【ヘブバン×武装錬金】SunLight from the Memories   作:亜蘭作務村

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【業務連絡】2022/8/12 サブタイトル変更しました。


第02話 錬金の戦士 vs キャンサー①

【午前02*1 パピヨンパーク・庭園エリア】

 

 豊後が異常に気づいたのは、逃げる動物型ホムンクルスを追いかけ、そして追い詰め、無事に撃破した後であった。

 いつの間にか、山脇様達の姿が消えている。

 

「むむっ、山脇様がいないでゲス! もしかして迷子になったでゲスか?」

 

 自らの状況を理解し、豊後は「しょうがないでゲスねぇ」とひとりごちながら()()()()()()()()()()を探して歩き始める。

 使い魔としての勘を頼りに。やってきた道の()()()()、パピヨンパークの未踏破区域へと――。

 

「じゃっ♪ らら♪ じゃららららら~♪ じゃららら~♪ じゃじゃっ♪」

 

 自らが作詞作曲した『世界を滅ぼす山脇様登場のテーマ』を口ずさみながら、豊後は一心不乱に進む。進む。

 しかし歩けど進めど、中々山脇様は見つからない。一体どこで道草を食っているのか、或いはかくれんぼでもしているのか。

 

 歩く。歩く。やっぱり山脇様は見つからない。次第に心細くなってきた。もしかしたら、迷子になったのは自分の方ではないだろうか?

 

 そう言えば、以前(まえ)にも同じような経験(こと)があった。その時も今と同じパピヨンパークで、あの時は家族(パパとママ)から(はぐ)れたのだった。

 そしてあの時は、自分は独りではなかった。()()()が一緒にいてくれた。自分にとっての一番の友達。それは今でも変わらない。今は軽々しく名前を呼べない、()()()()()()()()けど。

 だが今は()()()もいない。自分は完全に独りぼっちだ。それが堪らなく寂しくて、怖い。

 

「山脇様……。――()()()()()……」

 

 無意識にか、それともあまりの寂しさに堪えかねてか、豊後の口から()()()()()()()()()()()()が零れ落ちた。

 

 その時、行く手を遮るように、大きな影が豊後の前に姿を現わした。

発達した両腕と小ぶりな本体、遠目には「M]字のようにも見えるキャンサーと、巨大な車輪のような形状のキャンサー。それぞれ一体ずつ。

 

 どちらも見覚えがある。探索中、たまに出てきては山脇様ともう一人(神崎)に蹴散らされていた雑魚キャンサーだ。

 ()()()()()()()()()()()()()が、山脇様はあんなに簡単に斃していたのだ。ならば使い魔たる自分が後れを取る筈がないだろう。

 そんな()()()()()自信を胸に、豊後はキャンサーに戦いを挑んだ。消えない不安を紛らわせるように。

 

「食らうでゲス!」

 

 先手必勝。豊後は右手の(セラフ)を連射設定(モード)にし、(キャンサー)群めがけて掃射。ばら撒かれた弾丸の雨は、しかし敵の外殻にあっさりと弾かれた。

 M字型が豊後に近寄り、丸太のように巨大な腕で殴りかかる。後方へ跳躍(バックステップ)して躱したところへ、頭上から車輪型が体当たり(タックル)。豊後を撥ね飛ばした。

 

 地面に叩きつけられた豊後は鞠のように弾み、しかし猫のように空中で体勢を立て直し、両足で華麗に着地した。、

 

「や、やるでゲスね! でも偶然(まぐれ)は二度も続かないでゲスよ?」

 

 負け惜しみじみた科白を口にしながら、豊後は(セラフ)設定(モード)を変更。今度は一撃の威力を重視したスキルを選ぶ。

 銃口に光が収束し、放たれた弾丸がM字型に突き刺さる。が、やはり外殻に阻まれた。

 

 M字型が両腕の先端を地面に突き立て、そのまま勢いよく振り上げて()()()()()()()()()()

 掘り返された土石が豊後の頭上から降り注ぎ、ガリガリと鑢のようにデフレクタを削っていく。目や口の中にも土砂が入り込み、豊後は思わず咽た。

 

 どうして? 豊後の頭の中は疑問と焦りに埋め尽くされていた。どうして上手くいかない。何で山脇様のように奴ら(キャンサー)を斃せない。これでは使い魔失格ではないか!

 ()()豊後は識らない(おぼえていない)ことだが、M字型の『ノッカー種』と車輪型の『ワイヤー種』は、ともに銃型や砲型セラフによる『撃つ』攻撃に対して高い耐性を持っている。*2

 銃のセラフを使う豊後とは相性が極めて悪い。だから山脇は豊後を戦わせなかったのだ。だが豊後は、それを識らない。だって()()()()()()()()()()()のだから。

 

 豊後は最後の手段に出ることにした。自身が持つ最強の切り札(スキル)、≪トリック・オア・トリート≫である。

 構えた(セラフ)の先端に光球を形成され、エネルギーの充填(チャージ)とともに次第に大きさを増していく。ピンポン玉大、野球ボール大、砲丸大、そして――。

 引鉄(トリガー)を引いた瞬間、ポスンという気の抜けた音とともに、溜め込んだエネルギーは撃ち出されることなく霧散した。≪トリック・オア・トリート≫不発(しっぱい)である。

 

 (セラフ)を構えたまま呆然と立ち尽くす豊後にノッカー種が素早く接近し、腕を横薙ぎに振るった。巨腕のフルスイングをもろに食らい、豊後の小さな身体が宙を舞う。

 どこからか()()()()()()()()()()が聞こえ、()()()()()()()()()()()ような奇妙な開放感に包まれる。デフレクタが限界を迎え、消失したのだ。

 豊後の身体が地面に叩きつけられ、そのままゴロゴロと転がる。咄嗟に受け身は取ったが、ダメージから身を護ってくれていたデフレクタは既にない。

 

 傷つき、痛む身体を無理矢理動かし、豊後は立ち上がり――突如、猛烈な眩暈に襲われた。立っていられず、再び膝から崩れ落ちる。

 ポケットから重たい『何か』が零れ落ち、カランと音を立てて地面に転がるが、気にする余裕はなかった。

 (セラフ)を握ったままの右手を地面につき、体重を支えて何とか倒れるのを防ぐ。その手の甲に、ぽたりと赤い雫が落ちた。()()だ! 豊後は思わず息を呑んだ。

 

 セラフ部隊員にとって、()()は重要な意味を持つ。

 強力な力を持つセラフは、その反面、使用者に大きな負担を強いる。セラフの連続使用による心身の疲弊、その限界を知らせる危険信号(サイン)こそが鼻血なのだ。

 

 豊後は山脇の言いつけを思い出す。山脇様は言っていた。鼻血が出たらもう戦わないこと。デフレクタが尽きたら逃げること。

 鼻血が出た、デフレクタも尽きた。逃げなきゃ……。山脇様の言いつけ通り。でも、動けない。身体が言うことを聞いてくれない。

 

 ワイヤー種が空中で横倒しになり、ぐるぐると円を描くように動き始める。

 円運動は次第に加速し、その直径も徐々に拡がり、段々と豊後へ近づいてくる。まるで悪趣味な振り子刃(ペンデュラム)である。

 風切り音とともに何度も鼻先を掠めては遠ざかる処刑の刃(ワイヤー種)を、豊後はただ見ていることしかできなかった。

 身体が動かない。だがそれは、疲労やダメージによるものだけではない。恐怖だ。間近に迫る、()()()()()()死の恐怖が、豊後を鎖のように縛りつけて逃がさないのだ。

 

「助けて、山脇様……」

 

 縋るような呟きが口から零れ、涙が豊後の頬を伝う。そして遂に、ワイヤー種が豊後の首を捉えようとした、その時――。

 

「――危ないっ! ≪サンライトスラッシャー≫!!」

 

 そんな叫び声とともに突如飛び込んできた『山吹色(サンライトイエロー)の流星』が、横合いからワイヤー種を弾き飛ばした。

 ワイヤー種が錐揉み回転しながら吹き飛び、岩壁に激突。めり込んでそのまま動かなくなった。

 一方、『流星』は直角に折れ曲がるように方向転換し、豊後へ急接近。あわや激突という間際、()()で地面を叩いて再度方向転換。くるりととんぼを打ち、豊後の目の前に()()した。

 

 目を焼くような、太陽の光を思わせる山吹色(サンライトイエロー)の光は消え、『流星』がそお正体を豊後の前に現す。人間だった。()()()()()()()()(きっと昨夜寝てる間に急激に育ったのだろう)と同じ年頃(くらい)の、大きな突撃槍(ランス)を持った少年(おとこのこ)だった。

 

 恐らくセラフであろう、近未来的(サイバーチック)形状(デザイン)突撃槍(ランス)。その巨大な穂先の根元から垂れる飾り布の色彩(あか)が、それを持つ少年の顔が、豊後の記憶を刺激する。

 どこかで見たことある。()()()()()()()。そんな気がしてならない。

 

 少年が豊後に背を向け、突撃槍(ランス)を手に(キャンサー)と向き合う。ワイヤー種は岩壁に深くめり込んだまま、まだまだ抜け出せそういない。だが、ノッカー種の方は健在なのだ。

 

「いくぞ化物! オレが相手だ!!」

 

 名も知らぬ少女(守るべきいのち)を背中に庇い、突撃槍《ランス》の少年――錬金の戦士・武藤カズキが、喊声とともに地面を蹴った。

*1
AM10:30~PM12:30の時間帯

*2
2023/08/05 ver.3.6.0アップデート以前の設定




お読み頂きありがとうございます。
5話目にしてようやくクロスキャラの登場です()

ヘブバン1.5周年おめでとうございます
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