RWBY mission・ダストも無い田舎でサバイバルしながら長期任務 作:はぐれファウナス
「私達の村は為す術もなく、グリムの襲撃に恐怖し逃げ惑うだけでした。当然です。狩人は居てもハンターなんて居なかったのだから」
感情の片鱗さえ覗かせなかったトルーデ先生。
今も眉一つ動かさずに語っている。
語ってはいるが…
「周りを見れば血を流し倒れた見知った人達がいました。隣のおばさんは目を見開いたまま亡くなっていました。私は怖くて、怖くて、とにかく隠れられる場所を探しました」
そんなのって…
あんまりに酷い内容に、私はただ曖昧な相槌を打つ事しか出来ずにいた。
「……ですが私は隠れることはしなかった。いいえ、できませんでした。私には当時五つになる弟がいました」
当時五つってことは、今は…?
なんて聞けるワケない。
――――こびり付いた断末魔
耳の中に、未来永劫鳴り響く、よく知った声。
彼はずっと言っていた
『たすけて、たすけて』
と何度も
未熟な私は誰も守れず
誰も助けられず
喉が壊れるほどに叫ぶしかなかった
それでも理性が邪魔をした
いっそ獣みたいに突っ込めば良かった
でも私には立ち向かう勇気はなく
足が竦んで動けなくて
ただ眼前で、ヒトじゃないモノへと変わりゆくそれを
眺めるしか出来なかった
次はいよいよ私の番だ
黒い影が手を振りかざしたとき
ソレは、降り立った。
怯える私の眼前に、銀色の光を纏い。
舞い散る無数の花弁と共に現れて――
気が付けば影は消滅していた。
「大丈夫!? 喋れる?」
『ぁ……』
――――「私は、駆け付けて下さったハンター…サマー・ローズに救出されました。そして気が付けば医療施設の中に居たのです」
彼女があまりに淡々と語るものだから、私もどう聞いていいのか分からなかった。
でも、トルーデ先生は間違いなく震えていたのだ。
「生き残った私は沢山、命を絶とうとしました。でもその度に生き延びてしまった。そうしてしばらく経った時に、またサマー・ローズは私の元へと来て下さったのです」
そう言って、先生は目をつぶった。
まるで奥深くに眠る思い出を必死に探り当てるようだった。
「彼女は私の手を握り、必死に声をかけて下さいました。何を言っているのかは分かりませんでしたが…とても感情豊かな方だったのでしょう。私が泣いたら一緒になって泣いてくれ、私が笑えば一緒に笑ってくれた。あの方には心をすっかり救われてしまいました」
そう言って、トルーデ先生は一粒、涙を落とした。
「そう、だったんですね…でも、何を言っているのか分からなかった、って…」
「ああ。それについては恥ずかしい話なのですが――」
先生が、口元を覆うフェイスヴェールを外した。
口元が顕になった途端、
『どう? 今、私が何を喋っているのか、全くわからないでしょ?』
理解出来ない言葉で、話し始めたのだった。
「えっ!?」
『これはこのヴェールに……おっと――』
「このヴェールには翻訳機能を持った機構が搭載されています。私の村の言語を、こうしてレムナントの共用言語に変換してくれているんですよ」
なるほど。だから先生って、所々言葉遣いが妙な感じだったんだ。
そりゃあ無口にもなる。
「更には補聴機能もあり、逆に我々の言葉に変換してくれもします。惜しむのはあの時にこれがあれば、サマー・ローズが何を言っていたのか、理解出来たのですが」
「それはきっと――」
「?」
「きっと、あの時のお母さんは…ごく当たり前の、普通な…だけどとっても…なんていうのかな、有り触れてるけれど大切な言葉をくれたと思います」
だって…
「お母さんって、そういうものだと思うから」
私がそう言うと、先生は目を丸くした。
「……どうも翻訳の調子が悪いようです。しかしあの人の娘であることはもう疑いようはありません。だからこそルビー、貴女にお願いがあるのです」
「え、ええ、分かりました。私に出来る事だったら!」
「ありがとうございます。是非とも私の村に来て、村長に会って頂きたいのです」
この時の私は深く考える事もなく、頷いた。
村の一部は無事で、生き残った人が居たんだ。その位にしか考えていなかったのだ。
だが、ああ…現実はより複雑だった。