「――先生!?」
室内に入ると、その場にいた少女たちが目を丸くして凝視してきた。
「起きたんですか!? ……というかその怪我は!?」
「話は後。皆、ゲヘナ市街地鎮圧戦を行っている最中で恐縮だけど――ここから先は、連邦捜査局『シャーレ』の
そう言って、私は杖を突きながらゆっくりと前に進んだ。
……一歩ごとに左足に鈍痛。流石に銃で撃たれた痛みは記憶にないから、ここまでのモノとは思っていなかった。
ハナコが支えてくれなければ、もっと時間が掛かっていたことだろう。
「――リンさん。状況を教えてください」
「……わかりました。現在各校の生徒が市街地に集結し、暴徒を鎮圧しています。が、数が足りず、戦況は膠着中です」
「現場の子と繋げられる?」
「ええ。一番の激戦区――ミレニアムの早瀬ユウカさんです」
ぴ、と音がして、画面に少女の顔が映し出された。顔中汗だくで、今にも倒れてしまいそうだ。
『――今通信繋ぐ!? 普通! 嫌がらせなの代行!?』
「やっ」
『――先生!? 無事だったんですか!?』
「いや全然無事ではないけれど――まあ私のことはどうでもいいよね。そっちの状況を教えてくれる?」
『どうでもよくはないですが……とっ、とりあえず、暴徒と交戦中です! ゲヘナのハスミ副委員長とチナツさん、トリニティのスズミさんと頑張ってますが――いたぁっ!?』
『戦闘中によそ見とは感心しませんよ、早瀬さん』
『ハスミ副委員長! だって仕方ないじゃない先生から通信なのよ!?』
『先生から!? 代わってください!』
『ああもう! 持ち場を動くな! 正義実現はどうしたのよ!』
『あっユウカさんスタングレネード行きます!』
『す、スズミさん!?』
『それ今!? 今じゃないとダメだった!?』
『もう投げました』
『ぎゃふん!』
「……」
「現場は死屍累々ですね……」
「えっと、マップとか出せるかな。出来れば、位置情報とかも」
「ドローンの情報を繋ぎますね」
白髪の少女がそう言って、プロジェクターを操作した。画面には映像がリアルタイムで流されている。おそらく、上空から撮っているのだろう。
夜も深まってきた。暗いこともあってか、少々手こずりそうだ。
それに、人数の比率で言えばこちらが圧倒的に少数。向こうはオートマタでの水増しに加えて、様々な場所で暴動が起きているから一か所に大人数も裂けない、か。
成程、よく考えるモノだ。
「みんな、よく聞いて。今から私の指示に従って」
『――――!』
「私が指示する、任せて」
『……一緒ですね』
「……何が?」
『――
ユウカと言う名前の少女が――嬉しそうに、そう言った。
『分かりました。これより先生の指示に従います』
『生徒が先生の言葉に従うのは、自然なことですからね――』
『――――よし、じゃあ行ってみましょうか!』
〇
『――ユウカはそのまま前進。三秒後に遮蔽物に隠れて』
その言葉に従って、思いっきり前に駆け出す。多少の被弾でへばるほどヤワじゃない。それに、このタイミングはリロード中。戦線を押し上げるならば今しかない。
敵の隙を突いて、注目をかっさらうように前に出た。そのまま滑り込むように――きっかり三秒後、丁度目の前に遮蔽物。
急いでそれに身を隠すと、途端に強烈な発砲音が耳をつんざく。被弾はない。今しがた始まった彼らの射撃も、全て障害物が受けてくれている。
タイミングは完璧だ。
『スズミは閃光弾、ハスミはその位置から動かず狙撃を続けて』
瞬間、遮蔽物の正面にスタングレネードが投下される。咄嗟に顔を隠す。
直後炸裂、相手の視界が一瞬眩んだかと思うと、数発の発砲音と共に敵数名が瞬く間に意識を刈り取られた。
……流石ハスミ副委員長。射撃の腕は折り紙付きだ。
とはいえ、感心している場合ではない。今のうちに敵を減らさなくては。
ハスミの射線を遮らないように、ユウカも遮蔽物から射撃を続ける。オートマタもしばらくは誤作動を続けることだろう。今が一気に畳みかけるチャンスだ。
とはいえ、深追いは禁物。何せ、こちらは圧倒的に数が足りていない。調子に乗って連発しまくっていては、すぐに反撃にあうだろう。
ユウカの射撃に合わせ、スズミも後方から支援射撃を続ける。何人かは倒れてくれているようだが、それでもまだわらわらと敵は集っている。
「暴徒の癖に生意気ね……!」
――その時、前方からころころと何かが転がってくる音を耳にした。
手榴弾。理解と同時にそれが弾け飛ぶ。
「くっ――!」
爆音と衝撃、鼓膜がまともに機能していない。
幸いにも遮蔽物のおかげで被害こそ免れたものの、隠れられる場所がなくなってしまった。これでは丸裸も同然だ。
敵が集まってくる。数人が射撃を開始し、ユウカは格好の的になっていた。
『――チナツ!』
先生の声がしたかと思うと、上空から何かが落下した。それは集団のほぼ中央に飛来し――どおん、と爆発。
もくもくと舞い上がった土煙が晴れると――既に、そこに立っている者は残っていなかった。
簡単な爆薬――
「……計算通り。完璧~」
『お疲れ様、みんな』
敵の意識をユウカに集中させ、集合したところを爆弾で一気に蹴散らす。ハマれば今のように一瞬で集団を制圧できるほどに有効な手立てだ。
現代の爆薬兵器の有用性については今更語るべくもないだろう。下手に銃火器でどんぱちするよりもさっと済ませることができる。それをより効率的に生かすため、ユウカには囮になってもらったが――彼女もそれなりの修羅場は潜っているのだ。数発被弾したところでそこまで問題はない。
それに、ユウカも知ってはいたことだが――流石の手腕。そう言えば、あの時も先生は会っていきなりその指揮能力を顕わしていたのだから、記憶を失ったところでそれは変わらないのだろう。
「流石先生ですね。一瞬でしたよ」
『あはは……みんなが凄いからだよ』
「早瀬さん、残党の鎮圧を行いましょう。先生、こちらはもう大丈夫です」
『みたいだね。じゃあ、私は別のところを指揮するから、後はお願い』
その声を最後に、彼の言葉は途絶えた。
〇
それから二、三か所を一気に制圧。特にヒナという子の広域殲滅力は甚大だった。流石ゲヘナ学園の風紀委員長をやっているだけのことはある。彼女がいれば、俺なんていなくても問題なく勝てただろう。
「先生、残る地区は中央区三番地のみです!」
「現場の子と繋いで!」
ぴ、という電子音の後に――画面に表示される。
――――それは、殺戮のテンシサマに他ならない。
体中はぼろぼろで、衣服も傷ついて、至る所から血が流れだしている。美しい桃色の頭髪は乱れて、でもそんなことは気にせずに戦い続けている。綺麗に整った容姿は土煙に飲まれて、汚れ果てているというのにも関わらず――それでも俺には、それが天国から降りてきた一人のテンシサマにしか見えない。
彼女は単身、敵に向かって戦い続けている。一人で充分なのか――あるいは、彼女のチカラを生かすには一人の方が都合が良いからなのか。
集中砲火を受けようと、彼女は止まらない。どれだけの攻撃を一身に喰らおうと、それでもやはり彼女は止まらない。
その目は熱く滾っていて――生きようと、生き続けようとする者の目で。
「――待って!」
『せ、せ――先生!?』
俺の声に、彼女は手を止めた。
「……遅くなってごめん……ミカ」
『えっ……な、なんで!?』
「悪いけど説明は後。私の指示通りに動ける?」
『……先生が指揮してくれるってこと? 勿論、いつでもオッケーだよ!』
「ありがとう。それじゃ、やるよ――――ミカ!」
『よーし、それじゃあ景気づけに一発、強いのいっとくね!』
〇
――体が軽い。まるで自分の体じゃないみたい。
これが一人じゃないということ。誰かを信じて頼るということ。先生と戦うということ!
「逝きたい人からかかっておいで! 逃げるなら今のうちだよ!」
そう言って――ミカは強く、地面を蹴った。そして、集合している敵の中央まで突っ込む。
ミカほどの足の速さと頑丈さならば、この程度で傷を負う可能性は少ない。それに加えて、あの時ワカモと戦った際の速度を出せるのならば――今のミカに狙いを定めて弾丸を当てることなど不可能だ。
「うおっ――馬鹿正直に突っ込んできたぞ!」
「撃て撃て! 当てれば勝てる!」
「いや当てられるかよアレに!」
――まるで稲妻。
敵を攪乱しながら、陣地に向かって入り込む。途中で軽く振るっただけで、数名が弾け飛んだ。
それだけの膂力。それだけの力。それだけの『神秘』。それが、聖園ミカだ。
「動きが止まった! 今を狙え!」
「囲んで集中砲火!」
『――ミカ! 跳んで!』
囲った集団が銃を構えた瞬間、ミカは何の工夫もなく――ただ上に跳んだ。垂直方向に飛翔し――直後、弾丸が放たれる。
「いたたたた!?」
「ど、同士討ちだ! 撃ち方やめ!」
「――――いいの? 撃つのやめちゃってさぁ――!」
重力に身を任せ、そのまま落下。地面に着弾した――という表現が正しいだろう。
アスファルトが隆起し、爆ぜる。衝撃は圧力となって周囲の敵に襲い掛かる。
「う――うわぁああっ!?」
やっていること自体は先ほどのユウカたちの指揮の際とほぼ変わらない。相手を集合させ、隙を見て一気に蹴散らす。ただ恐ろしいのは――その全てをミカ一人で賄えるという点だろう。
攪乱も、囮も、爆薬も、何もかもはミカ一人で行える。とんでもない身体能力の持ち主だ。
「――あれ、どうしたの? 私のことじっと見てくれちゃって」
「……っ!」
取り囲む者たちの顔に、恐怖が混じる。
――鮮烈な体験だったことだろう。幾らキヴォトスでは武力衝突が日常茶飯事とはいえ――その中で銃も使わず、その身一つで全てを制圧できるミカは恐ろしく映るはずだ。
そしてこういう場では、士気の上下はもろに戦線維持を左右する。つまり、古今東西あらゆる戦争で言われている通り――ビビらせたら勝ちなのだ。
不意に、少しの発砲音があった。一人の兵が、ミカに向かって銃を撃ったのだ。
――しかし。
「――アレ? どうして……撃った側が、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしているのかな?」
「ひっ……! 嘘だろ、至近距離のアサルトライフルだぞ……!?」
彼女は棒立ちのまま、損傷も見られない。多少衣服に傷がついてはいるけれど――しかし、凛として動かない。
効果は絶大だっただろう。どれだけの攻撃を受けても、決して倒れずその場にとどまり続ける彼女の姿は。
まるで戦車同然。塹壕戦などこれ一つで容易く往なしてしまえるほど強烈さこそが――ミカの本質。
「それで、どうするの? 一日中突っ立ってるつもり? それとも――」
「――ま、魔女め……!」
「――っ!」
ぼそりと呟いた一人の声は、やけに明瞭で。
きっとそれは、この場における最適解だったのだろう。
一瞬ミカが動きを止めて、隙を晒す。
完全に虚を突かれた。乗り越えられたと思っていても、痛くないわけがない。
そんな言葉を受けて、ミカは――、
『――――ちょっと! お姫様に向かってそれはないでしょ!!!』
「――――っ」
彼の言葉で、思いとどまった。
溢れて弾けそうだった情動は、今や彼にのみ当てられるモノ。
――そうだ。他人に何と呼ばれようとも、自分は自分。それで良い。それ以上はない。
ああそうだ。そうなのだ。自分には彼がついている。先生がいる。何より、そんな自分で良いと言ってくれた友達がいる。
だから――。
「――随分と酷いこと言うんだね。私は
そう言って、再起動する。全身のエンジンが蒸気を噴き出しながら稼働を始める。昂る熱は体を満たし、今すぐ動き出さないと――心がどうにかなってしまいそう!
再びミカは力強く、地面を蹴った。集団の中に入り込んでしまえば、相手はろくに銃は使えない。
本来であれば一発の弾丸で止まってしまうが――ミカには頑丈さがある。
本来であれば囲まれて殴られれば一方的に不利だが――ミカには膂力がある。そもそも足も速いから、捕まえようと思って捕まえられるわけでもない。
「行くよ私の王子様! ポリコレとかぶっちゃけどうでもいいからさ――私の活躍、見ててよね!」
〇
「――中央区三番地、ほぼ鎮圧完了です!」
「……ふぅ。意外と早かったね」
知らぬ間にかいていた汗を拭う。すっかり集中していた。まあ、集中していなくてはいらぬ被害が出てしまうので、集中して悪いだなんてことはないけれど。
「……っと」
「危ないですよ」
バランスを崩した俺を、そっとハナコが支えた。それからハンカチを取り出して、汗を丁寧に拭ってくれた。
「ありがとう。なんか、医者みたいだね」
「でしたら、今のは愛の共同作業というモノですかね♡」
「ともかく、これでひとまず鎮圧は終わりかな?」
「そのようですね。指揮官を落とし、瓦解して逃走中のところばかりですから、後はこちらの勢力でそのまま制圧できるでしょう」
戦争の基本はビビらせたら勝ち。だからこそ、全く関係のない建物を破壊したりして、自らの武力と戦闘行為への躊躇のなさをアピールするのだ。特に、破壊音や炎は有効な手立ての一つで、訓練された兵士であろうとも怯んでしまう。
しかし、最終的には士気が高い方が勝つ。別に戦争を精神論で語るつもりはないが、自分たちは勝っているだとか、正義のために行動しているという精神的な支えは重要だ。
そういう意味では――どうやら、この先生という立場は非常に強力らしい。あれだけ攻め手に困っていた戦線の士気を瞬く間に向上させてしまった。勿論、既存の指揮系統に若干の迷いがあったのは確かだが……それにしたって、昔の俺は相当上手くやっていたらしい。
こういう時、自分を褒める気持ちでいるべきか、他人を褒める気持ちでいるべきかわからないのは、少々変な気持ちになるけれど。
「えっと――」
「――リンです。連邦生徒会所属、七神リン」
「リンちゃん。後はそっちにお返しするね」
「誰がリンちゃんですか――!」
「ま、まあまあ」
そうは言いつつ、手元で機器を操作するリン。ちょっと信じられないくらいのスピードだ。
これならばすぐにでも鎮圧が済むはずだ。そもそも向こうも、ほとんどが烏合の衆――何か正義感に駆られたというよりかは、暴動をイベントだと思ってなんとなく参加している程度なのだろう。
いや、流石キヴォトス。イベント感覚で街を破壊するにしたって、こんなペースでやっていればいずれ復興が追いつかなくなると思うのだが。
ともかくほっと一息ついて、その瞬間、プロジェクターに何かが映った。
『――――先生』
その声は初めて聞くもので、全身がぞわりと、身の毛がよだつような感覚があった。
『お初にお目にかかるわけではありませんが、自己紹介を。私はベアトリーチェと申す者』
「――――」
長身長髪に真っ赤な肌。それを隠すように纏ったドレスは、黒く染まっている。
俺は知っている。彼女の名を。
俺は覚えている。彼女の悪行を。
この体が忘れようとも、この心が忘れていないのだ。
『記憶を失ったのですから、さぞかし大変かと存じます』
「……そうだね。全く大変だよ。それで、急に横入りだなんて――礼儀がなってないんじゃないか?」
『あらあら、失礼しました。あまりにも貧弱だったもので』
じろり、とリンが睨む。
「それで、急に通信を繋いだんだから、何か手土産があるんだろう?」
『――ええ、勿論。決戦の場を用意致しました。文字通り、雌雄を決する時ですよ』
「私から記憶を奪っておいてよくそんなことが言えたものだね」
『そうでもしないと不利ですから。相手のカードを奪うのは、大人のやり方でしょう?』
「その点についてだけは、同意出来るね」
『ふふ――良かったです。先生と同じ意見を共有出来て。他のゲマトリアも、こんな気持ちだったのでしょうか』
嬉しそうに――彼女は、ベアトリーチェは言う。
その時、俺の背後で何かが蠢いた。
「……っ」
『しかし正直、生きているとは思いませんでした。これで撃たれるのは――』
「――
『――貴方……っ』
「どうかしたか? ベアトリーチェ。これで五分なんだろう?」
『……ふん。小細工はよしましょう。今晩、私と貴方の決着を求めます』
「いいのかい? こっちは全勢力で突っ込む」
『構いませんとも。こちらには『
「『人災保有者』……?」
『いわば『天災保有者』の複製です。能力そのものは
思い出すように、あるいは俺を煽るように。
彼女は言う。
『清澄アキラ――どうしました?』
「――――っ!」
その場の者が息を飲む。ハナコも、私の後ろで目を丸くしている。
『そういえば『人災保有者』の中でも指折りに強烈で邪悪な――『
「――ハ、馬鹿言わないでくれ」
『……』
「誰の生徒だと思ってる?」
『――ふ、うふ――うふふふ! その強がりもいつまで持つでしょう! しかし――良いでしょう! 貴方を待っています、貴方のいるべき場所で!』
「ああ――――全部、取り戻しに行ってやる」
そして、通信が切れた。
しばし静寂、それから――。
「……うわぁ、めっちゃ緊張した~!」
「ちょっと、先生っ!」
俺はふにゃりと倒れ込んだ。当然のようにハナコが支えてくれる。
本当に緊張した。何だってあんな舌戦に付き合わなくてはならないのか。
「……先生、お疲れ様です」
リンが労ってくれる。彼女の表情は強張っており――それだけ、今の一瞬で疲弊していたのが分かる。
「トップはビビったら負けだからね。頑張っては見たけど……どうだったかなぁ」
「的確だったと思うよ。考えたね、ハナコ」
遠くから、獣耳の生えた子が声を出した。
「記憶を奪われた先生が
「貴方の背中が大きくて助かりました♡」
あの時、背中に彼女の指が伝った。頑張って解析した結果――それは数字の『2』だった。
効くかはわからないが、試してみるだけリスクのない策だ。
現状、ベアトリーチェが本当に先生から記憶を奪えたかどうかを知る術はない。いや、もしかしたらあるかもしれないが、それは確定的ではない。だからこそ、ほんの小さな仕掛けとして仕込めたのだ。
後から考えれば、すぐに俺の発言の違和感に気付くだろう。実際、彼女は聡明なようで――話している最中に気付いているかのようだった。
ベアトリーチェは、俺の記憶を奪えたとわかったから仕掛けてきているのだ。だが、もしその前提が壊れたとなれば、この話そのものが破綻してしまう。
勿論、実際には記憶は奪われているから、あの時の会話は全てアドリブで適当にやっている。
これで、少しでもベアトリーチェに迷いが生じてくれれば良いのだが――。
「――ともかく。そのアキラって子の位置はわかる?」
「現時点ではなんとも」
「……そっか」
「しかし、先ほどのベアトリーチェの話が確かなら、彼女のいる場所を攻めることで、清澄アキラさんと交戦した相手を呼び戻す可能性は大いにあります」
攻撃は最大の防御、か。
相手が折角待ってくれているのだ。今は絶好の機会と言って過言ではない。
しかし――攻撃三倍の法則。攻める側は守る側に比べて不利なため、相手側の三倍の兵力を以てしてようやく敵うと言う考え方だ。ベアトリーチェがその場で待ち構えているのであれば、更に必要な兵力は増す。
何よりこちらは先ほど鎮圧戦を終えたばかりなのだ。それだけの体力が残っている者が、果たしてどれだけいるのか。
考えを巡らせていると、不意に扉をノックする音がした。俺達の返事など待たずに、彼女たちは室内に入り込む。
ぞろぞろと――三人。やはり初めて見る顔ではあるけれど――しかし、不思議と初めて会った気はしない。そんな彼女たち。
「新聞部の皆さん……!?」
「――――私たちも、連れていってください!」