【ヘブバン×武装錬金】SunLight from the Memories 作:亜蘭作務村
【午前01*1 学園基地・ヘリポート】
学舎裏手の屋外
「お疲れ様です。31Cは本日は7号ヘリでの出撃となります」
こちらへどうぞ、と人形じみた無表情、淡々とした口調で誘導する七瀬に、山脇達は大人しく続く。一見不愛想な態度の裏に、優しさや気遣いが確かにあることに気づいたのはいつだったか。
七瀬は手塚司令官の腹心だが、
任務の時は、七瀬に「行ってらっしゃい」と見送られながら出撃し、帰投したら七瀬が「お帰りなさい」と出迎えてくれる。それがセラフ部隊の
「山脇さん」
案内された輸送ヘリに搭乗しようとした矢先、七瀬が山脇を呼び止めた。七瀬とセラフ部隊の関わりは意外と深い。が、七瀬から隊員個人へ声をかけるのは、実は珍しい。
山脇は七瀬を振り向き、口を開く――前に、まずは
(他の部隊員は?)(先にヘリに乗ってくれて構いません)
振り返り、先に搭乗するよう部隊へ
「んで? 何かあったの?」
「……こちらを」
訝しげな表情で尋ねる山脇へ、七瀬は士官服のポケットから何かを取り出し、差し出した。鈍い金属光沢を放つ、銀灰色の
「何これ?」
差し出された謎の塊を取り敢えず受け取ったが、七瀬の意図が分からず、山脇はますます首を傾げた。やはり金属でできているらしく、片手で握れる大きさの割にはずしりと重い。
「『お守り』です。司令官より、危険な任務になるとお聞きしたので。大切な物なので、後で必ず返して下さいね?」
「ふぅん……?」
つまりは願掛けのようなものだろうか。この『お守り』とやらを返すために、必ず生きて帰ってこいという。今までこんなことは初めてだった。どうやら今回は本当に、碌でもない任務らしい。
手の中の『お守り』を、山脇は改めて見下ろした。
どうやら表裏があるらしく、片側は無地だが、もう片側には『A』の字に似た
やはり、どこかで見たことがある気がする。だが、どこで見たのかを思い出せない。いやいや、よくよく思い返してみれば、色や刻印が微妙に違うような……?
「……まぁいいわ。これ、確かに預かったわ。それじゃあ、
深みにはまりそうになる思考を無理矢理切り上げ、山脇はそう言って七瀬に背を向け、他の
【輸送ヘリ・キャビン】
輸送ヘリでの移動中は、割と暇である。勿論、任務内容の再確認や、入手した情報の整理などやるべき仕事もあるが、それが終わった後は手持無沙汰になる。
隣の隊員と雑談したり、電子軍人手帳に
山脇はと言えば、雑談に混ざる気分にはなれず、
他に考えべき事柄がないと、一度は切り捨てた思考が再び頭に蘇ってくる。この『お守り』の
この『お守り』と同じ
考えるほど、思い出そうとするほど違和感が大きくなって気持ちが悪い。
「――山脇様。さっきからどうしたんでゲス? その手に持ってるのは何なんでゲスか?」
どこか戸惑ったような豊後の声に、山脇はハッと我に返った。隣に目をやれば、豊後が心配そうな顔で山脇を見上げていた。
「あ、ああ。七瀬からの預かり物よ。『お守り』なんだってさ」
山脇はそう言って、「ほら」と『お守り』を豊後へ手渡した。豊後は受け取った『お守り』をしげしげと眺め、そして再び山脇を振り向き、言った。
「山脇様。あちき、これを見たことあるでゲス!」
「えっ、あんたも?」
「でも、何かちょっと違う気がするでゲス」
「あ、やっぱり?」
豊後も見覚えがあり、そして同じ違和感を覚えているということは、やはり山脇の記憶違いではないらしい。そしていつ、どこで見たのかという疑問についても、候補が大分絞り込めた。
豊後が憶えているということは、記憶障害を負う
その条件で、かつ豊後と山脇、二人が共通する思い出のある場所といえば――。
「そう言えば、山脇様」
山脇の思考を遮るように、豊後が再び声をかけてきた。瞬間、頭の中で形になりかけていた
「何よ、豊後?」
思わず不機嫌そうな声が出るが、豊後は気にせず、あるいは気づかず、そのまま言葉を続ける。
「
豊後の口から唐突に出てきた、人の名前らしきその単語を、山脇は一瞬理解できなかった。そうや? そんな
だが紙が水を吸うように、じわじわとその名前が山脇の脳細胞に浸透するにつれ、過去の記憶が蘇ってきた。そうや――
「さぁね。大方、どこかで偽善者してるんじゃないの? 何で急にそんなこと言い出したのよ?」
「この『お守り』を見てたら、急にあいつの顔を思い出したでゲス!」
「ふぅん?」
不思議なこともあるものである。しかし、
「そう言えば、初めて"
「ぶんちゃんとイヴァールちゃんは、パピヨンパークに行ったことがあるんですか?」
二人の会話に興味を持ったのか、佐月が横から話に入り込んできた。その問いに、山脇と豊後は「ええ」「でゲス」と揃って頷く。
「子供の頃に、旅行でね」
昔、豊後の家の家族旅行に、特別に山脇も連れて行って貰ったことがあるのだ。その行き先が、パピヨンパークだった。
だが大人達とはぐれ、二人で迷子のなってしまった。その時に、ソウヤという男の子と知り合ったのだ。
「……
「おおっ、これはまさか山脇殿の初恋話でゴザルか!?」
桜庭と神崎まで話に食いついてきた。如何にも思春期丸出しな二人の勘繰りを、山脇は「ハッ」と鼻で笑い飛ばす。
「初恋? "
「山脇殿、めっちゃ早口でゴザル……」
「……語るに落ちる、と言うべきでしょうか」
「それは言わぬが華って奴です♪」
【午前01 パピヨンパーク・庭園エリア】
パピヨンパーク。2000年代初頭、銀成市が生んだ新たな都市伝説として一躍有名になった
色とりどりの花々が咲き誇る庭園を、世界中から集められた様々な蝶が飛び交う様は、蝶の楽園と呼ぶに相応しい幻想的な光景だったという。
だが今や、荒れ果てた庭園に蝶の姿はなく、雑草生い茂る
「酷い……」
廃墟と化した
予想も覚悟もしたつもりだったが、それでも過去の姿を知る山脇にとって、現在の変わり果てた有様はとても直視できたものではなかった。
「イヴァールちゃん」
「……そうね。皆、行きましょうか」
佐月に促されたことで漸く腹を括り、山脇はそう言って、先頭を切って
瓦礫を避け、叢に足を取られないよう慎重に探索していく。時折小型のキャンサーが襲ってきたが、いずれもよく見る
「――おや? これは何でゴザろう?」
何の発見もないまま庭内を進むこと暫し。何かを見つけたのか、神崎が不意に立ち止まり、声を上げた。
その声に、山脇達は神崎の周りに集合。警戒態勢を取りながら慎重にその足元を確認する。叢に埋まるように、大きな『何か』が転がっていた。
それは例えるならば、『機械仕掛けの死骸』だった。より率直に言い表せば、動物型のロボットの残骸である。
下半身は引き千切られたように喪失し、断面から内部の
なまじ精巧に造られているため、それは機械の『残骸』というより、本物の生物の『死骸』のようで、生々しく、そして不気味だった。少なくとも、長々と見続けていたいとは思わない。
電子軍人手帳の
「――えっ?」
他の
生物ではなく機械なのだから、半身を失っても動くことがあるのは可笑しな話ではない。
だが、その場に留まり、暫く観察してみても、『死骸』が再び動く気配はない。気のせいだったのだろうか?
「佐月! 何やってんの。置いてくわよ?」
佐月の不在に気づき、山脇が遠くから声を張り上げる。その呼びかけに、佐月は後ろ髪を引かれながらも『死骸』に背を向け、小走りで
遠ざかる佐月の背中を、『死骸』の光の灯らない機械仕掛けの眼が、じっと見つめていた。
お読み頂きありがとうございます。
ごめんまだ武装錬金キャラ出せんかったorz
名前だけならパッピーが一応出てきたから、それで許して、ユルシテ…
次回は○○○○○○戦で、その次くらいの話には本格登場できる筈です。