頼れる仲間はみんな目が据わってる   作:佐渡ヶシマシマ

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前半が、三人称視点。
後半が、カイト視点となっております。


十五話・変わった仲間と日常、そして

 

 

 仄暗いカンテラの光を頼りに、一歩、また一歩と進む。

 

 煉瓦のような素材で四方を覆われた、人工的な洞窟のような空間。四人の人影が光から伸び、前後に広がる暗闇へと溶け合う。彼らの手には物々しい武器が握られ、漂う空気は極めて張り詰めていた。

 

 突如として、カンテラの光が揺らぐ。がしゃりという硝子が潰れるような鈍い音と共に、光を放つ魔石が地面に叩き付けられ、一等強い光を放ちながら共に砕け散った。

 

 

「く、このっ! 放せ!」

 

 声が響く。

 重い鋼の鎧を纏った戦士が、腕に絡みつく粘膜質の触手を振り解こうと藻掻く。背後に立つ別の人物たちも、同様に掴まれた四肢からそれを外そうと奮闘していた。

 

 しかしその試みが、実を結ぶ事はない。

 

 手にした武器で切りつけようとも、太い繊維が幾重にも巻き重なったような触手の表皮は切れても、その芯を傷付けることできない。その間にも、鈍重な鋼の鎧を纏い、地に足をつけ踏みしめる人間であっても、その触手はずず、ずずと手繰り寄せる。

 

 その先にあるのは、穴。先の見えない洞々とした漆黒の奥からは、耳にするのも悍ましい、粘着質な繊維状の襞が蠢く音が舌なめずりのように絶えず聞こえ続けていた。

 

(クソ、クソ! このままじゃ、俺たちも……!)

 

 したたり落ちる汗。奥歯を噛み締めれば、力を籠め続けたせいなのか眦に涙がにじむ。

 

 酒場でよく呑む友人が、女に変えられてしまった。

 冒険者でもなかったというのに、巷で噂になっているダンジョンの外でダンジョンの罠を使う、冒険者くずれの外道のせいだと。

 そう聞いた彼らは、仲間たちを引き連れてダンジョンの最奥へ向かった。

 

 ダンジョンの罠を治すなら、その方法はきっとダンジョンにある。

 冒険者を続けてきた身として。本当の冒険者は、そんなふざけたことはしない。

 そう信じて。

 

 しかし、普段しなれていない長期のダンジョン探索の中。

 疲労、焦燥、複数の要因が齎した一瞬の隙を突かれた。

 

 しまったと思った時には、既に遅く。

 

 冒険者。危険を冒すもの。

 

 彼らが冒す危険が、少しでも身の丈を超えたならば、その先に待つのは死よりも惨い破滅だけ。

 

 それでも、人は祈ってしまう。

 窮地に自ら立つことを選ぶ人間であっても、最後に人は祈るのだ。

 

(誰か――!)

 

 

 

 そして残酷だが、その願いは、多くの場合無為なるものに過ぎない。

 

 

 

 

 

 

 

 だが。

 

 その瞬間は、違った。

 

 

 

 

 

 

「届いた」

 

 

 

 

 呟くような声が響く。

 直後、怪物が口腔を開けた如き孔から、舌にも似た触手によって囚われた彼らの眼前を。小さな黒い影が通り抜けた。

 

 直後、彼らを捕らえた触手が緩む。

 

 何が。

 困惑と同時に彼らを襲うのは、目の前にあった穴の中から噴き出す鼻を突き刺す刺激臭と、びちびちという粘液が泡立つ音と甲高い悲鳴とも金属が擦れた異音ともとれる断末魔だった。

 

 

 耳も、目も抑えられない中で襲う二つの衝撃は、幾つかの修羅場を潜り抜けた彼らであっても頭を揺らすには苛烈なもの。

 

 しかし、意識を飛ばすまでには至らない。

 一瞬緩んだその触手が、一転捕らえるためではなく、破壊するためにその力を強めたからである。

 

 せめてもの抵抗なのか。あるいは、獲物だと思った存在が牙を立てたからか。

 金属製の鎧が尋常ならざる圧力を受ける軋んだめきめきという音に、顔を青くする冒険者たち。しかし。

 

「大丈夫だよ、少し待ってね」

 

 大きな腕が。剣が後ろから現れる。

 視界の端から閃いた軌跡が、これまで悪戦苦闘しながらも断つことのできなかったそれを、瞬く間に断ち切った。

 黄金の髪。剣の軌跡よりも明瞭に残る、清廉なる青の瞳。

 

 それが何者なのか、知らない冒険者はもぐりだ。

 そして、彼がいるということは。先程横切ったあの影が、果たして何者なのか。

 

 

「『救出者』――」

「その呼び方は、やはり慣れないな」

 

 触手の出どころである穴に更に何かの薬が入った小瓶を投げ込み終えると、冒険者たちに歩み寄る影。

 

 黒い髪。赤い瞳。細められた三白眼。挙げれば威圧的にも見えるその色合いと特徴とは裏腹に、困ったように下がる眦と、不器用な笑顔は、まるで人慣れしていない子供のようでもある。

 

「カイト、と呼んでほしい。間に合ってよかった」

 

 へたりこむ冒険者に、その影は――カイトという青年は手を差し伸べ、その身体を引き上げた。

 

 直後、穏やかにも見えたカイトの表情が固く引き結ばれる。

 

「アスタ」

「わかった」

 

 先程触手を切り裂いた金髪碧眼の人物の名前を呼び、その肩に背負った弩を手にするカイト。その視線は、先程の穴の奥側に続く通路、カンテラが奪われたことで照らせなくなった道の先にある闇へと向けられている。

 

 一度罠にかかりかけた冒険者たち。しかし彼らもこの魔窟、ダンジョンに幾度となく足を踏み入れながらも生還し、そして最奥を目指すに足る実力を持つ者たちだ。

 だから、わかるだろう。彼らが睨むその奥から、おびただしい殺気と獣とも人とも異なる異質な気配が、迫ってきていると。

 

「お、俺たちはまだ動ける! 手を――」

 

「馬鹿言うんじゃねえ」

 

 このままでは彼ら二人が先頭に立つ。直感した冒険者たちの一人が、そう言って立ち上がろうとした瞬間に、これまた先程までいなかった別の人間がその男の肩を掴んで無理やり地面に座らせなおす。

 

 振り返れば、大きな帽子を被った小柄な少女を背負った、頬に傷のある謎の女。

 なぜ、ダンジョンに女が。しかし、その一瞬の疑問はすぐに解ける。

 

 彼が。『救出者』がいるということは。眼前の彼女らが、いや、彼らが何者かなどすぐに理解できる。

 

「あの触手は獲物の抵抗を削ぐために粘液に麻酔に近い効能を持つ。今のお前らが行っても無駄死にするだけだ、おとなしくしてろ」

 

 淡々と毒を吐きながらも、その女は背負った少女を下ろし、すぐさま冒険者たちの掴まれていた部位を特定し、ベルトに巻いた幾つもの袋の中から包帯や薬を取り出し、要領よく傷を診ては手当てを施していく。その間に、大きな帽子の少女の方は手にした身の丈ほどの木の杖を構え、何かを呟いた。

 

 風が吹いた。そう感じたと思うと、少年を中心とした半円の領域が、薄緑色をした半透明の障壁によって隔たれる。

 似たようなことをする道具は、ダンジョンの中で見つかる。しかし、それを人の身で簡単に行える人間などそういない。魔術と呼ばれる異能の力を持つ者を除いては。

 

「こ、これで、ひとまず大丈夫です」

 

 ほっとするように零した少女。そして、その隔たれた結界越しに――彼女は、壁の外側に立ち続ける『救出者』、カイトに頷いた。

 

 

 冒険者たちは、ただなすがまま。自ら祈った結果として助かってはいたが、目の前で繰り広げられる数々の光景に、圧倒されていた。

 

 それでも、この一党のリーダーをしている鋼の鎧の男の腕を、先程の粗暴な口振りの女性が治療するとき。鎧の男はふと、漏らす。

 

「彼は、大丈夫なのだろうか」

 

 歳は自分の方が食っている。冒険者としてのキャリアも、確か自分の方が長い。

 それでもこうして不覚を取った。

 

 若さと言う意味では強いだろう。二つ名で呼ばれるほどの腕を、彼は確かに持っている。

 助けられておいて、何様だという感情もある。

 

 それでも。それでも、心配をしてしまうのだ。

 

 この地獄のような。悪夢のようなダンジョンで。彼は、こんな風に戦い続けているのかと。

 

 酒飲み友達が、ダンジョンの持つ悪意に、異能に冒され望まぬ形で姿を変えられた。その怒りに身を任せてしまう自分たちのような人間もいるというのに。

 仲間たちが、今のような姿になったというあの青年は。果たして、心壊れずにいられるのかと。

 

 

「――大丈夫さ」

 

 手当を終えた、粗暴な口調だったその女性が応える。

 それは、一等優しい声色だった。

 

 

「今のアイツなら、誰にも、何にも、負けやしねえよ」

 

 

 その言葉の通りに、青年は数えて十分と時間を掛けずに、金髪の青年――いや、美女と共に、彼らの元に戻ってきたのだった。

 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

「はい、仔細確認しました。それでは、必要書類の記載をお願いします」

「わかりました」

 

 冒険者ギルドの受付にて。

 

 今日もまた、人命救助を行い帰還した『救出者』こと冒険者のカイトは、受付にて猫目の女性職員から差し出された書類へのサインを滞りなく済ませていく。

 

 さっと書き終えたサインは達筆とはいかないが、誰にでも間違いなく読みやすい整ったものだった。

 サインを確認して、柔らかい笑顔で受け取る職員。

 

「はい、問題ありませんね。今日もお疲れさまでした」

「いつもありがとうございます、ラネーさん」

 

 そう言って、受付を立つカイト。その背中を、どこか安堵したような表情で職員の女性は見送った。

 

 ギルドの中は、相変わらず騒がしいとまではいかないが、常に人が集い会話を繰り広げている。

 ここ最近は、冒険者を騙り人をダンジョンの罠にも似た力で性を変えたり、身体を改変したりする人間がいるとのことで、些か空気が鋭く刺々しい部分は否めない。

 

 それでも、決してそれだけではない。

 

「カイト、この間はありがとうな!」

「今度飲み行こうぜー!」

 

 そんな声を受けたカイトは、遠慮気味な笑顔を浮かべたりしながら手を振ったりして応えながらも、歩みは止めない。

 

 その先に、彼女たちはいた。

 

 筋骨の太い恵まれた体格と豊かな胸に、まるで貴き血でも流れているのかというほどの金髪碧眼、中性的で整った顔立ちの女性……アスタは、歩いてきたカイトを出迎えるようにして近づく。

 

「すっかり人気者だね」

「みんなのお陰だよ、からかわないでくれ」

 口では前と同じように否定しながらも、どこか居心地悪そうに落ち着かない様子のカイトを、彼女は嬉しそうに見つめる。

 

 そうしていると、横合いから声を掛ける別の少女。

「カイトさんっ!」

 小柄な体躯、亜麻色のくせ毛と緑色の瞳をした、幼い印象を強く受ける柔らかい顔つきをした彼女は、なにかをカイトに伝えようと口を開く。しかし、それに先回りするようにしてカイトは少女に微笑んだ。

 

「髪は、結ぶことにしたんだな。似合っている、フィグ」

「……! えへ、は、はい……!」

 

 フィグ。そう呼ばれた少女は恥ずかしそうに笑みを浮かべながら、つばの広い帽子で顔を伏せて隠す。だが僅かに見えたその鼻先は、果物のように赤く染まっていた。

 

「カイトよ、お前がそういう口のうまさを身に着けてくれて俺は感激してるぜ」

 そんなカイトの言動を揶揄うように、長い白髪を束ね、深い紫の瞳を三日月型にゆがめつつ脇腹を小突く美女。ざっくりと胸の開いたシャツに、裾の広いズボンを履いた彼女は既に片手に酒瓶を手にしており、半ば赤ら顔だった。

 

「――ククラータは相変わらずだな、片手のソレも含めて」

「バァカお前、気合を入れる時ぁまず見えねぇとこを気張るんだよ」

 

 そう言って、豪快に自分の尻を叩くククラータと呼ばれた彼女。美しい見た目に反して全く羞恥のないその行動に僅かに人目を引くが、呆れ交じりにカイトは呟いた。

 

「わかってるよ。わざわざ見せに部屋に押し入ってきたじゃないか」

「ククラータ?」

「ククラータさん?」

 

 漏らしたその呟きと同時。アスタとフィグの鋭い視線がククラータを射抜く。

 

 おっとっと、みたいな顔をするククラータに詰め寄る二人。そんな、外から見ればそれは所謂修羅場と言えるだろう。

 

 しかし。それを見て、カイトは。

 耐え切れないとばかりに、噴き出す。

 

 三人の視線を一斉に受けてもなお、くつくつと笑い続けるカイト。

 そして、少しして。息を入れてから。カイトは告白する。

 

「こんな風な日々を、俺は見過ごしていたのかと思ったら。どうしても、おかしくなってしまった」

 

 アスタ。フィグ。ククラータ。

 顔を見合わせてから。三人は何か言葉を交わすでもなく、頷くことさえせずに、彼女たちはカイトを取り囲んだ。

 

 アスタは、掌をカイトの手に当て。

 フィグは、下から覗き込むようにしてカイトの顔色を伺い。

 ククラータは、カイトの手を取り手首に二本指先を当てた。

 

「熱はないね」

「顔色も、おかしくない、ですよね」

「脈拍も正常だな」

 

「――俺をなんだと思ってるんだ?」

 

 三白眼の白目をより増すカイトなのだった。

 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 ――あの日。

 タイムと話し、そしてラネーさんからこってり絞られた三人が帰ってきてから、俺は集めた皆に話をした。

 

 全員にも語った。過去の話から、今に至るまでの話。

 そして、俺が抱いていた感情も、洗いざらい吐き出した。

 

 嫌われたくないという行動の根幹。それに目を背け、皆のためだと自分を騙しながら、皆を引きずり回してきた。それを、全て。

 

「俺は、弱い。そして、情けない人間だ」

 

 そう、頭に置いて。

 

「それでも俺は――みんなと、離れたくない。それは今でも変わらない。こんな風に自分の醜い所をぶちまけておいて、虫のいい話だと思う。だが、もしみんなが、まだ俺を信じてくれるのなら……」

 

 全員の、顔を見て。それぞれの目を見て。

 

「こんな俺を、これからも、助けてほしい。そう、思う」

 

 そう言って、頭を下げる。

 机に伏せた視界は一面の木目。これほどまでに顔を近付けてこなかったせいなのか、目に映る僅かな傷や細かな模様がいやでも目に入る。心臓が体の中で暴れ、自分の様で自分ではないような声が自分の言葉を、それを話すことを決めた自分を責めるように感じられた。

 

 言うべきではなかった。隠し通すべきだった。お前はこれで失望されるのだ、とか。

 

 俺はそれを必死に噛み殺し、振り払う。

 もしそうなったとしてもそれは、俺の責任。ここまでの俺の失敗が招いた結果なのだから、と。

 

 

 沈黙は、一瞬にも、永遠にも感じられた。

 

 

 

「今更、何を言っているのさ」

 

 開口一番。戸惑いと呆れを半々に切り出したのは、アスタだった。

 

「――え、あ?」

 

 素っ頓狂な声だったと思う。反射的に持ち上げた顔も、その声に似つかわしいモノだったろう。

 

 

「言ったはずだよ。僕は、君を支える僕なら誇れると。だから、僕は君の隣に居続けるさ」

 アスタは、困った顔で腕を組み、変わらぬ微笑を向けて。

 

「ぼくも、言いました。カイトさんに、やっと近付けたんですよ。離れません。いなくなりません。カイトさんが、嫌じゃないなら。ぼくはずっとここにいます」

 フィグは涙目になりながら、鼻先を怒りか照れかで赤らめて、頬を福らえながらそう言って。

 

「背中を押して、進むのが辛けりゃ支えてやる。俺も言ってやった筈だぞカイト」

 ククラータのそれは、他二人と比べやや茶化すような言い回しだったが、それでも俺に向けられる眼差しに嫌悪や憤り、落胆などの感情は見受けられない。

 

 ……そこまで、きて。漸く。

 

 俺は、こんなにも。仲間に、愛されていたんだと。

 

 

 そう、思ったら。

 

「かっ、カイト!?」

「カイトさん、ど、どっ、どうしちゃったんですか!?」

「おいおいおいおいこれは予想外だぞおい、大丈夫か」

 

 三人が、慌てたように近づく。その姿も、よく見えない。

 

 滲んだ視界の中で、俺はただ、うれしくて、おかしくて。

 

 詰まったように掠れた喉で笑い声を漏らしながら、ただ、涙を流していた。

 

 

 

 

 そして、あの晩から大体半月ほど経っただろうか。

 

 

 

 

 相変わらず、俺はこの一党のリーダーをしている。

 

 ダンジョンに入る目的は、変わらない。

 女の身体に変えられてしまった人の、治療法を探す。そのために、最奥の遺物を持ち帰る。

 それが、変わらない目標だ。

 

 しかしその理由は、決して仲間たちを元に戻し、自分の失敗の汚名を雪ぐためじゃない。

 

 最近ダンジョンの中にしか出現しないはずの、ダンジョンの罠。それに近い技術によって、ダンジョンの外で暮らす人々が性を変えられてしまう事件がいくつも起きている。

 

 被害者は両の手の数では足りないほどにまでなっているという話もあり、事態は深刻だ。

 

 癒やし手で、ククラータの旧友であるというサルビーさんとも正式に協力関係を結び、共に治療法の発見の為に動きながら、同時に犯人を捜すためにもダンジョンの内部に目を光らせる。

 それが、今の俺のやるべきことであり、そしてやらなければならないと決めた事だった。

 

 

 それを話せば、仲間たちは一も二もなく頷いてくれた。

 また、振り回すことになるかもしれない。そういう思いは、やはり消えない。

 

 それでも。

 

 

 これが俺の、俺達の日常。

 だがそれは、今までのモノとは少し違っていた。

 

 

 俺の幼馴染は金髪を短く切りそろえ、高身長で剣士として鍛えられた()()()だった。

 だが今は、一層強くなった上にそこに巨乳のくっついた()()

 

 フィグもやむにやまれぬ事情で()()()()()()だった。今は、愛嬌のある()()()()()()

 ククラータに至っては粗野で武骨な無頼漢(おじさん)だった。着崩した服装に頓着しないのが玉に瑕の女傑(おねえさん)

 

 

 ダンジョンに蔓延る怪物たちは、皆目をギラギラさせて、種の保存の本能のままに襲い掛かってくる。

 ダンジョンに仕掛けられた無数の罠は、極めて悪辣で厄介な手段で以て、侵入者を捕らえ心身を塗り替える。主に快楽という方法で以て。

 

 余りに環境が品性下劣であるがゆえ、この冒険者は九割九分が男となった。

 だがそれを予期していたかのように、ダンジョンは男を女にする罠や魔物を生み出し始めた。

 

 人類を嘲るようなその性質。

 誰が呼んだか、エロトラップダンジョン。

 

 『それ』が俺たち冒険者が挑む危険であり。

 『これ』が俺のしくじりが招いた、変わってしまった日常。

 

 

 それでも俺は生きていく。彼ら――いや。仲間たち(かのじょたち)と共に。

 

 

 

 

 しかし。それはいいんだが。

 

 

 最近仲間たちから向けられる視線が、どうにも粘っこいというか、重いような気がする。

 

 以前、鍛錬の際後ろからアスタに向けられていた、ような、そういう雰囲気だ。

 

 それに、どうにもこう、なんというか。より意思が固まったというか、はっきりしたというか、そんな雰囲気を醸し出しているのだ。

 

 まるで、目が据わっているような。

 

 ――気のせい、だろうか?

 

 

 

 





これにて『頼れる仲間はみんな目が据わってる』、第一部完結となります。

今後は第二部の構想を練りつつ、
・外伝と言う形で日常回の投稿
・簡単なキャラ解説の投稿

そしてアンケート次第ではR-18 ifの投稿などを予定しております。

不安定な投稿ペースにお付き合いいただきありがとうございます。

今後とも、何卒宜しくお願いいたします。

R-18 ifは……

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