FGOで世界最強   作:紫道麻璃也

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爪熊戦と謎の部屋

 ハジメは魔物肉を喰らって上がっているステータスに驚愕していた。

 暫くして、落ち着いたハジメは新しく増えた技能を見ていくことにした。

 

「魔力操作?」

 

 文字通りなら魔力が操作できるということだろうか。ハジメは、近くにあった石を持ち錬成を詠唱無しで発動させた。すると、詠唱無しで石は形を変えた。錬成が何も言わずに発動可能になり、ハジメは感嘆する。

 

「本当に詠唱いらずに出来た…普通は魔力の直接操作はできないのが原則。例外は魔物。……やっぱり魔物の肉食ったせいでその特性を手に入れたのかな?」

 

 魔力操作は充分有能……次は〝纏雷〟……あの二尾狼の特性を試してみる。纏雷を発動させるのは、簡単だった。それは錬成するときはイメージが大事で、それと同じように明確に雷を纏う………すると右手の指先から全体へと紅い電気がバチッと弾け、全体に纏うことが出来た。

 これが纏雷……身体の痺れ、倦怠感が無い……本当に雷を纏うだけかだが、使いこなせる様になれば電気量、電圧量を調整出来るな……

 

「……なるほど、魔物の固有魔法はイメージが大事ってことか、最後は胃酸強化。これは文字通りかな」

 

 そして、ハジメは試す為に食いかけの魔物肉を眉を顰めながら一気に齧り付き食べる。

 

 十秒……

 

 

 一分……

 

 

 十分……

 

 

 何事も起こらない。

 ハジメは次々と肉を焼いていき再び喰ってみる。しかし、特に痛みは襲って来なかった。胃酸強化のおかげか、それとも耐性ができたのか。

 

「……しゃっ!耐性ができたおかげで毎回食事の時に地獄に合わなくて済むっ‼︎」

 ハジメは、魔物肉を喰えることにガッツポーズをしながら喜びを顕にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ハジメは拠点に戻り、錬成や他の技能の鍛錬をしながら数日が経ち、ハジメはある鉱石を探していた。

 しかし、あの爪熊…どうやって倒そうか、ここのフロアボスは確実にアイツ…しかし今、作れる武器じゃ適わない………

 あの爪熊に対抗出来る武器を考えついているのだが作れずにいた。

 理由は簡単でその武器に衝撃に耐えることが出来る鉱石が見つからなかったのだ。

 

「見つからないな……」

 

 ハジメはそんなことを呟きながら上を見たり下を見たり辺りを錬成で穴を作りながら探していく。そして、ある二つの鉱石を見つけだすことが出来た。

 

 

タウル鉱石

 

黒色で硬い鉱石。硬度8(10段階評価で10が一番硬い)。衝撃や熱に強いが、冷気には弱い。冷やすことで脆くなる。熱を加えると再び結合する。

 

燃焼石

 

可燃性の鉱石。点火すると構成成分を燃料に燃焼する。燃焼を続けると次第に小さくなり、やがて燃え尽きる。密閉した場所で大量の燃焼石を一度に燃やすと爆発する可能性があり、その威力は量と圧縮率次第で上位の火属性魔法に匹敵する。

 

 この二つの鉱石なら耐久性にも問題ないし、火薬の代わりに出来るこの二つを採取したハジメは、笑みを浮かべながら急いで拠点に戻り作成を始めた。

 しかし、タウル鉱石は鉄鉱石より加工するのが難しく何度もやり直す羽目になったが、積み上げてきた錬成技術で作製することが出来た。

 ハジメは一息ついて、作製した武器を眺めた。

 音速を超える速度で最短距離を突き進み、絶大な威力で目標を撃破する現代兵器。

 全長は約三十五センチ、この辺りでは最高の硬度を持つタウル鉱石を使った六連の回転式弾倉。長方形型のバレル。弾丸もタウル鉱石製で、中には粉末状の燃焼石を圧縮して入れてある。すなわち、大型のリボルバー式拳銃だ。

 

「名前は……〝ドンナー〟にするか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ハジメは爪熊と戦う前に更にステータスを強化しようと思いある魔物を倒しに向かう。

 

「キュウ?」

「……!」

 

 目的の魔物…ウサギを見つけたハジメは気配遮断を使いウサギの首を切り落とした。

 そしてウサギを拠点に持って帰り、再びエミヤを憑依させ解体をして焼いて食べた。

 

「むぐ、むぐ……ウォェ…」

 

 あの時程の痛みはないが……やはり不味い…。

 ウサギの肉を喰っても最初の時程の痛みが無いのは安心したが余りにものマズさに香織の料理が恋しくなるが生きぬくためだと思い我慢する。

 

「さて、初めて蹴りウサギの肉を食べたわけだけど……ステータスは……」

 

 マズイ食事を終わらせたハジメは早速ステータスプレートを眺める。

 

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南雲ハジメ 17歳 男 レベル:12

 

天職:錬成師・憑依魔術師

 

筋力:320

 

体力:510

 

耐性:360

 

敏捷:310

 

魔力:650

 

魔耐:650

 

技能:錬成[+鉱物鑑定系][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合]・全属性適性・全属性耐性・物理耐性・剣術[+直剣術][+短剣術][+大剣術][+双剣術][+刀術][+曲刀術]・弓術[+長弓術][+短弓術][+狙撃]・槍術[+短槍術][+双槍術]・騎乗・魔術・暗殺術・狂化・斧術・拳術・格闘術・杖術・盾術・憑依[+英霊]・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・言語理解・気配遮断・調理・魔力操作・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力][+縮地]

 

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 ハジメは自分の上がったステータスを見て確信に至った。

 やはり魔物肉を食べるとステータスが上がるようだ。二尾狼ではもう殆ど上がらなかったことを考えると食べたことのない魔物を食べると大きく上昇するらしい。

 早速ハジメは〝天歩〟とやら新しく追加された技能を調べることにした。

 

 

 

 

 

 

 迷宮の通路を姿が見えない程の高速で移動する影があった。

 ハジメである。〝天歩〟を完全にマスターしたハジメは、〝縮地〟で地面や壁、時には〝空力〟で足場を作って高速移動を繰り返し爪熊を探していた。

 

「見つけたっ!」

 

 そして爪熊を探して数分、やっと見つけることが出来た。当の爪熊は新しい獲物が来たと思い堂々とハジメを待っている。

 その様子にハジメは言葉が通じないと思うが話しかける。

 

「やぁ爪熊、初めまして………かな?」

「グルゥ」

 

 爪熊はハジメの問いに応えるかのように唸った。

 

「じゃあまずは、僕が獲物ではなく敵だと理解してもらおうか」

 

 そう言って、ハジメはドンナーを抜き銃口を真っ直ぐに爪熊へ向け告げる。

 

「さぁ、始めよう」

 

 その宣言と同時にハジメはドンナーを発砲する。炸裂音を響かせながら毎秒三・二キロメートルの超速でタウル鉱石の弾丸が爪熊に迫る。

 

「グゥウ⁉︎」

 

 爪熊は咄嗟に崩れ落ちるように地面に身を投げ出しながら回避する。

 弾丸を視認して避けたのではなく、発砲よりほんの僅かに回避行動の方が早かったことから、ハジメが放った殺気に反応した結果だろう。流石はこの階層最強の主である。二メートル以上ある巨躯に似合わない反応速度だ。

 最初の発砲は避けるか死ぬには至らない傷で済むと想定ていたが、ハジメは爪熊の肩の一部が抉れて白い毛皮を鮮血で汚しているのを目にした。

 爪熊の瞳に怒りが宿る。どうやらハジメを殺すべき敵として認識したらしい。

 

「ガァアア‼︎」

 

 咆哮を上げながら物凄い速度で突進する。二メートルの巨躯と広げた太く長い豪腕が地響きを立てながら迫る姿は途轍もない迫力だ。

 

「近接戦か!だったら── 〝憑依〟『坂田金時』」

 

 金髪碧眼で派手な格好の筋骨隆々とした青年となったハジメは、突進の勢いを利用した爪熊の勢いよく振り下ろされたその腕を、ハジメは片手で受け止めた。

 

「ガア⁉︎」

 

 手による攻撃を受け止められた爪熊は、慌ててもう片方の手を振り上げ、ハジメ目掛けて振り下ろした。

 だがその攻撃ももう片方の手で受け止めたハジメは、手四つの体勢になった。

 そしてハジメは手四つの状態から熊の腕を跳ね上げ、その胴体に腕を回すと相撲のように抱き着き、爪熊を持ち上げた。

 

「ガァアアア⁉︎」

「ゴールデン‼︎」

 

 そのまま持ち上げた爪熊をハジメは直ぐ下の地面に叩きつけた。叩きつけに結構な威力があったのか、爪熊の体のあちこちから骨が折れたような嫌な音が沢山聞こえた。

 

「………………グルゥ」

 

 もう勝てないと自身の最期を悟ったのか爪熊は、ハジメに強敵と戦えたことに対しての感謝と思われる唸りをした。

 

「こちらこそありがとう、いい勝負だった」

 

 爪熊にそう言葉を送ると錬成で作った鉞をハジメは振り下ろした………

 

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南雲ハジメ 17歳 男 レベル:17

 

天職:錬成師・憑依魔術師

 

筋力:480

 

体力:590

 

耐性:420

 

敏捷:380

 

魔力:900

 

魔耐:880

 

技能:錬成[+鉱物鑑定系][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合]・全属性適性・全属性耐性・物理耐性・剣術[+直剣術][+短剣術][+大剣術][+双剣術][+刀術][+曲刀術]・弓術[+長弓術][+短弓術][+狙撃]・槍術[+短槍術][+双槍術]・騎乗・魔術・暗殺術・狂化・斧術・拳術・格闘術・杖術・盾術・憑依[+英霊]・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・言語理解・気配遮断・調理・魔力操作・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力][+縮地] ・風爪

 

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 その後ハジメは下の階層へと降りていき、『体長二メートル程の灰色のトカゲ』『羽を散弾銃のように飛ばしてくるフクロウ』『六本足の猫』を調理し神水を飲みながら食べていった。

 

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南雲ハジメ 17歳 男 レベル:23

 

天職:錬成師・憑依魔術師

 

筋力:560

 

体力:640

 

耐性:490

 

敏捷:440

 

魔力:1010

 

魔耐:960

 

技能:錬成[+鉱物鑑定系][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合]・全属性適性・全属性耐性・物理耐性・剣術[+直剣術][+短剣術][+大剣術][+双剣術][+刀術][+曲刀術]・弓術[+長弓術][+短弓術][+狙撃]・槍術[+短槍術][+双槍術]・騎乗・魔術・暗殺術・狂化・斧術・拳術・格闘術・杖術・盾術・憑依[+英霊]・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・言語理解・気配遮断・調理・魔力操作・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力][+縮地] ・風爪・夜目・石化耐性

 

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 予想通り大幅に上昇して技能欄も二つ増えてる。確かによくよく見ると、確かに先程より遥かに周りが見える………“夜目”……この階層には必須の技能だな…後は、文字通りの耐性が付くのはありがたい……

 

 そして、迷宮の攻略を再開し遂に階下への階段を見つける。ハジメは躊躇いなく踏み込んだが足に違和感を感じる。

 

「………沼か?」

 

 その階層は、地面がどこもかしこもタールのように粘着く泥沼のような場所だった。足を取られるので凄まじく動きにくい。ハジメは顔をしかめながら、せり出た岩を足場にしたり〝空力〟を使ったりしつつ探索を開始しその途中興味深い鉱石を発見した。

 

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フラム鉱石

 

艶のある黒い鉱石。熱を加えると融解しタール状になる。融解温度は摂氏50度ほどで、タール状のときに摂氏100度で発火する。その熱は摂氏3000度に達する。燃焼時間はタール量による。

 

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「つまり、火気厳禁ね」

 

 発火温度が百度ならそう簡単に発火するとは思わないが、仮に発火した場合、連鎖反応でこの階層全体が摂氏三千度の高熱に包まれることになる。流石に、神水をストックしていても生き残る自信は……………ない。

 しばらく進んでいると三叉路に出た。近くの壁にチェックを入れセオリー通りに左の通路から探索しようと足を踏み出したその瞬間──

 

「ッ⁉︎」

 

 ハジメが踏み出したと同時に鋭い歯が無数に並んだ巨大な顎門を開いて、サメのような魔物がタールの中から飛び出してきた。

 頭部を狙った顎門は歯と歯を打ち鳴らしながら閉じられる。咄嗟に身を屈めてかわしたものの俺は戦慄するがある疑問に至る。

 

「気配感知に引っ掛からなかったってことは………気配遮断持ちか」

 

 ハジメを喰い損ねたサメはドボンと音を立てながら再びタールの中に沈み見えなくなってしまい、ハジメは再び〝気配感知〟をするが……

 

「やはり気配遮断か………よし」

 

 ハジメは色々な予想、策を張り巡らせながら、とにかく止まっていてはやられると〝空力〟を使い移動を再開する。

 すると、そのタイミングを見計らったかのように、再びサメが飛び出してきた、それを予想していたハジメは技能の名を口にする。

 

「〝風爪〟‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 サメの階層から更に五十階層は進んだ。ハジメに時間の感覚は既にないので、どれくらいの日数が過ぎたのかはわからない。それでも、驚異的な速度で進んできたのは間違いなかった。

 その間にも理不尽としか言いようがない強力な魔物──『毒の痰を吐き出す二メートルのカエル』や『麻痺の鱗粉を撒き散らす蛾』、『巨大なムカデ』に『樹の魔物』と何度も死闘を演じてきた。

 そんなことが続き、ハジメは五十階層時点でのステータスは上がりに上がった。

 

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南雲ハジメ 17歳 男 レベル:49

 

天職:錬成師・憑依魔術師

 

筋力:1200

 

体力:1180

 

耐性:990

 

敏捷:1060

 

魔力:1500

 

魔耐:1350

 

技能:錬成[+鉱物鑑定系][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合]・全属性適性・全属性耐性・物理耐性・剣術[+直剣術][+短剣術][+大剣術][+双剣術][+刀術][+曲刀術]・弓術[+長弓術][+短弓術][+狙撃]・槍術[+短槍術][+双槍術]・騎乗・魔術・暗殺術・狂化・斧術・拳術・格闘術・杖術・盾術・憑依[+英霊]・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・言語理解・気配遮断・調理・魔力操作・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力][+縮地] ・風爪・夜目・石化耐性・毒耐性・麻痺耐性

 

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 ハジメは、この五十層で作った拠点にて銃技や蹴り技、錬成に憑依の鍛錬を積みながら少し足踏みをしていた。というのも、階下への階段は既に発見しているのだが、この五十層には明らかに異質な場所があったのだ。

 脇道の突き当りにある空けた場所には高さ三メートルの装飾された荘厳な両開きの扉が有り、その扉の脇には二対の一つ目巨人の彫刻が半分壁に埋め込まれるように鎮座しているのだ。

 ハジメはその空間に足を踏み入れた瞬間全身に悪寒が走るのを感じ、これはヤバイと一旦引いたのである。もちろん装備を整えるためで避けるつもりは毛頭ない。ようやく現れた〝変化〟なのだ。調べないわけにはいかない。

 ハジメは期待と嫌な予感を両方同時に感じていた。あの扉を開けば確実になんらかの厄災と相対することになるかもしれないし、もしかしたら、この迷宮を攻略するのに必要な〝鍵〟になるのかもしれない……。

 

「………鬼が出るか蛇が出るか………はたまた希望が出るか」

 

 自分の今持てる武技と武器、そして技能。それらを一つ一つ確認し、コンディションを万全に整えていく。全ての準備を整え、ハジメはゆっくり扉に近いた。

 扉のある部屋にやってきたハジメは油断なく歩みを進める。特に何事もなく扉の前にまでやって来た。近くで見れば益々、見事な装飾が施されているとわかった。そして、中央に二つの窪みのある魔法陣が描かれているのがわかったがその魔法陣に難色を示す。

 ハジメは自らの能力を更に補うために座学に力を入れていた。勿論全ての学習を終えたわけではないが、それでも、魔法陣の式を全く読み取れないというのは些おかしいと感じてハジメはある推測に至った。

 

「王国の図書館にもないくらい古い術式か……」

 

 ざっと、数百年ぐらい前か……王国の図書館の本は最も古くて二百年前のモノでそれ以前のモノは見当たらなかった。もしかしたら、教会の本部にもっと前のがあるかもしれないが……。

 ハジメはそんな推測をしながら扉を調べるが特に何かがわかるということもなかった。いかにも曰くありげなので、トラップを警戒して調べてみたのだが、どうやら今のハジメが持つ知識では解読できるものではなさそうだ。

 

「危険だが、錬成で確かめるか……」

 

 一応、扉に手をかけて押したり引いたりしたがビクともしない。なので、錬成で強制的に道を作る。ハジメは右手を扉に触れさせ錬成を開始した。

 しかし、その途端、

 

「うおっ⁉︎」

 

 扉から赤い放電が走りハジメの手を弾き飛ばした。ハジメの手からは煙が吹き上がっている。神水を飲み回復するハジメはトラップかと思い直様構えをとる。

 すると、直後にその異変が起きた。

 

「………!」

 

 

──オォォオオオオオオ‼︎

 

 突然、野太い雄叫びが部屋全体に響き渡ったのだ。

 ハジメはバックステップで扉から距離をとり、再び腰を落として手をホルスターのすぐ横に触れ、この状況に最も適した憑依が出来るようにスタンバイする。

 雄叫びが響く中、遂に声の正体が動き出した。

 

「あれは、サイクロプスか?」

 

 苦笑いしながら呟くハジメの前で、扉の両側に彫られていた二体の一つ目巨人が周囲の壁をバラバラと砕きつつ現れた。いつの間にか壁と同化していた灰色の肌は暗緑色に変色している。

 一つ目巨人はゲームで良く出るくるようなサイクロプスだ。手にはどこから出したのか四メートルはありそうな大剣を持っている。未だ埋まっている半身を強引に抜き出し無粋な侵入者を排除しようとハジメの方に視線を向けた。

 

「………………長い間ありがとう、もう休んでいいよ……… 〝憑依〟『ビリー・ザキッド』」

 

 アメリカ西部開拓時代の代表的なアウトローで稚気に富んだ最強最速の銃使いとなったハジメは憑依したことにより変化したドンナー── コルトM1877ダブルアクションリボルバー(通称「サンダラー」)で一瞬で終わらせることにした。

 

「宝具発動 壊音の霹靂(サンダラー)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「門番だったってことはこの近くかサイクロプスが何か鍵みたいなのを………………コレは?」

 

 ハジメが宝具で倒したサイクロプスを〝風爪〟で切り裂き体内を探していると、指の先に何かが当たった。慎重に取り出してみるとそれは魔石だった。

 

「ということはもう一体にも………」

 

 そうして血濡れを気にするでもなく二つの拳大の魔石を扉まで持って行き、それを窪みに合わせた。

 魔石から赤黒い魔力光が迸り魔法陣に魔力が注ぎ込まれていく。そして、パキャンという何かが割れるような音が響き、光が収まった。同時に部屋全体に魔力が行き渡っているのか周囲の壁が発光し、久しく見なかった程の明かりに満たされる。

 

 

「……ッ!」

 

 光が収まるとハジメは少し目を瞬かせ、警戒しながら、そっと扉を開いた。

 扉の奥は光一つなく真っ暗闇で、大きな空間が広がっているようだ。ハジメの〝夜目〟と手前の部屋の明りに照らされて少しずつ全容がわかってくる。

 ハジメは扉の造形もそうだったが中の構造も凝っていて素晴らしく感嘆してしまう。それは、聖教教会の大神殿で見た大理石のように艶やかな石造りで出来ており、幾本もの太い柱が規則正しく奥へ向かって二列に並んでいた。そして部屋の中央付近に巨大な立方体の石が置かれており、部屋に差し込んだ光に反射して、つるりとした光沢を放っているのでハジメはその立方体に目がいった。

 

「………ん、何だ?」

 

 その立方体を注視していたハジメは、何か光るものが立方体の前面の中央辺りから生えているのに気がついた。

 しかし、ハジメが確認をする前にそれは動いた。

 

「……だれ?」

 

 掠れた、弱々しい少女の声だ。ビクリッとしてハジメは慌てて部屋の中央を凝視する。すると、先程の〝生えている何か〟がユラユラと動き出した。差し込んだ光がその正体を暴く。

 

「人……なのか?」

 

 〝生えていた何か〟は人だった。

 

 上半身から下と両手を立方体の中に埋めたまま顔だけが出ており、長い金髪が某ホラー映画の女幽霊のように垂れ下がっていた。そして、その髪の隙間から低高度の月を思わせる紅眼の瞳が覗いている。年の頃は十二、三歳くらいだろう。随分やつれているし垂れ下がった髪でわかりづらいが、それでも美しい容姿をしていることがよくわかる。

 流石に予想外だったことにハジメは硬直し、紅の瞳の少女もハジメをジッと見つめる。そして、ハジメは少女の悲しい顔を見て、気付いた時にはハジメは……

 

迷いもなく少女のところに駆け出していた。

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