【ヘブバン×武装錬金】SunLight from the Memories 作:亜蘭作務村
ホムンクルス"真・蝶・成体"は斃され、地上の荒廃を画策するホムンクルス・ムーンフェイスの暗い野望は未然に防がれた。
パピヨンパークを舞台にした一連の事件が解決し、世界の危機が密かに救われてから数ヶ月。
銀成学園に通う高校生にして錬金の戦士・武藤カズキはある日、先輩戦士の津村斗貴子とともに、蝶人パピヨンの秘密の
「――"タイムマシン"?」
パピヨンの口から飛び出したその漫画のような単語に、カズキは思わず訊き返した。
タイムマシン。
突拍子もない話だが、出来るか出来ないかで言えば、出来そうなのが
「その通り。ソウヤの件で興味が湧いてね。
「馬鹿な――とも言い切れないか……。ソウヤのことを持ち出されてはな」
パピヨンの自慢話に斗貴子が苦々しげな顔で唸る。荒唐無稽と切って捨てたいが、なまじ
パピヨンは
他に適切な例えが見つからない、近未来的な
「へぇ~っ! まさに"タイムマシン"って感じ! だけど蝶野、
「残念ながら
カズキの疑問に、パピヨンはあっさりと未完成であると明かす。悪びれもせず、自信満々に。
「どうだ、武藤? ――こいつを使って、ソウヤに会いに行ってみるというのは」
「えっ……?」
思いがけないパピヨンの提案に、カズキは思わず息を呑んだ。
ソウヤ。それはパピヨンパークでの事件の時に出会い、そして共闘した、
「何を企んでいる、パピヨン。カズキを惑わすのはやめろ」
「企む? 惑わす? 何の話だ」
牽制するように横から口を挟んだ斗貴子に、パピヨンは心外そうに首を傾げる。
「俺はただ新しい
憮然とした表情でパピヨンは斗貴子へ反論し、しかし直後、「だが、そうだな」と何かを思いついたように言葉を続ける。
「
「それを企んでいると言うんだ!」
パピヨンが告げた
蝶人パピヨン、人間
その実態は、己の愉しみを何より優先し、そのために他人を巻き込むのも厭わない生粋の
斗貴子とパピヨン、この二人の相性はすこぶる悪い。犬猿の仲と言ってもいいだろう。
二人とも同じ時期にカズキと出会い、どちらも彼に対して
カズキを
二人が口論する傍ら、カズキの心は揺れていた。
ムーンフェイスを斃し、ホムンクルス"真・蝶・成体"の消滅を見届けた後、ソウヤは消えた。その別れの
だが、
「…………会いたい、な」
「カズキ?」
絞り出すように零れたその呟きに、斗貴子とパピヨンがカズキを見た。斗貴子は驚いたように目を見開き、パピヨンがニヤリと口角を上げる。
一度口に出してしまうと、もう止まらなかった。胸の奥から際限なく湧き上がり、溢れ出す
「俺はもう一度、
「決まりだな」
カズキの
この偽善者のことだからまずは何かしらの綺麗事を言って断ると踏んでいたのだが、まさか素直に頷くとはちょっと予想外。だが、それはそれでまた一興だった。
「では武藤、
「私も一緒に行くのは確定なんだな……」
「蝶野は一緒に行かないのか?」
パピヨンの言葉に、斗貴子はどこか諦めたような表情で溜息を吐き、カズキは首を傾げた。
「俺の目的は、未来でお前達と再会したソウヤが慌てふためく様を、横から面白おかしく眺めることだからな。愉しみは
パピヨンの返答に、カズキは納得したように、しかし微妙に残念そうな顔で「成程」と頷いた。一方の斗貴子は、釈然としなさそうな顔で沈黙している。
その時、「ねぇ」と新たな声が
「今まで黙って聞いてたけど、どうして私まで行くことになってるの?」
不機嫌そうな顔で抗議するのは、
他のホムンクルス達と同様、一度は月へ移住した彼女だが、錬金戦団*2が推進するホムンクルスの再人間化
「
パピヨンの科白に、ヴィクトリアは苦い顔をする。
留学生として銀成学園に転入したヴィクトリアだが、元々面識のあるカズキ達や、その友人達に何かと世話を焼かれ、今では彼らの
だが、例のパピヨンパークの事件とは一切無関係で、ソウヤとやらとも面識はない。仮に二人に同行したとして、居心地が悪いなんてものではない。
「それに何か
「それなら
ヴィクトリアの反論に、パピヨンは「チッチッ」と指を振る。
「武藤と、そして
「殺すぞ」「殺すわよ」
180cmの長身を見せつけるように胸を張り、くいくいと
まるで地獄の底から響く怨嗟のような、ドスの利いた声だった。
「行こう、斗貴子さん! ヴィクトリアも。ソウヤにキミを紹介するよ!」
「むぅっ……?」
いつになく押しの強いカズキの様子に、斗貴子は気圧されたように唸る。いつも自分より他人を優先する彼がここまで我を張るのは珍しいことだった。
「……はぁ。分かった、私も同行しよう。私だって、ソウヤにまた会いたいのは同じだからな」
観念したように、斗貴子は溜息交じりに頷いた。カズキの顔がぱぁっと輝く。
残るヴィクトリアに、カズキと斗貴子が、そしてパピヨンも、示し合わせたように揃って視線を向けた。無言の圧力に晒され、ヴィクトリアが「うっ」とたじろぐ。
「な、何よ……! 私は行かないわよ!?」
「大丈夫! きっと楽しいから!」
「行かないって言ってるでしょ!?」
「まぁ、毒を食らわば皿まで*3とも言うしな」
「絶っっ対っ! 行かない!」
「往生際が悪いな。諦めたらどうだ?」
「行かないってばーーーっ!!」
必死に抵抗するヴィクトリアだが、
こうして決まった、パピヨン謹製タイムマシンによるカズキ達の
それがまさか
お読み頂きありがとうございます。
最後のくだりがちょっと強引過ぎたかな?
今回の話はイベストでいうプロローグの位置づけになります。
次の話を投稿する際に目次の先頭に移す予定です。
なお、次回の話は今までよりちょっと投稿に時間をいただくかも…?