻(さっき)あんな事をしておいて、よく無表情でそんな科白を言えるな」

「厥は厥、此れは此れです。阿婆擦れを自称しているんですから、此れ位は何とも」

「ルドルフ、寝坊に関しては貴方の自業自得でしょう」

「それに、何処の牛の骨*14とも知れぬ迂拙だけでなく、皆が認めるアイドルウマ娘のオグリキャップさんが先導して呉れれば、他の生徒も声を上げ易くなると思いますし、提案も通し易くなると思いますよ」

「只の厚顔無恥かと思えば、急に現実的な利点を挙げてくるな……」

「迂拙としては切実な問題なので。閑所(かんじょ)*15へ憚る度にスカートとジャージを脱ぐのって手間なんで。かと言ってスカートだけに成れば確実に卒倒します。ルドっさんも、自分が生徒会長を務めている時に「首席で合格したウマ娘が、制服を着られないが為にデビューすら出来ず退学した」なんて阿呆臭い記録作りたかないでしょ?」

「今度は自分を人質に取って来たか。強かと言うべきか、あくどいと言うべきか……」

「そんなあくどいウマ娘に受験を慫慂(しょうよう)*16してきたのは、他ならぬルドっさんですよ?」

「……何故だろう、正論ではあるが、君が言ってくるとなると受け入れたくない自分が居る……」

 

 迂拙なんぞに目を付けてしまったのが運の尽きである。

 

「はぁ……。今朝の事に関しては箝口令を敷いて、美浦寮内に留めておきたいな……」

好事(こうじ)門を()でず悪事千里を走ると言いますし、どうせ直ぐ広まると思いますよ。周囲に居るのは噂話が大好きな年頃のウマ娘許りですし、目の前には超絶口の軽い阿婆擦れが居ますし」

「頼むからいいふらす様な真似はしないで呉れよ」

「まあ、迂拙は何も言いませんよ迂拙は。只、目の前に居る御三方が如何動くかに就いては迂拙の関知する所では無いので」

「あ、あたしは言いませんから、絶対に!」

「然う言う奴に限って、「此処だけの話」とか言って話広めるんですよね」

「アジちゃぁん! 余計な事言わないでぇ!」

「ふふふっ。ルドルフさんの貴重な御茶目な姿。堪能させて頂きました」

「さあ、此の話を如何料理しましょうか」

「……もう好きにして呉れ」

「相手はメジロ家の御令嬢ですからねぇ。レンガ*17で殴る位では駄目ですね。座布団*18を敷いて漸くと言った所でしょうか」

「こんな下らん事の口封じに3億円も使えるか」

「此れが本当の3億円事件ですか」

(やかま)しい」

 

 顱頂(ろちょう)をスパンと(はた)かれる。ラモーヌさんは腹を抱えて蹲り、必死に笑いを(こら)えている。一方、アルダンさん、ライアンさん、ライスさんは薄穢い隠語の意味が解っておらず、頭の上に疑問符を浮かべている。

 

「丁度良いじゃないですか。水清ければ魚棲まずと言いますし、今迄が完璧過ぎたんですよ。此の一件でイメージが軟化すれば、後輩が寄ってきますよ。多分」

「今迄の努力を全否定されている感じがして、全然喜べん」

 

 人生、努力が一瞬の油断で台無しになる抔良くある事である。TASさんでもない限り、ノーミスで切り抜けるなんざ出来っこないのだ。

 

「そうだ整備士、朝食が終わったら生徒会室に来てくれ。最終確認をしたい」

「あ、はい。分かりました。持ってくのは原稿だけで良いですよね?」

「ああ、厥で良い」

「最終確認?」

「入学式の新入生代表挨拶はキョクアジサシが任されているんだ。式が始まる前に聢り確認をしておきたくてな」

「アジちゃんが今年の代表なんだ。凄いねぇ。有繫、ルドルフ先輩に一目置かれるだけあるね」

「……色色と覚悟しておいた方が良いぞ」

「え、覚悟?」

「内容が色色とアレだからな……色色と」

「如何言う事よ」

「まぁ、其処は聞いてからの御楽しみと言う事で」

 

 しれっと整備士呼びが定着しているが、此れは憂さ晴らしか、将又(はたまた)彼女なりの歩み寄りの一環なのか、迂拙には甄別(けんべつ)出来なかった。

 


 

 ライスシャワーの方寸*19は安堵と嬉怡(きい)*20充盈(じゅうえい)*21していた。昨年迄一緒に寮生活をしていたウマ娘は、未勝利戦を()ち抜く事が出来ず、失意のうちに学園を去った。中央トレセン学園には競走ウマ娘として在籍する以外にも、競走ウマ娘を裨補(ひほ)*22する学科もあり、其方に転籍する事も出来るが、彼女はローカル・シリーズに一縷の望みを賭け、中央を去った。対してライスシャワーはG1レースで3勝を上げている竜蹄(りょうてい)*23。下手に慰めの言葉を掛ければ嫌味となってしまう為、去り行く背に「頑張ってね」と月次(つきなみ)な言葉しか掛けられなかった。爾後(じご)*24、本来二人で使う部屋に独りで居り、誰にも使われず埃を被るだけのベッドや机に寂寥感(せきりょうかん)*25を覚え乍ら生活していた。

 そして年度が改まろうという時期、新入生が這入って来る事をヒシアマゾンから()げられた。此の時のライスシャワーの心境は喜憂半半であった。独り法師(ぼっち)の寂しい寮生活が終わる喜び、そして新入生と上手く遣れるかという憂い。生得(しょうとく)*26の気弱さが災いし、ライスシャワーは初対面の相手と距離を詰めるのが苦手であった。

 先立って送られて来た私物を詰めた段ボールが搬入された時、ライスシャワーは書いてある字から新入生の為人(ひととなり)を推測してみようと考えた。然し、書いてあったのは全く以て知らない字。形こそ整ってはいるが全く読めず、作戦は失敗した。

 結局、入学式の前日、相部屋となる新入生が入寮する日迄、ライスシャワーの方寸には、一抹の不安が蟠屈(ばんくつ)*27した儘であった。そして、新たな寮生活の相手、キョクアジサシと相見えた時、方寸に愕きが充盈した。ライスシャワーの背丈は中央トレセン学園の中でも可成小さい方であったが、相手は目線を(やや)下に向けねばならない程、背丈が(みじか)かった。漸黒みを帯びた赤い双眸、表情の乏しい顔、何処か硬く他人行儀な口調。ライスシャワーは最初、キョクアジサシと上手く遣って行ける自信が全く無かった。()()り乍らも、今対面しているウマ娘は此れから生活を共にする相手。何とか会話を始めようと試みるも、浮かぶ言葉は澴瀯(かんえい)*28する潭水(たんすい)*29(ごと)く脳内をぐるぐるするだけで、口から出なかった。

 然う斯うしている内に、キョクアジサシの方から自己紹介をされ、厥に流される形で会話が始まってしまった。先輩として牽引する筈が、逆に後輩に気を使われてしまい、ライスシャワーは己の腑甲斐無さを痛感した。然も、キョクアジサシはライスシャワーが捷ったレースを覚えており、厥のレース名を出して闁讃(ほうさん)*30してきた。此処で気の利いた返しでも出来ればよかったのだが、レース名を言われた瞬間、観客から投げ掛けられた失望と落胆との視線がフラッシュバックし、俛首(ふしゅ)*31噤口(きんこう)*32してしまった。幾らトレーナーに、ミホノブルボンに、メジロマックイーンに慰められたとはいえ、未だに心の傷が痊癒(せんゆ)*33していないライスシャワーには辛い話題であった。

 然し、直後のキョクアジサシの言動に依り、暗い考えは完全に吹き飛んだ。最初こそは此方を気遣う様に褒めて(もちあ)げるだけであったが、次第に内容が過激になり、最終的には法的手段に訴え出ようと法務部の位置を訊いてきた。慌てて止めに入った瞬間、自分が慰められている事に気付いた。会ってから四半時も経っていない後輩に慰められる抔、先輩失格だと思ったが、当人は何とも思っておらずケロッとしていた。

 其処から会話を重ねる毎に、ライスシャワーは心を開いていった。キョクアジサシは、基本的に落ち着いた言い回しで話し、時折物騒な単語も飛び出してくるが、ちゃんと先輩を立てて呉れる出来た後輩であった。事ある毎に自分を神聖視し、崇め奉ろうとするのは恥ずかしいから止めて慾しいが。そして、そんな彼女が新入生代表挨拶を任された事を知った時は、素直に愕いた。中央トレセン学園は毎年600人以上の新入生が入学してくるが、代表挨拶を任されるのは第一の成績を叩き出した者である。真逆(まさか)同室になった非常に癖の強い後輩が首席合格を果たしていたとは微塵も思っておらず、愕くと同時に尊敬の念も湧いてきた。普通、首席ともなれば言葉の端端(つまづま)*34矜伐(きょうばつ)*35の気が漏れ出るものであるが、キョクアジサシには厥の様な気配は微塵も無く、寧ろ自分を卑下する許りである。中学生に上がった許りなのに、何て出来た子なんだとライスシャワーは感心した。

 入学式が行われる会場へ向かう途次(みちすがら)、ライスシャワーの耳と尻尾は御譏嫌に揺れていた。キョクアジサシが登壇し、挨拶文を読むのだ。然も、読む文章自体もキョクアジサシが総て考えたと言うのだから、先輩として誇らしくあった。

 

「ステータス『御譏嫌』を確認。ライスさん、何やら楽しそうですね」

「あっ、ブルボンさん。うん、今日の入学式、鳥渡楽しみなの」

「何故ですか」

「何何? 何の話?」

「テイオーさん」

「ライスさんが、入学式を楽しみにしていると言うので、厥の理由を訊いていました」

「えー入学式が楽しみ? カイチョーの話以外に聞く所無いじゃん」

「テイオー、有繫に厥は如何かと思いますわよ」

「マックイーンさん」

「だって理事長の話とか、毎年同じ様な内容で詰まんないじゃん」

「先輩が入学式で居眠りなんてしたら、威厳もへったくれもありませんわ。去年だって船を漕いでいましたものね」

「いやぁ、マヤノとゲームで盛り上がっちゃって、気付いたら消灯時間過ぎてたんだよね」

「今年も船を漕いだら、トレーナーさんに言ってはちみーを禁止して貰いますわよ」

「ピエッ。厥だけは勘弁して~」

「はちみーは脇に()いておくとして、ライスさん、何故楽しみなのか訊いても宜しいでしょうか」

「ムッ、はちみーを蔑ろにするのは見過ごせないなぁ」

「えっとね、今日の新入生の代表挨拶をするのが、ライスのルームメイトになった子なんだ」

「無視された……」

「代表挨拶? と言う事は、首席合格した方がライスさんのルームメイトになったという事ですの?」

「うん、キョクアジサシちゃんって言うんだ」

「成程。ルームメイトの方が登壇するから、ライスさんは御譏嫌であると」

「おっ、皆さん御揃いですな~」

「あっ、ネイチャ」

「何の話してたの?」

「ライスのルームメイトになった子が、新入生代表挨拶やるんだって」

「お~代表って事は首席合格って事ですな。(また)キラキラなウマ娘が這入ってきましたねぇ~」

「いや、首席は毎年居るんですから、別に今年が特別って訳では……」

「ううん、今年は特別なの」

「へっ?」

「今年の挨拶文はアジちゃんが全部書いて来たんだって」

「ステータス『愕き』を検出。挨拶文と言う物は、学園側が用意するものでは?」

「普通は然うなんだけど、今年はアジちゃんが書いて呉れって、理事長に言われたんだって」

「如何言う事ですの? 何故今年に限ってそんな事が……」

「入学試験の作文が凄く評価されたから、今年はアジちゃんに書いて貰おうってなったんだって。理事長の思い付きらしいよ」

「首席って事は走りの実力もあって、更に文才もあると。いや~キラキラしてますなぁ」

「首席で合格された方がルームメイトに成り、代表挨拶を任された上に、例年には無い対応をされたと。ステータス『納得』を獲得」

「で、厥のキョクアジサシってどんな子なの?」

「うーん、結構癖が強くて変わってる子かな。私服が作業着だし」

「へっ? 何で作業着が私服なの?」

「女物の服が嫌いなんだって。初めて会った時、上も下も真っ黒で、帽子迄真っ黒だったから、ライス喫驚しちゃった」

「行き成りそんな格好のウマ娘が現れたらそりゃ喫驚しますわな」

「ライスよりも身長ちっちゃいけど、凄く大人びてる子なんだ。ヒシアマさんとも、全然緊張しないで普通に会話してたし」

「え、ライスよりちっちゃいって、身長幾つなの?」

「139cmって言ってた」

「ちっちゃ~。ブルボンよりも20cm以上低いじゃん」

「でも、会長さんと普通に話してたし、ライスみたいにおどおどしないから凄い子だよ」

「新入生なのに会長さんと会話して緊張しないのか。肝が据わってるね」

「うん、最初はルドルフさんって呼んでたけど、昨日の晩御飯の時には、ルドっさんて、綽名で呼んでたよ」

「え、カイチョーに綽名付けたの?」

「うん、それに、会長さんはアジちゃんの事「整備士」って呼んでた」

「いや何で整備士?」

「アジちゃんの小学校での綽名なんだって。アジちゃんは気に入ってるみたいで、ライスにも「整備士って呼んでも良いですよ」って……」

「まぁ本人が気に入ってるなら良いの……か?」

「鳥渡待ってよ! ボクですらカイチョーに綽名で呼ばれた事なんて無いのに、何で新入生の子が綽名で呼ばれる位仲良いの!?」

「アジちゃんの実家がね、お米作ってる農家さんなの。それで、厥のお米がシンボリ家やメジロ家に気に入られてるって言ってたから……」

「……思い出しましたわ。キョクアジサシさん。御婆様が矢鱈と会いたがっていたウマ娘ですわね」

「え、メジロ家に目ぇ付けられるって如何言う事?」

「会えば解るという感じで、理由は教えて呉れませんでしたの。でも、兎に角凄いウマ娘だから会って話がしたいと御婆様が仰ってましたわ」

「それで?」

「何とかメジロ家に御呼びしようと、御茶会やパーティーの招待状を何度も送ってましたわね。でも、今迄一度も来た事はありませんわ」

「え、メジロ家の誘いを(ことわ)るって、大丈夫なの? 厥」

「うん、厥が原因で、昨日の晩御飯の時、アジちゃん死にかけてた」

「何がありましたの!?」

「食堂で、ラモーヌさんと、アルダンさんと、ライアンさんの三人に一度に鉢合わせしちゃって……アジちゃん、完全にメジロ家に殺されるって思ってた。顔真っ青にしてブルブル(ふる)えてたし」

「あちゃー、矢っ張りメジロ家の誘いを蹴ると然うなるのか……」

「いやメジロ家はそんな野蛮な家ではありませんわ!?」

()の時のアジちゃん凄かったな……厥の場に居合わせた会長さんの事「裁判長」って呼んでたし、辞世の句を書きそうになったし」

「何厥のカオス」

「バッドステータス『混乱』。話についていけません」

(あれ)は現場を見てないと説明し辛いかな……。色色あったけど、何とかメジロ家が(ゆる)して呉れたってアジちゃんが理解して、漸く場が収まったって感じかな」

「ああ、貰して貰えたんだね」

「一番酷い時は、白目剝いて痙攣してた。余っ程恐かったんだと思うよ」

「……メジロ家って、そんなブラック企業の圧迫面接みたいな事するんだ」

「寧ろヤクザの借金の取り立ての方が近いんじゃない? 下手すりゃドラム缶に混凝土(コンクリ)詰め、みたいな」

「メジロ家をそんな風に思うのは止めて下さいまし! 絶対に向こうが変に勘違いしているだけですわ!」

「で、色色あって誤解も解けてアジちゃんが元に戻ったから、何でアジちゃんが凄いウマ娘なのかって話になったの」

先刻(さっき)のカオスの所為で、一番気になる所がオマケみたいな扱いになってる……」

「私も一番気になる所ですわね。余程のウマ娘でもない限り、御婆様があそこ迄執着する事は有りませんわ」

「で、厥のチビッコの何が凄いの?」

「幼稚園児の時から自分の走りを研究していて、小学生になってからは等速ストライドの研究を始めたんだって」

「等速ストライドって、彼のセクレタリアトが使ってたって奴?」

「うん、アジちゃんが普段走ってるランニングコース、カーブが多くて一一減速するのが嫌だったから、何とか減速せずにクリア出来ないかなって。厥で等速ストライドに行きついたらしいよ」

「うん、意味分かんない。カーブって減速するのが普通でしょ」

「此れが効率厨って奴か……」

「それで、実際等速ストライドを使う事は出来るんですの?」

「アジちゃんが言うには、完成にちかづいてはいるって言ってたけど。実際に走ってる所はライスも見た事無いから分かんない……」

「適当に噓吐いてるだけなんじゃないの?」

「いや、首席で入学出来る位なんだから、使えるんじゃないの?」

「入試の1000m走では、2着に2秒差で捷ったって会長さんが言ってたけど」

「……何厥のテスコガビーさんみたいな着差」

「等速ストライドでコーナーを減速せずに突っ切れるなら、厥の着差も納得出来ますけど……」

「いやいや、1000m減速せずに走り切るって、入試って事は厥の時小学生でしょ? そんな事出来んの?」

「アジちゃんなら多分出来るんじゃないかな。ランニングで毎日240km走ってるし」

「ちょちょちょ、ちょい待ちライスさんや、今何kmって言いました?」

「え、240km……」

「噓だよね、絶対噓だよね、ウマ娘がそんな距離毎日走れる訳無いじゃん、絶対噓だよ!」

「ウマホのランニングアプリのデータが残ってたから見せて貰ったの。本当に走ってたよ。午前中で240km」

「ちょちょちょ、ちょい待ちライスさんや、今何って言いました?」

「え、午前中で240km……」

「噓だよね、絶対噓だよね、ウマ娘がそんな距離午前中だけで走れる訳無いじゃん、絶対噓だよ!」

「データベースを検索……ヒット、『天丼』を確認しました」

「いやブルボン、分析する所違うでしょ! 午前だけで240kmだよ!? マックイーンでも無理でしょ! ねぇ!?」

「私でも……聢り休息を取りつつ、一日掛けて少し(ずつ)距離を稼げば行けるかもしれませんが……午前中だけで240kmは……」

「時速50km換算でも5時間弱……って事は休憩(ほぼ)無し?」

「うん、略ノンストップって言ってた。あ、240kmは往復の距離だよ? 片道120kmの道を行って、休憩挟んで帰ってきて240kmって言う……」

「ライス、毒されてない? 大丈夫? 片道120kmでも大概()っ飛んでるからね?」

「高低差の少ないコースでも、ノンストップで120kmはキツイですわね……」

「あ、アジちゃんが走ってるコースは峠道だよ? 一番高い所で、標高860m位だったかな?」

「打っ飛び具合が余計に酷い事に成ったんだけど!? え、厥の子本当にウマ娘!? サイボーグか何かじゃないの!?」

「テイオーさん、呼びましたか?」

「ブルボンのサイボーグってのは綽名と言うか二つ名じゃん! 厥の子本当に生きてるウマ娘なの!?」

「普通のウマ娘だよ?」

「普通のウマ娘は午前中で240kmも走れないんだよ! 然も往復って事は2回山越えしてるって事!? ワケワカンナイヨー!」

「御婆様が会いたがる筈ですわ。話すだけで有益な情報が得られる可能性があるのですから」

「バケモノの話聞いた所で自分に活かせるのかなぁ。自分に適用したら体壊れない?」

「厥だけの距離を走り切れるのですから、スタミナ消費の少ない走り方とか、自然と会得しているのでは?」

「うーん、参考になるのかなぁ」

「厥でね、アジちゃんが走っているコースってもう一つあって、一日掛けて走って、一周400km位有るんだけど……」

「ワケワカンナイヨー!?」

「そんな走って脚大丈夫なの?」

「うん、ピンピンしてる。一度も怪我した事無いって」

「羨ましいですわね……私にもそんな頑丈な脚が有ればもっと……」

「あ、厥のコースの標高は2200m位あったかな……」

「エラー。脳が理解を拒否しています」

「坂路何本とか然う言う次元じゃないよね……」

「俄然気に成りますわね、厥のキョクアジサシさんと言うウマ娘。是非とも会いたいですわ」

「うーん、でもマックイーンさんは大丈夫なのかなぁ……」

「え、如何言う事ですの? メジロ家に対する誤解は解けたのですよね?」

「ラモーヌさんと、アルダンさんと、ライアンさん"は"大丈夫みたいな口振りだったから……他のメジロ家のウマ娘は命を狙ってくるかもしれない、みたいな事言ってたよ」

「幾ら何でも疑り深過ぎではありませんの!?」

「多分、マックイーンさんが単独で会いに行ったら、逃げられるかなぁ……」

「私は何もしてませんわよ!?」

「多分、大丈夫な人以外は全部駄目って思ってるから」

「何厥、ホワイトリスト方式?」

「うん、アジちゃんのホワイトリストに登録されないと会話も儘ならないかな」

「うう、ライアンに頼めば仲介して呉れるかしら……」

「厥が一番無難だと思うな」

「ボクも会って、カイチョーとの関係を聞き出さないと」

「アジちゃん、人気者だなぁ」

「いやいやライスさんや、絶対貴方が原因ですよ」

 

 駄弁り乍ら会場へ向かう五人。そして、会場へ着き各各席へ着き、式が始まった。式次第は恙無(つつがな)く進行し、(いよいよ)キョクアジサシの出番となった。直後、ライスシャワーは後悔する事となった。予習をしておけば良かったと。

 


 

 朝食の後、生徒会室へと向かい最終確認を行った。副会長以下他の人員は別の仕事が有るようで、迂拙とルドっさんの二人(きり)であった。奇しくも最初に話した時と同じ状況である。彼の時は生きた心地がしなかったなぁと感慨に耽りつつ、新入生が座る場所から壇上へ向かう経路抔を確認し、問題が無い事を確認した。新入生だから多少の失敗は許されると言われたが、行き成り衆人環視の中で失敗はしたくない。頭の中で反芻しつつ、迂拙が所属する事となる教室へ向かう。一度此処で担任が説明し、会場へ向かう手筈になっている。会場へは列を成して行く訳だが、周りのウマ娘はちゃんと成長する事が出来た者許りで、前後隣と完全に囲まれている。スカートの下に穿いているジャージへの怪訝な視線も何時も通りである。

 会場の入り口で待機を命じられ、「新入生入場」の合図と共に場内へ順次這入って行く。迂拙の座る席は、サーバールームで言うコールドアイルの際であった。聢りと配慮されている。開会の挨拶や祝電披露抔、式次第は恙無く進行し、遂に迂拙の出番となった。名前が呼ばれ、「はい!」と腹から声を出して返事をし、ステージへ向かう。一応演壇の前には、丈の(みじか)い迂拙の為に踏み台が設置されていたが、踏み台に上がって猶、マイクに口が届かなかった。自分でマイクの高さを下げ、「小さいんで……」と一言。瞬間、会場の彼方此方から憨笑(かんしょう)*36が漏れた。摑みはバッチリである。

 眼前に目を遣ると、新入生在校生併せて2000名近いのウマ娘が井然(せいぜん)*37と座っており壮観である。加えて、新入生の親も会場に這入っている為、人数は相当なものである。不図、迂拙の親は何処に居るかと思い回視*38したら、直ぐに見つかった。これだけのウマ娘が居るにも関わらず、白毛という物は珍しく非常に目立っていた。如何やら迂拙の視線に気付いたらしく、小さく手を振っている。三脚を立てカメラのレンズを此方に向けていた。偖、一応何がしか喋ってマイクの音量を確認しておこう。

 

(おん)呼嚕呼嚕(ころころ)旋荼利(せんだり)摩登枳(まとうぎ)薩婆訶(そわか)*39(おん)呼嚕呼嚕(ころころ)旋荼利(せんだり)摩登枳(まとうぎ)薩婆訶(そわか)、よし」

 

 迂拙の口から放たれた薬師如来の真言を理解出来た者は少なく、皆一様に疑問符を浮かべていた。ルドっさんは何やら顳顬(こめかみ)を押さえ俯いている。隣の(やや)黒い鹿毛のウマ娘が心配そうに覗き込んでいるが、彼女は実技試験の時に生徒会室に居た()のウマ娘と同一人物なのだろうか。まあ、厥は今は如何でも良い。

 偖、先日の打ち合わせで演説の様だと言われたので、演説っぽく腹から声を出して読んで遣ろう。然も先刻名前を呼ばれた時、御叮嚀にも今年の挨拶文は迂拙が総て書いた事迄紹介して呉れたのだ。耳を()穿(ぽじ)って良く聞くが良い。迂拙の一世一代の演説である。

 

「えー、では、儳越(ざんえつ)*40乍ら、読ませて頂きます。

 

 ……暄暖(けんだん)*41たる韶気(しょうき)*42齎送(せいそう)*43せし青風(せいふう)*44が習習*45と頰を撫ぜ、催花雨(さいかう)*46甲坼(こうたく)*47を、啓蟄(けいちつ)*48急趣(きゅうそく)*49し、嵱嵷(ようしょう)*50せし遠巒(えんらん)*51(ことごと)青翠(せいすい)*52を纏い、嫩緑(どんりょく)*53の目に染みる時節となりし仲呂(ちゅうりょ)*54上澣(じょうかん)*55の本日、我我新入生を迎え入れんと斯様な盛儀(せいぎ)*56を執り行って頂いた事に対し、深甚(しんじん)*57なる謝意を表す! 本日を以て、我我新入生xxx名は、日本ウマ娘トレーニングセンター学園の門戸を潜る、厥の允許(いんきょ)*58を得た!

 本日、(ここ)に何等軫憂(しんゆう)*59を抱える事無く列席出来るのは、虧殺(きさい)*60所怙(しょこ)*61賚予(らいよ)*62せし無償の恵沢(けいたく)*63が故である! 此の恵沢無くして今の我我は存在し得ない! 故に、寸草春暉(すんそうしゅんき)*64(かた)きを知って猶、此の海壑(かいがく)*65(ごと)鴻恩(こうおん)*66に報礼*67せねばならない! 此の思いは、学園生活を送る上での胴骨(どうぼね)*68杠轂(こうこく)*69の一つとなろう!

 本日、我我新入生は、(とも)に研鑽し、切磋(せっさ)*70し、瑩磨(えいま)*71し、孳孳(しし)*72し合える無二の夥伴(かはん)*73を得た! そして、トゥインクル・シリーズを走り、或いは裨補(ひほ)すると言う、予てより庶幾(しょき)*74せし道を歩む啐啄(そったく)の機*75を得た! 更に、洞轇轕(どうこうかつ)*76たる走りの世界の堂奥(どうおう)*77臻極(しんきょく)*78せん事を、軮軋(おうあつ)*79灝瀚(こうかん)*80たるウマ娘なる種族の世界を涵蓄淵邃(かんちくえんすい)*81せん事を悕求(けく)*82した!

 然し、我我はトゥインクル・シリーズに関わる、厥の真の意味を未だ解さずにいる黄口児(こうこうじ)*83である事を拳拳服膺(けんけんふくよう)*84せねばならない! 越剣(えつけん)性利(せいり)なるも淬礪(さいれい)するに(あら)ざれば(するど)からず*85現今(げんこん)*86、心技体、厥の総てに於いてほまがつあつ*87にして具足*88を得ぬ不堪(ふかん)*89の身であり、勖厲(きょくれい)*90焠掌(さいしょう)*91ややこうこう*92の必要大いに有り! 此れより歩みたる道は嶮岨(けんそ)*93にして坦夷(たんい)*94ならず、上慢の(はたほこ)*95高ずれば(すなわ)*96撓北(どうほく)*97を喫し衄挫(じくざ)*98に遭う! (あに)*99(おご)らんや! 故に、倨傲(きょごう)*100擺撥(はいはつ)*101驕泰(きょうたい)*102(にく)*103謙退(けんたい)*104瞻仰(せんぎょう)*105儆惕(けいてき)*106()*107荏苒(じんぜん)*108として居諸(きょしょ)*109徒過(とか)*110する事無く、日日並(かがな)べて*111攻玉(こうぎょく)*112攻究*113邁往(まいおう)*114せねばならない!

 盤根錯節(ばんこんさくせつ)()わずんば何を以て利器を()かたんや*115との諺語(げんご)*116に有る通り、道を歩むに際し嬰遘(えいこう)*117したる(あまた)艱苦(かんく)*118酸楚(さんそ)*119は、躝轢(らんれき)*120すれば必ずや我我を高みへと躋登(せいとう)*121させるであろう!

 ()()り乍ら*122も、我我一箇(いっこ)の力は矮小にして、精神は嶮岨たる道を歩むには臲卼(げつごつ)*123たり! 一翳(いちえい)(まなこ)にあれば空華乱墜(くうげらんつい)*124! 隘路(あいろ)*125に迷い込む原因(はなは)だ多し! ていえい*126屯蹇(ちゅんけん)*127する事もあろう、鎩翮(さっかく)*128そうさつ*129する事もあろう、失路*130如法暗夜(にょほうあんや)*131(うち)とつろつ*132する事もあろう! 厥の遭際(そうさい)*133(おちい)りし時は、先達諸姉(しょし)*134より慺慺(るる)*135たる誘掖(ゆうえき)*136瑣砕細膩(ささいさいじ)*137たる提撕(ていせい)*138優渥(ゆうあく)*139たる啓迪(けいてき)*140を賜れれば幸甚(こうじん)*141である! (しこう)して*142将錯就錯(しょうしゃくしゅしゃく)*143した暁には、慥慥爾(ぞうぞうじ)*144として(あらた)めねばならない!

 又、先達の打ち()てた丕績(ひせき)*145、逸話として残りし高蹤(こうしょう)*146に敬意を表すると共に、厥に企及(ききゅう)*147せんと凌躐(りょうりょう)*148せんとする気概を忘れてはならず、伝統を纘紹(さんしょう)*149し次代へと蟬聯(せんれん)*150させる責任も、又忘れてはならない!

 最後に、学園生活を送る上で多くの助援*151を賜るであろう諸賢(しょけん)*152への万謝(ばんしゃ)*153の念を絶えず忘れず、又、一切の忖度(そんたく)*154談合を悪斁(おえき)*155し、全霊を以て勍敵(けいてき)*156と鎬を削り、角逐(かくちく)*157し、輸贏(しゅえい)*158を、(くびき)を争い*159、厥の姿をして闔国(こうこく)*160黔黎(けんれい)*161に娯楽を供せしめ、同時に(おの)がじし*162素懐(そかい)*163本懐*164を遂げんと精励恪勤(せいれいかっきん)*165摻作勤緊(さんさくきんきん)*166する事を、(ここ)天神地祇(てんしんちぎ)*167詛盟(そめい)*168し、以て代表挨拶とさせて頂く!

 

■■(元号)xx年竜集(りょうしゅう)*169癸未(みずのとひつじ)四月吉日(きつじつ)! 新入生代表 キョクアジサシ!

 

 猶、本年度に於ける迂拙への挨拶文の作成依頼は、理事長である秋川やよい女史の思い付きである事を茲に附言(ふげん)*170す! 以上!」

 

 一礼し、降壇する。此の入学式にはテレビのカメラも這入っており、今の詰誳聱牙(きっくつごうが)*171極まりない挨拶文は、直ぐに闔国の黔黎の知る所となるだろう。演説中、文面は段落毎に迂拙の後ろに映されていたが、理解出来た者は誰も居ないであろう。新入生は疎か在校生にすら目を回している者が幾人も見受けられた。然し責任は総て理事長にある。迂拙の与り知る所では無い。最後に理事長の思い付きである事を暴露したが、厥の際、理事長の顔は驚愕に染まっていた。こんな面倒事を寄越して呉れた事への細やかな仕返しである。実にスッキリした。自分の席へ戻って来ると、隣のウマ娘は目を回していた。あらら。

 


 

 入学式を終え、教室へ戻る途次(みちすがら)、先程の五人は皆一様に潞病(ろへい)*172し切った表情をしていた。真逆(まさか)彼の様な難解極まりない文章を聞かされるとは毫末(ごうまつ)*173も思っておらず、油断していた体の芯を衝撃が貫いていった。

 

「……凄かったね。アジちゃんの考えた挨拶文……」

「ねぇ、(あれ)って日本語? 中国語じゃないの?」

「平仮名が這入っていたから、多分日本語なんじゃない?」

「……口調も豪く堅苦しかったですし、文節毎に呼吸を入れて話すものですから、何と言うか、明治や大正時代の演説を聞いているような気分でしたわ」

「エラーが多発。理解不能。データベースにヒットしない単語が多過ぎます」

「アジちゃんの言う通り、予習しとけば良かった……」

「何か、挨拶文は学園のウェブページに、解説付きで載せるから見てくれって言ってたけど、解説付きでも理解出来る気がしない……」

「然も、最後に理事長の思い付きだって盛大に暴露してたよね」

「入学式であんな暴露を出来るとは、大物ですわね……」

「ブルボンさん、途中からフリーズしてなかった?」

「余りの情報の奔流に、処理が追い付きませんでした」

「いや、皆然うでしょ。ターボは早早に目を回してたし、タンホイザは「無理無理ですぅ」とか言って頭クラクラさせてたし、イクノは何とか耐えてたけど、眼鏡に罅が這入ってた気がする……」

先刻(さっき)、ライスが癖が強いって言ってたけど、癖強過ぎじゃない?」

「ネイチャさん的には、物には限度があるって思うけどなぁ」

「あ、気付いちゃったんだけどさ……」

「テイオー、如何しましたの?」

「来年の代表挨拶任される子、飛んでもなくハードル高くなってない? 今年みたいな文章書かされるって言うか、書かなきゃ不可ないって言うか……」

「今年は例外だから……来年は復学園が用意する文章を読む形に戻ると思うけど」

「受験生は、厥の様な学園の内部事情は知らないかと」

「結局は、来年になってみない事には分かりませんわね」

「彼の子のSNS、炎上しないと良いけど」

「あ、アジちゃんはSNS、何にも遣ってないから大丈夫じゃないかな。炎上するものが抑抑無いし」

「え、ウマッターもウマスタも遣ってないの?」

「うん、面倒だから遣らないって、ハッキリ言ってた」

「今時の中1とは思えん……」

 

 皆押しも押されもせぬ竜蹄(りょうてい)である筈だが、此の時許りはレースの時の様な覇気は微塵も無かった。

 


 

 偖、入学式を終え、無事に教室へ戻って来た次第である。尤も、周囲は満身創痍のようであるが、違乱*174は彼の文章にGOサインを出した理事長へ御願いしたい。少し許りの休憩を挟み、授業が始まった、と言っても、先ずはクラス全員の自己紹介からである。取り敢えず迂拙は「キョクアジサシです。新潟の田舎から出てきました。好きな言葉は特に此れと言って有りませんが、嫌いな言葉は責任です」と言っておいた。周囲から何とも言えぬ視線を寄越されたが、言葉の通り迂拙に責任を取る気は無い。生徒の自主性を重んじる校風を謳っているのだから、彼の挨拶文も自主性で片付けて呉れ。抔と考えていたが、迂拙の後に自己紹介をしたウマ娘の中に、無視出来ない名前が2つ程挙がった。メジロドーベルとメジロブライトである。真逆(まさか)メジロ家の網がこんな所に迄及んでいたとは思いもしなかった。あれか? 東京高裁では無罪判決が出たが、名古屋高裁では有罪判決が出たとか、然う言う類の事が起こっているのか? 急に手汗が滲み出て来た。絶対に休憩時間に成ったら迂拙の下へ二人揃って来る奴である。終業の号令と同時に逃走を開始出来るか?

 抔と考えている間に自己紹介は終わり、次は学級委員だの何だのの選定である。当然役付きになろうものなら走れる時間が減るので迂拙は御免蒙るが、新入生代表挨拶を任された事もあってか、学級委員長に推輓(すいばん)*175されてしまった。然も担任に。当然全力で抵抗した。新入生代表と言う物は成績で決定されるものであり、人間性は考慮されない。迂拙の様な周囲への影響を微塵も考慮しない盆暗よりも、より性格的に相応しいウマ娘が居る筈であると。迂拙に任せようものなら二日で学級崩壊させる自信があると。所在(あらゆる)言葉で自分を貶めた結果、担任も勢いに()され、一先ず迂拙が自動的に学級委員長になるのは避けられた。じゃあ他に誰か遣りたい者は居ないかと担任が問うと、何と一人立候補したのである。実に素晴らしい人間性である。そして、他に立候補者が居なかった為、学級委員長は彼女が任命された。此れにて一安心と行きたい所だが、他にも委員と名の付く物は色色ある。他の委員に就いては総て立候補者を募る形となったが、迂拙は頑として手を上げなかった。幸いにも立候補者が居たり、既に出来上がっていた仲良しグループの中で「アンタやってみたら?」という様な推輓がなされ、迂拙に御鉢が回ってくる事は無かった。実に有り難い。

 斯くして迂拙は役付きから逃れる事が出来た。立候補者が居らず誰がやるのかと揉める事が無い辺り、ウマ娘と言う種族は根本的に善良な者が多いのかもしれない。一通りクラスとして遣るべき事が済み、丁度良く終業の鐘が鳴った。早速学級委員長となったウマ娘が号令を掛け、昼食の時間となった。脱兎の如くメジロ家から逃走したかったが、迂拙の名前はカ行であり、五十音順に席が排列されている現在、出入り口に一番近い席ではない。前後左右にウマ娘が居り、不幸な事に隣のウマ娘に話し掛けられてしまった。此処で無視して逃げようものなら確実に今後の生活に支障を来すので酬酢(しゅうさく)*176する羽目になった。如何やってあんな文章を書いたのか抔と色色訊かれたが、(あれ)は理事長から依頼されたものであり、迂拙の本意ではなかった抔と適当に答えておいた。最後に此れから宜しくね、と屈託の無い笑顔と共に握手を求められてしまい、心の鬼に身を責められる事となった。何故迂拙に対しそんな笑顔を向けられるのか、善人が過ぎやしないか。

 そして、こんな会話をしていれば当然向こうに猶予を与えてしまう事となり、食堂へ向かおうとすると、件の二人が待ち構えていた。

 

「ねぇ、鳥渡良い?」

 

 メジロハウスだ!(2回目)

*1
東から太陽が昇り出る事。

*2
朝の太陽。あさひ。

*3
ひざまずき身を屈めて礼拝する事。

*4
御礼を申し上げる事。

*5
どうともなるがよい。ままよ。

*6
夜明け。明け方。

*7
心配したり思い悩んだりして眠れず何度も寝返りを打つ事。

*8
=談笑

*9
相場が一時に予想外の安値に下落する事。

*10
しきりに慕う事。傾慕。

*11
御互いの気持ちが良く通じ合う事。

*12
だれそれ

*13
意図してそそのかす事。けしかける事。

*14
「何処の馬の骨」の別の表現。日本国語大辞典、故事俗信ことわざ大辞典に記載あり。

*15
便所。

*16
傍らから誘いすすめる事。

*17
1000万円の隠語。贈収賄の時などで使われる。

*18
1億円の隠語。贈収賄の時などで使われる。

*19
心。心中。胸中。

*20
たのしみ喜ぶ。

*21
一杯に満ちる事。

*22
助け補う事。助け。

*23
優れた馬。駿馬。

*24
その後。それ以来。

*25
心が満ち足りず、もの寂しい事。

*26
生まれつき持っている事。生まれつき。

*27
気持ちや考えが心の中にわだかまっている事。

*28
水の渦巻き巡る形容。

*29
深く淀んだ水。

*30
ほめる。褒讃。

*31
うつむく事。頭をさげる事。

*32
口をつぐむ。物を言わない。

*33
快癒。なおる。

*34
ある物事の一部分一部分。物事のはしばし。

*35
他人よりも優れていると自負し、おごりたかぶる事。

*36
笑ってはいけない時に笑う事。

*37
乱れた所がなく正しく整っている様。

*38
見回す事。

*39
薬師如来を念ずる時に唱える真言。

*40
差し出る。分を越えてでしゃばる。

*41
あたたかな事。

*42
春の気。

*43
持って行く。届てやる。

*44
青々とした草を吹き来る風。春の風。

*45
風が和やかに吹く様。

*46
春の雨。はるさめ。

*47
草木が芽を出す事。実生(みしょう)。

*48
冬ごもりの虫が地中から這い出る事。

*49
にわかにうながす。

*50
山峰の高く低く群がっている形容。

*51
遠くに見える山々。

*52
樹木などが青々とみどり色をしている事。青々とした樹木や山。

*53
芽生えたばかりの若葉の緑。

*54
陰暦四月の異称。

*55
上旬。

*56
盛大な儀式。

*57
意味や気持ちなどが非常に深い事。

*58
認め許す事。

*59
思い悩む事。心配。

*60
おかげで。幸に。

*61
頼りにするものの意から、親の事。

*62
物をたまう事。与える事。

*63
恩恵を受ける事。めぐみ。

*64
父母の恩は大きくその万分の一も報いる事が難しい事の譬え。

*65
恩恵の深大な譬え。

*66
おおきな恩恵。大恩。

*67
他人から受けた恩に報いる事。

*68
心構え。覚悟。

*69
物の中心を言う。

*70
道徳・学問などに勉め励む事。

*71
朋友などが互いに励まし合う事。

*72
物事に熱心に励む様。

*73
親しい者何人かの集まり。仲間。グループ。

*74
こいねがう事。

*75
啐啄の機……物事を成し遂げるための、得難いチャンスの譬え。

*76
広大な様。

*77
学問・技芸などで、その道の最も奥深い教えや境地。奥義。

*78
極所に至る。

*79
広大で限り無い様。

*80
果てしなく広い様。物事の範囲が広大な事。

*81
十分に深く研究する事。

*82
願い求めること。ききゅう。

*83
年若く経験の浅い者。青二才。

*84
常に心に銘記して、決して忘れない事。

*85
越剣は性利なるも淬礪するに非ざれば銛からず……人は天性怜悧であっても、学問の功を積まなければ、世の用とならない譬え。

*86
いま。現在。

*87
全からぬ様。

*88
十分に備わっている事。揃っている事。

*89
技芸が未熟である事。又、その人。

*90
精を出して努め励む事。

*91
困苦忍耐して勉学する譬え。

*92
つとめる。

*93
道などが険しい様。

*94
土地などの平らな事。平坦。

*95
上慢の幢……増上慢の心の激しい事。

*96
たやすく。すぐに。

*97
戦いに敗れる事。

*98
挫折。

*99
どうして。なんで。下に反語の助詞「や」を伴う。

*100
おごりたかぶっている事。

*101
払い除け、振り捨てる。

*102
たかぶり、ほしいままな事。

*103
不快に感じて嫌だと思う。酷く嫌がる。

*104
へりくだって控え目にする事。

*105
仰ぎ尊ぶ事。

*106
いましめおそれる。慎み深くする。

*107
よしとする。正しいとする。

*108
なす事の無いまま歳月が過ぎる様。

*109
日月を言う。光陰。

*110
無駄に時を過ごす事。無為に過ごす事。

*111
日数を重ねて。

*112
玉を磨く事。転じて、知識を磨く事。

*113
学問や芸術などをおさめきわめる事。

*114
勇んでひたすら進む事。

*115
盤根錯節に遇わずんば何を以て利器を別かたんや……大困難に遭遇して初めてその人の力量が分かる譬え。

*116
ことわざ。格言。

*117
触れあう。かかりあう。

*118
悩み苦しむ事。難儀。辛苦。

*119
悲しみいたむ事。悲しくつらい事。

*120
踏みこえる。

*121
のぼる。又、成就する。

*122
それはそうであるけれども。

*123
心がぽつんと飛び出て不安定な様。恐れあやぶむ様。

*124
一翳眼にあれば空華乱墜す……心に妄念があると、心が乱れて正しい認識が出来ない事の譬え。

*125
支障となるもの。障害。

*126
志を得ない様。

*127
行き詰まって悩む。うまく行かずに悩み苦しむ。

*128
志を失う譬え。

*129
心おこたる。は慒の本字。

*130
進む道を失う事。失意の状態に立つ事。

*131
真っ暗闇の事。

*132
行き悩む。たちもとおる。

*133
その事柄に接する場合。おり。時。

*134
多くの女性を指す語。

*135
懇ろに気を配る様。

*136
導き助ける事。輔佐。

*137
情のこまやかな事。

*138
後進者を教導する事。

*139
懇ろに手厚い事。

*140
教え導く事。啓発する事。

*141
何よりのしあわせ。

*142
そうして。そして。

*143
誤りを誤りとして認識する事。

*144
言った事を直ぐ実行する様。

*145
大きな手柄。大功。

*146
高尚な行跡。気高い行跡。

*147
努力して追いつく事。匹敵する事。

*148
踏み越える。

*149
受け継ぐ。継承。

*150
連なる。続く。

*151
たすけ。助勢。

*152
読者や聴衆、力を貸してくれる人など多数の人に対する敬称。皆様。

*153
深く感謝する事。厚く礼を言う事。

*154
推し量って相手に配慮する事。

*155
忌み嫌う。嫌う。

*156
つよい敵。強敵。

*157
互いに競争する事。

*158
勝ち負け。勝負。

*159
軛を争う……互いに張り合って勝負を争う。

*160
全国。国全体。国中。

*161
人民。庶民。

*162
めいめい。それぞれ。各自。

*163
平素の願い。かねてからの願い。

*164
かねてからの願い。本望。本意。

*165
力を尽くして学業や仕事に励む事。

*166
働き勤める。

*167
天と地全ての神々。

*168
誓う事。誓約する事。

*169
年号の下に付け、下に干支を伴って記す語。

*170
本文や主文、あるいはそれまでの発言に付け加えて言う事。

*171
文章が難解で堅苦しく、理解し難い事。

*172
疲れる事。

*173
ほんの少し。

*174
苦情を述べる事。

*175
人を推挙する事。

*176
応対する事。

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