転生
この言葉はゲームやアニメ、小説投稿サイトなどで何度も見てきた。
やれ異世界に転生して最強となって無双する
やれ乙女ゲーの悪役令嬢に転生してバッドエンドを回避するため主人公たちと仲良くなる
やれモンスターに転生して人間に殺されないよう必死に生きる
自分だって若い頃は何度か妄想したりしたが
まさか本当に転生するとは思わなかった
まぁ転生先は前世と同じ、なんの変哲もない現代社会の日本なんですけど
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「お兄、起きてるー?」
「うん?起きてるぞー」
部屋でいつものように作業していると、部屋の扉の方から自分を呼ぶ声とノックが聞こえてきた。
そのため返事をしてやると、扉が開き一人の少女が入ってきた。
「おはよー...ってあー!お兄また徹夜してたでしょ!」
「何言ってんだ、今はまだ夜の...うそん」
少女の言葉に反応して部屋の時計を見てみると、そこには短い針が7の位置を示しており。カーテンから光が漏れていた。
「もー...今日は朝から全校集会あるんでしょ?話の途中で寝ちゃっても知らないよ?」
「いや、俺もキリがいい所で切り上げるつもりだったんだよ...けどつい」
「それこの前の期末テスト前日でも言ってたじゃん...仕方ないなーお兄は」
そう言って呆れながらため息を吐いている少女は妹の
こんな自己管理の出来ない自分なんかには勿体無いくらいよくできた
いや「よくできた」なんて言葉に収まる妹じゃないな
「そういえば、妃愛が声をしてる...北条氏康ちゃんだっけ?当たったわ」
「え、本当!?もしかして私の声を聞きたくてガチャ回してくれた?」
「まぁそれもあるけど、この子の担当絵師が『ののかさん』だったから」
「そこは私の声を聞くためだけに天井覚悟で引いたって言ってくれた方が私的にうれしかったなー」
その会話の通り、うちの妹はソシャゲやアニメで引っ張りだこになるほどの大人気声優。「よくできた」を通り越して「世界有数」の妹だ。
芸名は『小泉妃愛』、ネット上では『ひよりん』の愛称で多くの人に愛されている。
「いや妃愛的にどうなのよ、目の前で身内が自分の担当キャラを愛でたりするのって」
「私は自分の努力が褒められてる気がするから嬉しいよ?」
「さいですか、ってそろそろ学校行く準備しないと」
仮眠を取る時間もないため、制服に着替えながらスマホから日課で見ている朝の占い動画をBGM代わりに再生した。
「みんなおはれるや〜、本日活動1周年を迎えました雨野葉レマです〜!ありがとー誉めてー誉めちぎってー」
「あれ?お兄って雨野葉レマちゃん好きだっけ?」
「好きっていうか、朝に見る占い動画探してたら見つけた感じ、土日祝選ばず毎朝やってるから結構有難い」
前世の時も毎朝めざ⚪︎し占い見てたし、あれ?今はち⚪︎かわ占いだっけ?
「今日の天気は晴れー!関東では、ところによりにわか雨があるなもって気象予報士がゆってたよ!」
「お兄。この人、毎朝頑張ってるのはすごいけどなんか適当じゃない?」
「その子、結果が解釈次第で許される星座占いしかやらないよ」
実際、歌ってみたやゲーム実況が面白い子だから占いはあくまでキャラ付けなんだろう、それでもメインコンテンツの1つため占いに注目した。
「今日の1位は射手座!いいことあるよ!2位は水瓶座!そこそこ快適!3位は乙女座!人の顔色を伺おう!」
こうして10位まで調子良く進み残すは2つ、蠍座と自分の星座である蟹座。できたら最下位は回避したいが
「11位は蠍座!通勤途中でトイレに行きたくなるよ!そして残念ながら今日の最下位は蟹座!こんなことあるわけないでしょってことが起きちゃう!大人しく家に引き篭もろうね!」
が、駄目。現実は非常である
やっぱり蟹座は駄目だな、あじゃぱァーッ!
「ま、まぁ所詮占いは占い、都合の悪いものは信じないでおこう」
「お兄、声が震えてるよ」
しかし占いの結果が悪いからと学校を休める訳も無いためさっきの配信は忘れて玄関へ向かう。
「今日は1日中仕事か?」
「うん、だから帰ってくるのは夕ごはん前くらいかな」
「別に急いで帰らなくても良いからな、仕事の付き合いとかあるだろうし」
「むしろそういうお付き合いが面倒なので、兄の存在を利用させて貰ってます」
妃愛はネットで家族思いキャラで定着していることもあり、自分の存在のおかげで食事や打ち上げを断っても角が立たないらしい。まぁ自分が妃愛の仕事の邪魔になってないのなら自分の存在を遠慮せず利用して欲しい。
「くぅん」
「お、資正おはよう」
「わふ」
そんな風に妃愛と話していると、リビングの方から飼い犬の資正が自分の方へ近づいてきた。そのため頭を軽く撫でてやると満足したのか鼻を鳴らした後リビングの方へと戻って行く。
「それじゃあ、いってきまー」
「気をつけてなー」
自分と妃愛は同じ学校に通っているのだから、たまには一緒に登校したいなと思いつつ仕事へ向かう妹を見送った。
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そんなこんなでHRの始まる30分前に教室に到着した。
朝から全校集会があると聞かされていた事もあり、教室にはそれなりに人が来ていた。とりあえず鞄を置こうと自分の席に目を向けると
「ででで、次の表紙にも載せてもらえるってことになってね!もちろんピンじゃないんだけど、やっぱり嬉しくって!」
「へー、アメリが表紙...まあ凄いじゃん?」
「つかアメリさ、ガルコレにも出る的な事言ってなかった?」
女子生徒3人が雑談しており、表紙に載せてもらえると喜んでいる読モの
正直どいて欲しいが楽しく話している中に割り込むのは気が引けるな
「じゃあ表紙の記念に、放課後はアイスでもおごってやっかー」
「えっ?あ、ありがと...けどごめん。放課後は新衣装のフィッティングがあって...」
「まじで?アメリ、最近そういうの多くね?」
「はーあ、善意を無下にされると、うちらもけっこう傷つくわー」
「ごめん...」
何やら彼女たちの空気が悪くなってきた気がする。
それならと自分は彼女たちの方へと近づき挨拶することにした。
「おはよーっす」
「え?お、おはよう...えっと...小泉君だっけ?」
「惜しい、小泉じゃなくて和泉」
「あー、で?和泉クンはうちらに何か用?」
「用って言うか、竜閑さんが座ってる場所俺の席なんだよ」
「え!嘘!ごめんね!」
その言葉で竜閑は慌てて立ち上がり他2人と別の席へと移動を開始した。
そして去り際、竜閑が自分に近づいてきて
「ありがと」
と、他の人には聞こえないくらいの声量でお礼を言って離れていった。
とりあえず鞄を置き、HRが始まるまで時間があるため、最近ハマっている『星しをん』の小説を読むことにした。
「おはよう、和泉くん」
「ん、おはよー新川」
「広夢でいいよ。何の本を読んでるの?」
「『星しをん』の文学書」
しばらく読んでいると、後ろの席の
「今日の全校集会何の話なんだろうな」
「うーん、大切な話だから病気なんかを除いて、必ずくるようにって言ってたよね」
「けど来てない奴もいるけどな...」
「うん1人だけ...というか転校してきた初日以降、一度も見てないよね?」
2人で視線を向けたのは、自分の隣の机。もう2ヶ月以上、空席のままだ。
「もしかすると、今日の全校集会はその話かもね。不登校の生徒についてとかって...」
「それって、わざわざ生徒全員集めるほどか?」
確かにうちの妹も仕事優先のため不登校気味だが、それならばミリさんから事前に話があるだろうし
「というかうちの学園、生徒会長が不登校だって噂だよ」
「は?生徒会長がって...嘘だろ?どんな人か覚えてないけど」
「僕も詳しく知らないけど、全うな理由ではないみたい。先生方の間で問題になってるって」
それ問題の一言じゃ済まないだろ、下手したら行方不明事件とかで炎上するぞ。
全校集会の内容に不安を抱いていたら、チャイムと共に1人の女性教師が入ってきた。
「おはよっ!んじゃみんな、席ついてスマホしまえー?」
「全員いる?いるよね?あれ?常盤いなくない?ぇなんで!?ちゃんと来てってメール送ったし!」
「いやミリせんせー、うちらに言われても」
「んー...まぃっか!きのう言った通り、いまから全校集会なんで、はいこれからすぐ移動ー」
こうしてミリさんの指示の元、クラスメイトたちはぞろぞろと体育館へと向かっていく。
自分も広夢と一緒に向かおうとしたところ、ミリさんから声をかけられた。
「あ、トモすけちょっと来て」
「はいはい、妃愛のことですか?」
「そそ、ひよりん今日来てる?」
「いや...今日は1日中仕事って言ってました」
「まじかー、ぎゃんヤバいよね...でも仕事なら仕方ないじゃんね?しゃーない、移動しよっか」
妃愛が来てないのにそこまで困ってないのを見るに、どうやら全校集会内容は不登校についてではなさそうだ。
移動中内容を聞こうとしたが、「それを体育館で話すんじゃん?」と言われ、結局内容は分からないまま体育館へと到着した。
ここに来て、徹夜の影響か眠気がピークになっていたため。内容次第だと寝落ちして広夢に後から聞こうと思っていたが。その眠気は一瞬で吹き飛ぶこととなった。
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「あー...生徒会長逃げたし」
は?
「なんか数週間ほど連絡とれなくて、昨日ようやく返事きたと思ったら、いま四国にいるとかゆわれてさー。まじウケる」
いやウケねぇよ。館内の誰にもウケてねぇよ。全員訳わかんなくて首傾けてんぞ。
「とりまそんなんで、いまのダマ学、何気に生徒会長が不在なわけね。それヤバいじゃん?」
ヤバいな。何がヤバいって、それをそんなノリで言ってるミリさんがヤバいよ。
「3日後に、こなへんの生徒会集めたシンポジウムをうちのガッコでやるんだけど、それ休めないのでー。なんで、いまここで生徒会長決めるから。おけまる?や、マジでいま決めるよ?」
その言葉で、事態の深刻さを理解したと察知した生徒たちがざわつき始め、お互いに頬をつねり合っている生徒もいた。
「立候補いればいいんだけど、誰かやんない?推薦でもいいし。内申ぎゃんアガる!」
ミリさんがそう言って1分ほど経過したが、誰一人として声が上がらない。
まぁ「前生徒会長が逃げ出した」なんて聞かされたら、何か問題のある業務なのかと疑って、立候補や推薦なんて怖くて出来ない。
やがて、呆然としている自分たちの手元に、教員が筒のようなものを配り始めた。卒業証書を入れる筒が、手のひらサイズまで小さくなったみたいな...
「じゃあ時間ないし、生徒会長くじで決めるのでー。1人ずつ引いてたら時間ないし、全員、いっせーので蓋を上向けてくじ開けて」
まさかのくじで生徒会長を決めるようだ。しかも開けなかったらその時点でそいつを生徒会長にするという脅しまでしてきた。
「そんじゃあ、せーの!」
蓋を開ける直前、朝に聞いたレマちゃんの占いが脳裏によぎった。
『今日の最下位は蟹座!こんなことあるわけないでしょってことが起きちゃう!大人しく家に引き篭もろうね!』
開けた瞬間、自分の手元からロケット花火が打ち出され、やがて「当たりだヨ」と手書きで書かれたパラシュートがふわふわと頭上に舞い降りた。
レマちゃん...明日から君の占い信じるよ。
「当選おめでとー!千玉学園の次期生徒会長は2年A組の和泉智宏クンにけってー!やったぜ!それじゃあ壇上へ登って所信表明をヨロー!」
当然、全生徒と教師の視線が自分へと集まっていく。こんなにも注目されるのは前の人生にもなかった経験だ。
「こんなのって...」
こうして自分の普通の生活は、突如さよならを告げるのだった。
「こんなのってないぺこじゃん!!!!!」