「ワカモ、君には先日のお礼としてこの一日私のこと好きに出来る券をあげよう」
「使います♡ 今すぐ♡ 今日、この瞬間に♡」
「ショートショートのような展開の早さ」
渡したチケットをその場で押し返された。まさか今すぐ使うだなんてことは考えていなかったので一瞬困ったけれど、まあこれをどのように使うかはワカモの自由だ。
手に戻されたチケットが所在なさげに宙空を漂う。
「……今日、まだ仕事が残ってるけど、本当に今使う?」
「でしたら手伝わせてくださいまし。あなた様のお手伝いが出来るだけで、私は充分すぎるほどに満足でございます」
「うーむ、なんて良い子なんだ……」
思わずいつもの癖で頭を撫でてしまう。さらさらとした綺麗な緑髪を乱雑に扱うのは少々気が引けるが、ワカモがそれを好んでいるのだから仕方ないだろう。
わしゃわしゃ、と彼女の頭を撫でる。髪の毛が乱れるのも気にしない。彼女は目を細めて、嬉しそうに顔を綻ばせた。
「♡♡♡」
「あっ、言語野の喪失」
「至極にございます……このワカモ、今果てたとしても悔いはありません。今日まで生き抜いて良かったです♡」
「言葉が重い……!」
……というのも、私がワカモにそんな変なチケットを渡したのは、それが原因なのだ。
少し前、例の如く私は騒動に巻き込まれ、それをワカモに助けてもらった。本当に、彼女がいなければ何度死んでいたかもわからない、それほどの事件だった。それを乗り越えることが出来た今だからこそ、改めてこのようにワカモを労う必要があると思ったのだ。
彼女は世間からすれば――恐ろしいテロリストだと思われている。実際その評価は正しいのだろうし、目を離せばすぐに破壊行為か略奪行為を企てる。
それでも、こうして撫でられるのを喜ぶ平凡な姿を見てしまえば、彼女のことを守ってあげたくなるのは道理なのだろう。
それに、幾ら危険人物と言えど私からすれば指導すべき生徒の一人に変わりはない。であれば、生徒によって態度を変えるのも良くないだろう。
「……それにしても、本当に良かったのですか?」
「何が?」
「先生を一日好きに出来る券を、私なんかに」
「いや、ヒナとかアキラにもあげたよ」
「渡したんですか!? 私以外の女に……!?」
「みんな頑張ってくれたからね」
騒動の際、助けてくれたのはワカモだけではなかった。その全員を労うために、特別にこのチケットを作ったのだ。
……といっても、油性ペンで適当に書いただけだし、そこまで真面目な効力を持つわけでもないのだが。
「……ああいや、誰に渡したかはこの際お聞きしませんが……私なんかが、このようなモノを貰っても良いのか、ということです」
「? ワカモがいなかったら死んでたからね、これでも安すぎるくらいだと思うけど」
「――そうではありません。むしろ、あれだけの出来事に巻き込まれたのです。先生は、逆に私たちに融通が効くようにする……そう、それこそ『一日先生の言うことを聞く券』を作ってもおかしくはないと思います」
「話がデカいね」
「真面目に、です」
ずい、と乗りかかって来る。視線があって、どうやら彼女が本気で言っているらしいことがようやくわかった。
――彼女の言わんとすることは、わからなくもない。実際私が騒動に
そのことを鑑みれば、逆に私が無理矢理生徒を動かす権利を有したとしても、おかしくはない。それを主張することだって、充分に筋が通っていると思う。
「……でも、無理矢理生徒のことを動かすつもりはないよ。私の言うことだって、別に聞かなくたっていいんだからね」
「……」
「間違えたことを言っちゃうかもしれないし。必ずしも、先生の言うことが正しいとは限らないだろう? 自由に、伸び伸びと青春を謳歌してほしいものだね」
「……不知火カヤの件も、それで有耶無耶にするつもりですか?」
「……」
流石ワカモ。これくらいは知っているか。
「先生の優しさは存じております。それがあなた様の生き方だということも尊重しましょう。あなた様が、本心から願うのであれば――私は止めることはできません」
「うん、それじゃあ、そう言うことにしておいてよ」
「……」
「ごめんね。ワカモには迷惑ばかりかけるよ」
「いえ……好きですから」
「……ありがとう」
『好きでやっていること』とかじゃないんだ。
「それと、正妻枠は諦めましたが私愛人枠はまだ諦めておりませんし、隙あらば正妻枠に捻じ込むつもりですので」
「……健闘を祈っているよ」
流石にそこまで、私は優柔不断ではないけれど。
〇
ワカモと二人でしばらく書類を片付けると、思っていたよりもずっと早く仕事が終わってしまった。元より今日は夕方には終わらせる算段だったが、流石ワカモである。彼女もシャーレの当番に来るようになって結構経っているから、すっかり慣れてしまったのだろう。
押し返されたチケットを有効活用するためにも、私たちは午後過ぎには仕事を切り上げた。二人で今しがた豆を挽いて入れたコーヒーを飲みながら、適当にくつろぐ。
「お腹減ったね~」
「私はあなた様を見ているだけでお腹いっぱいです♡」
「ワカモ、ご飯行かない?」
「なんだか無性にお腹が空いてきました」
「現金」
「現代を上手に生きるのはアリでもキリギリスでもなくコウモリです」
その主張には一理あるけれど。
「そう言えば……個室が好きなんだっけ?」
「ええ、あなた様と二人きりになれますから」
「……」
ここまで真正面から好意を出されると、少々立ち位置に困ってしまうモノがある。
……が、今日はあくまでワカモの好きに使われる日だ。覚悟を決めて、私たち二人、シャーレから出た。
〇
「そう言えば、なんでワカモは、私のこと好きなの?」
「直球ですね」
「言葉を色付けるのが面倒になっちゃって。それに、誰が聞いてるというわけでもないしね」
「そう、ですね――道すがら、何故私が先生のことを大好きなのかご説明しましょうか?」
「長くなる?」
「二年はかかります」
「端折って」
「では二時間」
「相当端折ってくれたね。もう一回端折ってみよう」
「では二分」
「適度だ。じゃあそれでお願い」
「ぶっちゃけ一目惚れです」
「二秒じゃん」
「サービスでもう一回端折っておきました」
気配り上手さんめ。
「そう言われると逆に細かいところが気になってきちゃったな。一体どこで学んだの? その話術」
「乙女の秘密です」
「乙女の秘密じゃあしょうがないか……」
うふふ、とワカモは笑う。なんだかそれがすごく――ワカモらしくて、可愛くて。
狐に化かされたように、私は彼女の言葉を飲みこんだ。
こつこつと二人の足音だけがしていて、耳を澄ませば遠くから時折銃声が木霊してくる。
なんということはない、キヴォトスの平凡な一日のようだ。
「でも、あなた様を好きになったのは、多分一目惚れからです」
「へぇ。見た目から入る恋なんて――夏風邪の次にタチが悪いのに」
「ええ。実際、相当タチは悪かったですよ」
バレンタインにあれだけの大事件。それが、彼女が私に惚れてしまったせいだなんて言うのだから――タチの悪さは充分すぎるほどに証明されているだろう。
……それでも、彼女はそれを理解した上で、飲み込んでいるはずだ。
「でも今は……変な言い方ですが、ちゃんとあなた様をお慕いしておりますよ」
「何か心境の変化があったってこと?」
「それはそれは。ずっとあなた様を見ていて、どれだけ脆くて、儚い人なのだろうと思ったら……いても立ってもいられませんでした」
「……」
「知れば知るほど魅力的でしたから。それに、こんな私にだって、優しくしてくださいます」
「それは、ワカモが良い子だからだよ」
「悪い子ですよ」
「……」
「だって今もこうして、貴方のはぁとを略奪しようとしているのですから」
「私の心はそう簡単には奪えないよ」
「では死ぬまでに盗みます」
「今際の際に、言ってあげようか?」
「そんな捨て台詞ならば結構です。いつの日か、あなた様の口から本音として頂くのですから」
「……じゃあ、今日のこれも下準備なんだ」
「ええ。一に計画、二に謀略。それが狐坂ワカモです」
「ワカモらしいね」
「覚悟しておいてくださいましね、あなた様♡」
〇
店内につくと、落ち着いた雰囲気の個室に案内された。畏まった和食レストランのようだった。
話に聞いたことはあった程度で、来たことはなかった。けれど、ここまで空気の良いお店が悪い食事を出すわけがないだろう。小さく、ワカモに見つからないように安堵する。
「……ワカモ」
「なんでしょう」
「普通、こういうときは向かいに座ると思う」
「お隣はダメでしたか?」
「ダメじゃないけど……」
「それは残念」
ちっとも残念ではなさそうに、ちろと舌を出しながら、ワカモは席を移動する。
……本当に、心に悪い。もし彼女が本気を出せば、案外私なんて簡単に切り崩せてしまうんじゃないかと思ってしまう。
なら、ワカモが本気を出さないのは何故なのか。幾つか案はあっても――深く考えるまでではないだろう。
それに何より、お腹が空いている。まずは空腹を満たすところからだろう。
二人して適当に料理を注文して、差し出されたお茶を口に含んだ。
「……ん、美味しい」
「成程。少し甘い、ですね」
「ね。お茶がこれだけ美味しいんだから、きっと料理も美味しいんだろうな。楽しみだね」
「……先生は、美味しい料理の秘訣はご存じですか?」
「愛情?」
「……ええ、まあ。それも正しいですが」
こほん、と咳ばらいをして、それから続ける。
「知識です。料理は科学ですから」
「……ああ、まあ、それはそうか」
「具材を選ぶにしたってどこのモノを使うかで味は全く別物です。調理工程にしろ、何をどれだけ処理するかで出来上がりはまるで異なる。当然のことではありますが――知識は力です。何事にも言えるように」
「ワカモは料理とか詳しいの?」
「花嫁修業は一通り。家事全般は得意です」
「……なるほど」
「早起きもお洗濯も出来ますし、お料理だって出来ますよ」
「見事に私の出来ないところを突いてくるね」
「知っていますから」
にこり、と彼女は笑った。
なるほど、知識ね。確かにそれは、力だろう。
改めて事実と共に提示されてしまっては、頷かざるを得ない。
「私は生きるにあたり知識を上回るチカラはないと思っております。そんな、スポンジのように貪欲に知識を収集する私……正妻枠、どうですか?」
「おっ、この流れでダイレクトマーケティングかぁ」
「なんでもしますよ?」
「生憎と正妻枠は今埋まっててね」
「いけずぅ」
ぷく、と頬を膨らませる。そんなに可愛い仕草をしても、ダメなものはダメなのだ。
「……と、言いますか」
「? どうかした?」
「正直少し、意外だったと言いますか」
「何が?」
「あなた様が、誰かを選ぶということがです。私はてっきり、曖昧にしておくつもりなのだと思っていました」
「……ああ、それね」
そりゃあ、キヴォトスにはこれだけ魅力的な女性がいるのだ。何かの間違いで――いや、あえて言うならば正しくて――誰かを好きになってしまうことはあるのだろう。
けれど私は先生で、彼女たちは生徒だ。幾らキヴォトスがそういう場所だからといっても、弁えるべきだという考えもあるだろう。
「だって仕方ないよ。好きになっちゃったのなら」
「……っ」
「だからワカモが私を好いてくれるのは嬉しい。それが親愛だろうと性愛だろうとね。好きになっちゃうのはさ、もう仕方ないんだよ」
「先生」
「何かな」
「我儘を言わせてほしいのですが……仕方ない、という言葉は使わないで頂けますか?」
「だったら必然だ」
「……」
「誰かを好きになるのに、正直私は深い理由はいらないと思う。それこそ、一目惚れだって立派な理由だと思う。なんで好きかって聞かれても、好きだからとしか答えられないもんね。だから、私が誰かを好きになっちゃうことだって、ワカモが私を好きになっちゃうことだって――――必然なんだろう。いいじゃない、誰かを好きになって」
「……そうですね」
「嫌われるより、嫌うより、ずっと良いことだ」
――その結果がどうなるとしても。
歩まなかった道を後悔するよりも、歩んだ道を後悔する人生でありたいものだから。
「では、私は必然的に、あなた様をお慕いするのですね」
「私だって、ワカモのことは好きだよ」
「嬉しいです。ところでそれは性愛ですか?」
「いや、親愛。ワカモは?」
「心外ですね。理解されていると思っていましたのに」
「信頼はしているよ」
「いけず♡」
そこまで話すと、ようやく料理が運ばれてきたみたいだった。
気分だけで言えばかなりの時間経っているような気がしていたけれど、実際には数分ほどの会話だったらしい。
〇
「……さて、これからどうしようかな」
片付けるべき仕事は終わったし、午後からはこれといってやることもない。完全に当てがない。
お店の外に出てワカモを見ると、きょとんとした顔で私を見つめている。先ほどまで私と舌戦を繰り広げていたとは思えない、あまりにも愛い姿だった。
……可愛すぎる。思わず撫でたくなるが、我慢した。
「ワカモ」
「何でございましょう」
「デートしようか」
「でぇと♡」
私の言葉に、その瞳をきらきらと輝かせる。
「うん。行きたいところはある?」
「……よろしいのですか?」
「お金だったら心配ないよ。あんまり高いのはアレだけど、まあ、うん……」
「そう言うことではなく……」
言いながら、ワカモは目を逸らした。
「私が、でぇとを、しても、よろしいのですか?」
「どうして?」
「だって私は……」
「……いいから、行くよ」
ワカモの腕を引っ張る。抵抗しようと思えば、きっと容易く払うことは出来るだろう。
けれども、彼女は私に引かれるまま、黙って着いてくる。
「仕方ないでしょ? 好きになっちゃったんなら」
〇
ワカモを連れて街に出た。仮面を外していれば、誰も彼女が災厄の狐その人だとは気付かない。
通りを行く皆には、ただ私が綺麗な女生徒を連れて歩いているだけにしか映らないだろう。あまり自覚したくはないけれど、それもいつものことなのだろうし。
「そう言えば、仮面っていっぱい持ってるんだっけ」
「ええ、いつも気分で変えられるように」
「仮面屋さんとかあるの?」
「そうですよ。少し離れてしまいますが……」
「じゃあ帰りに寄ろうか。お土産を贈らせてほしいな」
そう言うと、ワカモは恥じらうように、私から目を逸らした。
「……先生」
「どうかした?」
「少し、そこのソファに座ってもよろしいでしょうか?」
私の袖を引っ張って、ワカモはとことこと歩いていく。
疲れてしまっただろうか。彼女のことはよく見るようにしていたけれど、知らない間に溜まっていたかもしれない。ワカモに連れられるまま、適当なソファに腰かけた。
横に並んで座っていると、距離を詰めて来る。ぴたりと肌が触れ合うように近づいて、ワカモの体重がゆっくりと体に載せられた。
「あなた様は――酷い人ですね」
「……」
「私を弄んで。私を惑わして。私を甘やかして――」
私を向かず、ただ前だけを見て、ワカモは言う。
酷い人。その自覚は勿論ある。
……だって、ワカモは叶わない恋を抱えているのだ。その原因は間違いようもなく私自身で、その私がワカモに仮初の時間を与えているのだから。
苦しいと思うかもしれない。それでも、私はワカモは選ばない。申し訳ないし、嬉しいし、本当に忍びないけれど、それが私の選んだ真実なのだから。
選ぶということは、選ばないことでもある。選ばれるかもしれないということは、選ばれないかもしれないということでもあるように。
「――――でも、そんなあなた様が大好きです」
「……ありがとう」
「胸が苦しくて、どれだけあなた様が私を向いてくださっても、愛は囁いてくれない。分かっているのに、やめられません。まるで、中毒症状ですね」
「ありがとう、って言うのが正しいのかな」
「謝罪かと」
「じゃあごめんなさいだ」
「ええ。死んでも、許しませんけれど」
「……」
私はワカモの言葉を飲み込んだ。拒絶してはならないと思った。ちくりと胸を刺す痛みを受け入れなければならないと思った。
「うん、死ぬまで許さないでほしい」
「……」
「そしてもしいつか、私が君に後悔を告げることがあれば、その時思いっきりバカにしてよ。自分にしておくべきだったって、間違った判断で人生を棒に振るったってさ」
「そんなことは起こらないでしょう」
「理解してるんじゃなかったの?」
「信頼、しているのです」
「それも乙女の秘密?」
「乙女の秘密、です」
自然と二人の言葉が途切れた。
それは私たち二人にとって本音そのもので――言おうとして言えなかった思いそのものなのだろうと思う。
だからきっと、これ以上の言葉なんてモノは必要なくて……ただ、その沈黙だけで充分なのだ。
「少し疲れて、しまったかもしれませんね」
「私の肩を使っていくかい? 可愛らしい小鳥さん」
「無理せずとも結構ですよ」
「……今のはちょっとやりすぎたかも。でも、疲れたらいつでも言ってね」
「……」
「いつだって、私が君の止まり木になるからね」
「では、また疲れた時は、そうさせてください。いつまでも、花を散らさないでくださいましね」
「随分と難しい注文だね」
「厳しそうですか?」
「……いや、頑張るよ」
「……」
「私が死んでしまうその瞬間までは、頑張り続けるよ」
その言葉を口にした瞬間だった。何やら急に周囲が騒がしくなった。慌ただしく逃げ惑う一般客に、室内で響く銃声。誰かが事件を起こしたみたいだった。
「でぇとはおしまい、ですかね」
「生きてりゃ何度だってチャンスはあるよ。また、デートすればいい」
「それも、そうですね」
ゆっくりと、私たちは立ち上がる。
さて、お仕事だ。私は先生だから、いつまでも休憩ばかりはしていられないのだろう。
「――ここからは、連邦捜査局『シャーレ』の私が預かるよ!」
強く立ち上がって、周囲に声をかける。もう早速、どこかからか鎮圧部隊が送り込まれたらしい。流石キヴォトス、緊急事態対応はお手の物だ。
「ワカモ、手伝ってくれる?」
「勿論ですとも。私はどこまでも、あなた様についていきますとも」
ワカモも懐からライフルを取り出して、仮面をつける。やれやれ、と言った表情が隠れて、見えなくなった。
「先生、アレをお願いしてもいいでしょうか?」
「……アレ?」
「気分が良くなるので。一騎当千の働きを約束しますわ」
「……ああ、分かった。それじゃあ、ワカモ」
「……はい」
彼女は私の三歩後ろをついてくる。流石、花嫁修業は一通りこなしているだけのことはある。
騒動の渦中に向かって進んでいく。すぐさまその正体は分かって――いつも通り、ヘルメット団の連中だった。
「――へへっ、水着をありったけ詰めろ!」
「これからのシーズン、流行をいち早く抑えておくのは大切だからなぁ!」
「水着売り場の売れ筋ランキングを上から全部盗んでやらぁよ!」
「……だったら雑誌とか盗めば良かったんじゃない?」
「うるせぇ! アタシたちが本屋に強盗に入ったら質が落ちるだろうが!」
「強盗の時点で相当質は低いと思うけど……」
「誰ださっきから鋭い突っ込みを入れてくる奴は! アタシたちのヘルメットが見えねぇのか!?」
「むしろ君たちのヘルメットで私が見えてないんじゃない?」
「……げぇっ、シャーレの先生!? なんでこんなところに!?」
「デート中だったんだけど、タイミングが良かったね」
「悪かったの間違いだろ! だがお前ら落ち着け、相手は先生一人! 生徒がいなけりゃこっちのモンだ! フクロにして今日こそ雪辱を晴らすぞ!」
「ヨロコンデー!」
「居酒屋?」
数名のヘルメット団員が、私の元に向かって駆けて来る。彼女たちも察してくれているのか、銃は構えず素手で私を捕まえるつもりみたいだ。
幾ら相手が少女と言えど、ここはキヴォトス。捕まってしまえば、あっさりフクロにされてしまうだろう。
――けれど、生憎と今の私は一人じゃない。
「――――来い、ワカモ」
その言葉を吐いた次の瞬間、甲高い銃声と共に一人のヘルメット団が気絶した。
「!?」
後方から、狙撃したのだ。何せ彼女は元々
「な……七囚人――『災厄の狐』――――!?」
「何故ここに!?」
「言ったでしょ、デート中だったってさ」
狼狽える彼女たち。この様子ならば、鎮圧もすぐ済んでくれるだろう。
それが終わったら……デートを続けよう。今日一日は、私はワカモの好きに使われる日なのだ。彼女に身を任せ、どこにでもついていこう。
せめてそれが、私が彼女に出来ることだと思うから。
――――出来る限りの祝福を、彼女には受け取ってほしいから。
だから、私は彼女を信じるのだ。
「――はぁい♡ 健康優良不良生徒、狐坂ワカモにございます。先生の頼みとあらば、いつでもいつまでも、どこにでも馳せ参じましょうとも」
以下、オマケ
ミカ『先生~! 今日ワカモちゃんに何したの!』
ミカ『さっきからメッセ止まらないんだけど~!』
ミカ『そろそろ寝ないと寮長に怒られちゃうよ!』
先生『どんなこと話してた?』
ミカ『でぇとがどうだったとか、格好良かったとか、新しい仮面買ってもらったとか』
先生『照れるな』
ミカ『話が終わらないんだよ! 今こうしている間にもずっと続いてるの!』
先生『何を話してるの?』
ミカ『先生の良いところ百選』
先生『観光名所じゃないんだぞ』
ミカ『うち50個は聖園ミカ選出だよ☆』
先生『一応聞いておくけど、どんなのが出た?』
ミカ『コピペ貼る?』
先生『なんだか急に眠くなってきちゃったな』
先生『おやすみ』
先生『またね、ミカ』
ミカ『ちょっと先生!』
ミカ『先生!』
ミカ『私の問題が解決してないんだけど!?』
オワリ