時間は少し遡る。
あの後、宿場町ホルアドで一泊し、早朝には高速馬車に乗って一行は王国へと戻った。とても、迷宮内で実戦訓練を続行できる雰囲気ではなかったし、クラスメイトの中でも強かったハジメが死んだ以上、国王にも教会にも報告は必要だった。
それに、厳しくはあるが、こんな所で折れてしまっては困るのだ。致命的な障害が発生する前に、勇者一行のケアが必要だという判断もあった。
帰還を果たしハジメの死亡がメルドの口から伝えられた時、王国側の人間は誰も彼もが愕然とした。王国にも貢献し、人当たりの良さで国民からの支持も高く、神の使徒の中でも実力者だったハジメの死は相当な損失だった。
しかし国王やイシュタルは、強力な力を持った勇者一行が迷宮で死ぬこと等あってはならないこと。迷宮から生還できない者が魔人族に勝てるのかと不安が広がっては困るのだ。神の使徒たる勇者一行は無敵でなければならないのだから。
だが、そのやり方は逆効果だった。寧ろそのやり方をした国王やイシュタルに疑惑の目が向けられた。もちろん、公の場で発言したのではなく、物陰でこそこそと貴族同士の世間話という感じではあるが………
だが時間が経るにつれそれだけでは収まらず、一部の者が名乗りを上げ国王に抗議をした。
その中には、リリアーナ姫や貴族の大多数、ハジメと共同作業をした王国の錬成師達、騎士団や匿名の王国民そして使徒であるクラスメイトの大多数がいた。
だがそこで大多数ではなく少数で国王やイシュタルを支持する者の一人────天之河光輝が爆弾を放り投げた
『南雲ハジメは魔人族と裏で繋がっていた』
という爆弾だ。それを耳にした国王やイシュタルは天之河に説明を求めた。天之河曰く────
・ベヒモスと戦おうとしていた天之河に対する妨害
・ベヒモスと戦闘を行っていたハジメの突然の変化
・魔物であるトラウムソルジャーを使役していた
がその理由であると天之河は話した。
それを利用できると感じた国王とイシュタルは抗議をする者達にそれをより悪く発表した──
──だがそれは効果が無かった。
逆にその発表をした国王やイシュタル、その情報を伝えた天之河に非難の嵐が襲いかかった。そしてそれは彼らを支持していた教会関係者や、天之河を支持していたクラスメイト──檜山とその取り巻きにも襲いかかった。
そして抗議をしている者の旗頭であるリリアーナ姫は口にした────
『ベヒモスを止めようとした南雲様の妨害攻撃をしたのは天之河光輝である』
『寧ろ勝手な行動で危険な状況を更に危険にさせたのは天之河光輝である』
『トラウムソルジャーを使役できたのは南雲様の持っている技能の追加効果である』
その昔、地球で存在した救国の聖女のようにカリスマでハジメを支持している者達は活気が付き、国王やイシュタルに教会関係者、天之河と檜山、そしてその取り巻きは更に追い詰められた。
そしてリリアーナ姫はお返しにと爆弾を投げた──
『彼を死に追いやったのはクラスメイトの誰かが悪意に放った魔法によるものだ』
リリアーナ姫の爆弾によりクラスメイトの視線は少数派の一人の人物に向けられた。
『檜山大介』だ。元の世界だけではなく、トータスに来てからも何かと危害を加えており大迷宮内のトラップを発動させたのも彼だということはもう既にハジメの支持者の間で周知の事実となっている。
形勢が不利となった国王達は形として檜山を牢に投獄した。がそれを横暴だという声が天之河から出た。
勇者の天職を持つ天之河の声を支持したイシュタルは国王にそれを伝え、檜山は牢を数時間で出ることができた。
その様なことがありハイリヒ王国では、リリアーナ姫を旗頭にハジメを支持し救援を求める『南雲ハジメ支持派』と国王やイシュタル、天之河が旗頭の『南雲ハジメ敵対派』と分裂をした──────────