ハジメは、体全体が何か温かで柔らかな物に包まれているのを感じた。随分と懐かしい感触だ。これは、そうベッドの感触である。頭と背中を優しく受け止めるクッションと、体を包む羽毛の柔らかさを感じ、ハジメのまどろむ意識は混乱する。
「………んっ、ここは」
体を起こすと、ハジメは本当にベッドで寝ていることに気がついた。純白のシーツに豪奢な天蓋付きの高級感溢れるベッドである。場所は、吹き抜けのテラスのような場所で一段高い石畳の上にいるようだ。爽やかな風が天蓋とハジメの頬を撫でる。周りは太い柱と薄いカーテンに囲まれている。建物が併設されたパルテノン神殿の中央にベッドがあるイメージだ。空間全体が久しく見なかった暖かな光で満たされていた。
ハジメは混乱しながらも警戒を高め辺りを見渡していると傍らにユエがぐっすりと眠っていた。
「ユエ……無事でよかった……」
ハジメはユエの寝顔を見て、警戒心を緩めて彼女の頬にそっと右手を添える。
「大丈夫そうだな……」
ユエの安否を確認したハジメはこの状況を知る為に彼女を起こすことにした。
「ユエ、起きて」
「んぅ~……」
声をかけるが愚図るようにイヤイヤをしながら丸くなるユエ。しかし目をゴシゴシしながら目を開けた。
「……ハジメ?」
「うん、ハジメさんだよ。ユエ、おは……」
「ハジメ!」
「⁉︎」
目を覚ましたユエは茫洋とした目でハジメを見ると、次の瞬間にはカッと目を見開き飛びついた。
ユエがハジメの首筋に顔を埋めながら、ぐすっと鼻を鳴らしていることに気が付くと、苦笑いして頭を撫でる。
「ごめん、随分心配かけたみたいだね」
「んっ……心配した……」
しばらくしがみついたまま離れそうになかったし、倒れた後面倒を見てくれたのはユエなので気が済むまでこうしていようと、ハジメは優しくユエの頭を撫で続ける。
それからしばらくして、ようやくユエが落ち着いたので、ハジメは事情を尋ねた。ちなみに、ユエは何故か全裸だったのでしっかりシーツを纏わせている。
「それで、あれから何があった?ここはどこなんだ?」
「……あの後……」
ユエ曰く、あの後倒れたハジメの傍で同じく魔力枯渇でフラフラのユエが寄り添っていると、突然扉が独りでに開いたのだそうだ。新手と警戒したもののいつまでたっても特になにもなく、時間経過で少し回復したユエが確認をしに扉の奥へ入った。
神水の効果で少しずつ回復しているとは言え、ハジメが重傷であることに変わりはなく、依然危険な状態である。強靭な肉体が一命を取り留めているが、極光の毒素がいつ神水を上回るかわからない。そんな状態で新手でも現れたら一巻の終わりだ。そのため、確かめずにはいられなかったのだ。
そして、踏み込んだ扉の奥は、
「……反逆者の住処」
中は広大な空間に住み心地の良さそうな住居があったというのだ。そのあと、危険がないことを確認して、ベッドルームを確認したユエは、ハジメを背負ってベッドに寝かせ看病していたのだという。神結晶から最近めっきり量が少なくなった神水を抽出し、ハジメに飲ませ続けた。
遂に極光の毒素に神水の効果が勝ったのか、通常通りの回復を見せたところで、ユエも力尽きたという。
「……なるほど、それは世話になったね。ありがとう」
「んっ!」
ハジメが感謝の言葉を伝えると、ユエは心底嬉しそうに瞳を輝かせる。無表情ではあるが、その分瞳は雄弁だった。
ベッドルームから出たハジメは、周囲の光景に圧倒され呆然としてしまい、ここには存在しないあるモノに目が入った。
「えっ……太陽?」
ハジメがまず、目に入ったのは太陽だった。もちろんここは地下迷宮であり本物ではないと思う。頭上には円錐状の物体が天井高く浮いており、その底面に煌々と輝く球体が浮いていたのである。僅かに温かみを感じる上、蛍光灯のような無機質さを感じないため、思わず〝太陽〟と称してしまった。すると、ユエが更に〝太陽〟の追加情報を伝えてきた。
「……夜になると月みたいになる」
「えぇっ……」
次に、注目したのは耳に心地良い水の音。扉の奥のこの部屋はちょっとした球場くらいの大きさがあるのだが、その部屋の奥の壁は一面が滝になっていた。天井近くの壁から大量の水が流れ落ち、川に合流して奥の洞窟へと流れ込んでいく。
川から少し離れたところには大きな畑もあるようである。今は何も植えられていないようだが……その周囲に広がっているのは、もしかしなくても家畜小屋、そして、大理石で出来たような館があった。
「……凄い」
ハジメは反逆者の住処に驚きを隠せず、目を輝かせながら感嘆しているとある館に目が入り、歩を止める。そしたら隣に追従していたユエが報告をする。
「……少し調べたけど、開かない部屋も多かった……」
ユエの報告を聞いて、ハジメはホルスターにドンナーが入っていることを確認して、目を細めながら口を開く。
「そうか……ユエ、油断せずに行くぞ」
「ん……」
住居は全体的に白く石灰のような手触りだ。全体的に清潔感があり、エントランスには、温かみのある光球が天井から突き出す台座の先端に灯っていた。薄暗いところに長くいた俺達には少し眩しいくらいだ。どうやら三階建てらしく、上まで吹き抜けになっていた。
一階は暖炉や柔らかな絨毯、ソファのあるリビングらしき場所、台所、トイレを発見した。どれも長年放置されていたような気配はない。
ハジメとユエは、より警戒しながら進めていく。更に奥へ行くと再び外に出た。そこには大きな円状の風呂だった。
「間違いなく風呂だな。これはいいや。何ヶ月ぶりの風呂だか」
ハジメは風呂に入れる喜びに少し微笑んだ。そんなハジメを見てユエが一言、
「……入る?一緒に……」
「……入る訳ないだろ」
「むぅ……」
素足でパシャパシャと温水を蹴るユエの姿に、断りを入れたハジメにユエは唇が尖らせて不満顔になるが、ハジメはスルーを決め込んだ。
それからハジメ達は、二階で書斎や工房らしき部屋を発見した。しかし、書棚も工房の中の扉も封印がされているらしく開けることはできなかった。
「重要そうな場所は駄目か」
重要そうと思える場所は大体、鍵が掛かってるな……まぁ、鍵は探せば見つかるだろう。
二階を調べ終わったハジメ達は三階の奥の部屋に向かった。三階は一部屋しかないようだ。奥の扉を開けると、そこには直径七、八メートルの今まで見たこともないほど精緻で繊細な魔法陣が部屋の中央の床に刻まれていた。
しかし、それよりも注目すべきなのは、その魔法陣の向こう側、豪奢な椅子に座った人影である。人影は骸だった。既に白骨化しており黒に金の刺繍が施された見事なローブを羽織っている。
その骸は椅子にもたれかかりながら俯いている。その姿勢のまま朽ちて白骨化したのだろう。魔法陣しかないこの部屋で骸は何を思っていたのか。寝室やリビングではなく、この場所を選んで果てた意図はなんなのか……
「……怪しい……どうする?」
ユエもこの骸に疑問を抱いたようだ。おそらく反逆者と言われる者達の一人なのだろうが、苦しんだ様子もなく座ったまま果てたその姿は、まるで誰かを待っているようである。
「まぁ、地上への道を調べるには、この部屋がカギだと思う。僕の錬成も受け付けない書庫と工房の封印……そしてこの世界について分かるかもしれない…ユエは待っててくれ。何かあったら頼む」
「ん……気を付けて」
ハジメはそう言うと、魔法陣へ向けて踏み出した。そして、ハジメが魔法陣の中央に足を踏み込んだ瞬間、カッと純白の光が爆ぜ部屋を真っ白に染め上げる。
「……ぐっ?!」
やがて光が収まり、目を開けたハジメの目の前には、黒衣の青年が立っていた。
『試練を乗り越えよくたどり着いた。私の名はオスカー・オルクス。この迷宮を創った者だ。反逆者と言えばわかるかな?』
「反逆者……」
話し始めた彼はオスカー・オルクスというらしい。【オルクス大迷宮】の創造者のようだ。ハジメは驚きながらも彼の話を聞く。
『ああ、質問は許して欲しい。これはただの記録映像のようなものでね、生憎君の質問には答えられない。だが、この場所にたどり着いた者に世界の真実を知る者として、我々が何のために戦ったのか……メッセージを残したくてね。このような形を取らせてもらった。どうか聞いて欲しい。……我々は反逆者であって反逆者ではないということを』
そうして始まったオスカーの話は、ハジメが聖教教会で教わった歴史やユエに聞かされた反逆者の話とは大きく異なった驚愕すべきものだった。
それは狂った神とその子孫達の戦いの物語。
神代の少し後の時代、世界は争いで満たされていた。人間と魔人、様々な亜人達が絶えず戦争を続けていた。争う理由は様々だ。領土拡大、種族的価値観、支配欲、他にも色々あるが、その一番は〝神敵〟だから。今よりずっと種族も国も細かく分かれていた時代、それぞれの種族、国がそれぞれに神を祭っていた。その神からの神託で人々は争い続けていたのだ。
だが、そんな何百年と続く争いに終止符を討たんとする者達が現れた。それが当時、〝解放者〟と呼ばれた集団である。
彼らには共通する繋がりがあった。それは全員が神代から続く神々の直系の子孫であったということだ。そのためか〝解放者〟のリーダーは、ある時偶然にも神々の真意を知ってしまった。何と神々は、人々を駒に遊戯のつもりで戦争を促していたのだ。〝解放者〟のリーダーは、神々が裏で人々を巧みに操り戦争へと駆り立てていることに耐えられなくなり志を同じくするものを集めたのだ。
彼等は、〝神域〟と呼ばれる神々がいると言われている場所を突き止めた。〝解放者〟のメンバーでも先祖返りと言われる強力な力を持った七人を中心に、彼等は神々に戦いを挑んだ。
だが解放者達は負けじと挑んだが為す術なく敗れてしまい、その結果……この世界の常識を変えることなく結局、守るべき人々に力を振るう訳にもいかず、神の恩恵も忘れて世界を滅ぼさんと神に仇なした〝反逆者〟のレッテルを貼られ〝解放者〟達は討たれていった。
最後まで残ったのは中心の七人だけだった。世界を敵に回し、彼等は、もはや自分達ではあの神達を討つことはできないと判断した。そして、バラバラに大陸の果てに迷宮を創り潜伏することにしたのだ。試練を用意し、それを突破した強者に自分達の力を譲り、いつの日か神の遊戯を終わらせる者が現れることを願って………………………………
長い話が終わり、オスカーは穏やかに微笑む。
『君が何者で何の目的でここにたどり着いたのかはわからない。君に神殺しを強要するつもりもない。ただ、知っておいて欲しかった。我々が何のために立ち上がったのか。……君に私の力を授ける。どのように使うも君の自由だ。だが、願わくば悪しき心を満たすためには振るわないで欲しい。話は以上だ。聞いてくれてありがとう。君のこれからが自由な意志の下にあらんことを』
そう話を締めくくり、オスカーの記録映像はスっと消えた。そして同時にハジメの脳裏に何かが侵入してくる。
「ぐっぅ?! がァ⁉︎」
「ハジメッ?!」
頭を抑え苦しんでるハジメを見てユエが心配して声を上げるがハジメは脳裏に侵入してくる何かに驚愕してしまい、それ所ではなかった。
やがて、痛みも収まり魔法陣の光も収まる。ハジメはゆっくり息を吐いた。
「ハジメ……大丈夫?」
「うん、平気だよ……にしても、何かすごいこと聞いちまったな」
「……ん……どうするの?」
ユエがオスカーの話を聞いてどうするのかと尋ねる。
「そうだな……」
ハジメは目を瞑りながら考えを張り巡らさせ、やがて目を開いて決心してユエに告げる。
「ユエ…僕はこの世界に召喚されてから帰る方法を探していた。……だが、エヒトは絶対、僕達や香織達にも干渉してきて、もしかしたら元の世界に帰ろうとするところを阻止しようとするかもしれねぇ……だから、僕は守る為に神を殺す。それに話を聞く限り神々が気に食わない……だから僕は〝解放者〟達の意思を継ごうと思う。ユエ、出来ればで良いけど力を貸してくないか?」
そんなハジメの言葉にユエは笑みを向けながら話す。
「私の居場所はここ……ハジメがそうするなら私もそうする」
そう言ってユエは、ハジメに寄り添いその手を取る。ギュッと握られた手が本心であることを如実に語る。
「そうか……ありがとうユエ」
「……んっ」
ユエに感謝しつつハジメはユエに衝撃の事実をさらりと告げる。
「あ~、あと何か新しい魔法……神代魔法っての覚えたみたい」
「……ホント?」
信じられないといった表情のユエ。それも仕方ないだろう。何せ神代魔法とは文字通り神代に使われていた現代では失伝した魔法である。
「何かこの床の魔法陣が、神代魔法を使えるように頭を弄る?みたいな?」
「……大丈夫?」
ハジメの言葉にユエは心配するがハジメは心配ないという態度を取りながら話す。
「うん、問題ない。しかもこの魔法……僕のためにあるような魔法だな」
「……どんな魔法?」
「え~と、生成魔法ってやつで、魔法を鉱物に付加して、特殊な性質を持った鉱物を生成出来る魔法………だね」
ハジメの言葉にポカンと口を開いて驚愕をあらわにするユエ。
「……アーティファクト作れる?」
「ああ、そういうことだね」
この生成魔法は神代においてアーティファクトを作るための魔法……まさに〝錬成師〟のハジメのためにある魔法だ。
ハジメは生成魔法の力に感嘆しながら笑みを浮かべて右手の拳を握りしめる。そして、ユエにも生成魔法の獲得をするかと提案する。
「ユエも覚えたらどう?何か、魔法陣に入ると記憶を探られるみたいなんだ。オスカーさんも試練がどうのって言ってたし、試練を突破したと判断されれば覚えられるんじゃないかな?」
「私……錬成使わない……」
「まぁ、そうだろうけど……せっかくの神代の魔法、覚えておいて損はないんじゃないかな?」
「……ん……ハジメが言うなら」
ハジメの勧めに魔法陣の中央に入るユエ。魔法陣が輝きユエの記憶を探る。そして、ユエも試練をクリアしたものと判断された。
「どう?修得できた?」
ハジメの問いかけにユエは頷くもその表情はイマイチな感じで話しだす。
「ん……した。でも……アーティファクトは難しい」
やはり、魔法の天才のユエでも魔法の得意、不得意があるらしい。
「う~ん、やっぱり神代魔法も相性とか適性とかあるのかもな」
そんなことを話しながら、ハジメはオスカーの骸に近付き、骸に肩をかけながら話しかける。
「ありがとうございますオスカー・オルクス……ユエ埋葬するから手伝って」
「ん……わかった……」
オスカーの埋葬が終わると、ハジメとユエは封印されていた場所へ向かった。ついでにオスカーが嵌めていたと思われる指輪も拝借した。その指輪には十字に円が重った文様が刻まれており、それが書斎や工房にあった封印の文様と同じだったのだ。
まずは書斎……一番の目的である地上への道を探らなければならない。ハジメとユエは書棚にかけられた封印を解き、めぼしいものを調べていく。すると、この住居の施設設計図らしきものを発見した。通常の青写真ほどしっかりしたものではないが、どこに何を作るのか、どのような構造にするのかということがメモのように綴つづられたものだ。
「ユエ!あったよ‼︎」
「んっ」
ハジメから歓喜の声が上がる。ユエも嬉しそうだ。設計図によれば、どうやら先ほどの三階にある魔法陣がそのまま地上に施した魔法陣と繋がっているらしい。オルクスの指輪を持っていないと起動しないようだ。
「この指輪を頂いて良かったな……」
更にハジメが設計図を調べていると、どうやら一定期間ごとに清掃をする自律型ゴーレムが工房の小部屋の一つにあったり、天上の球体が太陽光と同じ性質を持ち作物の育成が可能などということもわかった。人の気配がないのに清潔感があったのは清掃ゴーレムのおかげだったようだ。
そして工房には、生前オスカーが作成したアーティファクトや素材類が保管されているらしい。
「ハジメ……これ……」
「うん?」
ハジメが設計図をチェックしていると他の資料を探っていたユエが一冊の本を持ってきた。
「これは………手記?」
ハジメがオスカーの手記を読むんで分かったことはオスカーの手記の内の一節に、他の六人の迷宮に関することが書かれていた。
「……つまり、他の迷宮も攻略すると、創設者の神代魔法が手に入るということ?」
「……かも」
手記によれば、オスカーと同様に六人の〝解放者〟達も迷宮の最深部で攻略者に神代魔法を教授する用意をしているようだ。生憎とどんな魔法かまでは書かれていなかった。
でもこれなら、神を殺せる力をつけれるし、元の世界に帰れる可能性もある。……香織達と再会したいが……今、再会しても神々に対して何も対応出来ない可能性があるし……それなら、神代魔法の獲得を優先にしたい……
「ユエ、予定変更したい。香織達との顔合わせは後にして神殺しと元の世界への帰還の為に神代魔法が必要だ。地上に出たら七大迷宮攻略を目指そう」
「んっ」
明確な指針ができて頬が緩むハジメ。思わずユエの頭を撫でるとユエも嬉しそうに目を細めた。
それからしばらく探したが、正確な迷宮の場所を示すような資料は発見できなかった。現在、確認されている【グリューエン大砂漠の大火山】【ハルツィナ樹海】、目星をつけられている【ライセン大峡谷】【シュネー雪原の氷雪洞窟】辺りから調べていくしかないだろう。
しばらくして書斎あさりに満足した二人は、工房へと移動した。
工房には小部屋が幾つもあり、その全てをオルクスの指輪で開くことができた。中には、様々な鉱石や見たこともない作業道具、理論書などが所狭しと保管されており、錬成師にとっては楽園かと見紛う程で沢山のアーティファクトだらけで俺は驚愕の余り声を漏らしてしまう。
「おいおい、僕でも見て分かるぞ……どれも、一級品のアーティファクトなんだけど」
そこにあるのは沢山の上等なアーティファクトばかりにハジメは笑みを浮かべる。
「これなら……」
「……どうしたの?」
ハジメは考えていたことをユエに提案した。
「ユエ。しばらくここに留まらない?早く地上に出たいのは僕も山々なんだけど……せっかく学べるものも多いし、ここは拠点としては最高だ。他の迷宮攻略のことを考えても、ここで可能な限り準備をしておきたい。どう?」
ユエは三百年も地下深くに封印されていたのだから一秒でも早く外に出たいだろうと思ったのだが、ハジメの提案にキョトンとした後、直ぐに了承した。
「……ハジメと一緒ならどこでもいい」
「ありがとう…ユエ」
「んっ」
ハジメ達はここで可能な限りの鍛錬と装備の充実を図ることになった──────
〜ニヶ月後〜
========================
南雲ハジメ 17歳 男 レベル:???
天職:錬成師・憑依魔術師
筋力:13500
体力:16200
耐性:14370
敏捷:15240
魔力:21590
魔耐:18630
技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成][+圧縮錬成]・全属性適性・全属性耐性・物理耐性・剣術[+直剣術][+短剣術][+大剣術][+双剣術][+刀術][+曲刀術]・弓術[+長弓術][+短弓術][+狙撃]・槍術[+短槍術][+双槍術]・騎乗・魔術・暗殺術・狂化・斧術・拳術・格闘術・杖術・盾術・憑依[+英霊]・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・言語理解・気配遮断・調理・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作] ・胃酸強化・纏雷[+紅狼]・天歩[+空力][+縮地][+豪脚][+瞬光]・風爪・夜目・遠見・気配感知[+特定感知]・魔力感知[+特定感知]・熱源感知[+特定感知]・気配遮断[+幻踏]・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・恐慌耐性・全属性耐性・先読・金剛・豪腕・威圧・念話・追跡・高速魔力回復・魔力変換[+体力][+治癒力]・限界突破・生成魔法
========================
一つ一つ確認し終えたハジメはユエにある装備を渡した。それは神結晶で作ったネックレスだった。
「……ハジメありがとう大切にする」
「うん」
それから十日後、遂にハジメとユエは地上へ出る。
三階の魔法陣を起動させながら、ハジメはユエに静かな声で告げる。
「ユエ……僕の武器や僕達の力は、地上では異端だ。聖教教会や各国が黙っているということはないと思う」
「ん……」
「兵器類やアーティファクトを要求されたり、戦争参加を強制される可能性も極めて大きい」
「ん……」
「教会や国だけならまだしも、バックの神を自称する狂人共も敵対するかもしれない」
「ん……」
「世界を敵にまわすかもしれないヤバイ旅だ。命がいくつあっても足りないぐらいな」
「神殺しをするのに今更……」
「…そうだったね」
ユエの言葉に思わずハジメは笑ってしまう。
真っ直ぐハジメを見つめてくるユエのふわふわな髪を優しく撫でる。気持ちよさそうに目を細めるユエに、ハジメは一呼吸を置くと、キラキラと輝く紅眼を見つめ返し、望みと覚悟を言葉にして魂に刻み込む。
「僕がユエを、ユエが僕を守る。そして、神を殺し、香織達と再開して…世界を越えよう」
ハジメの言葉を、ユエはまるで抱きしめるように、両手を胸の前でギュッと握り締めた。そして、無表情を崩し花が咲くような笑みを浮かべた。返事はいつもの通り……
「んっ‼︎」
ハジメはその返事を聞いて、笑みを浮かべユエと共に魔法陣に向かって歩き出し、僕…いや僕達の神殺しの旅が始まった……