【ヘブバン×武装錬金】SunLight from the Memories 作:亜蘭作務村
【午前01*1 パピヨンパーク・庭園エリア】
探索開始から約一時間が経った。
謎のワームホール反応の原因究明のため、閉鎖された元テーマパーク、パピヨンパーク跡地を調査するという今回の任務。まだまだ任務の序盤ではあるが、あまり良い手応えではなかった。
庭内に棲息する小型キャンサーとの接敵は何度かあったが、いずれも見飽きた
見つかるものと言えば、見渡す限りに広がる鬱蒼とした
「……すみません。山脇さん」
背中にかけられた桜庭の呼びかけに、山脇は足を止めて振り返る。声が強張っている。それだけで、、彼女が『何』を見つけたのかを察してしまう。
「……どこ?」
「……こちらです」
主語を抜いた山脇の問いに、桜庭も同じく端的に答え、叢の一角を指さす。掻き分けた雑草の下から顔を出したのは、人間の『頭蓋骨』だった。
探索中に見つかるものは大きく分けて二つ。一つは謎の動物型ロボットの『死骸』、もう一つは人間の『遺骸』である。
こんなご時世である。キャンサーに襲われた犠牲者が回収して埋葬することもできず、遺骸が野晒にされているという
実際、山脇達も今回に限らず、任務の途中にそういった遺骸を見かけた
もっとも、今回のように同じ任務中にここまで立て続けに遭遇するのは初めての経験だが、それも
手塚司令官曰く、このパピヨンパークを含む旧銀成市一帯には、過去に幾度か軍の調査隊が派遣され、しかしいずれも全滅で終わったという。
この遺骸も、当時の調査隊の一員だったのかもしれない。それとも軍とは無関係な、一般の不運なキャンサー犠牲者だろうか? 今となっては分からない。
遺体は完全に白骨化して、服など身元が推測できるような
はっきり
「全員、30秒黙祷」
先を急ぐ気持ちを抑え、遺骸を前に横一列に整列。名も知らぬ犠牲者に黙祷を捧げる。
埋葬はしない。まだ任務の途中で時間的な余裕もないし、またそのための道具も持ち合わせていない。まさかセラフで墓穴を掘る訳にもいかないだろう。*2
だから犠牲者の遺体を発見しても、そのままその場に置き去りにする。だがせめて、祈りを捧げる、その程度の弔いは許されるだろう。もっとも、その時間も最低限に済ませるべきだろうが。
「――黙祷やめ。先へ進むわよ」
山脇の合図とともに遺骸に背を向け、部隊は再び歩き始める。任務再開である。
【午前02*3 パピヨンパーク・庭園エリア】
あれからまた歩き回ること暫し、庭内の半分程度の探索が完了した頃。神崎が何かを察知したのか、山脇に部隊の停止を進言した。
「……佐月殿」
「分かってます。――アーデルちゃん、敵です。囲まれてます」
確認するような神崎の呼びかけ。それに同意し、佐月が敵の待ち伏せを山脇に告げる。二人の進言に、山脇は即座に部隊へ警戒を命じた。
日本の忍者に憧れて独学で修行してきた神崎、そして本物の忍者の家系に生まれて修行を積んだ佐月。
気配の察知に長けた二人が揃って警告する時点で、たとえ
叢を掻き分け、何かが山脇達の前に姿を現わす。
「何、あれ……?」
誰かが漏らしたその呟きは、山脇含め部隊の全員の
確認できる『敵』は大きく分けて二種類。一つは二足歩行する
だがその姿は『死骸』と同じくボロボロで、まるで
そしてもう一つは、よく分からない、『怪人』としか言い様のない真っ白な
大まかな
「アイエッ!? ど、動物型のロボットのロボットのゾンビでゴザルー!?」
「……もう一方の人型のあれは、何なのでしょう……」
「ま、まさかご遺体が化けて出たのか!?」
神崎や天音など、正体不明の敵の出現に取り乱す者がいる一方で、冷静さを失わない者もいた。山脇と豊後である。
隣で誰かが慌てていると逆に冷静になる、という話ではない。二人が落ち着いているのは、単純に『敵』の
山脇は憶えている。豊後の方はもっと記憶が鮮明だろう。最初に
「「
二人の声がぴたりと重なり、正体不明の『敵』の正体を暴いたのだった。
「識ってるんですか? ぶんちゃん、イヴァールちゃん」
「パピヨンパークのマスコット!」
「だけど様子が変でゲス!」
佐月の問いに、二人は端的に答える。ホムンクルス。それは山脇の語る通り、パピヨンパークのマスコットキャラクターである。
当初はその不気味な風貌から、パークの世界観を壊す異物などと呼ばれていたが、世間の価値観の変遷とともに
だが豊後が指摘する通り、今、目の前にいるホムンクルスは、記憶の中の
着ぐるみではなく
今の
「ニンゲン……! ニンゲン……!」
「喰ワセロ……! 喰ワセロ……!」
「「「「「喰゙ヷゼロ゙オ゙オ゙オ゙ーーーッ!!」」」」」
「喋ったでゴザル!」
「……
「キャンサーに操られておるのか?」
実際には、元々ホムンクルスは危険な人喰いの
その時、山脇達の背後で叢が揺れ、新たな
四肢が千切れたり、半身を失ったりと、どれも動けるような状態ではなかった筈だが、今は失われた筈の部位が復活している。まさか再生能力があるとでもいうのか。
「ニンゲン……! ニンゲン……!」
「喰ワセロ……! 喰ワセロ……!」
「ニンゲン……! ニンゲン……!」
「喰ワセロ……! 喰ワセロ……!」
うわ言のように繰り返しながら、ホムンクルス達はじりじりと包囲網を狭めてくる。間もなくその本能のままに、
最早逃げ場はない。ならばどうする? ――戦うまでだ。
「やるわよ、あんた達!」
山脇の音頭に合わせて、
「【この世界は私の実験台よ】」
「【世界征服開始でゲス!】」
「【イッツニンジャショータイム】」
「【全滅のご注文承りました】」
「【追憶に生きよ】」
「【星の導きがあらんことを】」
電子軍人手帳に登録された
山脇には大鎌が、豊後と天音には銃が、佐月には砲が、神崎には刀が、そして桜庭には盾が。
それこそが、セラフ部隊の名前の由来。掌握、決意、そして
人類の叡智が生み出した最後の希望。宇宙という体内に発生した癌細胞、キャンサーに唯一対抗できる最終決戦兵器。その名称――セラフ!
飢えた
お読み頂きありがとうございます。
本作のアーさんはどうやら忍殺語履修者のようです。
書いてて自然とそうなりました。