【ヘブバン×武装錬金】SunLight from the Memories   作:亜蘭作務村

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【業務連絡】2022/8/12 サブタイトル変更しました。


第01話 パピヨンパークに潜む怪③

【午前01*1 パピヨンパーク・庭園エリア】

 

 探索開始から約一時間が経った。

 謎のワームホール反応の原因究明のため、閉鎖された元テーマパーク、パピヨンパーク跡地を調査するという今回の任務。まだまだ任務の序盤ではあるが、あまり良い手応えではなかった。

 庭内に棲息する小型キャンサーとの接敵は何度かあったが、いずれも見飽きた(タイプ)ばかり。今回の作戦目標(ターゲット)、ワームホールの原因と思われる新種は未だ発見できていない。

 見つかるものと言えば、見渡す限りに広がる鬱蒼とした(くさむら)、かつての花畑の中に埋まるように時折転がっている『死骸』――謎の動物型のロボットの残骸と、そしてもう一つ。

 

「……すみません。山脇さん」

 

 背中にかけられた桜庭の呼びかけに、山脇は足を止めて振り返る。声が強張っている。それだけで、、彼女が『何』を見つけたのかを察してしまう。

 

「……どこ?」

 

「……こちらです」

 

 主語を抜いた山脇の問いに、桜庭も同じく端的に答え、叢の一角を指さす。掻き分けた雑草の下から顔を出したのは、人間の『頭蓋骨』だった。

 探索中に見つかるものは大きく分けて二つ。一つは謎の動物型ロボットの『死骸』、もう一つは人間の『遺骸』である。

 

 人間(ヒト)の死体が道端に落ちている、というのは実は特段驚くべき事態(コト)ではない。

 こんなご時世である。キャンサーに襲われた犠牲者が回収して埋葬することもできず、遺骸が野晒にされているという事例(こと)は珍しくもない。

 実際、山脇達も今回に限らず、任務の途中にそういった遺骸を見かけた経験(こと)は一度や二度ではない。

 もっとも、今回のように同じ任務中にここまで立て続けに遭遇するのは初めての経験だが、それも()()を考えれば不思議なことではないだろう。

 

 手塚司令官曰く、このパピヨンパークを含む旧銀成市一帯には、過去に幾度か軍の調査隊が派遣され、しかしいずれも全滅で終わったという。

 この遺骸も、当時の調査隊の一員だったのかもしれない。それとも軍とは無関係な、一般の不運なキャンサー犠牲者だろうか? 今となっては分からない。

 遺体は完全に白骨化して、服など身元が推測できるような遺留品(もの)はない。残った遺骨もまるで()()()()()()()ようにバラバラに損壊し、素人目には性別すらも判別不能だ。

 はっきり遺骸(それ)と分かるだけの形と大きさを残しているのはそれこそ頭蓋骨くらいで、そうでなければただのゴミとして気にもせずに通り過ぎていただろう。

 

「全員、30秒黙祷」

 

 先を急ぐ気持ちを抑え、遺骸を前に横一列に整列。名も知らぬ犠牲者に黙祷を捧げる。

 埋葬はしない。まだ任務の途中で時間的な余裕もないし、またそのための道具も持ち合わせていない。まさかセラフで墓穴を掘る訳にもいかないだろう。*2

 だから犠牲者の遺体を発見しても、そのままその場に置き去りにする。だがせめて、祈りを捧げる、その程度の弔いは許されるだろう。もっとも、その時間も最低限に済ませるべきだろうが。

 

「――黙祷やめ。先へ進むわよ」

 

 山脇の合図とともに遺骸に背を向け、部隊は再び歩き始める。任務再開である。

 

 

 

 

 

【午前02*3 パピヨンパーク・庭園エリア】

 

 あれからまた歩き回ること暫し、庭内の半分程度の探索が完了した頃。神崎が何かを察知したのか、山脇に部隊の停止を進言した。

 

「……佐月殿」

 

「分かってます。――アーデルちゃん、敵です。囲まれてます」

 

 確認するような神崎の呼びかけ。それに同意し、佐月が敵の待ち伏せを山脇に告げる。二人の進言に、山脇は即座に部隊へ警戒を命じた。

 日本の忍者に憧れて独学で修行してきた神崎、そして本物の忍者の家系に生まれて修行を積んだ佐月。

 気配の察知に長けた二人が揃って警告する時点で、たとえ(キャンサー)の姿が見えずとも、敵襲に疑いの余地はない。それだけの信頼を山脇は二人に寄せていた。

 

 叢を掻き分け、何かが山脇達の前に姿を現わす。予想(おもった)よりも小さい。だがそれは()()()()()()()()()であり、人間の成人男性程度の大きさ(サイズ)はある。

 

「何、あれ……?」

 

 誰かが漏らしたその呟きは、山脇含め部隊の全員の困惑(きもち)の代弁だっただろう。これまで戦ってきた(キャンサー)とは明らかに毛色が違う、未知の敵(アンノウン)が現れたのだ。

 

 確認できる『敵』は大きく分けて二種類。一つは二足歩行する()()()()()()()()。恐らく道中で何度の見かけた『死骸』と同種の、しかし機能停止せず稼働を続けていた個体だろう。

 だがその姿は『死骸』と同じくボロボロで、まるで動く死体(ゾンビ)である。見ているだけで、生理的な嫌悪感が湧き上がってくる。

 

 そしてもう一つは、よく分からない、『怪人』としか言い様のない真っ白な()()だった。

 大まかな輪郭(シルエット)は人型に似ているが、大きな頭は三角形に尖り、首はなく胴体と直接繋がっている。そして何より目を引くのが、鋭い牙が並ぶ、口裂け女のような大きな口である。

 

「アイエッ!? ど、動物型のロボットのロボットのゾンビでゴザルー!?」

 

「……もう一方の人型のあれは、何なのでしょう……」

 

「ま、まさかご遺体が化けて出たのか!?」

 

 神崎や天音など、正体不明の敵の出現に取り乱す者がいる一方で、冷静さを失わない者もいた。山脇と豊後である。

 隣で誰かが慌てていると逆に冷静になる、という話ではない。二人が落ち着いているのは、単純に『敵』の()()()()()()()()ためである。

 山脇は憶えている。豊後の方はもっと記憶が鮮明だろう。最初にここ(パピヨンパーク)を訪れたあの日も、『奴ら』は我が物顔で庭内を闊歩していたのだから。

 

「「()()()()()()……!!」」

 

 二人の声がぴたりと重なり、正体不明の『敵』の正体を暴いたのだった。

 

「識ってるんですか? ぶんちゃん、イヴァールちゃん」

 

「パピヨンパークのマスコット!」

 

「だけど様子が変でゲス!」

 

 佐月の問いに、二人は端的に答える。ホムンクルス。それは山脇の語る通り、パピヨンパークのマスコットキャラクターである。

 当初はその不気味な風貌から、パークの世界観を壊す異物などと呼ばれていたが、世間の価値観の変遷とともに()()()()()()マスコットとして次第に受け入れられていった。

 

 だが豊後が指摘する通り、今、目の前にいるホムンクルスは、記憶の中の()()()()()()()()()とは様子が明らかに違う。敢えて言うなら、当時に比べてあらゆる挙動が()()()なのだ。

 着ぐるみではなく機械仕掛け(ロボット)というのは初めて知ったが、この変貌はただの制御中枢(コンピューター)の故障による暴走とは思えない。

 今の奴ら(ホムンクルス)からは、当時は感じなかった()()のようなものすら感じるのだから。

 

「ニンゲン……! ニンゲン……!」

「喰ワセロ……! 喰ワセロ……!」

「「「「「喰゙ヷゼロ゙オ゙オ゙オ゙ーーーッ!!」」」」」

 

「喋ったでゴザル!」

 

「……人間(わたしたち)を食べようとしている……? ……機械が?」

 

「キャンサーに操られておるのか?」

 

 (ホムンクルス)機械(ロボット)らしからぬ異常行動の原因を、その言動からキャンサーの仕業と天音は推測した。

 

 実際には、元々ホムンクルスは危険な人喰いの化物(モンスター)で、当時マスコットとして活動していた個体は創造主(パピヨン)によって制御(コントロール)されており、その制御を外れ本能のままに動く現在の状況こそが正常なのだが、彼女達が知る由もない。

 

 その時、山脇達の背後で叢が揺れ、新たな動物型ゾンビロボ(ホムンクルス)が現れた。損傷の具合に見覚えがある。道中で見かけた『死骸』が再起動したらしい。

 四肢が千切れたり、半身を失ったりと、どれも動けるような状態ではなかった筈だが、今は失われた筈の部位が復活している。まさか再生能力があるとでもいうのか。

 

「ニンゲン……! ニンゲン……!」

「喰ワセロ……! 喰ワセロ……!」

「ニンゲン……! ニンゲン……!」

「喰ワセロ……! 喰ワセロ……!」

 

 うわ言のように繰り返しながら、ホムンクルス達はじりじりと包囲網を狭めてくる。間もなくその本能のままに、(山脇達)を貪り喰おうと一斉に飛びかかってくるだろう。

 最早逃げ場はない。ならばどうする? ――戦うまでだ。

 

「やるわよ、あんた達!」

 

 山脇の音頭に合わせて、六人(31C部隊)は一斉に電子軍人手帳を天に(かざ)す。そして高らかに召喚の呪文(セラフィムコード)を歌い上げた。

 

【この世界は私の実験台よ】

【世界征服開始でゲス!】

【イッツニンジャショータイム】

【全滅のご注文承りました】

【追憶に生きよ】

【星の導きがあらんことを】

 

 電子軍人手帳に登録された戦意高揚の合言葉(セラフィムコード)に反応し、空中に異空間の門(ワームホール)が展開。空間を歪めて生まれた黒い穴の奥から、六つの武器が選ばれし者の元へと舞い降りる。

 山脇には大鎌が、豊後と天音には銃が、佐月には砲が、神崎には刀が、そして桜庭には盾が。

 

 それこそが、セラフ部隊の名前の由来。掌握、決意、そして咆哮(セラフィムコード)。三つの手順(ステップ)によって召喚される唯一無二の武装。

 人類の叡智が生み出した最後の希望。宇宙という体内に発生した癌細胞、キャンサーに唯一対抗できる最終決戦兵器。その名称――セラフ!

 

 飢えた人喰いの化物(ホムンクルス)どもが唸り声を上げながら襲いかかり、山脇達も負けじとセラフを手に飛び出す。戦いが始まった。

 

 

*1
AM08:30~AM10:30の時間帯

*2
セラフで土地の開墾を行ったセラフ部隊員(もなにゃん)が実は過去に存在する

*3
AM10:30~PM12:30の時間帯




お読み頂きありがとうございます。
本作のアーさんはどうやら忍殺語履修者のようです。
書いてて自然とそうなりました。
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