【ヘブバン×武装錬金】SunLight from the Memories 作:亜蘭作務村
【午前02*1 パピヨンパーク・庭園エリア】
パピヨンパーク跡地に潜む人喰いの
山脇の
「ええっ……」
「ややっ?」
予想外の手応えに、山脇達の口から困惑の声が漏れる。思ったよりも
これは意外と簡単に片がつくかもしれない、という山脇達の楽観は、しかし次の瞬間、脆くも崩れ去った。
山脇が斬りつけた調整体の胴の傷口が、じゅうじゅうと煙を上げながら修復再生していく。
一方、もう一体の調整体は斬り落とされた腕を拾い上げ、断面同士を押し当てていた。再びくっつける。同じように煙が上がり、切断された腕が再び繋がる。
「アイエー!?
神崎が狼狽えた声を上げる傍ら、山脇は今度は大鎌を横薙ぎに振るった。
「こんにゃろっ!」
首――はないので頭と胴体の境目を狙った大鎌の一撃が、調整体の頭部を斬り飛ばす。が、首なしの
鶏は、頭を落としても残った躯が走り回ることがあると聞くが、ちょうどあんな感じだろうか?
そして拾った頭をくっつける様はまるでアン○ンマンである。別に顔は新しくはないが。――山脇一流の現実逃避である。
「は、刃物での攻撃は効果が薄いみたいね! だったら鉛玉はどうかしら? 豊後、佐月、天音! 全員撃つべし、撃つべし、撃つべーし!」
頭を切り替え、山脇は銃砲型セラフを装備した三人へ指示を飛ばす。
キャンサーには、特定の属性の攻撃に対して耐性を持つ
山脇の指示を受け、豊後達の
銃撃も斬撃と大差なし。ならば殴りつける攻撃はどうか? 今度は桜庭が前に出た。
「えいっ……!」
気合とともに振り下ろされた盾の一撃が、動物型の頭部を大きく陥没させる。桜庭は一旦後退。距離を取り、敵の様子を観察する。
「……駄目みたいですね」
動物型の陥没した頭部が内側から盛り上がるように修復されるのを確認し、桜庭は落胆したようい呟いた。
ホムンクルス達が唸り声を上げ、反撃とばかりに
にも拘らず、山脇達は幾度となく被弾を許し、逆に攻めの手は空振りが目立つ。普段のキャンサーとの戦闘に比べ、その立ち回りは明らかに精彩を欠いていた。
不調の原因は
斬る撃つ殴る、どの属性の攻撃もまるで効果なし。まさに
「かくなる上は全力全壊でゲス!」
自棄になったように豊後が飛び出し、
粉砕された調整体が再生復活する気配はない。豊後最強の
戦場は凍りついたように静まり返った。
時が止まったように沈黙が続く中、最初に我に返り、動き始めたのは山脇だった。
「よくやったわね、豊後! 流石は私の自慢の使い魔よ!」
戦場全域に聞かせるような大声で、山脇は豊後を褒め称えた。
「見たわね、あんた達!」
主人に褒められ「えへへ、でゲス」とご満悦な豊後を横に、山脇は
「ちょっと
山脇の叱咤激励に、挫けかけていた佐月達の目に
「
セラフには対キャンサー特攻という特性の他に、四つの機能がある。使用者の身体能力向上、『デフレクタ』と呼ばれる防護障壁、一定距離の瞬間移動を可能とする『トランスポート』、そしてエネルギーを消費して発動する『スキル』と呼ばれる特殊攻撃。
セラフとはただ振り回すだけが能ではない。スキルを駆使し、如何に
そういう意味では、今回もやるべき
「さぁ、あんた達!
山脇に煽動に触発されたように、31C部隊の反撃が始まった。エネルギーを纏った刃が調整体を細切れにし、
先刻までの苦戦が嘘のように、山脇達は確実に
だが、不意に敵群の動きが変わった。調整体達が突如として一斉に、同族同士で共喰いを始めたのだ。吐き気を催すような凄惨な光景に、山脇達は思わず顔を逸らした。
共喰いによって調整体は瞬く間に数を減らし、同時に生き残った個体は爆発的な勢いで膨張肥大化していく。
この段になって、山脇達は漸く異常に気づいた。奴らは共喰いしているのではない――合体して巨大化していたのだ!
いつの間にか調整体の数は一体まで減り、その体長は三階建ての
ホムンクルス"蝶・成体"*4が動き出した。身じろぎするだけで大気が震え、足を踏み出すだけで大地が揺れる。
拳を振り被り、雄叫びとともに打ち下ろす。狙いは桜庭だった。迫る"蝶・成体"の
爆発したような轟音が鳴り響き、桜庭を中心に地面がクレーター状に陥没。デフレクタが大きく削れ、盾を支える両腕の骨が軋む。桜庭の口から「うっ」と苦悶の声が漏れる。
直後、"蝶・成体"が手首のスナップを利かせ、拳を弾くように上へと撥ね上げた。急激に変わった力の
無防備に地面へ投げ出された桜庭に、"蝶・成体"が追撃の踏みつけを仕掛ける。
「稀代の魔術師の本気、味わうがいい!」
「ド派手にぶち殺してやりましょうか♪」
"蝶・成体"の顔面が大きく抉れ、破片を撒き散らしながら後方へ派手に尻餅をつく。その隙に、神崎が桜庭を抱えて離脱。救出に成功した。
「このっ、化物……!」
山脇が
調整体相手ならば
だが、効いていない訳ではない。傷を負わせられない相手ではないのだ。ならば再生される前に間髪入れずに畳みかけ、少しずつでも削り取っていくしかない。
「世界を滅ぼすのはこの私っ! 邪魔……すんなぁっ!!」
山脇の怒号とともに、氷属性を纏う絶対零度の刃が虚空に閃く。
跳躍しながらの斬り上げでまず一撃。更に空中で両手持ちに握り直し、落下エネルギーをも味方にして振り下ろされた第二撃が、"蝶・成体"の再生しかけの頭に突き刺さり――止まった。
「あっ、やば」
"蝶・成体"の文字通り
大鎌の刃は"蝶・成体"の頭部に深々と食い込み、
どうする? 山脇の中に生まれる一瞬の
「ぐっ……!?」
身体を圧迫された山脇が苦悶の声を上げ、大鎌の柄を握る手の力が緩む。その隙を逃さず、"蝶・成体"は手の中の山脇を頭の大鎌から引き剥がした。
"蝶・成体"の全身に小さな裂け目が無数に生じ、一斉にぱかりと
「ニンゲン……! ニンゲン……!」
「喰ワセロ……! 喰ワセロ……!」
「ニンゲン……! ニンゲン……!」
「喰ワセロ……! 喰ワセロ……!」
ガチガチと牙を鳴らし、"蝶・成体"の身体中に新たに生じた口々が合唱を始める。その
「ニンゲン……! ニンゲン……!」
「ニンゲン……。 ニンゲン……?」
口を開けたまま、"蝶・成体"が唐突に動きを止めた。全身の口の合唱も次第に小さくなっていく。
そして何を考えたのか、山脇をゴミでも捨てるようにぽいと投げ捨て、そのまま興味を失ったようにどこかへ歩き去っていった。
「逃げた、でゴザルか…?」
「何だったのだ、一体」
地響きを立てながら遠ざかる"蝶・成体"の背中を見送りながら、神崎と天音が呆然と呟いた。
「――しまった、私のセラフ! あいつに持ってかれた!」
"蝶・成体"の頭に刺さりっ放しの
「……セラフィムコードで
「……………………それもそうね!」
問題は解決した。――否。
「あら……? ぶんちゃんは?」
困惑したような佐月の声。その指摘の通り、豊後がその場にいないという事実に、山脇の顔から血の気が引いた。
お読み頂きありがとうございます。
水着イベ、まさかタイムスリップとタイムスリップでネタが被るとは思いませんでした。
次回でやっと
長々と引っ張って申し訳ありません。もう少しだけお待ちください。