FGOで世界最強   作:紫道麻璃也

16 / 58
クラスメイトside 帝国の使者

──時間は少し戻る。

 

 ハジメがヒュドラとの死闘を制し倒れた頃、勇者一行は、一時迷宮攻略を中断しハイリヒ王国に戻っていた。

 今回の【オルクス大迷宮】攻略で、歴史上の最高記録である六十五層が突破されたという事実をもって帝国側も天之河達に興味を持つに至った。帝国側から是非会ってみたいという知らせが来たのだ。国王も聖教教会も、いい時期だと了承したのである。

 そんな話を帰りの馬車の中でツラツラと教えられながら、天之河達は王宮に到着した。

 馬車が王宮に入り、全員が降車すると王宮の方から一人の少年が駆けて来るのが見えた。十歳位の金髪碧眼の美少年である。天之河と似た雰囲気を持つが、ずっとやんちゃそうだ。その正体はハイリヒ王国王子ランデル・S・B・ハイリヒである。

 

「香織!よく帰った!待ちわびたぞ‼︎」

 

 ランデルは香織と話していると……そこへ空気を読まない厄介な善意の塊、勇者天之河がにこやかに参戦する。

 

「ランデル殿下、香織は俺の大切な幼馴染です。俺がいる限り、絶対に守り抜きますよ」

 

と爽やかなセリフを吐くとランデルは眉を顰め機嫌を悪そうにする。すると、ランデル殿下に何か機嫌を損ねることをしてしまったのかと、天之河が更に煽りそうなセリフを吐く前に、涼やかだが、少し厳しさを含んだ声が響いた。

 

「ランデル。いい加減にしなさい。香織が困っているでしょう?天之河さんにもご迷惑ですよ」

 

 声の正体はランデルの姉であり、ハイリヒ王国王女のリリアーナ・S・B・ハイリヒだった。

 

「あ、姉上⁉︎……し、しかし」

「しかしではありません。皆さんお疲れなのに、こんな場所に引き止めて……相手のことを考えていないのは誰ですか?」

「うっ……で、ですが……」

「ランデル?」

「よ、用事を思い出しました!失礼します‼︎」

 

 ランデルはどうしても自分の非を認めたくなかったのか、いきなり踵を返し駆けていってしまった。その背を見送りながら、リリアーナは溜息を吐く。

 

「香織、天之河さん、弟が失礼しました。代わってお詫び致しますわ」

 

 リリアーナはそう言って頭を下げた。美しいストレートの金髪がさらりと流れる。

 

「ううん、気にしてないよ、リリィ。ランデル殿下は気を使ってくれただけだよ」

「そうだな。なぜ、怒っていたのかわからないけど……何か失礼なことをしたんなら俺の方こそ謝らないと」

「………………………………………………………………」

 

 香織の言葉に苦笑いをし、天之河に冷たい視線を向けるリリアーナ。姉として弟の恋心を察しているため、意中の香織に全く意識されていないランデルに多少同情してしまう。

 リリアーナは、現在十四歳の才媛だ。その容姿も非常に優れていて、国民にも大変人気のある金髪碧眼の美少女である。性格は真面目で温和、しかし、硬すぎるということもない。TPOをわきまえつつも使用人達とも気さくに接する人当たりの良さを持っている。

 天之河達召喚された者にも、王女としての立場だけでなく一個人としても心を砕いてくれている。彼等を関係ない自分達の世界の問題に巻き込んでしまったと罪悪感もあるようだ。 

 そんな訳で、率先して生徒達と関わるリリアーナと彼等が親しくなるのに時間はかからなかった。特に同年代の香織や雫達との関係は非常に良好で、今では愛称と呼び捨て、タメ口で言葉を交わす仲であるし、リリアーナも()()()()との会話は常に心を高鳴らせながら楽しみにしていた。

 

「いえ、天之河さん。ランデルのことは気にする必要ありませんわ。あの子が少々暴走気味なだけですから。それよりも……改めて、お帰りなさいませ、皆様。無事のご帰還、心から嬉しく思いますわ」

「ありがとう、リリィ。君の笑顔で疲れも吹っ飛んだよ。俺も、また君に会えて嬉しいよ」

「………………………………………………………………そうですか」

 

 さらりとキザなセリフを爽やかな笑顔で言ってしまう光輝にリリアーナは平然と塩対応で言葉をかえした。普通の女性ならドギマギするだろうがリリアーナはさらりとかえしていた。だって彼女はある人物のことを……自分を気遣ってくれた彼のことを想っているから……

 

 

 

 

──それから三日、遂に帝国の使者が訪れた。

 現在、天之河達迷宮攻略に赴いたメンバーと王国の重鎮達、そしてイシュタル率いる司祭数人が謁見の間に勢ぞろいし、レッドカーペットの中央に帝国の使者が五人ほど立ったままエリヒドと向かい合っていた。

 

「使者殿、よく参られた。勇者方の至上の武勇、存分に確かめられるがよかろう」

「陛下、この度は急な訪問の願い、聞き入れて下さり誠に感謝いたします。して、どなたが勇者様なのでしょう?」

「うむ、まずは紹介させて頂こうか。光輝殿、前へ出てくれるか?」

「はい」

 

 そして、天之河を筆頭に、次々と迷宮攻略のメンバーが紹介された。

 

「ほぅ、貴方が勇者様ですか。随分とお若いですな………失礼ですが、本当に六十五層を突破したので?確か、あそこにはベヒモスという化物が出ると記憶しておりますが……」

 

 使者は、天之河を観察するように見やると、イシュタルの手前露骨な態度は取らないものの、若干、疑わしそうな眼差しを向けた。使者の護衛の一人は、値踏みするように上から下までジロジロと眺めている。

 その視線に居心地悪そうに身じろぎしながら、天之河が答える。

 

「えっと、ではお話しましょうか?どのように倒したかとか、あっ、六十六層のマップを見せるとかどうでしょう?」

 

 天之河は信じてもらおうと色々提案するが使者はあっさり首を振りニヤッと不敵な笑みを浮かべた。

 

「いえ、お話は結構。それよりも手っ取り早い方法があります。私の護衛一人と模擬戦でもしてもらえませんか?それで、勇者殿の実力も一目瞭然でしょう」

「えっと、俺は構いませんが……」

 

 天之河は若干戸惑ったようにエリヒドへと振り返る。エリヒドは天之河の視線を受けてイシュタルに確認を取る。イシュタルは頷いた。神威をもって帝国に天之河を人間族のリーダーとして認めさせることは簡単だが、完全実力主義の帝国を早々に本心から認めさせるには、実際戦ってもらうのが手っ取り早いと判断したのだ。

 

「構わんよ。光輝殿、その実力、存分に示されよ」

「決まりですな、では場所の用意をお願いします」

 

 こうして急遽、勇者対帝国使者の護衛という模擬戦の開催が決定したのだった。

 天之河の対戦相手は、なんとも平凡そうな男だった。高すぎず低すぎない身長、特徴という特徴がなく、人ごみに紛れたらすぐ見失ってしまいそうな平凡な顔。一見すると全く強そうに見えない。

刃引きした大型の剣をだらんと無造作にぶら下げており。構えらしい構えもとっていなかった。

 天之河は、舐められているのかと些か怒りを抱く。最初の一撃で度肝を抜いてやれば真面目にやるだろうと、最初の一撃は割かし本気で打ち込むことにした。

 

「いきます!」

 

 天之河が風となる。〝縮地〟により高速で踏み込むと豪風を伴って唐竹に剣を振り下ろした。並みの戦士なら視認することも難しかったかもしれない。もちろん、天之河としては寸止めするつもりだった。だが、その心配は無用。むしろ舐めていたのは天之河の方だと証明されてしまう結果となった。

 

「ガフッ!?」

 

 吹き飛んだのは天之河の方だった。護衛の方は剣を掲げるように振り抜いたまま天之河を睥睨している。天之河が寸止めのため一瞬、力を抜いた刹那にだらんと無造作に下げられていた剣が跳ね上がり天之河を吹き飛ばしたのだ。

 面持ちで護衛を見る。寸止めに集中していたとは言え、護衛の攻撃がほとんど認識できなかったのだ。護衛は掲げた剣をまた力を抜いた自然な体勢で構えている。そう、先ほどの攻撃も動きがあまりに自然すぎて危機感が働かず反応できなかったのである。

 

「はぁ~、おいおい、勇者ってのはこんなもんか?まるでなっちゃいねぇ。やる気あんのか?おん?」

 

 平凡な顔に似合わない乱暴な口調で呆れた視線を送る護衛。そして帝国の使者やクラスメイト達のその表情には失望が浮かんでいた。

 確かに、天之河は護衛を見た目で判断して無造作に正面から突っ込んでいき、あっさり返り討ちにあったというのが現在の構図だ。天之河は相手を舐めていたのは自分の方であったと自覚し、怒りを抱いた。今度は自分に向けて。

 

「すみませんでした。もう一度、お願いします」

 

 今度こそ、本気の目になり、自分の無礼を謝罪する天之河。護衛は、そんな天之河を見て、「戦場じゃあ〝次〟なんてないんだがな」と不機嫌そうに目元を歪めるが相手はするようだ。先程と同様に自然体で立つ。

 天之河は気合を入れ直すと再び踏み込んだ。

 唐竹、袈裟斬り、切り上げ、突き、と〝縮地〟を使いこなしながら超高速の剣撃を振るう。その速度は既に、天之河の体をブレさせて残像を生み出しているほどだ。

 しかし、そんな嵐のような剣撃を護衛は最小限の動きでかわし捌き、隙あらば反撃に転じている。時々、天之河の動きを見失っているにもかかわらず、死角からの攻撃にしっかり反応している。

 天之河には護衛の動きに覚えがあった。それはメルドだ。彼と天之河のスペック差は既にかなりの開きが出ている。にもかかわらず、未だ天之河はメルドとの模擬戦で勝ち越せていないのだ。それはひとえに圧倒的な戦闘経験の差が原因である。

 おそらく護衛も、メルドと同じく数多の戦場に身を置いたのではないだろうか。その戦闘経験が天之河とのスペック差を埋めている。つまり、この護衛はメルド並かそれ以上の実力者というわけだった。

 

「ふん、確かに並の人間じゃ相手にならん程の身体能力だ。しかし、少々素直すぎるな。元々、戦いとは無縁だったか?」

「えっ?えっと、はい、そうです。俺は元々ただの学生ですから」

「……それが今や〝神の使徒〟か……ケッ……」

 

 チラッとイシュタル達聖教教会関係者を見ると護衛は不機嫌そうに鼻を鳴らした。

 

「おい勇者、構えろ。今度はこちらから行くぞ。気を抜くなよ?うっかり殺してしまうかもしれんからな」

 

 護衛はそう宣言するやいなや一気に踏み込んだ。天之河程の高速移動ではない。むしろ遅く感じるほどだ。だというのに……

 

「ッ⁉︎」

 

 気がつけば目の前に護衛が迫っており剣が下方より跳ね上がってきていた。天之河は慌てて飛び退る。しかし、まるで磁石が引き合うかのようにピッタリと間合いを一定に保ちながら鞭のような剣撃が天之河を襲っていた。

 不規則で軌道を読みづらい剣の動きに、〝先読〟で辛うじて対応しながら一度距離を取ろうとするが、まるで引き離せない。〝縮地〟で一気に距離を取ろうとしても、それを見越したように先手を打たれて発動に至らない。次第に天之河の顔に焦りが生まれてくる。

 そして遂に、天之河がダメージ覚悟で剣を振ろうとした瞬間、その隙を逃さず護衛が魔法のトリガーを引く。

 

「穿て──〝風撃〟」

 

 呟くような声で唱えられた詠唱は小さな風の礫を発生させ、天之河の片足を打ち据えた。

 

「うわっ⁉︎」

 

 踏み込もうとした足を払われてバランスを崩す天之河。その瞬間、壮絶な殺気が天之河を射貫く。冷徹な眼光で天之河を睨む護衛の剣が途轍もない圧力を持って振り下ろされた。

 刹那、天之河は悟る。彼は自分を殺すつもりだと。

 実際、護衛はそうなっても仕方ないと考えていた。自分の攻撃に対応できないくらいなら、本当の意味で殺し合いを知らない少年に人間族のリーダーを任せる気など毛頭なかった。例えそれで聖教教会からどのような咎めが来ようとも、戦場で無能な味方を放置する方がずっと耐え難い。それならいっそと、そう考えたのだ。

 しかし、そうはならなかった──

 

「ガァ⁉︎」

 

 先ほどの再現か、今度は護衛が吹き飛んだからだ。護衛が、地面を数度バウンドし両手も使いながら勢いを殺して天之河を見る。天之河は全身から純白のオーラを吹き出しながら、護衛に向かって剣を振り抜いた姿で立っていた。

 護衛の剣が振り下ろされる瞬間、天之河は生存本能に突き動かされるように〝限界突破〟を使ったのだ。これは、一時的に全ステータスを三倍に引き上げてくれるという、ピンチの時に覚醒する勇者らしい技能である。

 だが、天之河の顔には一切余裕はなかった。恐怖を必死で押し殺すように険しい表情で剣を構えている。

 そんな天之河の様子を見て、護衛はニヤリと不敵な笑みを浮かべた。

 

「ハッ、少しはマシな顔するようになったじゃねぇか!さっきまでのビビリ顔より、よほどいいぞ‼︎」

「ビビリ顔?今の方が恐怖を感じてます。……さっき俺を殺す気ではありませんでしたか?これは模擬戦ですよ?」

 

 護衛は天之河の発言に首を傾げる。

 

「だからなんだ?まさか適当に戦って、はい終わりっとでもなると思ったか?この程度で死ぬならそれまでだったってことだろ。お前は、俺達人間の上に立って率いるんだぞ?その自覚があんのかよ?」

「自覚って……俺はもちろん人々を救って……」

「傷つけることも、傷つくことも恐れているガキに何ができる?剣に殺気一つ込められない奴がご大層なこと言ってんじゃねぇよ。あぁ、そういえばお前達の中によくわからない戦闘職で非戦闘職の〝錬成師〟のくせに凄い強い奴がいたそうじゃねぇか……………こんな勇者やその仲間達を助ける為に死んじまったとか惜しいもんだ……ハァ、生きてればウチに勧誘したのにな……」

 

 護衛はそう言いながら肩をガクリと落としながら落胆していた。その姿にホントにハジメがこの場にいたら勧誘したかったらしいことが見てわかった。

 

「なっ……」

 

 しかし、天之河は護衛の言葉で遠回しに自分は奈落で死んだハジメより劣っていると言われ怒りが増した。

 

「俺は…俺はっ南雲より強いんだっ!…ウオォォオ‼︎」

 

 天之河は怒り任せに突撃したが護衛はため息吐き「こいつはダメだ」と言い、尋常ではない殺気を放ちながら天之河に迫り剣を振るった。天之河は苦しそうに表情を歪めた。

 しかし、護衛が実際に剣は天之河に届かなかった。なぜなら、護衛と天之河の間に光の障壁がそそり立ったからだ。

 

「それくらいにしましょうか。これ以上は、模擬戦ではなく殺し合いになってしまいますのでな。……ガハルド殿もお戯れが過ぎますぞ?」

「……チッ、バレていたか。相変わらず食えない爺さんだな」

 

 イシュタルが発動した光輝く障壁で水を差された〝ガハルド殿〟と呼ばれた護衛が、周囲に聞こえないくらいの声量で悪態をつく。そして、興が削がれたように肩を竦め剣を納めると、右の耳にしていたイヤリングを取った。

 すると、まるで霧がかかったように護衛の周囲の空気が白くボヤけ始め、それが晴れる頃には、全くの別人が現れていた。

 四十代位の野性味溢れる男。短く切り上げた銀髪に狼を連想させる鋭い碧眼、スマートでありながらその体は極限まで引き絞られたかのように筋肉がミッシリと詰まっているのが服越しでもわかる。

 その姿を見た瞬間、周囲が一斉に喧騒に包まれた。

 

「ガ、ガハルド殿⁉︎」

「皇帝陛下⁉︎」

 

 そう、この男、何を隠そうヘルシャー帝国現皇帝ガハルド・D・ヘルシャーその人である。まさかの事態にエリヒドが眉間を揉みほぐしながら尋ねた。

 

「どういうおつもりですかな、ガハルド殿」

「これは、これはエリヒド殿。ろくな挨拶もせず済まなかった。ただな、どうせなら自分で確認した方が早いだろうと一芝居打たせてもらったのよ。今後の戦争に関わる重要なことだ。無礼は許して頂きたい」

 

 謝罪すると言いながら、全く反省の色がないガハルド。それに溜息を吐きながら「もう良い」とかぶりを振るエリヒド。

 天之河達は完全に置いてきぼりだ。なんでも、この皇帝陛下、フットワークが物凄く軽いらしく、このようなサプライズは日常茶飯事なのだとか。

 そこからガハルドの勧誘が始まったがクラスメイトの大半はハジメを探す為に迷宮攻略したい為、勧誘を断り続けたらガハルドも渋々諦めた。

 

「はぁ……〝錬成師〟の奴以外に面白い奴等を見つけたのに断られちまったな……まぁお前等!気が変わったら帝国に来いよ!俺は何時でも待ってるぞ‼︎」

 

 そんなことを言いながらガハルドはその後に予定されていた晩餐で帝国からも勇者を認めるとの言質をとることができ、一応、今回の訪問の目的は達成されたらしい。

 余談だが、翌日の早朝訓練をしている雫を見て気に入ったガハルドが愛人にどうだと割かし本気で誘ったというハプニングがあった。雫は丁寧に断り、ガハルドも「まぁ、焦らんさ」と不敵に笑いながら引き下がったので特に大事になったわけではなかったが、その時、天之河を見て鼻で笑ったことで天之河はガハルドとは絶対に馬が合わないと感じでしばらく不機嫌だった。

 模擬戦の日の晩、部屋で部下に本音を聞かれたガハルドは面倒くさそうに答えた。

 

「ありゃ、ダメだな。ただの子供だ。理想とか正義とかそういう類のものを何の疑いもなく信じている口だ。なまじ実力とカリスマがあるからタチが悪い。自分の理想で周りを殺すタイプだなアレ。〝神の使徒〟である以上は蔑ろにはできねぇ。取り敢えず合わせて上手くやるしかねぇだろうし……あーあ、何で〝錬成師〟の奴は死んじまったんだよ……生きてたらトレイシーとくっつけてウチに欲しかったし是非、戦ってみたかったんだが……」

 

 ガハルドはそんなことを話しながら肩を落とし溜息を吐く。すると、部下が話しかける。

 

「皇帝陛下は、あわよくばあの試合で勇者を殺すつもりだったのですか?」

「あぁ?違ぇよ。少しは腑抜けた精神を叩き治せるかと思っただけだ。あのままやっても爺さんが邪魔して絶対殺れなかっただろうよ」

 

 どうやら、ガハルドの中で天之河達勇者一行は錬成師のハジメ以外はあまり興味の対象とはならなかったようである。無理もないことだろう。彼等は数ヶ月前までただの学生。それも平和な日本の。歴戦の戦士が認めるような戦場の心構えなど出来ているはずがないのだが、錬成師でありながら強い戦闘力を持つと評されていたハジメとは会いたかったが迷宮で死亡したと知り、不貞腐れていた。

 

 

「まぁ、魔人共との戦争が本格化したら変わるかもな。見るとしてもそれからだろうよ。今は、小僧どもに巻き込まれないよう上手く立ち回ることが重要だ。後、爺さんには気をつけとけよ? あの、爺さんは敵になると色々と面倒臭ぇ」

「御意」

 

 そんな評価を下されているとは露にも思わず、天之河は、翌日に帰国するというガハルド一行を見送ることになった。用事はもう済んだ以上留まる理由もないということだ。本当にフットワークの軽い皇帝であった……。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。