【ヘブバン×武装錬金】SunLight from the Memories   作:亜蘭作務村

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【業務連絡】2022/8/12 本日連続投稿中。新しい話投稿してます。


第02話 錬金の戦士 vs キャンサー②

【午前02*1 パピヨンパーク・庭園エリア】

 

 駆ける。駆ける。長大な突撃槍(ランス)で右手で突き出し、左手を穂先の側面に添えてその重さを支えながら、豊後の前に現れた謎の少年戦士・カズキが(キャンサー)めがけて一直線に駆ける。

 尻尾のように後方(うしろ)へ流れる飾り布が山吹色(サンライトイエロー)に発光し、ぐにゃりと飴が溶けるように形を崩す。瞬間、まるで推進装置(ブースター)が点火したようにカズキの速度(スピード)が爆発的に上がった。

 

 核鉄番号(シリアルナンバー)3番(III)突撃槍(ランス)()()()()"SUNLIGET HEART(サンライトハート)"。錬金術が生み出した超常の合金・核鉄が、所有者(カズキ)の『戦う意志』を具現化した唯一無二の武装(ユニークウェポン)である。

 その特性は、生命エネルギーを物質化した飾り布。カズキの意志で自在に()()()()()()し、突撃(チャージ)推進補助(ブースト)や攻撃への転用などの利用が可能となる。

 

「貫け、俺の武装錬金! ≪サンライトスラッシャー≫!!」

 

 (スキル)の名前らしき咆哮とともに、山吹色(サンライトイエロー)の閃光と化したカズキが、巨大な両腕が特徴的なM字型のキャンサー――ノッカー種に正面から激突。玉突き(ビリヤード)のようにその巨体を弾き飛ばした。

 

「――駄目か。()()()()、やっぱり硬い……!」

 

 攻撃(チャージ)は命中。その結果に、しかしカズキの表情は硬い。地面に転がるノッカー種に傷らしいものはない。吹き飛ばしはしたが、有効なダメージは与えられていない証拠だった。

 武装錬金は()()()()()()()。そのため()()()()()()()()()()()()()キャンサーの強固な外殻を破壊することは不可能なのだ。

 

 どうする? カズキの中に迷いが浮かぶ。飾り布(エネルギー)加速(ブースト)を得た突撃槍(ランス)の一撃。数多の(ホムンクルス)を屠ってきた必殺技(サンライトスラッシャー)が、しかしこの未知の化物(キャンサー)相手には通用しない。

 これ以上の破壊力(パワー)を出す方法は――()()。しかしいずれの選択肢も小さくない代償(リスク)があるのだ。

 戦える戦士が自分一人だけ、そして守るべき者が()()()()()()()()現在、安易に選ぶことはできなかった。

 

 迷うカズキに、しかし(キャンサー)は決断の時間を与えなかった。起き上がったノッカー種が両腕の先端を地面に突き立て、そのまま勢いよく振り上げて()()()()()()()()()

 掘り返された土石がカズキ()の頭上から迫る。避けるのは容易だった。突撃(チャージ)の要領で前方(まえ)へ駆け抜ければそれで済む。

 

 だが避けてしまえば、後方(うしろ)が――背中に守る少女(豊後)無事(タダ)では済まない。今度はカズキは迷わなかった。

 立ち止まり、左手で飾り布の根元を握る。そして旗を振るようにエネルギー化した飾り布を大きく翻し、降り注ぐ土石の雨を打ち払う。

 

 足を止めたカズキに、ノッカー種が追撃を仕掛けた。両腕に力を込めて大きく跳躍(ジャンプ)。カズキ――の頭上を飛び越え、その背後の豊後を狙って飛びかかる。

 

「しまった!?」

 

 カズキは急いで踵を返し、ノッカー種を追って後方へ走った。

 助走をつけ、思い切り地面を踏みしめて跳躍(ジャンプ)。同時に突撃槍(ランス)の特性を発動し、()()()()()()()()。上空の(ノッカー種)めがけて、ミサイルのように文字通り()()()()()

 後方斜め下(ケツ)からの突き上げをもろに食らい、ノッカーが体勢(バランス)を崩して墜落。一方、着地したカズキは間髪入れずに再突撃(チャージ)。立て直される前に追撃を試みる。

 

 だがノッカー種は即座に起き上がり、片腕を突き出してカズキを迎撃。巨腕の先端と突撃槍(ランス)の穂先が激突し、互いに弾き合った。

 衝突の反動で、カズキがたたらを踏んで立ち止まる。一方、ノッカー種は弾かれた腕を地面に突き立て、独楽のようにその場で回転。反対側の腕を全身ごと振り回し、第二撃を仕掛けた。

 横合いから迫る敵の打撃(ラリアット)を、カズキは突撃槍(ランス)を盾のように構えて受け止める。衝撃で身体を二、三歩分ほど後方へ押し込まれたが、防御(ガード)には成功した。

 

 だがその時、カズキでも豊後でもない()()()()()が、どこからか響いた。

 

「――避けろ、カズキっ!」

 

 女のものらしき、悲鳴じみたその大声とほぼ同時に、カズキの背後から影が差す。振り返ると、頭上から新たな敵影(てき)

 最初に追い払った車輪型(ワイヤー種)でも、勿論目の前のM字型(ノッカー種)でもない、四脚で虫のような形状をした()()()()()()()()が、カズキめがけて飛びかかっていた。

 

 新たに現れた、()()()()()()()()その虫型キャンサー――ホッパー種の体当たり(タックル)が、カズキの無防備な背中に迫る。

 まずい、とカズキは息を呑んだ。今は目の前の(ノッカー種)の相手で、両手も武器も塞がっている。

 咄嗟に飛び退いて回避を試みたが、その選択は悪手だった。自由になったノッカー種の打撃(パンチ)と、ホッパー種の体当たり(タックル)同時に直撃(ダブルヒット)。容赦なくカズキを吹き飛ばした。

 

「ぐわあぁっ……!」

 

 苦悶の叫び声とともに、カズキの身体が宙を舞う。漫画などでは、あらかじめ後ろへ飛ぶことでダメージを抑える場面がよく描かれるが、そんな小細工など気休めにもならない威力だった。

 地面に叩きつけられ、ごろごろと地面を転がる。顔を上げると、泣きそうな表情の豊後と目が合った。偶然か、狙って飛ばされたのか、彼女の傍まで戻ってきてしまったらしい。

 

「も、もうやめるでゲス! 逃げるでゲス!」

 

 痛みに歯を食いしばりながら身を起こし、突撃槍(ランス)の柄を杖代わりに立ち上がるカズキの姿に、豊後が悲痛な声を上げた。

 顔は傷だらけ、服にも破れほつれの戦闘痕(きず)が無数に。ダメージから身を護る筈のデフレクタが明らかに機能していない。

 鼻血*2は……分からない。何しろ顔も身体も血だらけなのだから。だが、このまま戦わせていい筈がない。それだけは確かだった。

 ()()自分は、世界を滅ぼす山脇様の忠実な使い魔だ。だがそれでも、目の前で誰か(ヒト)が死ぬのは、それを黙って見ているだけなのは――嫌だった。

 

「このままじゃ……お前が死んでしまうでゲス!」

 

 泣きながら制止を叫ぶ豊後に、カズキは思わず小さく笑った。愚弄(バカに)した訳ではない。寧ろ逆、感服したのだ。

 強い子だと思った。化物に殺されそうになっているのに、それでも他人(だれか)の心配ができるなんて。強くて、とても優しい子だ。

 だからこそ、守りたいと改めて思った。守らなくちゃと決意した。身体の中から――戦う力が湧いてきた。

 

「大丈夫。オレが絶対に、キミを守るから」

 

 泣きじゃくる豊後の頭をヘルメット越しにぽんぽんと撫で、カズキはそう言って安心させるように微笑んだ。

 

「しかし、参ったなぁ……。アイツ(ホッパー型)、まだ()()を諦めてなかったのか」

 

 今は隙を伺うようにじっとしている二体の(キャンサー)を背中越しに一瞥し、カズキはそう言って溜息を吐いた。

 新たに乱入してきたあの四脚の化物(キャンサー)は、実は元々自分達(こちら)が戦っていた個体(てき)なのだ。

 

 数時間前、()()()()()()()()()()早々(すぐ)にいきなり襲われて、訳も分からぬまま戦闘に突入した。

 だが生半可な攻撃では(ダメージ)を与えられず、代償(リスク)覚悟で使った『奥の手』でも()()()()()()()()のが精々。完全な撃破には至らない。

 しかも時間が経てば、その破損(ダメージ)も修復されて元の木阿弥。逃げても執拗に追いかけてくる。

 

 仕方なく、襲ってきたら全力で戦って外殻を割り、怯んだ隙に逃げるというのをここまで繰り返してきたのだ。

 上手く撒けたと思ったのだが、どうやら見つかってしまったらしい。或いは戦闘音に引き寄せられてきたのか? どちらにせよ、この状況は自分達の身から出た錆と言えるだろう。

 

 視界の端でホッパー型が光に包まれ、全身の亀裂が跡形もなく消滅した。状況悪化。カズキは思わず現実逃避するように視線を彷徨わせ――足元に転がる『それ』を見つけた。

 銀灰色に鈍く輝く、()()()()()()()()()六角形の金属塊。

 拾い上げると、片手で握るのにちょうどいい重さと大きさ。ひっくり返すと『A』の字に似た()()()()()()()()と、『LXXIV』という()()()()()()()()。間違いない。

 

「あっ、それは……!」

 

 豊後が思わず声を上げた。カズキの手の中『それ』は、輸送ヘリで山脇から渡され、そのまま返すのを忘れてポケットに仕舞い込んでいた『お守り』であった。

 慌てる豊後に「借りるよ」と一言断りを入れ、カズキは『お守り』をぐっと握り締める。そのまま腕を大きく振り被り――、

 

「――斗貴子さん!!」

 

 人の名前らしきものを叫びながら、()()()()()めがけて『お守り』を思い切り投げつけた。

 その時、瓦礫の陰から人影が飛び出し、飛来する『お守り』を掌握(キャッチ)。そのままカズキの傍まで駆け寄り、隣に並び立った。

 女だった。鋭い目つきで、ちらりと見えた顔には横一文字の大きな傷跡があった。年頃はあの槍の奴(カズキ)と同じか、或いはもう少し年上かもしれない。

 隣の槍の奴(カズキ)と比べて頭一つ分近く小さく、例えるなら山脇様と31C部隊(山脇様の手下)あいつ(桜庭)くらいの身長差で、二人の身長も実際のそれぐらいだった。

 

「……ごめん、斗貴子さん」

 

「謝る必要はない。キミの判断は正解だ」

 

 申し訳なさそうに何かを謝罪する槍の奴(カズキ)に、斗貴子と呼ばれた()()()はそう言って首を振る。

 その後幾らかの会話(やりとり)の後右手に握る『お守り』――74番(シリアルナンバーLXXIV)()()を掲げた。

 

武装錬金!!

 

 掌握、決意、そして咆哮。三つの手順(ステップ)によって、核鉄の真の力が発動した。

*1
AM10:30~PM12:30の時間帯

*2
セラフの過剰使用を知らせる危険信号




お読み頂きありがとうございます。
過去投稿した話のナンバリングをちょっと整理し、サブタイトルを変更しました。

【20237/12追記】
最後の身長差について、例に出す人物を変更してます。斗貴子さん150cm以上あったわ…
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