【ヘブバン×武装錬金】SunLight from the Memories 作:亜蘭作務村
【午前02*1 パピヨンパーク・庭園エリア】
「ヴィクトリアーーーっ!!」
カズキは激昂した。
高校二年のあの夏、
ヴィクトリアが
頭の中が怒りで真っ赤に染まる。冷静な判断? 後先を考える? そんなの無理だ。今はただ、
「サンライトハート……
なりふり構わず、カズキは温存していた
穂先は片手剣程度の長さまで縮小し、柄の元の半分程度へ短縮。槍というよりも剣に近い形状と言っていいだろう。
そして最大の特徴であった飾り布の姿はない。一体どこに消えたのか? ――槍の
飾り布ではなく本体内部に生命エネルギーを内蔵蓄積し、用途に応じて展開解放。出力の調整も可能で、取り回しの良さと、最大出力時には従来でのそれを超える破壊力を獲得した。
本来は件の事件が終息し、カズキが
だが、その後に起きた幾つかの
カズキの
石突の、
ワイヤー種を射程圏に捉え、同時に闘争本能が臨界点に到達。地を蹴る足により力を込め、同時に
「エネルギィイイ――……全開ッ!! ≪サンライトスラッシャー≫!!」
岩壁に亀裂が広がり、轟音を立てて崩壊。ワイヤー種を下敷き、生き埋めにする。敵が完全に見えなくなったのを確認し、漸くカズキは止まった。
「はぁっ……、はぁっ……!」
エネルギーの穂先を格納し、
この一撃でかなりの体力を
進化した
あらかじめ蓄積していた分以上のエネルギーを使おうとすれば体力を消耗するし、過剰な使用は生命エネルギーの枯渇による死を招く。
元より、人間が使うことを前提としていないのだ。
無茶をしたが、おかげで頭の方は冷えた。冷静になると、そもそも
「――すっきりした?」
「ヴィクトリアっ!」
背中にかけられた
そう、ヴィクトリアの正体は人間ではなく
振り返ったカズキが見たものは、
「ヴィクトリア……な、生首っ!? ゆっくリア!?」
「何言ってるの、アナタ」
あまりに
頭の中に赤いリボンや魔女の帽子を着けた生首おばけが唐突に浮かんできたが、一体なんだったのだろう?
そんなカズキの妄言を、ヴィクトリアは冷ややかに一刀両断した。誰が妖怪生首饅頭*4か。変なあだ名をつけないで欲しい。
「……ところで、ねぇ、
「嫌でゲス」
自分を抱えた続けたままの豊後に、腕の中のヴィクトリアがうんざりした顔で解放を請う。が、その願いは即断ですげなく断られた。
一体どうしてこうなったのか。
「私だって、ずっと
「嫌でゲス」
「この左手の、カニバサミ? 何だかとっても臭いのよ。アナタ、ちゃんと洗ってるの?」
「嫌でゲス」
手を変え品を変え説得を試みるが、豊後は一向に承服しない。それどころか、逃がさぬとばかりに
一体何がそんなに気に入ったのか、何にそこまで執着しているのか。殺伐とした時代を生きた故に意外と
「――カズキ! ヴィクトリア!」
漸く追いついた斗貴子がカズキ達へ駆け寄り、その場の全員が合流した。
「全員、大事ないようだな。そっちの子も」
「うん、斗貴子さんもね」
「ちょっと。私はこの有様なんだけど?」
互いの無事を確認し合い、カズキは
二人の視線の先では、外殻を破壊された二体のキャンサーが蹲り、
今は動きを止めているが、時間が経てばそのうちダメージから立ち直り、再び襲ってくるのは間違いない。その前に、一刻も早くこの場を離れるべきだろう。
二人の間でその認識は一致し、後はどちらが先に口に出すか。その時だった。
「豊っ、後ぉぉおおぉぉおーーーっ!!」
遠くから、誰かの――豊後の名を呼ぶ何者かの声が聞こえてきた。声は段々と大きくなり、こちらへ近づいてきてるのが分かる。
「山脇様!」
声の主に心当たりがあるのか、
その時、ダメージから立ち直ったのか、二体のキャンサーがひび割れた身体で起き上がった。まずい! カズキは山脇と呼ばれた少女へ「逃げろ」と口々に声をかける。
だが山脇は構わず走り続け、懐から板状の
「【この世界は私の実験台よ】」
次の瞬間、上空に
直後、山脇の姿が光とともに忽然と消え去り、次の瞬間、まるで
そして穴から出てきた武器――自身の相棒である大鎌型セラフの柄を引っ掴み、山脇は再び消失。次に姿を現したのは、キャンサー達の眼前だった。
「死いっ……! ねえぇーっ!!」
怒号とともに唐竹に振り下ろされた
間髪入れずに手首を返し、左から右へ斜めに斬り上げる。振り抜かれた
「斃、した……? 私達があれだけ手こずったあの化物どもを、あんなに簡単に……!?」
「あの女の子は一体……!?」
愕然とするカズキ達の前に、山脇が
「山脇様~っ!」
歓喜の声を上げて抱き着いてくる
一方、放り投げられた
「山脇様! どこに行ってたんでゲスか!? 探したんでゲスよ?」
「馬鹿っ、探してたのはこっちよ! こんなにボロボロになっちゃって……」
再会を喜び合う豊後と山脇の横に、新たに四人の少女が
「山脇殿、置いてくなんて酷いでゴザルよ~!」
忍者か侍に
「――それで、」
残る新たな問題、豊後と一緒にいた
「あんた達は一体何?
四本の
まるで中世の暗黒時代かどこぞの未開の部族のような野蛮な絵面に
「オレはカズキ、こっちは斗貴子さんとヴィクトリア。俺達は――
端的に語られたカズキの自己紹介。しかしそれは謎の解消には繋がらず、逆に新たな疑問を生み出したのだった。
お読み頂きありがとうございます。
実は今回の話までがプロット上では第1話の予定でした。
何でこんなに長くなってんだろう…
そしてヴィクトリア、何でこんなことになったんだろう…
予定では見た目に似合わず実はパワータイプで、襲ってきたキャンサー返り討ちにする筈だったのに
なんだよゆっくリアって
注釈でも軽く触れてますが、感想でも質問があったので、本作でのカズキの武装錬金の扱いについて詳しく解説します。
カズキの武装錬金は二種類ありまして、これらはカズキ自身の性質に依存しています。
そして武装錬金は(アナザータイプを除いて)一人一種類という原則上、この二つの形態は本来不可逆なものであると考えられます。
人間・武藤カズキなら初期型、ヴィクターIIIならエネルギー内蔵型といった感じで。
で、実際に原作ではどんな描写かと言いますと、
①本編最終回(白核鉄使用直後):エネルギー内蔵型
②文庫版番外編『アフターアフター』(冬休み前):初期型
③小説版『/Z』(冬休み中):エネルギー内蔵型 ※挿絵にて判断
④ゲーム版『パピヨンパークへようこそ』(①~③のどこかまたは③以降):エネルギー内蔵型
と、コロコロ変わってます。
脚本が書かれた時期の違いと言えばそれまでなんですが、これらの設定を矛盾なく成立させるとすれば、切り替えできるんじゃねぇかなぁと考察して、結果本作ではこんな設定になりました。