【ヘブバン×武装錬金】SunLight from the Memories   作:亜蘭作務村

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【業務連絡】2022/8/12 本日連続投稿中。こちらは2話目です。


第02話 錬金の戦士 vs キャンサー③

【午前02*1 パピヨンパーク・庭園エリア】

 

 手の中に戻ってきた久しぶりの核鉄の感触(おもみ)を噛み締めながら、錬金の戦士・津村斗貴子は斃すべき(キャンサー)を見据えた。

 敵は二体――いや三体か。四脚の虫のような化物(ホッパー種キャンサー)と、両腕が太い『M』の字のような化物(ノッカー種キャンサー)。もう一体、今は岩壁に埋まっているが、車輪のような化物(ワイヤー種キャンサー)にも注意しなければならない。

 いずれもこれまでの敵(ホムンクルス)とは全く違う、未知の相手だ。

 

「カズキ、私は四足の方をやる」

 

「分かった、じゃあオレは二本腕の方だね。それと、岩壁(あっち)車輪(タイヤ)みたいなのにも気をつけて」

 

 カズキの警告に「ああ」と相槌を打ち、斗貴子は右手の核鉄を掲げた。そして自身の内なる闘争本能を昂らせ、核鉄の秘めたる真の力を発動する。

 

武装錬金!!

 

 瞬間、核鉄が発光(ひかり)とともに形状(カタチ)を変える。

 宙に浮く鋭く細長い直刃(ブレード)と、関節部らしき円盤(ディスク)状の部品(パーツ)が二枚。それらが青緑色(ターコイズブルー)(エネルギー)(ライン)で繋がり、更に太腿に装着した装甲(アーマー)に接続されることで、一本の処刑鎌(デスサイズ)が形勢される。

 それが左右二組ずつ。合計四本の処刑鎌(デスサイズ)。それが斗貴子の新たな戦う力(武装錬金)――。

 

核鉄番号74番(シリアルナンバーLXXIV)処刑鎌(デスサイズ)の武装錬金"VALKYRIE SKIRT(バルキリースカート)AT(アナザータイプ) III(3)"*2!!」

 

 生まれ変わった相棒(武装錬金)の名を高らかに叫び、斗貴子は(キャンサー)に向かって駆け出した。

 

「よくも散々追い回してくれたな……。食らえっ!」

 

 怨みの多分に籠もった怒声とともに、斗貴子は標的(ホッパー種)めがけて(ブレード)()()。エネルギーでできた(アーム)がぐんと伸び、四本の(ブレード)が矢のように一直線に飛び、ホッパー種に襲いかかる。

 遠距離(アウトレンジ)から繰り出された刺突は、しかし外殻に弾き返された。だが斗貴子は慌てず焦らず、(ブレード)を操作。前方(まえ)、左右、そして回り込んで後方(うしろ)からも、あらゆる方向から斬りつける。

 

「……成程な。()()()、か」

 

 ひと通りの攻撃を試し、しかしその全てが無駄に終わった後。斗貴子は納得したような呟きとともに直刃(ブレード)を引き戻した。

 カズキの戦いを見ていて理解(わか)っていた事実(こと)だが、やはり硬い。

 だが、この新しい武装錬金の特性は把握した。一見、何の意味もなく終わった(キャンサー)への攻撃だが、実は本命は新武装の性能試験(テスト)だったのだ。

 

 新しい武装錬金(バルキリースカート)の特性は二つ。一つは斗貴子が元々持つ、可動肢(マニピュレーター)による精密高速機動。

 もう一つは『アナザータイプ』と呼ばれる、本来とは異なる核鉄で創造した武装錬金の特徴である、その核鉄の()()()()()()から引き継いだ特性。

 今回、斗貴子が引き継ぎ、新たに得た特性は()()()()()()()()()()()()()()()()(アーム)の部分が金属からエネルギーに変化し、伸縮自在、より自由度の高い機動が可能となった。

 

 実のところ、斗貴子はこの結果を予想していた。カズキから投げ渡されたこの核鉄の番号(シリアルナンバー)を確認した、その瞬間(とき)から。

 カズキは気づいていないようだが、自分達はこの核鉄を、その武装錬金を見たことがある。『これ』の持ち主を識っている。

 何故『これ』がこんな場所にあるのか、()()()は一体どうしたのか。思うこと、言いたいことは色々ある。悍ましい()()()()()すら頭を(よぎ)った。

 だが、今は感傷に浸っている場合ではない。戦うべき時だ。胸に渦巻く()()()()()を一旦全て捨て去り、斗貴子は(キャンサー)との戦いに意識の全てを集中した。

 

 

 

 一方、カズキとM字型(ノッカー種)キャンサーとの戦いは膠着状態になりつつあった。

 ノッカー種は、攻撃については然程脅威ではない。膂力(パワー)俊敏さ(スピード)過去(かつて)(ホムンクルス)と大差ない程度であるし、動きも単調。おまけに何らかの特殊能力も特ない。

 落ち着いて対処さえすれば、滅多なこと(イレギュラー)でもない限り被弾はしないだろう。敵としては間違いなく()()部類である。

 

 その一方で、恐るべきはやはりその防御力だろう。

 武装錬金すら通さない強固な外殻。加えてこいつ(ノッカー種)があの四足の奴(ホッパー種)と同類だとすると、たとえ外殻が破壊できても、その後どれだけ攻撃しても生命までは奪えない不死性まであるかもしれない。

 

 互いに決定打を欠いたまま、だらだらと時間だけが過ぎていく。このままでは駄目だ! カズキは腹を括り、封印していた()()()の一つを使うことにした。

 戦える戦士が自分一人で、守るべき者が一人じゃないあの時は使えなかったが、今は斗貴子さんがいる。守るべき者はやっぱり()()()()()()けど、今は戦士(こっち)も一人じゃないのだ。

 

 行うのはほんの少しの工夫。飾り布を突撃槍(ランス)()()()()()()()()、敵を攻撃する。ただそれだけ。

 単純だがその効果は絶大である。普段(サンライトスラッシャー)は突進力にしか使えない飾り布のエネルギーを、破壊そのものにも使えるのだから。

 だが強力な反面、使えば自分自身にもダメージを受ける欠点もある。まさに捨て身の自爆技。それが――。

 

「≪サンライトクラッシャー≫!!」

 

 山吹色(サンライトイエロー)(エネルギー)に全身を包まれ、カズキはノッカー種に決死の突撃(チャージ)を繰り出した。そして――。

 

 

 

 処刑鎌(デスサイズ)(ブレード)を袈裟斬りに振り下ろし、外殻に弾かれた。今度は逆袈裟、やはり弾かれる。

 唐竹、逆風、刺突。弾かれる、弾かれる、弾かれる。左薙ぎ右薙ぎ左切上げ右切上げ、弾かれる弾かれる弾かれる弾かれる。

 上下前後左右。あらゆる方向からあらゆる斬撃を斗貴子は絶え間なく繰り出し、しかしそのどれもがホッパー種の外殻にあえなく阻まれた。

 

 斬撃は次第に速度(スピード)を増し、ひと息に十閃、二十閃、百閃――! まるで檻に捕らえるように、剣閃の嵐がホッパー種を包み込み、だがやはり届かない。

 しかし斗貴子は諦めなかった。百で足りないなら千、それでも駄目なら万の斬撃を放つまで。

 

臓物(ハラワタ)を……ブチ撒けろ!!」

 

 斗貴子の怒号とともに、斬撃の嵐は更に勢いを増していく。そして――。

 

 

 

 武装錬金はセラフではない。そのため余程規格外の出力でない限りキャンサーの強固な外殻を破壊することは不可能である。

 だが逆に言えば、()()()()()()()()()()()外殻の破壊は可能なのだ。

 

 破壊の(エネルギー)を纏ったカズキの突撃(チャージ)が、万を超えた斗貴子の斬撃が、遂にキャンサーの外殻を破壊した。

 

 

 

 キャンサーと戦う二人の戦士(カズキと斗貴子)を、豊後は座り込んだまま呆然と見守っていた。その時、横から誰かが豊後の左腕を掴み、ぐいと無理矢理立たせようとするように引っ張り上げてきた。

 振り向くと、31C部隊(山脇様の手下)あいつ(神崎)みたいな金髪碧眼の女が、いつの間にか豊後を隣で見下ろしていた。見たこともない冷たい目つきだった。きっととんでもない冷血女に違いない。

 

「立ちなさい。戦えないなら、アナタはここにいてもただの邪魔よ」

 

 冷血女――ヴィクトリアはそう言って、豊後の腕を引く手の力を強める。動かないなら引きずってでも連れていく、そんな気迫さえ感じた。

 

 その時、どこかでがらりと()()()()()ような音が聞こえた。

 音の方向を振り仰ぐと、最初にカズキが突撃槍の一撃(サンライトスラッシャー)で弾き飛ばし、岩壁にめり込んでいた車輪型(ワイヤー種)が、とうとう拘束から抜け出している姿が見えた。

 

 ワイヤー種が側面から噴射炎を噴き出し、加速しながら豊後とヴィクトリアへ迫る。カズキが、そして斗貴子も、二人を庇うべく走り出すが、間に合わない。

 

 ヴィクトリアが豊後を突き飛ばした。直後、ワイヤー種の体当たり(タックル)がヴィクトリアを直撃した。

 ゴキリと鈍い音が響き、ヴィクトリアの首がくるりと()()()。そして頭が()()()()()()、ぽとりと落ちて地面を転がる。首がねじ切れていた。

 

「あ、ああ……、あぁあああっ……!」

 

 目の前で()()()()()()()冷血女(ヴィクトリア)に、豊後は動揺(ショック)を隠せなかった。立ち尽くしたままの首なしの身体と、転がってきた生首(あたま)を交互に見て、言葉にならない()き声を上げる。

 会ったばかりの、ろくに知らない奴ではあった。嫌な女だと思ったりもした。だが、それでもこんな風に死んでしまうのは――。

 

 足元に転がる生首の冷血女(ヴィクトリア)と目が合った。無惨な有様だった。顔は首筋から左右の頬にかけて()()()()、首の断面からは背骨か脊髄かも分からぬ()()()()がはみ出ている。

 だが目だけは、まるで()()()()()みたいに光があって、相変わらずの冷ややかさで豊後をじっと見上げて――――今、()()した?

 

 ヴィクトリアの首なし死体(カラダ)がぱたりと仰向けに倒れ、豊後の悲鳴とカズキの絶叫が響き渡った。

*1
AM10:30~PM12:30の時間帯

*2
初代アナザータイプは銀成学園高校学園祭での戦い(ドラマCD)で、二代目は鈴木震洋の反逆の後(文庫版番外編)に披露したため"III"




お読み頂きありがとうございます。
ちゃうんや…、別にぶんちゃんを曇らせたかった訳じゃないんや…

クロスキャラの三人目がパッピーじゃなくてヴィクトリアなのは、ちゃんとストーリー上の重要な理由があります
別に連載当時、おなかをブチ抜かれたまま不敵に微笑ってたシーンで変な性癖に目覚めたり、文庫版番外編で顔を真っ赤にしてたシーンが可愛かったからなんて理由は7割くらいしかありません(なお今回の所業


【20237/13追記】
バルスカATのナンバリング変更。二代目もう出てたわ…
注釈の方も修正してます。
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