【ヘブバン×武装錬金】SunLight from the Memories   作:亜蘭作務村

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【業務連絡】2022/8/12 本日連続投稿中。こちらは3話目です。


第02話 錬金の戦士 vs キャンサー④

【午前02*1 パピヨンパーク・庭園エリア】

 

「ヴィクトリアーーーっ!!」

 

 カズキは激昂した。突撃槍(ランス)を手に全力疾走を続けながら、絶叫する。

 高校二年のあの夏、尊敬する恩師(キャプテンブラボー)が自分達を庇い五千百度の炎(火渡の武装錬金)に焼かれた時以来の、カズキの本気のブチ切れであった。

 

 ヴィクトリアが()られた。車輪型(ワイヤー種)謎の化物(キャンサー)襲撃で首を落とされ、今は視線の先で無惨な姿で転がっている。

 頭の中が怒りで真っ赤に染まる。冷静な判断? 後先を考える? そんなの無理だ。今はただ、友達(ヴィクトリア)の仇を、彼女をあんな目に遭わせた(キャンサー)(ころ)すことしか考えられない――!

 

「サンライトハート……改形態(フォルム・プラス)!!」

 

  なりふり構わず、カズキは温存していた()()()の二つ目を切った。咆哮に合わせて武装錬金(サンライトハート)電光(スパーク)を放ちながら分解し、全く新しい姿(フォルム)へと再構築される。

 穂先は片手剣程度の長さまで縮小し、柄の元の半分程度へ短縮。槍というよりも剣に近い形状と言っていいだろう。

 そして最大の特徴であった飾り布の姿はない。一体どこに消えたのか? ――槍の()である。

 (やり)刀身(ほさき)が幾つもの部品(パーツ)へ分解展開し、隙間を埋めるように内側からエネルギーが溢れ出し、鏃型の光の刃を形成。突撃槍(ランス)らしい大きな穂先へ姿を変えた。

 

 突撃槍(ランス)の武装錬金"SUNLIGET HEART +(サンライトハート改)"。ある事件*2によってカズキが手に入れた武装錬金(サンライトハート)の進化形態である。

 飾り布ではなく本体内部に生命エネルギーを内蔵蓄積し、用途に応じて展開解放。出力の調整も可能で、取り回しの良さと、最大出力時には従来でのそれを超える破壊力を獲得した。

 本来は件の事件が終息し、カズキが()()()()()と同時に失われた筈の形態(チカラ)である。

 だが、その後に起きた幾つかの事件(たたかい)を経て、カズキが成長することで再び使えるようになったのだ。*3

 

 カズキの怒りの熱量(ボルテージ)は際限なく上昇し、呼応するようにエネルギーの穂先が激烈な輝きとともにぐんぐん巨大化。

 石突の、旧形態(サンライトハート)の穂先を模した装飾がぱかりと口を開け、()()()()を整える。

 

 ワイヤー種を射程圏に捉え、同時に闘争本能が臨界点に到達。地を蹴る足により力を込め、同時に突撃槍(ランス)の石突の口からもエネルギーを噴射して最後の加速(スパート)をかける。

 

「エネルギィイイ――……全開ッ!! ≪サンライトスラッシャー≫!!」

 

 最大出力(フルパワー)で放たれたカズキの突撃が、(ワイヤー種)の外殻を粉砕。勢いは止まらず、穂先の先端に獲物(ワイヤー種)を捕らえたまま更に直進。そのまま岩壁に激突。まだ止まらない。

 岩壁に亀裂が広がり、轟音を立てて崩壊。ワイヤー種を下敷き、生き埋めにする。敵が完全に見えなくなったのを確認し、漸くカズキは止まった。

 

「はぁっ……、はぁっ……!」

 

 エネルギーの穂先を格納し、小さ(コンパクト)な姿を取り戻した突撃槍(サンライトハート改)を杖代わりに身体を支え、カズキは荒い呼吸を繰り返す。

 この一撃でかなりの体力を消費し(もっていかれ)てしまった。身体に力が入らない。今はちょっと、動けそうにない。

 

 進化したカズキの武装錬金(サンライトハート)はより強力になった反面、エネルギー消費の方も出力(パワー)に比例して大きくなった。

 あらかじめ蓄積していた分以上のエネルギーを使おうとすれば体力を消耗するし、過剰な使用は生命エネルギーの枯渇による死を招く。

 元より、人間が使うことを前提としていないのだ。発動(つかえ)はしても、使()()()()()()とは限らない。特に人間(いま)のカズキには。この武装錬金はそういう力だった。

 

 無茶をしたが、おかげで頭の方は冷えた。冷静になると、そもそも()()()()()()()()()()()()とすら思えてきて、「馬鹿なことしたなぁ」と反省する。

 

「――すっきりした?」

 

「ヴィクトリアっ!」

 

 背中にかけられた()()()()()()()冷ややかな声。カズキは弾かれたように、安堵の笑顔を浮かべて振り返った。

 そう、ヴィクトリアの正体は人間ではなく()()()()()()()()()。胸の章印(じゃくてん)を壊さない限り死なない、()()不死身の存在なのだ。首を落とされた程度で、彼女が死ぬ筈がなかった。

 

 振り返ったカズキが見たものは、普段(いつも)通りの冷め切った、しかし今はどこか呆れたような目でカズキを見る――豊後に抱えられた生首(あたまだけ)のヴィクトリアだった。

 

「ヴィクトリア……な、生首っ!? ゆっくリア!?」

 

「何言ってるの、アナタ」

 

 あまりに衝撃的(ショッキング)かつ珍妙(シュール)な目の前の光景に、カズキは混乱のあまりに自分でも訳の分からない言葉を口走る。

 頭の中に赤いリボンや魔女の帽子を着けた生首おばけが唐突に浮かんできたが、一体なんだったのだろう?

 そんなカズキの妄言を、ヴィクトリアは冷ややかに一刀両断した。誰が妖怪生首饅頭*4か。変なあだ名をつけないで欲しい。

 

「……ところで、ねぇ、アナタ(豊後)。いい加減に離して欲しいんだけど?」

 

「嫌でゲス」

 

 自分を抱えた続けたままの豊後に、腕の中のヴィクトリアがうんざりした顔で解放を請う。が、その願いは即断ですげなく断られた。

 一体どうしてこうなったのか。(斬首)の後、自分がまだ死んではいないと知るや、彼女(豊後)は泣き笑いような顔をして自分を抱きかかえ、そのまま離そうとしないのだ。

 

「私だって、ずっと生首(ゆっくリア)のままは嫌なのよ。早く身体に繋がりたいの」

 

「嫌でゲス」

 

「この左手の、カニバサミ? 何だかとっても臭いのよ。アナタ、ちゃんと洗ってるの?」

 

「嫌でゲス」

 

 手を変え品を変え説得を試みるが、豊後は一向に承服しない。それどころか、逃がさぬとばかりにヴィクトリアの頭(ゆっくリア)を抱える力が強くなる。

 一体何がそんなに気に入ったのか、何にそこまで執着しているのか。殺伐とした時代を生きた故に意外と薄情(ドライ)な死生観を持つヴィクトリアには、彼女(豊後)の気持ちは分からなかった。

 

「――カズキ! ヴィクトリア!」

 

 漸く追いついた斗貴子がカズキ達へ駆け寄り、その場の全員が合流した。

 

「全員、大事ないようだな。そっちの子も」

 

「うん、斗貴子さんもね」

 

「ちょっと。私はこの有様なんだけど?」

 

 互いの無事を確認し合い、カズキは前方(まえ)の、斗貴子は振り返って後方(うしろ)の、同じ一点に視線を向ける。

 二人の視線の先では、外殻を破壊された二体のキャンサーが蹲り、痛み(ダメージ)に耐えるように痙攣していた。

 今は動きを止めているが、時間が経てばそのうちダメージから立ち直り、再び襲ってくるのは間違いない。その前に、一刻も早くこの場を離れるべきだろう。

 二人の間でその認識は一致し、後はどちらが先に口に出すか。その時だった。

 

「豊っ、おーーーっ!!」

 

 遠くから、誰かの――豊後の名を呼ぶ何者かの声が聞こえてきた。声は段々と大きくなり、こちらへ近づいてきてるのが分かる。

 

「山脇様!」

 

 声の主に心当たりがあるのか、ヴィクトリアの頭(ゆっくリア)を抱える少女(豊後)が反応。ぱぁっと表情を輝かせた。

 (くさむら)を掻き分け、いや寧ろ薙ぎ倒すように、猛烈な勢いでこちらへ駆けてくる人影があった。眼帯を着けた少女である。彼女が「山脇様」だろうか?

 

 その時、ダメージから立ち直ったのか、二体のキャンサーがひび割れた身体で起き上がった。まずい! カズキは山脇と呼ばれた少女へ「逃げろ」と口々に声をかける。

 だが山脇は構わず走り続け、懐から板状の電子機器(デバイス)らしきものを取り出した。そしてそれを掲げ、高らかに叫ぶ。

 

【この世界は私の実験台よ】

 

 次の瞬間、上空に()()()()()()()()()黒い穴が出現し、穴の奥から武器らしきものが出てくる。

 直後、山脇の姿が光とともに忽然と消え去り、次の瞬間、まるで()()()()でもしたかのように、空中の黒い穴の傍に突如出現した。

 そして穴から出てきた武器――自身の相棒である大鎌型セラフの柄を引っ掴み、山脇は再び消失。次に姿を現したのは、キャンサー達の眼前だった。

 

「死いっ……! ねえぇーっ!!」

 

 怒号とともに唐竹に振り下ろされた大鎌(セラフ)の一撃が、まず四足の虫腕(ホッパー種)キャンサーを粉砕。

 間髪入れずに手首を返し、左から右へ斜めに斬り上げる。振り抜かれた大鎌(セラフ)の刃から衝撃波が発生し、二本腕のM字型(ノッカー種)キャンサーを両断した。

 

「斃、した……? 私達があれだけ手こずったあの化物どもを、あんなに簡単に……!?」

 

「あの女の子は一体……!?」

 

 自分達(錬金の戦士)に苦戦を強いた化物(キャンサー)どもをあっさりと討伐した謎の少女戦士(山脇)に、カズキと斗貴子は衝撃を隠せなかった。

 愕然とするカズキ達の前に、山脇が短距離瞬間移動(トランスポート)。豊後が腕に抱くヴィクトリアの頭(ゆっくリア)をぽいっと投げ捨て、山脇の胸に飛び込んだ。

 

「山脇様~っ!」

 

 歓喜の声を上げて抱き着いてくる使い魔(豊後)を山脇は両腕で受け止めて抱き締め返した。

 一方、放り投げられたヴィクトリアの頭(ゆっくリア)は斗貴子が空中で回収(キャッチ)処刑鎌(バルキリースカート)の精密機動で、飛び回る虫を箸で捕らえるように、(ブレード)の峰で挟んで掴まえた。

 

「山脇様! どこに行ってたんでゲスか!? 探したんでゲスよ?」

 

「馬鹿っ、探してたのはこっちよ! こんなにボロボロになっちゃって……」

 

 再会を喜び合う豊後と山脇の横に、新たに四人の少女が短距離瞬間移動(トランスポート)で出現した。第31Cセラフ部隊の残りの隊員達(メンバー)である。

 

「山脇殿、置いてくなんて酷いでゴザルよ~!」

 

 忍者か侍に(かぶ)れたような語尾の外国人(またはハーフ)らしき少女、神崎の抗議に、山脇は豊後を抱いたまま「悪かったわね」と謝罪する。ともあれ、第31C部隊全員集合である。

 

「――それで、」

 

 残る新たな問題、豊後と一緒にいた不審人物達(カズキと斗貴子)を胡乱な目で振り返り、山脇は声をかけた。

 

「あんた達は一体何? 銀成市一帯(このあたり)は無人地帯の危険地帯で、一般人がウロウロできる筈がないんだけど。――って、生首!? ゆっくり!?」

 

 四本の処刑鎌(デスサイズ)に挟まれ、斗貴子の頭上に掲げられたヴィクトリアの頭(ゆっくリア)に気づき、山脇がぎょっとしたように声を上げる。

 まるで中世の暗黒時代かどこぞの未開の部族のような野蛮な絵面に少女達(31C部隊)がドン引きする中、カズキが代表して口を開いた。

 

「オレはカズキ、こっちは斗貴子さんとヴィクトリア。俺達は――()()()()()から来たんだ」

 

 端的に語られたカズキの自己紹介。しかしそれは謎の解消には繋がらず、逆に新たな疑問を生み出したのだった。

 

 

*1
AM10:30~PM12:30の時間帯

*2
『武装錬金』本編。文庫版全V巻発売中

*3
本作品の独自設定。冬休み前が舞台の『アフターアフター』では旧SHで、冬休み中が舞台の『/Z』では新SHだった理由をこう解釈しました。

*4
人間の社会を学びにきているヴィクトリアは、最近のアングラなネット文化もちゃんと勉強している。という独自設定。




お読み頂きありがとうございます。
実は今回の話までがプロット上では第1話の予定でした。
何でこんなに長くなってんだろう…

そしてヴィクトリア、何でこんなことになったんだろう…
予定では見た目に似合わず実はパワータイプで、襲ってきたキャンサー返り討ちにする筈だったのに
なんだよゆっくリアって



注釈でも軽く触れてますが、感想でも質問があったので、本作でのカズキの武装錬金の扱いについて詳しく解説します。

カズキの武装錬金は二種類ありまして、これらはカズキ自身の性質に依存しています。
そして武装錬金は(アナザータイプを除いて)一人一種類という原則上、この二つの形態は本来不可逆なものであると考えられます。
人間・武藤カズキなら初期型、ヴィクターIIIならエネルギー内蔵型といった感じで。

で、実際に原作ではどんな描写かと言いますと、
①本編最終回(白核鉄使用直後):エネルギー内蔵型
②文庫版番外編『アフターアフター』(冬休み前):初期型
③小説版『/Z』(冬休み中):エネルギー内蔵型 ※挿絵にて判断
④ゲーム版『パピヨンパークへようこそ』(①~③のどこかまたは③以降):エネルギー内蔵型
と、コロコロ変わってます。

脚本が書かれた時期の違いと言えばそれまでなんですが、これらの設定を矛盾なく成立させるとすれば、切り替えできるんじゃねぇかなぁと考察して、結果本作ではこんな設定になりました。
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