RWBY mission・ダストも無い田舎でサバイバルしながら長期任務 作:はぐれファウナス
――「先生、あの…どこに向かっているんです?」
最初、村長宅に向かうものだと思っていた私は、集落から外れてゆく先生に、つい問い掛けた。
「彼は今、祈りを捧げていますから、そちらへと向かっています」
「祈り?」
「はい。私も最近知ったのですが、グリム襲撃によって壊滅した村で、唯一焼けず残っていた大きな樹木を縁起物として祀っている様なのです。木はあれです」
そう言い、トルーデ先生は水平線の向こうに顔を覗かせた樹を指差した。
ここから見えるのは、緑生い茂る中に、突き出した老人の指の様な…焦げ茶色の小枝。
やがて全容が顕になってくると、私には天に向けて腕を伸ばしている化け物にも見え、僅かに恐怖を覚えた。
特に幹…主木の部分が異形そのもの。
曲がりくねった長細い幹を、何本もの別の幹が絡み合い、或いは巻き付き、或いは突き刺さっている。
ミミズの如き怪物に大量の槍が刺さり、頂上の枯れ枝は矢ぶすまの様だった。
神木を無理矢理この地に縫い付けている風にも見える。
そして等間隔に生える枝が、先程言った天に向けて伸びる腕にも、地を蹴り這い回ろうとする脚にも思えるのだ。
その異様な木の下で、やはりスケルトンが一人、樹に向けて祈りように頭を垂れていた。
あれが村長だろうと目星をつけたところで、トルーデ先生が、翻訳装置を外して話し掛けた。
『村長。銀色の目の戦士を連れて来ました』
スケルトンはそれを受けてこちらを振り向くが…うわぁ、やっぱりガイコツはガイコツなんだ。
『それはご苦労だった。よくやったぞトルーデよ』
(やっぱり、村長さんも外国語で話すんだ…)
『ありがとうございます。では、彼女に何をさせればよいのでしょうか?』
『何もさせなければよい。トルーデよ、銀色の目の戦士を殺し、贄として村人に捧げよ』
『……え?』
『分からないか? もう一度告げよう。銀色の目の戦士を殺し、血肉を糧にするのだ。さすれば村は元に戻ろう』
トルーデは困惑した。
村長スケルトンは事も無げに、最悪の答えを提示してきたのである。
ルビー・ローズ…贄にされる本人には分からない形でだ。
『あ、あの、何を言っているのか…それは本当に事実なんですか? これまではそんなこと一言も…』
『無論だ。全てはあの忌まわしきグリムから始まったことよ』
彼は骨だけの手を掲げ、続けた。
『悪夢のグリム…ジエン・パープァは我々と村に呪いを振り撒いた。丁度、銀色の目の戦士サマー・ローズがヤツを倒し去った後だ』
(ん? 今、あの村長さん、お母さんの名前言ったよね?)
『我々がこの様な姿で生き続けなければならないのも全て、かのグリムの呪いのせいである。良いかトルーデ…銀色の目の戦士には、グリムを無力化する力があると言われているのだ。なればこそ、呪いを打ち消すにはその戦士の血肉が不可欠となる。村人全員に血肉を行き渡らせる必要があるのだよ』
『そんな…馬鹿げています! 彼女は我々に協力してくれると約束してくれました。しかしその様な行為は到底許されません! もし真実だったとして他のやり方が……』
『無いのだ』
『は、は…?』
『時間が、無いのだ。村から出ていたお前は知るまいが、終焉の時はもう目前にまで迫っている。先日は村人が四人ほど土に還った』
――「ハァ、ハァ、ハッ…ここはいったい何処ですの?」
息も絶え絶えにワイスは、周囲を観察しながら叫んだ。
見渡す限りの緑、緑、時々茶色。
ナールダロムの土地は変わり映えのしない景色が広がるばかりである。
「さぁ? かーなり走っちゃったもん」
「し、仕方ないでしょう! あんなガイコツを見れば誰だって驚きます! 貴女達もそうでしょう!」
「確かにビックリはしたけど、よくよく考えたらグリムも似たようなもんじゃん。まー、目的が分かんなかったし、ヤバさはあったよ」
「グリムの他にもあのような脅威があるのでは、もはや任務どころではありません。一刻も早くルビーとトルーデ教諭と合流し、避難する必要があります」
「さんせー。でもさ、自分達の居場所も分からないんじゃ、探しようが――」
「…静かに。二人ともちょっと音を立てないで」
不意に、先頭を行っていたブレイクがピタリと足を止め言った。
頭の黒いリボンがピクリ、と跳ね上がり、その奥にあ耳が激しく微動する。
「ブレイク? 何か聞こえるの?」
ヤンが声を潜め尋ねると、ブレイクは頷いた。
「…声がする。ここからちょっと離れた場所で、誰かが言い争ってるみたい」
「言い争い? 誰と誰がですの?」
「…分からない。違う言語みたいで、何を言っているのかは判別できないけれど…声のトーンは、間違いなく、トルーデ先生ね」
ワイスとヤンが、顔を見合わせる。
「トルーデ先生? 彼女がそこにいるなら、当然」
「「ルビーも一緒にいるはず!」」
「行きましょう。ここから北西、目印は……大きな不気味な木の方向よ!」
そう言い、ブレイクは化物じみた大木を指し示す。
彼女たちは再び、緑の中を駆け出した。